同時廃止とは何か?どんな流れか?個人が自己破産で最初に目指したい同時廃止のメリットや条件を弁護士が解説

●同時廃止とは何か?

●同時廃止の条件は?

●同時廃止のメリットは?

●同時廃止の流れは?

●自己破産の弁護士費用はどうやって支払うのか?

というお悩みはありませんか?

このページでは,自己破産で同時廃止となることについて検討している方に向けて,同時廃止の内容や条件手続の流れや弁護士費用の支払い方法などを解説します。

同時廃止とは

同時廃止とは,自己破産における手続の一種で,破産管財人(破産者の財産を管理する担当弁護士)を選任せずに破産手続を終了する方法を指します。破産手続の開始決定と同時に手続が廃止(終了)するため,同時廃止と呼ばれます。

自己破産の一般的な手続の流れは以下の通りです。

自己破産の一般的な流れ

1.破産手続の申立て
→必要な書面を裁判所に提出します。

2.裁判所の審査,裁判官の面接
→裁判所が申立ての内容を確認し,破産手続ができるか判断します。

3.破産手続開始決定
→裁判所の確認が済むと,破産手続が始まります。

4.破産管財人の選任
→破産者の財産を管理・処分するための担当者である破産管財人が選任されます。

5.財産の調査・処分
→破産管財人が財産を確認し,適切に処分します。

6.債権者集会
→破産管財人による調査結果や財産状況の説明がなされます。

7.免責審尋
→残った債務を免れさせる(免責する)かどうかの判断がなされます。

8.免責許可決定
→免責審尋で問題のないことが確認できれば,免責が許可されます。

上記の手続のうち,破産管財人が破産者の財産を調査・処分するステップである「4」~「6」の手続は,破産者に処分するような財産のない場合は不要です。そこで,「4」~「6」の各手順を省略して,「3.破産手続開始決定」と同時に破産手続を廃止して,「7.免責審尋」に移るのが同時廃止という手続になります。

同時廃止事件の一般的な流れ

1.破産手続の申立て
→必要な書面を裁判所に提出します。

2.裁判所の審査,裁判官の面接
→裁判所が申立ての内容を確認し,破産手続ができるか判断します。

3.破産手続開始決定
→裁判所の確認が済むと,破産手続が始まります。

(4~6を省略)

7.免責審尋
→残った債務を免れさせる(免責する)かどうかの判断がなされます。

8.免責許可決定
→免責審尋で問題のないことが確認できれば,免責が許可されます。

同時廃止は,自己破産の事件の中で最も数の多い事件ですが,手続としてはあくまで例外の位置づけにある簡易な手続である,という理解が適切です。そのため,同時廃止の要件を満たしていることは,申立てに際して適切に示す必要があります。

ポイント
同時廃止は,破産手続で処分する財産がない場合の簡易な例外的処理

同時廃止の条件①現金額及び財産額の基準を満たす

同時廃止となるのは,債権者のために処分する財産がない場合に限られます。具体的には,現金33万円未満かつ20万円以上の財産がない場合,債権者への分配が原則として生じないため,同時廃止となる条件を満たします

同時廃止の条件②免責不許可事由がない

債務者の財産が少ない場合でも,「免責不許可事由」があると疑われる場合,同時廃止できず管財事件(破産管財人を選任する事件)になる可能性が高くなります。

免責不許可事由とは,自己破産の後も債務を免除すべきでない事情を言います。債務者側に不誠実・不合理な行為があり,債務を免除するのが債権者との間で不公平になってしまう場合には,債務を免除せず返済を続けさせるというものです。
この免責不許可事由に当たる可能性がある場合,破産管財人によって免責不許可事由の有無を詳しく調査する必要があるため,管財事件とされるのが通常です。

なお,破産法に定められた免責不許可事由は,以下の通りです。

免責不許可事由

1.財産を不当に減少させる行為
→財産の隠匿,損壊,不当な処分などの行為が挙げられます。

2.不当な債務負担
→著しく不利益な条件で債務を負う行為などが挙げられます。

3.特定の債権者に利益を与える行為
→債権者のうち一人だけに全額返済する行為などが挙げられます。

4.浪費や賭博による債務負担
→収入に見合わない出費や賭博行為を理由に破産する場合が挙げられます。

5.詐術による信用取引
→借金を隠して新しいクレジットカードを作り,使用した場合などが挙げられます。

6.帳簿の隠滅
→業務や財産状況に関する書類を隠したり偽造したりする行為が挙げられます。

7.虚偽の債権者名簿提出
→自己破産の申立て時に特定の債権者だけを債権者から除く行為などが挙げられます。

8.説明拒否・虚偽説明
→裁判所の調査に対してウソや隠し事をする行為が挙げられます。
裁判所の信用を直接損なうため,免責不許可となる可能性が非常に高くなります。

9.管財業務の妨害
→破産管財人の指示に反したり,管財人を脅したりする行為が挙げられます。

10.過去7年以内の免責許可決定
→免責や同種の法的保護を受けている場合,7年間は免責が許可されません。

11.破産法上の義務違反
→破産手続における破産者の義務(説明義務,重要財産開示義務,免責調査協力義務等)に反した場合が挙げられます。

同時廃止の条件③個人の破産である

同時廃止とするためには,個人事業主や法人代表者でなく個人の破産であることが必要です。
個人事業主や法人代表者の場合,その人の個人的な財産のみでなく,事業に関わる財産や債権債務が問題になるため,簡単に同時廃止とするわけにはいきません。

個人の財産のみならず事業に関する財産の処理も発生する場合は,同時廃止はできず管財事件になります。

同時廃止のメリット

同時廃止は,自己破産を希望する債務者にとってメリットの多い手続であると言われます。具体的なメリットとしては,以下のような点が挙げられます。

①費用が安い

破産手続の申立てをする場合,裁判所に納める金銭が発生します。もっとも,その金額は手続によって異なり,同時廃止では1~2万円,管財事件では最低でも20万円と大きな差異があります。
これは,管財事件の場合,破産管財人の報酬を予納金として支払う必要があるのに対し,同時廃止では破産管財人がおらず,その報酬も生じないためです。

同時廃止は,管財事件と比較して明確に費用が安いというメリットがあると言えるでしょう。

②面接や出頭の負担が少ない

管財事件の場合,依頼した弁護士とは別の弁護士が破産管財人となり,破産管財人との定期的な面談が必要となります。そのため,管財人との面談のため複数回の外出が欠かせません。
また,管財事件では裁判所に出頭しないで済むことはなく,管財人の調査中に複数回裁判所へ出頭することも珍しくはありません。

一方,同時廃止の場合,管財人がいない以上,管財人との面談は生じず,裁判所に対しても出頭しないで済む場合があり得ます。そのため,一度もどこにも出頭しないまま手続が終了することもあり得る,ということになります。

③短期間で終了する

管財事件の場合,手続に必要な期間は調査期間にもよりますが,数か月から1年といった長期間を要する場合も考えられます。これは,財産を処分の上,金銭にして債権者に分配する処理が発生するためです。

一方,同時廃止の場合,財産の換価・処分が生じないため,明らかに管財事件より短期間で終了します。一般的には,破産手続の開始から免責許可決定まで,3か月前後という例が多いようです。

同時廃止の流れ①弁護士委任,受任通知

自己破産は,必ずしも弁護士がいなければできないものではありませんが,手続が煩雑であることや必要書類の準備に相当の負担を要することから,ほとんどが弁護士に依頼して行われます。

もっとも,弁護士に依頼をする場合,弁護士費用の支払が必要となりますが,月々の返済に追われるような状況では弁護士費用の工面は困難です。そのため,弁護士が依頼を受けた際には,弁護士が各債権者に受任通知を提出し,借金の取り立てを防ぐ措置を取ります。
そのため,弁護士に依頼した段階で取り立てはストップし,安心して弁護士費用の準備や破産手続に向けた用意をすることが可能となります

同時廃止の流れ②弁護士費用の支出

弁護士に委任した後,破産の申立てに必要な準備と並行して弁護士費用を捻出することになります。弁護士への委任によって一旦は取り立てが止まりますが,それで問題が解決したわけではありません。最終的な解決には破産の申立て及びその結果としての免責許可決定が必要ですが,弁護士は弁護士費用の支払を確認した後でなければ申立てをすることができません。

そのため,取り立てが来なくなったことに安心するのでなく,まずは申立てに必要な弁護士費用の準備を進めましょう。多くの場合,月々分割して弁護士費用を支払い,合計額が必要な弁護士費用の金額に達した段階で弁護士に進めてもらうことが可能になります。

同時廃止の流れ③申立書類の作成

弁護士と共同して債権者の範囲と債務の金額を確認します(債務調査)。そして,債務調査の結果を踏まえ,申立てに必要な各種書面の作成や取り付けを進めることになります。
申立てに必要な書類としては,以下のものが挙げられます。

自己破産の申し立てに必要な書類

1.申立書
→申立人(自分)の情報や債務の内容に関して,必要な記載をした書面を提出します。

2.陳述書
→破産の経緯や今後の見通しなどを記載します。

3.債権者一覧表(債権調査票)
→債権者の情報や債務額などを記載します。

4.住民票・戸籍謄本
→自身及び家族分を提出します。

5.直近2か月程度の収支記録
→申立時の収入と支出の状況を提出します。

6.通帳の写し
→預貯金状況が分かるものを提出します。

7.財産目録
→債務者の保有する財産を一覧にして提出します。

8.保有資産に関する資料
→自動車の時価に関する査定書,保険の解約返戻金が分かる書類などが含まれます。

同時廃止の流れ④自己破産の申立て

必要書類がそろった段階で,裁判所へ自己破産の申立てを行います。申立書等の必要書類が提出されると,裁判所による書類審査が行われ,破産手続開始決定を行ってよいか,同時廃止とするかどうかなどが判断されます。

同時廃止の流れ⑤破産審尋

自己破産の申し立て後,裁判所が必要と考えた場合には裁判官との面接が実施されます。これが破産審尋(債務者審尋)と呼ばれるものです。
面接の場では,主に申立書の記載内容に関する確認がなされますが,より踏み込んだ内容(借り入れの経緯や破産に至った経緯,現在の生活状況など)が詳細に尋ねられる場合もあります。

なお,審尋は代理人弁護士だけが呼び出される場合,債務者本人の同行を求められる場合のいずれもありますが,個別の方法は裁判官の判断となります。

同時廃止の流れ⑥破産手続開始決定,同時廃止

書類審査や審尋の結果,内容に問題がないと判断された場合,破産手続開始決定が行われます。また,同時廃止とすることができる場合には,開始決定と同時に同時廃止の決定もなされ,破産手続は直ちに終了します。

同時廃止の流れ⑦免責審尋

同時廃止の場合,破産手続開始決定及び同時廃止決定の後,速やかに免責手続に移ります。
具体的には,裁判所で「免責審尋」が実施され,免責不許可事由の有無などについて,裁判官から最終的な確認がなされます。

なお,破産手続開始決定の前に破産審尋(債務者審尋)が行われた場合は,その際に免責不許可事由に関する面接も行われているため,免責審尋を省略するケースが一般的です。

同時廃止の流れ⑧免責許可

免責審尋の後,免責許可決定がなされます。
同時廃止の場合,そもそも免責不許可事由のないことが条件となっているため,免責許可されない場合はほとんどありません

自己破産の弁護士費用を支払う方法

自己破産で弁護士に依頼しようと思っても,弁護士費用の工面が直ちにできる場合は少ないでしょう。借金の方が多くなってしまっている状況である以上,やむを得ないところです。

この点,自己破産における弁護士費用は,弁護士への依頼後,弁護士が債権者に受任通知を出した後に少しずつ行うのが一般的です。弁護士が債権者に受任通知を出すことで,債権者の債務者に対する取り立ては一度止まることになるため,収入から返済に回す金銭が不要になり,弁護士費用の捻出が可能になるというわけです。

弁護士費用の支払で悩んでいる場合も,まずは弁護士に相談してみるとよいでしょう。

借金問題に強い弁護士をお探しの方へ

同時廃止となる自己破産は,借金でお悩みの方が目指す最も代表的な手続と言えます。
もっとも,必要な書類や申立ては単純ではなく,弁護士と共同して行うことが必要になりやすいでしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,借金問題に精通した弁護士が迅速に対応し,円滑な解決に向けたお力添えをすることが可能です。
お困りごとの際は,ぜひお気軽にご相談ください。

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