相続放棄はどんなときにすべき?相続放棄のメリットや注意点は?弁護士の詳細解説で相続放棄をマスター

●相続放棄をする方法が知りたい

●相続放棄をする際に注意すべきことは?

●相続放棄が失敗してしまう場合はあるか?

●相続放棄の手順が知りたい

●相続放棄は弁護士に依頼すべきか?

というお悩みはありませんか?

このページでは,相続放棄でお困りの方に向けて,相続放棄の方法や注意点相続放棄を弁護士に依頼するメリットなどを解説します。

相続放棄とは

相続放棄とは,相続できる立場にある人が相続する権利を自ら放棄することを言います。相続に際して,亡くなった人を「被相続人」,相続できる立場の人を「相続人」と言いますが,相続放棄は,被相続人の相続財産について,相続人がその相続を受ける権利を放棄することを指す,ということができるでしょう。

相続放棄をした場合,放棄した相続人は,最初から相続人の立場にはなかったものと同じ扱いになります。そのため,被相続人の財産は,相続放棄をしていない相続人のみで分配することになります。

相続放棄すべき場合

相続放棄を行うべき場合の例としては,以下のようなケースが挙げられます。

①負債の方が多い

相続は,プラスの財産だけでなくマイナスの財産(負債)も対象になります。そのため,被相続人の財産が全体でマイナスの場合,相続人は借金を相続することになってしまう結果になりかねません。

そこで,被相続人の財産に負債の方が多い場合,相続放棄をして負債の相続を防ぐべきでしょう。負債の相続を防ぐという目的は,相続財産の理由として最も多く見られるものです。

②相続人間のトラブルを回避したい

共同相続人が多かったり,相続人間が不仲であったりする場合,相続の方法や内容についてトラブルになる可能性が高く見込まれます。特に,相続財産が大きかったり複数の財産があったりすると,それぞれの相続人は自己の利益を図るため自身に有利な相続を実現させようとする場合が多いでしょう。

このような相続人間のトラブルに巻き込まれたくない,という気持ちが強く,トラブルを避けられるのであれば相続ができなくても構わないと考える場合,相続放棄を行うべきでしょう。

③財産管理の負担を回避したい

相続財産の中には,管理が容易でない不動産や,財産的価値の不明確な資産が含まれていることも考えられます。また,相続税が多額になるなど,相続に必要な手続の負担が大きくなる場合もあり得ます。

そのため,相続手続や相続財産管理の負担を回避したい,という希望が生じる相続人もいますが,相続手続や相続財産管理の負担を回避するには相続放棄して相続人の地位から退くことが必要になります。

④特定の相続人に財産を集中させたい

相続人が相互に協力して,配偶者や身寄りのない子など,特定の相続人に財産を集中させたいと考えることもあり得ます。この場合,その特定の相続人以外が相続放棄すれば,自動的に財産を集中させることができるため,相続放棄が最も円滑な手段になりやすいでしょう。

⑤感情的に財産を受け継ぎたくない

被相続人との生前の関係が芳しくなかった場合など,感情的な理由で相続財産を受け取りたくないという場合は,相続人の立場から外れるのが最も端的であるため,相続放棄をするべきことになります。

相続放棄の方法

相続放棄は,家庭裁判所に対して必要な手続を講じる方法で行う必要があります。
具体的な流れは以下の通りです。

①家庭裁判所への申述

まずは,相続放棄をしたいという意思を表明するため,家庭裁判所に対して相続放棄の申述という手続を行う必要があります。申述に際しては,「相続放棄申述書」という書面に必要な事項を記載し,他の必要物・必要書類とともに提出することになります。

相続放棄申述書の書式は,裁判所のホームページからダウンロードする方法で入手が可能です。

相続放棄申述書 書式(未成年者)

相続放棄申述書 書式(成人)

また,相続放棄の申述に必要とされる基本的な提出書類は,以下の通りです。

申述時の主な提出書類

1.相続放棄申述書
2.被相続人の住民票(除票)
3.申述人の戸籍謄本
4.収入印紙(800円)
5.郵便切手470円(84円5枚,10円5枚)
6.被相続人の死亡記載がある戸籍謄本
7.前順位の相続人の死亡記載がある戸籍謄本

※申述人の立場により追加提出を要する場合もあるため,個別の必要書類は弁護士や裁判所に相談することをお勧めします。

②相続放棄照会書の受領・返送

相続放棄の申述を行うと,受け取った家庭裁判所から「相続放棄照会書」という書面が到着します。
相続放棄照会書は,相続放棄が適法に行われているかを確認し,相続放棄の申述を受理してよいか判断するために必要な事項を照会する書面です。例えば,相続放棄の期間制限を守っているか,相続放棄の意思は確かか,なぜ相続放棄をするのか,といった内容を問う内容であることが通常です。

③相続放棄申述受理通知書の受領

相続放棄照会書を返送し,必要な確認が終わると,「相続放棄申述受理通知書」という書面が裁判所から送られます。これは,相続放棄の申述を確かに受理した,という意味の通知書面であり,相続放棄が完了したことの裏付けになるものです。
相続放棄申述受理通知書の受領によって,相続放棄の手続は終了します。相続放棄の事実を証したい場合は,この通知書を示す方法で行うことが一般的です。

相続放棄の注意点

相続放棄は,法律でその要件が定められた裁判所の手続であるため,ルールに反したやり方では希望する結果が得られなくなってしまいます。そのため,問題になりやすいルールは事前に踏まえておくことを強くお勧めします。

相続放棄で問題になりやすい注意点としては,以下のようなものが挙げられます。

①撤回ができない

相続放棄は,一度受理された後に撤回することができません。そのため,相続放棄の手続が終了した後に「やはり相続したい」と思い直したとしても,希望通りにはならないのです。これは,相続の放棄や撤回が繰り返されてしまうと,相続をめぐる法律関係が複雑になり,他の相続人や関係者に重大な損害や悪影響が生じかねないためです。

もっとも,相続放棄の申述が受理される前に「取下げ」という方法を取ることは可能です。相続放棄の申述は,概ね1か月程度を目安に受理されますが,その期間中に家庭裁判所へ書面で取下げの意思を表明すれば,相続放棄を事実上撤回することができるでしょう。
ただし,申述の受理後に取下げはできないため,取下げは極力速やかに行う必要があります。

②未成年者の場合

未成年者は,法定代理人の同意なく単独で相続放棄をする権利がないため,未成年者が単独で相続放棄を行っても,後から法定代理人によって取り消される可能性があります。

未成年者の場合,単独で動くのではなく,必ず法定代理人とともに対応することをお勧めいたします。

③期間制限がある

相続放棄は,「相続の開始を知った日から3か月以内」という期間制限を守って行わなければなりません。特段の事情がない限り,この期間制限に反した相続放棄は受理をしてもらうことができなくなります。
この点,「相続の開始を知った日」とは,被相続人の死亡を知った日であることが通常です。例外的に,被相続人に当たる人物が死亡したことは知っていたものの,自分がその人物の相続人に当たる関係であることを知らなかった場合には,関係を知った日からとなり得ますが,かなり例外的なケースに限られるでしょう。

なお,期間制限を遵守できない可能性が高い場合には,家庭裁判所に請求することで期間の伸長をしてもらうことも可能です。
いずれにしても,期間制限を意識した対応は不可欠でしょう。

相続放棄の失敗①却下されると二度とできない

相続放棄の申述を行うと,家庭裁判所から「受理」(=許可)又は「却下」のいずれかの結果が通知されます。法律的に問題のない申述であれば基本的に受理されますが,重大な不備があるなど申述が却下される場合もあり得ます。

この点,一度相続放棄の申述が却下されると,再度相続放棄の申述を行うことはできません。却下の判断を争うためには,「即時抗告」という不服申立ての手続を用いる必要がありますが,即時抗告で判断が覆るケースは非常に少数と理解する必要があるでしょう。

そのため,相続放棄を確実に行いたい場合,いい加減に行うのでなく法律のルールを守って適切な方法で行うことが極めて重要です。

相続放棄の失敗②相続財産を費消してしまった

相続放棄は,放棄より前に相続を「単純承認」してしまっている場合には認められません。
単純承認とは,被相続人の権利義務を全て承継することを言いますが,単純承認するとプラスの財産もマイナスの財産も全てを引き継ぐことになるため,その後に相続放棄ができなくなるのです。

この点,相続放棄を希望する人が自ら単純承認の意思を表明することは考えにくいですが,一定の行動を取ってしまうと「法定単純承認」として単純承認したものとみなされてしまう場合があります。

典型例が,相続財産を費消してしまった場合です。
被相続人の預貯金を引き出して自分のために遣うなど,相続財産を自分のものとして扱う行為は,相続財産を自分の財産とする意思表明があるものと理解されるため,「法定単純承認」の対象となります。したがって,相続財産を費消してしまうと,その後に相続放棄はできません。

なお,法定単純承認事由は,以下の通りです。

法定単純承認事由

1.相続財産の処分(保存行為や一定の賃貸を除く)
2.相続放棄の熟慮期間の経過
3.限定承認や相続放棄後の背信的行為(隠匿・消費・財産目録への不記載)

相続放棄の失敗③放棄後に財産が見つかった

相続放棄は,プラスの財産よりマイナスの財産が上回ることを理由に行う場合が大多数です。つまり,マイナスの財産の方が多いと,相続しても借金を受け取るだけになってしまい損でしかないため,相続放棄によって損を避ける,というわけですね。

しかし,マイナスの財産の方が大きいと考えて相続放棄をしたものの,後になって新たな相続財産が見つかると,損得勘定は逆転してしまいます。この点,後でプラスの方が大きいと分かっても,「やっぱり相続したい」というわけにはいかないため,相続放棄が損になってしまいかねないのです。

損得勘定に基づく相続放棄の判断は,相続財産の内容や範囲を慎重に把握した上で行うのが合理的でしょう。

弁護士依頼のメリット①早期対応が可能

相続放棄は,期間制限内に行う必要があることから,時間との勝負になる場合があります。また,相続放棄の申述に必要な書類には,戸籍や住民票が含まれますが,これらを全て取得するには複数の役場などに請求をかけなければならない場合も多く,相当に骨の折れる作業にもなります。

この点,弁護士に相続放棄を依頼すれば,必要な書面作成・収集の対応が早期に行えるため,安心して相続放棄を行うことができるでしょう。また,資料収集の負担も回避することができ,相続放棄の手続が生活を圧迫することもなくなります。

弁護士依頼のメリット②3か月経過後の放棄

相続放棄は,「相続の開始を知った日から3か月以内」という熟慮期間内に行うことが必要ですが,3か月という期間は決して長くないため,相続放棄を試みる頃にはその期間が経過してしまっていることも考えられます。

このとき,原則として相続放棄は認められませんが,粘り強く事情を説明し,家庭裁判所に認めてもらうことができれば,期間経過後であっても相続放棄ができる可能性もあり得ます。
具体的には,事情を説明するための書面を作成・提出し,裁判所の判断を仰ぐことになりますが,この手続は専門的な知識を持った者が行うべきです。3か月経過後の相続放棄については,可否の見通しも含めて弁護士への相談・依頼を検討するようにしましょう。

弁護士依頼のメリット③債権者対応をしてもらえる

相続放棄を試みる場合,被相続人の債権者から支払などを求められている状況であることも少なくありません。
この点,相続放棄の申述が受理された後であれば,請求を拒むことも容易ですが,相続放棄は申述後にすぐ受理されるわけではありませんし,そもそも申述に必要な書面の収集にも一定の時間がかかるため,その期間中における債権者対応は負担としてのしかかりやすいものです。

このとき,弁護士に依頼することで,自分では厄介な債権者への対応も全て代理人となる弁護士に任せることができます。債権者対応の負担がなくなれば,相続放棄が完了するまでの期間も安心して過ごすことができるでしょう。

相続問題に強い弁護士をお探しの方へ

相続放棄は,期間制限のある手続である上,裁判所に対して行う必要があるため手続のルールをきっちりと守る必要があります。
そのため,相続放棄の時期や方法を誤ると,取り返しのつかない不利益が生じる可能性もあり,相続放棄の検討は慎重に行う必要があるでしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,相続問題に精通した弁護士が迅速に対応し,円滑な解決を実現するお力添えが可能です。是非お気軽にご相談ください。

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