相続財産調査は何をするべき?具体的にどんな財産を調査するの?知らないと困る相続財産調査の全て

●相続財産調査はなぜ行う必要があるのか?

●相続財産調査の期間制限は? 

●相続財産調査の範囲は?

●相続財産調査の方法は?

●相続財産調査のゴールは?

というお悩みはありませんか?

このページでは,相続財産調査についてお困りの方に向けて,相続財産調査の目的や方法具体的な流れなどを解説します。

相続財産調査はなぜ必要か

相続財産調査とは,被相続人が残した財産の全貌を明らかにするために行う調査のことを指します。相続財産調査に当たっては,プラスの財産(積極財産)とマイナスの財産(消極財産)を全て特定し,相続財産の金額を特定することが必要になります。

この相続財産調査は,相続問題の解決に際して不可欠な動きとなりますが,その主な理由としては以下のような点が挙げられます。

①遺産分割協議の準備をするため

遺産分割協議は,相続人全員で,被相続人の財産の全てをどのように分配するか決定するための協議です。そのため,協議の前提として相続財産の全容を把握していなければなりません。
相続財産調査は,遺産分割協議を行う前段階の準備として,いわば協議のスタートラインに立つため必要ということができるでしょう。

②相続放棄の検討をするため

被相続人の有するプラスの財産(積極財産)とマイナスの財産(消極財産)を比較し,マイナスの方が大きいとなる場合,相続放棄をする方が経済的には合理性ある判断である可能性が高いでしょう。一方,マイナスが大きいと考えて相続放棄をしたものの,実際にはプラスの方が大きかったという場合,相続放棄は撤回ができないため,わざわざ相続放棄をしたばかりに最も不利益な結果になりかねません。

このように,プラスとマイナスの財産を正確に比較し,相続放棄の検討をするために相続財産調査が必要となります。

③遺留分の請求を検討するため

遺留分は,各相続人の相続分に応じてその金額が決まります。
例えば,配偶者と子が相続人であるという場合,配偶者の遺留分は相続財産全体の4分の1となりますが,相続財産が100万円であれば遺留分は25万円,相続財産が1億円であれば遺留分は2,500万円というように,相続財産の大きさによって遺留分の金額が異なることとなります。
そうすると,遺言や遺贈が自分の遺留分を侵害しているかどうかを判断するためには,相続財産の金額を特定している必要があり,相続財産調査は遺留分の請求を検討するために不可欠の作業と言えます。

④相続税の申告に用いるため

高額の相続が生じる場合,相続税の申告や納税が必要ですが,その具体的な金額は当然ながら相続する金額によって決まります。
そのため,いくらの財産を相続するか分からなければ相続税の申告準備ができない以上,相続財産調査は相続税の申告のため不可欠と言わざるを得ません。

相続財産調査の期間制限

相続財産調査は法律で定めた制度ではないため,その期間制限を定めた法令もありません。もっとも,相続財産調査の大きな目的である相続放棄の判断は,相続の開始を知ってから3か月以内に行う必要があります。

そのため,相続財産調査は,事実上相続の開始を知ってから3か月以内に遂げる必要がある,ということになるでしょう。もっとも,3か月は相続放棄を行うまでの期間であるため,実際にはもっと余裕をもって相続財産調査を終える必要があります。

相続財産の主な種類

相続財産には,主に以下のような財産が挙げられるでしょう。

1.積極財産(プラスの財産)

a.不動産(家屋,土地)
b.現金,預貯金
c.株式,債券,投資信託
d.生命保険の死亡保険金
e.貴金属,骨董品,自動車などの動産
f.貸付金(被相続人が他人に貸している金銭)

2.消極財産(マイナスの財産)

g.借金,ローン(住宅ローン,カードローンなど)
h.未払いの税金(所得税,住民税など)
i.未払いの公共料金(電気,水道,ガスなど)
j.医療費(入院費用など)

相続財産調査に際しては,このような財産の候補を頭に入れた上で,財産調査の手掛かりを発見し,手掛かりの見つかった財産の具体的な特定を実施する,という流れが適切です。

相続財産調査の方法①預貯金

最も代表的な財産は,預貯金でしょう。預貯金を調査する手掛かりとしては,口座情報の分かるキャッシュカードや通帳を発見するのが端的です。また,預貯金がある金融機関から郵便物が到着することもあります。

預貯金の具体的な特定に際しては,被相続人のパソコンなどから直接確認できれば円滑ですが,難しい場合には金融機関から「残高証明書」を発行してもらうのが適切です。発行方法の詳細は金融機関によっても異なるため,電話等で問い合わせの上,確認するようにしましょう。

ポイント 預貯金
手掛かり:キャッシュカード,通帳,金融機関からの郵便
特定:残高証明書

相続財産調査の方法②不動産

不動産を把握するきっかけとしては,まず権利証や登記識別情報通知書など,直接の裏付けになるものがあれば端的です。他には,固定資産税納税通知書や固定資産税の引き落とし明細など,固定資産税の支払に関する書類も有力なきっかけになります。

ただ,固定資産税のかからない不動産は,固定資産税関係の書類では把握できないため,「名寄帳」の取り寄せを行うのも有力でしょう。名寄帳とは,特定の人物が所有する不動産を一覧にした資料で,その人物が同じ市区町村内で所有するすべての土地や建物の情報をまとめて確認することができるものです。
もっとも,名寄帳は市区町村ごとの作成になるため,所有不動産のある市区町村にあたりを付けなければならない点に注意を要するでしょう。

不動産の価額の特定に際しては,固定資産税納税通知書でも可能ですが,発見できない場合は「固定資産評価証明書」を取得するのが適切です。不動産が所在する市区町村役場で取得することが可能です。

ポイント 不動産
きっかけ:権利証,登記識別情報通知書,固定資産税納税通知書,固定資産税の明細,名寄帳
特定:固定資産評価証明書

相続財産調査の方法③動産

不動産以外の財産を動産と言いますが,動産を把握するきっかけは基本的に現物の確認となりやすいでしょう。
宝石や絵画といった経済的価値のある動産は,まとめて保管されやすい傾向にあるため,保管されやすい場所に目星を付けるのが合理的です。

また,自動車など,一定の登録などを要する動産については,車検証などの登録内容に関わる書類をきっかけにすることも一案でしょう。

動産の価額の特定に際しては,査定を依頼して時価額を算出してもらうのが最も端的な方法になります。財産ごとに信頼できる依頼先に査定を求めるようにしましょう。

ポイント 動産
きっかけ:現物,登録に関わる書類
特定:査定の依頼

相続財産調査の方法④有価証券(株式等)

株式などの有価証券に関しては,何らかの通知書面が発見できる可能性が考えられます。例えば,年間取引報告書株主総会招集通知配当の通知などは代表的なきっかけになり得ます。
熱心な株主であった場合,過去の書類も適切に保管していることも考えられるため,書類が保管されている場所を丹念に確認することが有力でしょう。

有価証券に関する金額特定は,預貯金と同様に「残高証明書」での確認が有益です。当該有価証券を取引した証券会社に問い合わせることで,残高証明書から株式などの数,評価額などを把握することが可能です。

ポイント 有価証券(株式等)
きっかけ:年間取引報告書,株主総会招集通知,配当通知
特定:残高証明書

相続財産調査の方法⑤保険

保険加入を把握するきっかけとしては,保険証券が代表例でしょう。
他には,保険料の引き落としに関する銀行口座の履歴や,年末調整・確定申告における保険料控除の有無などもきっかけになることがあり得ます。
また,きっかけが見つかった場合,内容の特定は保険会社への照会が最も端的でしょう。

なお,被相続人の死亡によって保険金の支払が生じる死亡保険金は,相続財産に該当せず,受取人の固有の財産となります。
保険について相続財産の問題になるのは,主に損害保険などの解約返戻金満期保険料になるでしょう。

ポイント 保険
きっかけ:保険証券,銀行口座の履歴,保険料控除の有無
特定:保険会社への照会
ただし,死亡保険金は相続財産に含まれない

相続財産調査の方法⑥借金

借金を知るきっかけとしては,その契約書や利用明細など,借り入れ内容が直接分かる書類が代表的です。また,支払が滞っている場合は督促状が届いている場合も考えられます。
他には,信用情報登録機関への問い合わせも有力な手段です。現在,日本には「株式会社日本信用情報機構(JICC)」,「株式会社シー・アイ・シー(CIC)」,「全国銀行個人信用情報センター」という三社の信用情報登録機関がありますが,それぞれに照会を行うことで,有料ながら借入先が分かるきっかけになる可能性もあります。

借入先が特定できた場合には,金融業者へ問い合わせて「借入金残高証明書」を取得することで,借入額の確認が可能です。

ポイント 借金
きっかけ:契約書,利用明細,督促状,信用情報機関への照会
特定:借入金残高証明書

相続財産調査の終着点は財産目録の作成

相続財産調査の最終的な目標は,「財産目録」を作成することにあります。
財産目録は,相続財産の情報を一覧にした書類であり,相続税の申告に際してはそのまま用いるものでもあります。また,遺産分割が調停に移行した場合にも必要となる書類です。

財産目録に定型の書式はありませんが,作成に際しては総じて以下の各点に留意することが適切です。

①財産目録作成時の留意点

1.財産の全体像を把握する

被相続人の有する財産をもれなくリストアップすることが肝要です。積極財産(プラスの財産)であるか消極財産(マイナスの財産)であるかにかかわらず,また財産の項目にかかわらず,全てを記載した財産目録を作成しましょう。

2.各財産の特定ができるよう詳細情報を記載する

それぞれの財産が具体的に特定できる必要があります。他の財産と混同しないために必要な情報を可能な限り詳細に記載しましょう。

3.評価額の算定根拠を明確にする

評価額の算定根拠は,相続人間で非常に問題になりやすい点でもあります。算定根拠を明確にすることで,信用性ある財産目録を作成しましょう。

②具体的な記載事項

財産の種類ごとに必要な記載事項は異なりますが,主な記載事項としては以下のような内容が挙げられるでしょう。

1.預貯金

a.金融機関名
b.支店名
c.口座番号
d.口座の種類(普通預金、定期預金など)
e.残高

2.不動産

a,所在地(住所)
b.地目、地積
c.登記簿謄本の内容
d.固定資産税評価額
e.登記されている抵当権やその他の権利

3.動産

a.種類(自動車、貴金属、骨董品など)
b.詳細情報(メーカー、モデル、年式など)
c.評価額

4.株式

a,銘柄名
b.証券会社名
c.保有数
d.評価額

5.保険金(解約返戻金がある場合)

a.保険会社名
b.保険契約番号
c.契約者名
d.受取人名
e.保険金額
f.解約返戻金

6.借入金

a.借入先(金融機関、個人など)
b.借入金額
c.返済状況
d.担保の有無

財産目録の具体的な作成に当たっては,相続人全員で共有したり,適宜必要な更新をしたりという方法で,正確な記載となることを心がけましょう。

相続問題に強い弁護士をお探しの方へ

相続財産調査は,全てのケースに当てはまるような方法がなく,基本的には地道に行う必要があります。
もっとも,より有効なやり方や手順はあるため,相続事件に精通した弁護士へのご相談・ご依頼を検討されると有益でしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,相続問題に精通した弁護士が迅速に対応し,円滑な解決を実現するお力添えが可能です。是非お気軽にご相談ください。

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