●性格や価値観の不一致が原因で、婚姻生活を続けられそうにない
●性格の不一致を理由に離婚請求できるか?
●性格の不一致で離婚するために重要なことは何か?
●性格の不一致で離婚する場合、慰謝料請求できるか?
という悩みはありませんか?
このページでは,性格の不一致を原因とした離婚でお困りの方に向けて,性格の不一致が離婚原因となる場合や,離婚成立のために重要な対応などを解説します。
目次
性格の不一致で離婚できる根拠
過去の統計上,離婚の理由で最も多いのは,男女ともに「性格の不一致」とされています。結婚前には分からなかった配偶者の性格が結婚後に分かり,価値観のずれなどが少しずつ重なった結果,最終的には婚姻の継続が困難であると感じるにまで至る,ということは決して珍しくありません。
性格の不一致の具体的内容としては,以下のような例が挙げられます。
性格の不一致の具体例
1.価値観の違い
親族付き合いや友人関係に対する優先順位の設け方,家庭内での各行為に対する大らかさ・神経質さ,家事の役割分担に対する考え方など,生活上の様々な局面における考え方のズレが,性格の不一致として意識される場合です。
2.金銭感覚の違い
節約志向でお金を貯めることを好むか,消費志向で自由にお金を遣うことを好むか,という感覚のズレが,性格の不一致として意識される場合です。
借金に対する心理的抵抗の有無なども影響する場合が考えられます。
3.ライフスタイルの違い
朝方の生活を好むか夜型の生活を好むか,趣味はインドアかアウトドアかなど,生活における時間の使い方のズレが,性格の不一致として意識される場合です。
4.子どもの教育方針の違い
子どもに対して厳格な教育を目指すか自由な教育を目指すか,といったズレが,性格の不一致として意識される場合です。習い事や進路についての方針を巡って,教育熱心過ぎる,または無関心過ぎるという配偶者への不満が,婚姻生活の破綻につながる可能性があります。
5.コミュニケーションスタイルの違い
外交的で頻繁な外出や人付き合いを好むか,内向的で自宅での静かな時間を好むか,というスタイルのズレが,性格の不一致として意識される場合です。また,一方が素直な感情表現を好み,もう一方が感情を表に出さない表現を好む場合なども,性格の不一致につながることが考えられます。
6.仕事に対する考え方の違い
仕事(キャリア)を重視するか,家庭生活を優先するかという考え方のズレが,性格の不一致として意識される場合です。仕事上の立場や役割に大きな差がある場合,互いの立場を想像できずズレにつながることが多い傾向にあります。
もっとも,性格の不一致は,法律上の離婚原因(=法定離婚事由)に該当するわけではありません。そのため,性格の不一致が存在する場合であっても,性格の不一致を主張するだけで離婚が認められるものではないのです。
現実に性格の不一致で離婚に至るのは,夫婦双方の合意があるためです。つまり,夫婦間で協議離婚が成立していることが,性格の不一致で離婚することのできる根拠ということになります。
性格の不一致での離婚は,まず夫婦間での協議を試みることが適切でしょう。
ポイント
性格の不一致は最も多い離婚原因
性格の不一致自体は法律上の離婚原因でないため,離婚協議を試みるのが望ましい
離婚できる場合①婚姻関係が極端に悪化した
性格の不一致は,不一致があるだけでは法律上の離婚原因には該当せず,裁判所に離婚を認めてもらうことは困難であるのが通常です。もっとも,性格の不一致が原因で法定離婚事由に該当する事態に至れば,裁判所に離婚を認めてもらうことも可能になるでしょう。
一例としては,性格の不一致がきっかけとなって夫婦の仲が極端に悪化してしまった場合が挙げられます。
性格の不一致は,多くの場合夫婦間のケンカやトラブルをもたらすことになります。金銭感覚の違いであれば,「なぜこんなものを買ったのか」「お金があるんだからいいじゃないか」というように,互いの考え方に折り合いがつかず,自分の金銭感覚をぶつけ合うケンカに至るであろうことは想像に難くありません。
このような性格の不一致による争いが日常的に起きると,やがて夫婦間で分かり合うことが難しくなり,互いに干渉すること自体がなくなっていく,というように,婚姻関係が著しく悪化してしまい,共同生活とは呼べない状況に至る場合もあります。
そうすると,もはや性格の不一致にはとどまらず,婚姻関係の継続そのものが困難な状況と言わざるを得ず,法定離婚事由である「婚姻を継続し難い重大な理由」に当たると評価されやすいでしょう。
離婚できる場合②ほかの離婚原因を引き起こした
性格の不一致がきっかけとなり,夫婦関係が悪化した結果,家庭内暴力(DV)やモラハラ,不貞行為といった他の離婚原因に発展する場合,その離婚原因を根拠に離婚が認められることが考えられます。
具体例としては,以下のようなケースが考えられます。
性格の不一致が他の離婚原因を引き起こす例
1.性格の不一致からケンカが絶えず,夫婦関係が悪化した結果,一方が不貞行為に及んだ
2.性格の不一致を指摘する配偶者の言動がエスカレートし,DVやモラハラを受けるようになった
3.性格の不一致から同居生活が困難になり,長期間の別居が継続した
性格の不一致で離婚するために重要なこと
性格の不一致を理由に離婚したい場合には,まず夫婦間での話し合いを試みることが最も重要です。
既に解説した通り,性格の不一致そのものは直接の離婚原因になることが考えにくいため,離婚に配偶者の理解が得られず,最終的に離婚裁判で決着をつけるとなった場合には,離婚が認められにくいと言わざるを得ません。そのため,互いが性格の不一致を認識し,互いのために夫婦関係を解消するべきである,と合意できるのが,最も円滑で確実な離婚の方法であるのです。
また,自分が性格の不一致に悩んでいることを配偶者が自覚していない場合,配偶者の自覚を促す効果がある点も無視できません。配偶者が性格の不一致を自覚した後,対応の改善に努めれば夫婦関係の改善に至るかもしれませんし,それでも配偶者の改善が見られず価値観のズレが拡大するようであれば,離婚原因につながる事情として評価される可能性もあります。
性格の不一致で離婚する手順
性格の不一致で離婚をする場合,手順を誤ると望ましい解決が見込まないことも少なくありません。そのため,踏むべき手順は事前に十分確認するのが適切でしょう。
具体的な手順としては,以下のような流れが有力です。
①協議の実施
協議離婚ができるのであれば,それが最も円滑であり有益な解決と言えます。協議離婚ができれば,法的に離婚原因があるかを悩む必要はなく,当事者間で条件をすり合わせるのみで足りるためです。
性格の不一致による離婚は強引にはできない,ということを踏まえ,円満な協議による離婚を目指すことから始めましょう。
手順として協議から実施することは,協議が奏功しなかった場合にも効果があり得ます。当事者間の協議の結果,性格の不一致が解消できず,婚姻関係を続けることが困難であるということが明らかになれば,後の調停や裁判で離婚が認められる可能性も高まるためです。
②別居の検討
性格の不一致による離婚の協議が奏功しない場合には,別居を検討することが有力です。
別居は,言うならば婚姻関係を事実上解消する行為であり,離婚に向けて前進するには重要な手順と言えるでしょう。
別居により,相手の配偶者にも離婚の意思の強さや性格不一致の深刻さが伝わり,離婚協議が進展する可能性もあり得るところです。
また,別居が概ね3~5年と長期に渡ってくると,長期間の別居を理由に離婚が認められることも考えられるため,別居には離婚に向けた実績の積み上げという意味合いもあるでしょう。
③調停の重要視
離婚を試みる場合,「協議→調停→裁判」という順序で手続を経る必要があるため,いきなり裁判を申し立てるのではなく,調停を申し立てなければなりません。もっとも,調停は裁判のための形式的な手続と考えるべきではなく,性格の不一致による場合は調停の重要度が大きく上がると考えるのが適切でしょう。
調停は,家庭裁判所を介した協議であり,担当の調停委員を通じて自分の意思を相手に伝えてもらいながら離婚の話し合いをすることが可能です。裁判に至ったときに希望通りにならないリスクを踏まえると,調停において調停委員や配偶者の理解を得ることは,非常に重要であると理解すべきです。
当事者間の協議が奏功しなかったとしても,調停での解決を可能な限り粘り強く試みることをお勧めします。また,配偶者にその意思を強く届けたい場合には,弁護士への依頼という手段を取ることも有力でしょう。
性格の不一致による離婚と慰謝料
性格の不一致による離婚の場合,基本的に離婚請求する方が慰謝料を請求することはできません。夫婦間の性格不一致が離婚の原因になったとしても,それは配偶者の不法行為ではなく,慰謝料を請求する根拠がないためです。もっとも,配偶者が不貞行為や家庭内暴力など,性格の不一致にとどまらない行動に出ていれば,それを根拠にした慰謝料請求はあり得るでしょう。
なお,離婚を求める方が,配偶者に対して慰謝料を含む金銭の支払いを申し出ることも考えられます。これは,「離婚に応じてくれれば金銭を支払う」という離婚の対価ともいうべき性質のものであるため,厳密には慰謝料とは異なりますが,離婚を請求する側が金銭の支払を申し出るケースもある,というのは他の離婚原因にあまりない特徴とも言えるでしょう。
離婚・男女問題に強い弁護士をお探しの方へ
性格の不一致を理由にした離婚は,最も多い離婚の類型ですが,法的にその内容が整備されているわけではありません。性格の不一致を主張したからといって希望通りの離婚ができるわけではなく,個別の内容に応じた粘り強い対応が不可欠になります。
個別具体的なケースでどのような対応を取るべきかは,弁護士による法律的な判断が望ましいため,できるだけ早期に離婚問題に精通した弁護士へご相談されることをお勧めします。
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,離婚・男女問題に精通した弁護士が迅速対応し,円滑な解決を実現するお力添えが可能です。是非お気軽にご相談ください。
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