離婚慰謝料の交渉中に弁護士へ依頼すべき場合とは?途中から依頼するメリットは?依頼の注意点は?弁護士による徹底解説

●離婚の慰謝料額の交渉中だが,今からでも弁護士に依頼するべきか?

●離婚慰謝料の交渉を弁護士に依頼するメリットは?

●離婚慰謝料の交渉中に弁護士へ依頼するときの注意点が知りたい

●離婚慰謝料の交渉を弁護士に依頼する方が得をする場合はあるか?

という悩みはありませんか?

このページでは,離婚慰謝料の交渉中に弁護士へ依頼するべきか,という点でお困りの方に向けて,弁護士に依頼すべき場合や依頼のメリット依頼時の注意点などを解説します。

離婚慰謝料の交渉中に弁護士へ依頼すべきか

離婚慰謝料の交渉中に,このまま自分で交渉を続けるべきか,弁護士に交渉を依頼すべきか,という悩みが生じることは数多くあります。弁護士に依頼をすると一定の弁護士費用が発生しますが,一方で自分で対応し続けると弁護士費用を超える不利益が生じるかもしれないと感じ,どちらにすべきか判断しかねる場合も珍しくありません。

この点,離婚慰謝料の交渉中という状況では,既にご自身である程度の交渉を行うことができている,という面があるので,弁護士に依頼すべきかどうかは個別の状況によって結論が異なるでしょう。具体的に,以下のような場合には弁護士への依頼が有益だと考えられます。

①双方の主張に開きがある場合

慰謝料の交渉に際して,双方の主張があまりに大きく開いていると,そのまま交渉を続けても合意は非常に困難です。交渉は,互いに譲歩をして双方が妥協できる水準を模索する作業ですが,主張の開きが大き過ぎると双方が妥協できる水準は存在しづらいためです。

そのため,双方の主張に大きな開きがある場合は,そのまま当事者間で交渉を継続するのではなく,弁護士に依頼して,まず客観的な評価を受けてみることをお勧めします。

離婚慰謝料について双方の主張に大きな開きが生じるケースと,それぞれの場合の進め方としては,以下のような類型が考えられます。

離婚慰謝料の主張に開きが生じるケースと解決方法

1.事実関係の理解が食い違っており,客観的証拠がある
→①双方が客観的証拠に沿った理解をした上で協議を継続する
→②相手が客観的証拠に沿った理解をしてくれない場合,調停又は訴訟に移行する

2.事実関係の理解が食い違っており,客観的証拠がない
→①双方が譲歩し,中間的な水準での解決を目指して交渉する
→②一方又は双方が譲歩できなければ,調停又は訴訟に移行する

3.事実関係の理解は一致しているが,金額の主張に開きが大きい
→①一方の主張が不合理であれば,合理的な金額への修正を目指して協議をする
→②互いに金額の主張を譲歩して,中間的な解決を目指す協議をする
→③金額の合意できる余地がなければ,調停又は訴訟に移行する

以上のように,金額の開きは一方又は双方の歩み寄りによって埋めなければ合意できませんが,主張の開きが大きいと,必要な歩み寄りも大きくなってしまうため,現実的に歩み寄りをする(又はしてもらう)ことが心理的に難しい傾向にあります。

この点,弁護士に依頼することで,心理的に難しい歩み寄りでも行った方が有益である,と分かるかもしれませんし,交渉を打ち切って離婚調停に踏み切った方が合理的である,と速やかに判断できるかもしれません。少なくとも,弁護士なしで交渉を続けるよりも早期に建設的な検討ができることは間違いないでしょう。

②弁護士依頼の経済的メリットが見込まれる場合

弁護士に依頼する場合,弁護士費用が発生する兼ね合いで,依頼する方がプラスなのか,依頼しない方がプラスなのかが明確でないことも少なくありません。
しかし,離婚慰謝料の交渉中においては,これまでの経緯や交渉の内容を踏まえて,弁護士費用が発生してもなお弁護士に依頼した方が経済的にプラスであると見通せる場合が珍しくありません。特に,双方が離婚原因の主張と希望する金額水準を具体的に示している場合には,見通しもより明確にできる可能性が高まるでしょう。

なお,離婚慰謝料の交渉で弁護士依頼のメリットが生じ得るのは,以下の通り,請求者側,被請求者側のいずれも考えられます。

離婚慰謝料の交渉で弁護士依頼の経済的メリットが生じる場合

1.自分が請求者であって,「見込まれる増額幅」が「弁護士費用」を明らかに上回る場合
→増額幅と弁護士費用の差額が経済的メリットになる

2.自分が被請求者であって,「見込まれる減額幅」が「弁護士費用」を明らかに上回る場合
→減額幅と弁護士費用の差額が経済的メリットになる

もっとも,現実の結果が事前の見通し通りにいくとは限りません。また,弁護士費用が事前の想定より大きくなってしまう場合もあり得ます。
そのため,経済的メリットに関する見通しは,ある程度幅を持った想定が望ましいでしょう。

③紛争の蒸し返しを防ぎたい場合

離婚慰謝料の交渉は,精神的苦痛に対する賠償を求めるものであることから,簡単に言えば感情的対立の意味合いがあります。そのため,一度合意をしたと思っても,後になって「やっぱり許せない」「やっぱり納得いかない」といった紛争の蒸し返しが生じやすい分野でもあります。

そのため,離婚慰謝料の内容面に争いがなく,円滑な解決が見込めそうな場合であっても,後から紛争が蒸し返されることを防ぎたい場合は,弁護士に依頼の上,紛争を蒸し返されないような書面化を尽くすのが有益でしょう。

なお,慰謝料の内容面を合意したにもかかわらず,その後に弁護士への依頼をするのでは自分で交渉した意味が無いようにも思えますが,決してそうではありません。内容の合意が済んだ状態で書面化のみ弁護士に依頼する場合,交渉をすべて依頼するよりも弁護士費用は安価になることが通常であるためです。これまでの交渉の努力は,弁護士への依頼によって無駄になってしまうわけではなく,弁護士費用の減額という形で確実なプラスになっているはずです。

ポイント 離婚慰謝料の交渉中に弁護士へ依頼すべき場合
双方の主張の開きが大きく,そのまま協議を続けてもまとまらないとき
弁護士依頼時に見込まれる増額幅又は減額幅が,弁護士費用を明らかに上回るとき
後から追加で請求などされないよう,解決内容を書面化しておきたいとき

弁護士依頼のメリット①説得的な減額交渉

離婚慰謝料の請求を受け,金額交渉中であるという場合,請求されている人が自分の力で相手に減額を納得させるのは至難の業です。なぜなら,慰謝料との関係では自分が加害者,相手が被害者である以上,加害者の立場で相手を説得することに心理的なハードルが高いためです。相手としても,加害者から減額を説得されても,聞き入れる気持ちになることすら難しいでしょう。

この点,弁護士依頼をすることで,減額交渉を行うのは代理人の弁護士になります。弁護士に加害者という立場はありませんから,減額交渉を行う心理的ハードルはありません。また,ただ闇雲に減額を求めるのでなく,減額を求める理由やその根拠を明確にすることで,減額交渉に説得力を持たせることも可能になるでしょう。

ポイント
慰謝料の被請求者(加害者)が自分で減額交渉をするのは困難
弁護士が行うことで,心理的負担なく説得力のある減額交渉ができる

弁護士依頼のメリット②主張の法的整理

離婚慰謝料の金額は,当事者間における様々な主張を総合的に考慮して決定する必要があります。また,離婚慰謝料の場合,離婚に至る経緯には色々な出来事があり,その中で互いにたくさんの言い分が生じているのが通常です。
そうすると,主張の中にはどうしても法的に意味のあるものばかりでなく,法的には意味のない,単なる感情の吐露というべきものが含まれやすくなります。離婚事件そのものが当事者間の感情的な争いでもある以上,感情が前面に出る主張がなされることもやむを得ないと言えるでしょう。

とはいえ,離婚慰謝料という法律問題においては,法的に意味のない主張を結果に反映させるのは合理的でありません。感情に身を任せた相手の主張に流されてしまっているのではないか,と感じるケースでは,離婚慰謝料の交渉中に弁護士へ依頼することのメリットがより大きくなりやすいでしょう。

ポイント
離婚慰謝料は,婚姻中の様々な出来事を総合的に考慮して金額を決める
感情的な対立の中では,法的には無意味な感情任せの主張がなされることもある

弁護士依頼のメリット③早期解決

当事者間の慰謝料交渉は,互いに日常生活の合間に行わざるを得ないため,迅速に進めることが非常に困難です。慰謝料の交渉をしている間に状況が変化すれば,その変化した状況を踏まえてまた交渉をし直さなければならないことも考えられます。そうすると,当事者間での交渉に終わりが見えず,双方にメリットのない状況が生じてしまいかねません。

この点,弁護士に依頼をすることで,離婚慰謝料の交渉を業務とする弁護士が窓口に入ることになるため,交渉の時間を確保することは容易になりやすいでしょう。また,解決に向けた進め方にも精通している弁護士であれば,解決の手続も早期に円滑に進めてくれることが期待できます。
また,一方が弁護士に依頼することは,もう一方にも弁護士依頼を促すことになりやすく,双方に代理人弁護士が入った形での解決になりやすいですが,弁護士同士であれば早期解決の可能性はより高くなるということができるでしょう。

ポイント
当事者間の交渉は時間の確保が困難
一方が弁護士に依頼すれば,もう一方が依頼する可能性も高まり,早期解決がより期待できる

弁護士依頼するときに注意すべきこと

離婚慰謝料の交渉中に弁護士へ依頼を検討する場合,弁護士費用との兼ね合いには十分な注意が望ましいでしょう。
離婚慰謝料の交渉を弁護士に依頼する基本的な目的は,慰謝料の金額を自分に有利な方向に増額又は減額する点にあります。つまり,経済的に得をするために弁護士へ依頼をするのが通常です。
一方で,弁護士に依頼すると弁護士費用が確実に発生し,それは依頼者である自分の経済的負担となります。

そのため,弁護士に依頼するということは,「経済的なメリットの獲得」を目指して「費用を負担」するというプラスマイナスの入り混じった行動である,ということになります。プラスを目指した結果,マイナスの方が明らかに大きいのでは本末転倒ですから,弁護士依頼には弁護士費用の兼ね合いを検討することが必須と言えるでしょう。

弁護士との相談に際しては,弁護士費用の見込みをどれだけ明確に案内してもらえるか,経済的なプラスマイナスの見込みをどれだけ具体的に案内してもらえるか,という点を重視することが有益です。
また,慰謝料交渉中であれば,そのまま自分で交渉を続けるという選択肢も有力であり,そのために弁護士からアドバイスをしてもらうという契約を検討することも一案です。そのような契約を弁護士が行うかは弁護士によりますが,交渉を依頼するよりもアドバイスに限った契約をする方が安価になりやすく,弁護士費用の軽減につながりやすいでしょう。

一方,経済的にプラスでなかったとしても,弁護士に手続を委ねられる,弁護士を通じてきっちりと解決できる,という点に価値を感じることができれば,それは弁護士依頼をするメリットが十分にあるということができるでしょう。負担軽減や事件解決に,弁護士費用に見合った利益がああるのであれば,それは決してマイナスではないと考えるのが適切です。

ポイント
弁護士への依頼は,弁護士費用との兼ね合いに注意すべき
自分で交渉を続ける場合,弁護士からアドバイスを受ける契約もあり得る
経済的にはプラスでなくても,任せられることの対価として釣り合っていれば依頼は有益

離婚慰謝料の交渉における弁護士費用

離婚慰謝料の交渉における主な弁護士費用は,着手金と成功報酬に分けられます。
具体的な内容は,以下の通りです。

離婚慰謝料の主な弁護士費用

着手金
→活動の着手に際して発生する費用。結果にかかわらず支払を要する

成功報酬
→弁護活動の成果に応じて発生する費用。経済的利益に応じて金額が変動する

この点,離婚慰謝料の交渉中である場合,交渉の最初から依頼する場合と比べて,特に成功報酬が低く抑えられる可能性があります。
成功報酬の基準となる経済的利益は,「弁護士の活動で得た利益」と「弁護士の活動なく得た利益」の差額と考えるのが一般的です。そのため,以下のような違いが生じる可能性があります。

経済的利益の違い

例1.慰謝料請求を最初から弁護士へ依頼し,300万円を獲得した場合
例2.慰謝料請求後,相手から100万円を提案された後弁護士へ依頼し,300万円を獲得した場合

弁護士の活動で得た利益弁護士の活動なく得た利益経済的利益
例1300万円0円300万円
例2300万円100万円200万円

経済的利益が小さければ,それだけ弁護士への成功報酬も小さくなるため,自分で交渉を尽くした後でも弁護士への依頼を行うことは積極的に検討してよいと思われます。

離婚・男女問題に強い弁護士をお探しの方へ

離婚慰謝料の交渉中は,その交渉が自分では手に負えない場合など,途中からでも弁護士に依頼すべき場合は少なくありません。
もっとも,既に協議が始まっている関係で,何となく弁護士に依頼したり,弁護士が何をしてくれるか考えずに依頼したりしても,あまりうまくいきません。
離婚慰謝料の交渉に精通した弁護士に,具体的な対応方法も含めて相談・依頼を試みることをお勧めします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,離婚・男女問題に精通した弁護士が迅速対応し,円滑な解決を実現するお力添えが可能です。是非お気軽にご相談ください。

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