●子の認知とは何か?
●子の認知が必要なのはどんな場合か?
●子が認知されるとどうなるのか?
●子の認知を請求する手続は?
●認知の請求はいつでもできるのか?
という悩みはありませんか?
このページでは,子の認知についてお困りの方に向けて,子の認知に関する制度や認知の効果,認知請求の手続などを解説します。
目次
子の認知とは
認知とは,子と父親の間に法律上の親子関係があることを認める手続をいいます。
子の立場には,大きく分けて嫡出子と非嫡出子に区別されます。
嫡出子 | 婚姻関係にある男女間に生まれた子 |
非嫡出子 | 婚姻関係にない男女間に生まれた子 |
嫡出子であれば,母親と婚姻関係にある男性が法律上の父親となりますが,非嫡出子の場合は,母親と婚姻関係にある男性がいません。そのため,法律上の親子関係がある父親が存在しないことになってしまいます。
子に法律上の父親がいないことの大きな問題点は,子の養育をする義務を負う男性が存在しないということにあります。子の生活を守るためには父親の養育費が重要になりますが,養育費は扶養の義務を負う法律上の父親にしか請求できません。そのため,法律上の父親がいない非嫡出子は,養育費が不足する恐れを抱える立場にある,ということになります。
子の認知が必要な場合
子の認知が必要になるのは,嫡出子でない(非嫡出子である)場合ということになります。
そして,2024年の民法改正後において,非嫡出子となるのは,以下のいずれかの場合と理解できます。
非嫡出子となる場合
1.懐胎時も出生時も母親が婚姻していない場合
2.離婚後300日経過後に出生した場合(出生時に再婚している場合を除く)
2024年の民法改正により,嫡出推定の規定や女性の再婚禁止期間に関する規定が見直され,嫡出推定の範囲がより明快になりました。
改正民法では,「婚姻後に生まれた子は婚姻中の夫の子である」とシンプルに推定されることとなったため,懐胎時または出生時のいずれかの時点で婚姻していれば,嫡出推定がなされることになります。場合分けをすると,以下の通り整理できます。
【出生時に婚姻中】
①懐胎時から出生時に渡って婚姻中の場合
婚姻相手である夫の子と推定される
②懐胎時は未婚,出生時には婚姻中の場合
婚姻相手である夫の子と推定される
【懐胎時に婚姻中】
③懐胎時は前夫との婚姻中,出生時は両親離婚
離婚後300日以内であれば前夫の子と推定される
離婚後300日経過後であれば非嫡出子となる(※)→非嫡出子となる場合「2」
※婚姻中の懐胎であると分かれば前夫の子と推定される
④懐胎時は前夫との婚姻中,出生時は現夫と再婚
現夫の子と推定される(※)
※推定が重複する場合,再婚後の夫の子と推定されるため。
【懐胎時も出生時も婚姻なし】
⑤懐胎時から出生時に渡って婚姻していない
非嫡出子となる →非嫡出子となる場合「1」
認知された場合の効果
認知によって父親と子との間に法律上の親子関係が生じます。法律上の親子関係が生じることによって,以下のような権利義務関係の変化や形式面の変化が生じます。
認知の効果
1.扶養義務の発生
→法律上の親子の間には,親が子を扶養する義務があるため,父親に扶養義務が発生します。扶養義務の一環として,父親には養育費の支払義務も発生します。
2.相続権の発生
→法律上の親子間には相続関係が発生します。そのため,認知した父親が死亡した場合,子は法定相続人となります。
また,子が亡くなった場合,死亡した子に子がいなければ,父親が相続人となります。
3.戸籍への記載
→父親の戸籍に,認知をした事実(認知日,子の名前,認知した子の戸籍)が記載されます。認知によって子が父親の戸籍に入るわけではありません。
4.親権への影響
→認知をしたからといて,父親が親権を有するわけではなく,非嫡出子の親権は母親が単独で持ちます。もっとも,父母の協議や調停により,認知をした父親が親権を持つことが可能です。ただし,裁判所が認知した父親への親権者変更を認めることは通常考えにくいでしょう。
認知を請求する方法
認知を請求する方法は,父親に自ら認知をするよう請求するか,裁判所に対して強制的な認知を求めるかの2つがあります。それぞれ,「任意認知」「強制認知」と呼ばれます。
認知の請求方法
1.任意認知を父親に求める
2.強制認知を求めて裁判所に調停や訴訟を提起する
①任意認知
任意認知を行う場合,父親が認知届を提出します。認知届は,父親の本籍地や住居地,又は認知される子の本籍地に当たる市区町村役場で提出が可能です。
認知届の書式は,各自治体のホームページからダウンロードができます。
認知届の記入後,父親と子どもの戸籍謄本や父親の身分証明書を添えて,市区町村へ提出すると,認知届が受理され,法的に親子関係が生じます。
認知届の提出は,基本的に父親が単独で行えますが,以下の点に注意が必要です。
任意認知の注意点
1.子が成人している場合,子の承諾が必要
2.子が胎児である場合は母の承諾が必要。提出先は母の本籍地
②強制認知
父親が認知を拒否する場合,調停又は裁判で裁判所に認知を求めることができます。
もっとも,認知の訴えは調停を経てからでないと提起ができません(調停前置主義)。そのため,まずは家庭裁判所に「認知調停」を申し立てることが必要です。
認知調停においては,裁判所が仲介する形で親子関係の合意を目指します。当事者間で合意ができ,裁判所も合意が相当と認めた場合,合意に相当する審判が行われ,認知が認められます。
認知調停で合意に至らない場合には,「認知の訴え」を提起することが可能です。これは,認知を強制するかどうか裁判所の判断を仰ぐ手続です。
認知の訴えに際しては,以下の点に留意しましょう。
認知の訴えに関する留意点
1.権利者
認知の訴えにおける提訴権者は,子,子の直系卑属とこれらの法定代理人です。
2.期間制限
父又は母の死亡の日から3年が経過すると,認知の訴えは提起できなくなります。
なお,父親の死後に認知を行うことを死後認知と言います。死後認知は,非嫡出子に父親からの相続をさせる目的で行われることが一般的です。
ポイント
任意認知は父親が単独で役場に対して行う(子が成人や胎児の場合に注意)
強制認知は,まず認知調停の申立てを行う
強制認知が調停で解決しない場合,認知の訴えを提起する
認知前の養育費が請求できるか
【養育費の支払期間(始期)】
養育費の支払いは,請求時から発生するという理解が通常です。養育費を請求する調停等でも,請求前の養育費を含んだ支払が命じられるのでなく,請求した月からの支払となるのが通常です。
これは,親の子に対する扶養の義務は,具体的に請求や協議をしない限り抽象的な義務にとどまり,具体的な権利義務が発生していないため,と理解されています。
【認知の効力】
法律上,認知の効力は出生の時にさかのぼって生じるものとされています。そのため,認知された子は生まれたときから認知された父親との親子関係があったことになります。
【問題点】
養育費の請求は認知されてからでないと行うことができないため,出生から養育費の請求までにはどうしても期間が生じます。それにもかかわらず,養育費の支払を出生時からでなく請求時からしか認めないのは適切なのか,というのがここでの問題意識となります。
【考え方】
この点,裁判例では,認知が出生の時にさかのぼって効力を生じることを根拠に,養育費の支払義務も出生時にさかのぼって生じると判断したものがあります。
もっとも,これは決して一般的なものではなく,個別のケースで不公平が生じないように行った判断である,という理解が適切でしょう。
裁判例などを踏まえると,認知前の養育費が請求できるかどうかは,以下のような事情を考慮して判断されると思われます。
認知前の養育費が請求できるかの判断要素
1.支払を命じなければ不公平であること
→父親の不在により生活が困窮している場合など
2.支払を命じることが義務者にとって酷でないこと
→養育の必要性を事前に把握していた場合など
3.それまで請求しなかったことに合理的な理由があること
→速やかに認知を請求し,認知後速やかに養育費を請求した場合など
離婚・男女問題に強い弁護士をお探しの方へ
子の認知は,主に子の父親へ養育費を請求するために必要な手続ですが,両親間・親子間の関係や状況によっても手続選択が異なるため,弁護士への依頼なく十分な対応をすることは容易でありません。
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,離婚・男女問題に精通した弁護士が迅速対応し,円滑な解決を実現するお力添えが可能です。是非お気軽にご相談ください。
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