親権と監護権の違いは?離婚原因を作った場合でも親権者になれる?離婚後に親権・監護権を変更できる?親権と監護権の基礎

●親権とは何か?監護権とは何か?

●親権者が決まらないと離婚はどうなるのか?

●親権と監護権を分けるのはどんな場合か?

●親権や監護権はどうやって決めるのか?

●親権者になるための条件は何か?

●離婚の原因が自分に合っても親権者になれるか?

●親権者を後から変更することは可能か?

という悩みはありませんか?

このページでは,離婚時の親権・監護権についてお困りの方に向けて,親権や監護権の内容親権者の決定方法や親権者になる条件などを解説します。

親権とは

親権とは,子の利益を守るために親が持つ権利と義務のことを指します。子どもを保護し,成長させていくという親の義務を果たすため,親には以下のような親権が認められています。

親権の種類

1.身上監護権

監護教育権子の日常生活や教育,養育に関する権利と義務です。子の生活環境を整え,健康を保ち,教育を受けさせることが含まれます。
居所指定権子がどこで生活するかを決定する権利です。
懲戒権必要に応じて子を適切にしつける権利です。ただし,虐待にならないよう注意が必要です。
職業許可権子が職業を選び,就労することを許可する権利です。

2.財産管理権

包括的な財産管理子が持つ財産を管理し,その運用を行う権利と義務です。子名義の預金や財産を適切に管理し,必要に応じて使うことが求められます。
法律行為の代理権子が法律行為を行う際に,親権者が代理人として行う権利です。未成年者は法的に完全な能力を持たないため,親権者が代わりに契約を結ぶなどの行為を行います。
法律行為の同意権子の法律行為が有効となるには,原則として親権者の同意が必要となります。子の法律行為を有効とするかどうかを決する権利が,親権者の同意権です。

監護権とは

監護権とは,子の身の回りの世話や教育,生活指導など,日常的な育児に関する権利と義務を指します。親権のうち「身上監護権」を指して「監護権」と呼ぶのが通常です。監護権は,親が子どもを世話し教育するための権利義務,と位置付けることができるでしょう。

監護権の主な内容は,以下の通りです。

監護権の内容

1.生活の監督
子の日常生活の管理,食事,衣服の選択,健康管理などを行います。
子が適切な生活習慣を身につけるように指導します。

2.教育の指導
子が学校教育を受けるようにし,必要に応じて家庭内での学習を支援します。
習い事や塾などの課外活動の選択と支援も含まれます。

3.健康管理
病気やけがの際には医療機関を受診させ,健康を維持するための対応を行います。

4.日常生活の世話
入浴,歯磨き,衣服の着替えなど,子の日常的な身の回りの世話を行います。

5.精神的な支援
子の精神的な発達を支援し,安心して生活できる環境を提供します。

監護権は親権の一部であるため,原則として親権者が行使するものです。しかしながら,親権者が子どもを監護できない場合や,子の福祉のために親権者でない方が監護をするのが適切である場合は,親権者と監護権者を別々にすることも可能です。

親権者と監護権者を別々にする場合の一例
長期海外出張などのため,親権者が子の世話や教育をできない
・母に財産管理を任せられないが,子が幼いため監護権者は母の方が適切である

親権者を決めないと離婚できない

親権者を定めることは離婚の条件であるため,親権者を決めずに離婚することはできません。財産分与などとは異なり,離婚後に別途請求するということは不可能です。

離婚時に親権者を決めることが求められる理由としては,以下のような点が挙げられます。

1.子の最善の利益
子の生活や教育,福祉を守るために,離婚後も安定した監護環境が必要です。親権者が明確であることで,子の権利と利益が保護されます。

2.離婚届の作成・提出
未成年の子がいる場合,離婚届に親権者を記載することが求められています。親権者を決めずに離婚届を提出することはできません。

3.行政手続
離婚後の子の住民票や各種手続きにおいて,親権者が明確であることが必要です。これにより,教育や医療などの重要な決定を迅速に行うことができます。

親権や監護権を決める方法

親権や監護権は,離婚に際して決定するものであり,親権に関しては離婚の際に決めなければならないため,親権や監護権を決める方法は,離婚の方法と同様になるのが通常です。具体的には,①協議,②調停,③裁判という3つのステップになります。

親権・監護権を決める方法

1.協議
夫婦が話し合いで親権者を決めるのが一般的です。話し合いが成立すれば,その結果を離婚届に記載します。

2.調停・審判
夫婦間で親権者が決まらない場合,家庭裁判所で調停を行います。調停委員が間に入って,双方の意見を聞きながら解決を目指します。
調停の期日は,概ね月1回前後のペースで5回前後行われる例が多いようです。
調停が不成立の場合には,家庭裁判所が審判を行って親権者を判断することもあります。

3.裁判
調停では親権者が決まらなかった場合,離婚裁判を提起して,裁判官の法的な判断を求めることが考えられます。

親権者になる条件

両親のどちらを親権者とするかは,子の利益を最優先に考え,子の生活環境,教育,福祉を守る観点から適性を判断することになります。具体的な条件としては,以下のような点が挙げられます。

親権者となるための主な条件

1.子の福祉
子の健康,教育,生活の質など,全体的な福祉が優先されます。親権者は子の最善の利益を最優先に考えることが求められます。

2.育児能力
子の世話や教育を適切に行う能力があることが重要です。これには,子に対する愛情や理解,教育方針などが含まれます。

3.経済的安定性
子の生活を支えるための経済的な安定が必要です。親権者は,子の基本的な生活費,教育費,医療費などを負担できる経済力を持つことが求められます。

4.住環境
子が安全で健全な環境で生活できることが必要です。適切な住居,衛生的な環境,子にとって安心できる住まいが求められます。

5.精神的安定
親権者は,精神的に安定しており,子に対して一貫した愛情とサポートを提供できることが重要です。精神的に不安定な状態では,子の発育に悪影響を与える可能性があります。

6.親子関係
親と子の関係が良好であることが重視されます。特に,子が現在どちらの親と生活しているか,子の意思や希望も考慮されます。

7.子の意思
一定の年齢以上の子の場合,子自身の意思や希望も考慮されます。家庭裁判所が関与する場合,子の意見を聞くための面談を行うことがあります。

8.監護実績
過去の監護実績も重要です。離婚前に主にどちらの親が子の世話をしていたかが考慮されます。継続性が重視されるため,現在の監護環境が良好であれば,そのまま維持される可能性が高いです。

9.親の健康状態
親自身の健康状態も考慮されます。病気や障害などがある場合,その親が子の監護を適切に行えるかが評価されます。

10.親の人格や行動
親の人格や行動も評価の対象となります。例えば,暴力や虐待の履歴がある場合,その親が親権者となることは難しいでしょう。

有責配偶者が親権者になれるか

一方が有責配偶者であることは,親権者とすべきでないという事情にはならないのが通常です。有責であるかという点と子のために有益かという点は,直ちには関係しないためです。

もっとも,離婚原因が子の養育に影響を及ぼす内容である場合には,親権者となるための大きな障害になることも考えられます。具体的には,以下のようなケースが挙げられます。

有責配偶者が親権者になりづらい場合
1.不貞相手を優先するあまり育児をないがしろにしている
2.ネグレクト(育児放棄)や虐待が離婚原因である場合
3.自ら別居を選択し,子と一緒にいない場合

親権者・監護権者を後から変更する方法

親権者や監護権者は,事情が変更した場合には後から変更をすることも可能です。もっとも,子の福祉を最優先に判断されなければならないため,事情の変更を前提に家庭裁判所へ調停を申し立て,調停での合意又は審判での親権変更を獲得することが必要となります。

親権者や監護権者の変更が認められるためには,以下のような事情の変更が必要になりやすいでしょう。

親権者・監護権者変更の条件

1.子の利益が損なわれている
現在の親権又は監護権の行使が子の利益を損なうものである場合です。

2.適切な監護が期待できない
虐待,ネグレクト,経済的な困窮,病気など,子の世話が十分にできない状況にある場合です。

3.子が意思を表明している
子が親権者や監護権者の変更を希望している場合です。一定の年齢以上であれば,子の意思や希望も重要な判断要素になります。

4.環境の変化
子の置かれる状況が著しく変化し,子にとって有益でない生活環境になってしまった場合です。親権者や監護権者が再婚し,再婚相手と子との関係が良好でないケースなどが挙げられます。

なお,親権が変更された後は,速やかに市区町村役場に届け出の上,住民票等への反映を行う必要があります。新たな親権者にて責任を持って行うことが必要です。

離婚の親権・監護権問題に強い弁護士をお探しの方へ

親権・監護権は,離婚時に協議することが不可欠の問題であり,子の将来にとっては極めて重要な問題でもあります。
そのため,親権・監護権に関する問題点を十分に踏まえた上で適切な対応を行うべきですが,法的な判断も必要なところなので,離婚問題に精通した弁護士へのご相談が望ましいでしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,離婚・男女問題に精通した弁護士が迅速対応し,円滑な解決を実現するお力添えが可能です。是非お気軽にご相談ください。

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