住宅ローンがある場合の離婚で注意すべき点は?住み続ける場合はどうすべき?安易に売却するのはNG?弁護士が解説

●離婚の際,ローンの残った自宅はどうすべきか?

●離婚時に残った住宅ローンはどうなるか?

●住宅ローン問題を解決するために必要な調査は?

●オーバーローンの場合にはどうすべきか?

●アンダーローンの場合はどうすべきか?

●家に住み続ける場合の注意点は?

●家を売却する場合の注意点は?

という悩みはありませんか?

このページでは,離婚時の住宅ローンについてお困りの方に向けて,住宅ローンについて取り得る方法や,方法ごとの注意点などを解説します。

住宅や住宅ローンは財産分与の対象

離婚の際には財産分与が必要になります。財産分与とは,離婚の際,夫婦が共同生活の中で築いた財産を分配することをいいます。財産分与の対象としては,金銭や預金,動産,不動産といったプラスの財産のほか,住宅ローンのようなマイナスの財産も含まれます。

そのため,住宅ローンの残った自宅のある場合,離婚時の財産分与において,以下のような点を検討する必要があるでしょう。

住宅ローンのある財産分与時の主な検討事項
住宅を売却して換価するか,誰かが居住し続けるか
住宅の評価額住宅ローンの残債を上回っているか
居住し続ける場合,残った住宅ローンを誰が支払うのか
居住し続ける場合の住宅は誰の名義にするのか
など

住宅ローンについて必要な調査

住宅ローンが問題になる場合,まずは住宅及び住宅ローンに関する調査を行い,実態を確認することが必要になります。具体的には,以下のような調査が適切です。

①不動産の名義

土地及び建物が誰の名義になっているか,という点です。土地と建物が同一の所有者になっているか,所有名義が別々であるかという点も,その後に影響を及ぼす可能性が非常に高いところです。
例えば,別人の土地を借りて住宅を建てている場合であれば,土地の利用に関する契約がなされているはずです。財産分与に際して決定した住宅の管理・処分の方法が,土地所有者との契約に反する内容となっている場合,実現できない可能性も否定できません。

②担保の有無

住宅ローンが残っている場合,土地や建物に抵当権等の担保権が設定されていることが通常です。住宅ローンを支払う見込みがなくなった場合,ローン会社が不動産を処分して金銭を回収することができるようにするためのもので,ローン会社が大金を貸し出すための重要なリスク回避手段でもあります。
また,他に金銭を借り受ける際,同様に不動産に抵当権を設定し,借り入れている可能性もあります。この場合,ローン会社の次順位の抵当権者になっていることが見込まれますが,次順位の権利者も不動産を強制的に換価することが可能な立場です。その債権者への支払が滞った場合,財産分与で住宅の居住を続けることになっても,結果的に住宅を失いかねないことになります。

どの不動産に,誰が債権者となっている抵当権が設定されているのか,十分に確認しましょう。

③不動産の時価額

不動産を売却するかどうか,ローン残債との金額差はどのくらいか,という点の確認や検討には,不動産の現在価額の確認が不可欠です。時価額がいくらであるかによって,不動産の取り扱いが変化することも決して珍しくありません。
住宅ローンがある場合の財産分与においては,極力速やかに不動産業者へ査定を依頼するのが有益です。

④住宅ローンの内容

住宅ローンの債務者が誰であるか,という点は確認が重要なポイントになります。
多くの場合は,以下のいずれかのパターンになりやすいでしょう。

住宅ローンの債務者パターン
1.一方が債務者(契約者),他方が連帯保証人
2.一方が債務者(契約者),他方は関わっていない(保証会社の利用など)
3.夫婦ともに債務者(連帯債務

⑤住宅ローンの残額

住宅ローンが小さければ,不動産を売却することで利益が発生し,その財産を分け合う余地が生まれます。一方で,住宅ローンが不動産価額より大きい場合,仮に不動産を売却してもローンが残るため,誰かがローンの支払を継続しなければなりません。

このように,住宅ローン残額によって,住宅の取り扱いに関する検討が大きく変化することになるため,住宅ローンの残債務額は非常に重要な確認事項となります。

オーバーローンの場合の対応方法

オーバーローンとは
→ローンの残債が不動産の現在価額を上回ってしまっている状態

オーバーローンでは,不動産を売却してもローンが残ってしまうだけであり,負債を誰かが負担するほかなくなってしまうため,売却はあまり合理的な方法になりません。
そのため,夫婦の一方が居住を続け,いずれかがローンを支払い続けるという形が一般的でしょう。

アンダーローンの場合の対応方法

アンダーローンとは
→ローンの残債が不動産の現在価額を下回っている状態

アンダーローンの場合,不動産の売却によって利益が生じるため,不動産を換価してローン残債の支払に充てた上で,残額を財産分与の対象として分割する方法が最も端的でしょう。金銭にするのが,夫婦間での分割が最も容易であるためです。

一方,居住を続ける場合には,残った財産をどのように分割するのか,ローンの負担をどうするのか,所有名義をどうするのか,といった複数の点を具体的に検討し,解消する必要があるでしょう。

居住し続ける場合の注意点

不動産に居住し続ける場合,ローンの返済や名義,不動産の価値を財産分与する方法などについて十分な検討が必要になります。

①ローンの返済について

ローンの返済は,不動産やローン契約の名義人である方が行い続けるのが最も端的でしょう。そのため,夫名義なのであれば,夫が支払い続ける前提で,住宅には夫が居住し続けるというのが円滑であろうと思われます。

ただし,この場合,妻も連帯保証や連帯債務という形でローンの負担をしている可能性があり,金融機関との関係では妻も支払の責任を変わらず負い続けることになります。
この点の問題を払拭するためには,別途金融機関と交渉の上,妻を債務者や保証人の立場から外すことに了承してもらうことが必要になりますが,現実的には難しいことが多いでしょう。そもそも,ローン契約の段階では,夫婦ともに債務者又は保証人となることで初めてローンに値する信用があると評価してもらえたためです。後から妻の信用だけを失った状態で,ローンは維持する,ということに金融機関が了承する可能性は低いのが一般的でしょう。

②ローンの名義について

金融機関との関係では,ローンの名義人が返済を続ける必要があり,夫婦で取り決めて勝手に名義を変更することはできません。金融機関は,その名義人の経済力や信用を判断してローンを組んでいるのであり,債務者が誰でもいいとは考えていないためです。

そのため,名義は変更しないことを前提に,現実の金銭負担は誰がどのように行うのか,支払はどうやって行うのか,という点を,具体的に調整することが必要になるでしょう。

現実に見られる解決方法としては,ローンは名義人である夫が支払い続け,住宅には妻が居住する,という合意をする代わりに,養育費などの支払はその分減額又は免除する,という形でバランスを取ることが考えられます。もっとも,夫によるローンの支払が滞ってしまうと,妻が住宅からの立ち退きを求められる,という妻にとって不安定な状況ではあるため,担保の確保など,ローンの支払を確実にする方法は検討が望ましいでしょう。

③不動産価値の財産分与について

アンダーローン(ローン残債が不動産の価値を下回る場合)には,不動産自体にプラスの財産的価値が存在することになるため,その部分が財産分与の対象になります。例えば,夫がローン残債を100万円上回る価額の不動産に居住し続ける場合,夫は100万円分の財産を得ていることになるため,別途妻が100万円の財産分与を受けなければ不公平となるわけです。

もっとも,ローンの支払に関して一方の固有財産を充てている場合もあります。夫が結婚前に築いた財産で返済をした時期がある,どちらかの相続財産から支払った部分がある,という場合が一例です。
このような場合には,純粋なローン残債と不動産価額との差額のみでなく,ローンの返済にどれだけ固有財産が充てられたかを踏まえて,固有財産が配偶者に渡らないような公平分配が必要になるところです。

ポイント 住宅に住み続ける場合
金融機関との関係では夫婦ともにローンの返済をする立場であることに注意
ローンの名義を勝手に変えることは困難
アンダーローンの場合,住み続ける人が住宅の価値相当額を別途財産分与する必要

売却する場合の注意点

住宅ローンの問題は,対象となる住宅を売却して,金銭に換価することで解決する場合が多く見られますが,この売却には以下のような注意点があることを踏まえておきたいところです。

①換価までに時間がかかること

住宅は非常に高価であるため,簡単に買い手が決まるわけではありません。また,買い手が決まった後にも,契約手続や登記の問題,買い手がローンを利用するのであればその金融機関との調整など,時間を要する処理が多数あります。

具体的には,売却を試みてから現実に金銭を取得するまで,概ね半年前後,ケースにより1年近い期間を要する場合も見られるところです。この期間中は,当然ながらローンの返済継続が必要であり,財産分与をすべて完了することができないことになります。

②具体的な金額が事前には分からないこと

不動産の価額は,事前に評価額の算定を依頼することで把握するのが一般的ですが,現実に受領できる金額が事前の想定と一致するとは限りません。不動産価格そのものが時期によって変動し得る上,売却に際して発生する各種の費用がかさむことも考えられます。

住宅を売却する場合の金額は,あくまで目安であることを踏まえた上で,住宅の売却益に頼った財産分与の検討を避けるようにするのが得策でしょう。

離婚・男女問題に強い弁護士をお探しの方へ

離婚時の住宅ローンは,金額的にも大きくなりやすく,住環境に直結する点で適切な対応ができなかった場合の不利益が大きくなりやすいものです。
住宅ローンの問題が伴う離婚の場合は,弁護士を通じてきちんとした取り決めを行い,後々の生活に支障が生じないようにすべきでしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,離婚・男女問題に精通した弁護士が迅速対応し,円滑な解決を実現するお力添えが可能です。是非お気軽にご相談ください。

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