離婚慰謝料を請求された場合の対処法とは?最初に確認すべきことから支払の減額方法,回避方法まで弁護士が完全網羅

●離婚の慰謝料を請求されたらどうすればいいか?

●離婚後でも慰謝料を支払う義務はあるのか?

●離婚慰謝料の減額ができるのはどんなケースか?

●離婚慰謝料の支払が必要ない場合は?

●離婚慰謝料を支払うのが難しい場合はどうすべきか?

という悩みはありませんか?

このページでは,離婚の慰謝料を請求された場合の対応でお困りの方に向けて,離婚の慰謝料を請求された場合の対処減額したり支払を断ったりなど有利に進められる場合などについて解説します。

離婚慰謝料を請求されたら

離婚に伴って慰謝料を請求された場合,まずはその内容を無視しないことが重要な対応です。

相手に弁護士が入っていれば,弁護士から内容証明郵便という郵便が到着するのが一般的であり,弁護士が入っていなければ,相手方から口頭やメールなどの方法で要求を突き付けられることが多いでしょう。
それらの内容としては,慰謝料を請求する根拠や金額,支払方法が含まれているはずであるため,まずは請求内容を正確に確認することに努めてください。
請求を受けたという事実に驚き,パニックになってしまいがちですが,請求内容を把握できなければ対応の出発点に立つことができません。とにかく冷静になり,内容を整理しましょう。

なお,慰謝料を請求される立場であることに心当たりがある場合は,相手の請求を放置してしまうと具体的な不利益につながる可能性もあります。
有責配偶者でありながら,相手方の請求を放置するということは,自身の責任を果たす意思がないという評価につながりかねません。将来的に調停や訴訟へ発展した場合,この点は裁判所にとって無視できない事情となることが多く見られます。場合によっては,請求を放置したことによって更に相手の精神的苦痛が拡大したとして,慰謝料を増額させられる根拠になる可能性すらあります。
慰謝料の請求を受けることに心当たりがある場合は,決して請求を放置しないようにしましょう。

ポイント
まずは請求内容を正確に確認
慰謝料の請求に心当たりがある場合は放置しない

離婚後でも慰謝料を支払う必要があるか

離婚慰謝料の請求は,離婚が成立した後になされる場合もあります。離婚が成立し,ようやく生活が落ち着いてきたという段階で,唐突に慰謝料請求を受けることもあり得ます。

この点,離婚が成立したからといって離婚の慰謝料を支払う義務が消滅するわけではないので,慰謝料を支払うべき立場にあれば,離婚後でも支払は必要です。ただし,相手の請求権について消滅時効が完成していれば,支払は不要となります。具体的には,離婚の慰謝料の場合,原則として離婚の日から3年で消滅時効が完成します。離婚後の場合,まずは消滅時効との関係を確認するのが有益でしょう。

離婚慰謝料の請求を受けた際に確認すべきこと

離婚慰謝料を請求された場合,以下の各点を検討するのが適切です。

1.相手が請求の根拠とする事実は存在するか

慰謝料の請求を受ける場合,その原因となる自分の落ち度や違法行為が指摘されているはずです。慰謝料は,その落ち度や違法行為に対して,責任を取るための支払として求められています。

そのため,まずは相手が請求の根拠としている自分の行為が実際に存在するのか,正しく確認しましょう。もし相手が主張する内容が事実無根である場合,金額交渉の問題ではなく相手の請求を拒否するべきことになります。

2.相手の請求根拠と離婚原因に関係はあるか

離婚の慰謝料は,有責配偶者の行為によって離婚に至ったことを根拠に請求されるものです。そのため,自分の行為と離婚原因との間に因果関係がなければ,どれだけ相手の主張する自分の行為が事実であったとしても,離婚の慰謝料が発生することはありません。

例えば,家計を相手がすべて握っていたにもかかわらず,いわゆる経済的DV(家庭にお金を入れないことによる経済的支配)を主張されている場合,相手の主張する細かい事実関係(小さな買い物を断ったことがある等)がどれだけ真実であっても,離婚原因が経済的DVである可能性は考え難いでしょう。この場合には,少なくとも経済的DVを理由とする離婚慰謝料は発生しないことになります。

3.支払うべき場合,請求金額は合理的か

自分が慰謝料を支払うべき立場にある場合,すぐに支払をして解決を急ぎたくなりますが,一定の慰謝料を支払うべきだからといって,その金額が相手の請求金額であるべきだとは限りません。相手の請求内容を確認し,請求金額が合理的かどうか,慎重に確認しましょう。

もっとも,請求金額を見て,それが合理的か判断することは容易ではありません。金額面の検討を必要とする場合には,弁護士へのご相談やご依頼を検討することをお勧めいたします。弁護士に依頼することで,金額の合理性を正しく判断できるとともに,金額交渉を要する場合のやり取りも弁護士に委ねることができます。

ポイント 請求を受けた際の確認事項
事実無根ではないか
実際の離婚原因と無関係でないか
支払うべき場合,金額は妥当か

慰謝料の減額ができるケース

離婚慰謝料は,当事者間又は代理人間で金額交渉を行うことが多数見られます。この点,慰謝料の交渉で減額を目指す場合,減額の求めに根拠があるか,減額して合意することのメリットが相手にあるか,という点は重要な要素になるでしょう。以下では,減額に至る場合の事情として実際に現れることのある内容を紹介します。

①実質的に支払済みである部分が含まれる場合

確かに慰謝料を支払うべき立場であるものの,その責任について事前に一定の支払を行っている場合,今後支払う金額を減少させる要素として考慮することがあります。

例えば,婚姻期間中に不貞行為が発覚した後,不貞行為に対する謝罪として一定の金銭が支払われている場合などが挙げられます。この場合,離婚の慰謝料と重なり合う名目での支払が既に行われているため,重ねて離婚慰謝料を満額支払わせることは二重払いになり不適切と考えられます。

このように,実質的に支払済みの部分が含まれている場合には,慰謝料の減額理由となり得るでしょう。

②相手方にも落ち度がある場合

離婚原因のメインが自分にあった場合でも,一部は相手にも落ち度があった,という場合は考えられます。

例えば,ケンカの絶えない夫婦の間で,夫が妻に手を挙げてしまい,多数の暴言を浴びせてしまったケースにおいて,妻も手を出したり暴言を吐いていたりした場合が考えられます。ケンカの中では,互いに不適切な言動がなされるはずであり,夫が傷つけた面も妻が傷つけた側面もあるのが通常です。そのような場合に,落ち度の全てを夫に押し付ける形での解決は適切ではありません。仮に妻の落ち度が2割あるのであれば,2割分は夫が妻から損害を被っているのであり,慰謝料も2割の減額とするのが合理的でしょう。

このように,一方のみの落ち度とは言えない場合,双方の落ち度を踏まえた減額が考えられます。

③相手の請求が高額であることに根拠がない場合

相手方の請求金額が高額である場合,その金額が適切であることの根拠がなければ,高額請求は相手方の独自の主張に過ぎません。もちろん,裁判を行っても認められるわけではないので,請求を受けた方が受け入れない限りは,請求額を改めることが必要になります。

相手の請求額が過大でないかは,弁護士に相談するなどして十分吟味することをお勧めします。

ポイント 慰謝料の減額
既に同じ趣旨の支払をしたことがある場合
離婚の原因が一部相手にもある場合
高額請求に法的根拠がない場合

慰謝料の支払が必要ないケース

場合によっては,慰謝料の支払自体が不要な場合もあり得ます。代表的な例としては,以下の場合が挙げられます。

①相手の主張する事実関係に証拠がない場合

裁判を行った場合,相手が離婚に至った落ち度として主張する事実は,それが立証されなければないものとして扱われます。そのため,相手の主張が真実でない場合はもちろん,真実であることを裏付ける証拠が一切存在し得ない場合,慰謝料の支払義務そのものが発生しないことが考えられます。

相手の主張内容に無理があり,証拠が示せる余地のない場合には,慰謝料の支払自体が不要になる可能性も視野に入れることが有力です。

ただし,相手の主張は事実だが証拠に乏しいだけ,という場合には,裁判所の判断によっては相手の主張が認められる可能性が否定できない点に注意を要するでしょう。裁判における裁判所の判断は,客観的証拠のほか,主張の内容や合理性など,全ての事情を総合的に考慮して行われます。そのため,相手の言い分が真実であろうと思われる場合には,明確な証拠がなくても相手の言い分を認める可能性があるのです。

もっとも,主張を裏付ける証拠の有無は,非常に重要な要素になることが間違いないため,意識しておくべきところでしょう。

②消滅時効が完成している場合

相手の請求権について消滅時効が完成している場合,消滅時効を援用することで慰謝料の支払いを回避することが可能です。離婚の慰謝料の場合,一般的に離婚の日から3年が経過した段階で消滅時効が完成することになります。

ただし,消滅時効が完成した後,自分に支払義務があることを認める行動を取ると,時効が援用できなくなる可能性があるため注意が必要です。具体的には,一部の支払を行ったり,支払義務を前提とした金額交渉を試みたり,という行動が挙げられます。

離婚から期間の空いた請求の場合は,時効についても検討することが有益です。

支払能力がない場合の対応方法

減額交渉が奏功しなかった場合や,減額できてもその全てを即時に支払えない場合には,支払能力がないことを踏まえた対応が必要になります。具体的には,以下のような手段が挙げられます。

1.分割の交渉

分割払いとする交渉です。多くの場合,月々の支払金額を定めて合意し,支払い続ける限りは分割での支払を許す,という内容とすることになります。
ただし,支払を一定回数怠ると,分割は許されず一括払いを強制する,という内容を加えることが一般的です。分割の支払ができることを前提に合意すべきでしょう。

2.再度の減額交渉

支払能力を具体的に相手へ伝えた上で,改めて減額交渉を試みる手段も考えられます。
こちらの支払能力に限りがあれば,相手が支払能力を超える金銭を得る手段はないため,仮に減額を断ったとしても金銭を獲得できないことに変わりありません。また,交渉を断って訴訟に踏み切ったとしても,財産がなければ金銭が回収できずに終わってしまいます。

そこで,こちらに支払能力がないと相手が理解すれば,その支払能力の限りで最大の支払を行う内容の示談に応じてもらえる可能性が生じます。
この場合は,財産がどの程度あるのか,月々の生活費はどのように工面しているかなど,可能な限り具体的な経済状況を伝え,相手目線で回収できる財産に乏しい,と把握してもらうことを目指すのが重要な動きになります。

離婚・男女問題に強い弁護士をお探しの方へ

離婚の慰謝料請求は,離婚の前後いずれもなされる可能性があり,予期することが困難でもあるため,事前の対処は難しい場合が多いです。
しかも,弁護士を通じて請求される場合も多く,十分な検討をしないまま相手方の要求に応じてしまうと,必要以上の不利益を被ることにつながります。
離婚の慰謝料請求を受けた場合は,離婚の慰謝料問題に強い弁護士へのご相談をお勧めします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,離婚・男女問題に精通した弁護士が迅速対応し,円滑な解決を実現するお力添えが可能です。是非お気軽にご相談ください。

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