離婚の慰謝料とは何のお金?どんな時に離婚慰謝料がもらえる?金額や請求方法は?注意すべき期限も

●離婚に際して慰謝料を請求したい

●離婚の慰謝料は何のお金なのか?

●女性だと慰謝料がもらえる?

●慰謝料の相場は?

●慰謝料額はどんな事情で決まるのか?

●慰謝料請求の手順は?

●慰謝料請求の期間制限は?

という悩みはありませんか?

このページでは,離婚の慰謝料を請求したいとお考えの方に向けて,離婚慰謝料の意味や金額判断基準や請求手続などを解説します。

離婚の慰謝料とは

慰謝料とは,精神的苦痛に対する賠償をいいます。加害者が被害者に対して精神的苦痛を与えた場合,その苦痛を金銭換算したものが慰謝料です。
離婚の慰謝料は,離婚によって配偶者の一方に生じる精神的苦痛を金銭換算し,もう一方が支払うというものになります。

もっとも,離婚の慰謝料は全ての離婚について支払われるものではありません。一方の配偶者がもう一方の配偶者に精神的苦痛を与えたことが前提となるため,離婚原因が一方配偶者の責任であることが必要です。不貞行為が代表的ですが,一方が有責配偶者である場合に,有責配偶者が他方の配偶者に支払うものが離婚の慰謝料となります。

離婚慰謝料が請求できる場合

離婚慰謝料の請求ができるのは,一方が有責配偶者である場合でした。この点,一方の配偶者が有責となる場合としては,具体的には以下のようなケースが挙げられます。

①不貞行為

いわゆる浮気や不倫です。一方の配偶者が不貞行為に及んだ場合,これが原因で離婚に及ぶことが多数見られますが,この場合には不貞行為に及んだ配偶者が有責となります。

なお,この不貞行為は性交渉があった場合にしか該当しないのが通常です。キスをした,手をつないだ,抱き合ったというのみで不貞行為に該当することは考えづらいでしょう。
また,裁判実務では,性交渉があったことが明白な場合のほか,「性交渉があったと推認できるに至る充分な状況」が認められた場合にも不貞行為の存在を認めています。代表例としては,ラブホテルに入った後相当時間出てこなかった場合があげられるでしょう。そのような状況下では,通常は性交渉があったと理解するほかないためですね。

②悪意の遺棄

夫婦の間には,同居義務,協力義務,扶助義務といった義務があります。互いにこれらの義務を守ることで,夫婦関係を維持・継続することが期待されているのです。
悪意の遺棄とは,正当な理由なくこれらの夫婦間の義務を果たさないことをいいます。

例えば,一方的に家を出てしまい帰ってこない,配偶者を家から閉め出してしまう,生活費の負担を全くしない,配偶者を同居できない状況に追い込んでしまう,といった行為が,悪意の遺棄に該当することとなります。
悪意の遺棄は,法定離婚事由であるとともに,悪意の遺棄に及んだ一方配偶者が有責となる根拠でもあります。

③家庭内暴力(DV)

殴る,蹴るなど,配偶者に身体的なダメージを負わせる行為を指します。

④経済的支配(経済的DV)

生活費を渡さずに配偶者の生活手段を奪い,配偶者を経済的に支配する行為を指します。

⑤モラハラ(精神的DV)

罵声を浴びせ続けて精神的に疲弊させたり,仕事や外出を禁止することで相手を社会的に孤立させたりする場合,身体的なダメージがなくても家庭内暴力に準じて扱う余地が生じます。精神面に対する暴力であるため,俗にモラハラと呼ばれますが,これを行った場合も有責配偶者に該当します。

⑥性交渉の拒否・異常性癖等

配偶者が一方的に性交渉を拒否する場合,夫婦関係が保てなくなった原因となれば拒否し続けた配偶者が有責となることが考えられます。また,配偶者が耐えられないようなないようの性行為を強要する異常性癖や,配偶者が対応しきれないほど過剰に性行為を求め続ける場合も,同様に有責配偶者となる可能性が高くなります。

⑦女性であることを理由とした請求の可否

離婚の慰謝料は,女性が男性に請求する例が多いというイメージがあるためか,女性であることを理由に離婚慰謝料を請求できないか,という問題意識を持つ人が散見されますが,女性であることを理由とした離婚慰謝料の請求はできません
女性であることを理由に離婚慰謝料が請求できるとなると,他方の配偶者は男性であるから有責配偶者である,ということになってしまいますが,これが不合理であることは明らかです。逆に,女性であっても有責配偶者であれば逆に離婚慰謝料を支払うべき立場になるのもまた当然のことです。

慰謝料の請求が困難な場合

慰謝料の請求が困難な場合としては,以下のようなケースが挙げられます。

①配偶者が有責でない(配偶者への請求が困難な場合)

配偶者に対する慰謝料の請求は,その配偶者が有責であることを根拠に認められるものです。そのため,配偶者が有責でなければ,慰謝料の請求は困難ということになります。具体的には,以下のような例が挙げられます。

1.性格の不一致
→離婚の理由として代表的ですが,これはどちらかが有責というわけではないため,慰謝料請求が困難です。

2.親族間の不仲
→嫁姑問題に代表されるように,親族間の不仲が原因の場合には,配偶者を有責とすることは難しく,離婚慰謝料は発生しづらいところです。

もっとも,親族間の不仲に配偶者が関与している場合には,慰謝料請求ができる場合もあり得るでしょう。具体的には,嫁姑問題において,配偶者である夫が一方的に姑の肩を持ったり,不仲になるような行動を助長したりする場合などが考えられます。

3.自身が有責配偶者である
→自分のみが有責配偶者であれば,相手が有責である可能性はなく,慰謝料請求は困難です。

②不貞相手に落ち度がない(不貞相手への請求が困難な場合)

客観的には不貞行為がなされていたとしても,その不貞行為に関して不貞相手に落ち度がなければ,不貞相手への慰謝料請求は困難になります。具体的には以下のような場合が挙げられます。

1.配偶者が既婚者であることを秘していた
→配偶者が不貞行為に及ぶ際,不貞相手には自分が独身であるかのように偽っていることがあります。この場合,不貞相手としては,相手が独身であるから男女関係を築き性行為に至ったのであって,相手が既婚者であると知らなかった以上は不貞行為をしたという認識自体がありません。
そのため,配偶者が既婚者であることを秘して性交渉した場合,不貞相手には不貞行為に関する落ち度がないと言わざるを得ず,不貞相手への慰謝料請求は困難です

2.既に婚姻関係が破綻していた
→不貞相手が不貞行為に関して責任を負うのは,不貞行為が夫婦関係を破壊するものであるためです。不貞相手は不貞行為によって夫婦関係に傷をつけるため,その傷によって精神的苦痛を受けた他方配偶者に慰謝料を支払う義務を負う,という関係に立ちます。
つまり,不貞相手は,既婚者との性交渉によってその配偶者との夫婦関係に傷をつけるのでなければ,落ち度がないということになります。

そのため,不貞行為の前にもともと婚姻関係が破綻していた場合には不貞相手への請求は困難と言わざるを得ません。典型例としては,長期間の別居が継続しており,夫婦生活が既に継続されていない状態での不貞行為などが挙げられます。

3.性交渉に同意していなかった
配偶者が他者と性交渉したとしても,その相手が配偶者との性交渉に同意していなかった場合,形式的には不貞行為に当たり得ますが,不貞相手の落ち度はありません。そのため,この場合も不貞相手への慰謝料請求は困難です。

むしろ,この場合は不貞相手というより被害者であり,同意なく性行為をしてきた有責配偶者に対して別途慰謝料を請求できる立場の人物だと言えます。

離婚慰謝料の相場

離婚慰謝料の金額は,過去のケースを踏まえると100万円~300万円ほどとなる場合が多く見られます。もっとも,これはあくまで目安と考えるのが適切でしょう。

離婚慰謝料の金額は,様々な事情を総合考慮して判断されますが,主な考慮要素としては,以下のようなものが挙げられます。

【離婚原因】
離婚原因が請求者により大きなダメージを与える内容であるほど,金額は大きくなる傾向にあります。

【婚姻期間】
婚姻期間が長いほど,婚姻関係を破壊した責任が重いと評価され,金額は大きくなる傾向にあります。

【子の有無】
子がいる場合,子の生活にも重大な影響を及ぼした点を踏まえ,金額は大きくなる傾向にあります。

【請求者の受けた損害】
慰謝料を請求するほうの配偶者が,有責配偶者の行為によって心身に支障を来すほどの損害を被っていた場合,損害の大きさを踏まえて金額は大きくなる傾向にあります。

【双方の経済状況】
請求者側に経済力がなく,有責配偶者の経済力に依存しているような関係である場合,請求者の今後の生活への配慮も兼ねて金額は大きくなる傾向にあります。

慰謝料の請求方法

慰謝料の請求方法は,大きく分けると交渉するか法的手続を取るかの2通りです。そして,法的手続としては,調停と訴訟の2つがあります。
そのため,請求の具体的方法としては,以下の3通りが挙げられます。

慰謝料を請求する具体的方法
1.交渉(相手から任意に支払ってもらう)
2.調停(合意した結果に基づいて強制的に支払わせる)
3.訴訟(判決の結果に基づいて強制的に支払わせる)

また,請求方法の検討手順としては,以下の流れが一般的でしょう。

請求方法の検討手順
1.まずは交渉が可能か
2.交渉が困難な場合,調停と訴訟の選択
3.調停と訴訟の選択をする場合の判断要素は,以下のものが代表的

・話し合いを希望する場合は調停,裁判所の判決を希望する場合は訴訟
・できるだけ短期で解決したい場合は調停,長期化を辞さない場合は訴訟
・不成立に終わるリスクを抱えるのが調停,必ず結論が出るのが訴訟

交渉で金銭が回収できれば,法的手続を行う負担が回避できるため,最も有益であることがほとんどです。その手続負担は,相手方にとっても同じく発生するものであるので,相手方も負担を避けたいという意欲が強ければ,交渉で終了することは十分考えられるでしょう。
やむを得ず法的手続が必要である場合には,裁判所を仲介して話し合う「調停」か,裁判所が公権的に判断を下す「裁判」のいずれかを選択することになります。調停と訴訟は,どちらかを優先して選択する関係にはないため,それぞれの利点を踏まえて方法選択することが適切でしょう。

ポイント
慰謝料の請求方法は,交渉・調停・訴訟
交渉で請求できるならば,交渉を選択するのが通常は有益
交渉が不可能な場合は,調停か訴訟のいずれかを選択する

慰謝料の請求期限

離婚に関する慰謝料の請求期限は,損害及び加害者を知ってから3年という期間制限があります。不貞行為に対する慰謝料の場合,不貞の事実と不貞相手を知った時期から3年が経過すると,時効により慰謝料請求ができない可能性が非常に高くなるでしょう。

また,離婚そのものに対する慰謝料は,離婚の日から3年が期間制限になります。

離婚・男女問題に強い弁護士をお探しの方へ

離婚の慰謝料は,離婚に至ったことについて責任を負う側への正当な請求であり,請求する立場の方は,自身の精神的苦痛への対価として,適正な金額を受領すべきものと言えます。
もっとも,当事者間での請求は感情的なトラブルにも発展しやすく,離婚の慰謝料問題に精通した弁護士へのご相談・ご依頼が適切でしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,離婚・男女問題に精通した弁護士が迅速対応し,円滑な解決を実現するお力添えが可能です。是非お気軽にご相談ください。

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