●内臓の後遺障害等級にはどのようなものがあるか?
●内臓の後遺障害等級の判断基準は?
●内臓の後遺障害等級を獲得するにはどうすればいいか?
●内臓の後遺障害等級が認定された場合の賠償はどうなるか?
●内臓の後遺障害は弁護士に依頼すべきか?
という悩みはありませんか?
このページでは,内臓に関する後遺障害等級の内容や判断基準,内臓の後遺障害等級が認定された場合の賠償額などについて解説します。
目次
内臓の後遺障害等級
内臓の後遺障害は,基本的に「胸腹部臓器の機能障害」に関する等級の問題となります。
その後遺障害等級の種類は以下の通りです。
等級 | 基準 |
要介護1級2号 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
要介護2級2号 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
3級4号 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
5級3号 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
7級5号 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
9級11号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当程度に制限されるもの |
11級10号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
13級11号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの |
個別の臓器について,どのような基準を満たせばどのような等級に該当するかは,それぞれ定められているため,以下詳細を解説します。
後遺障害等級の判断基準(呼吸器)
肺などの呼吸器に関する後遺障害等級については,以下の3種類の検査方法による測定値を基準とするのが通常です。
【呼吸機能に関する検査】
①動脈酸素分圧と動脈炭酸ガス分圧の検査
②スパイロメトリーの検査+呼吸困難の程度
③運動負荷試験
原則として①の検査結果を基準にしますが,②③の検査結果による等級が①による等級よりも上位の場合,上位の等級が認定されます。
①動脈酸素分圧と動脈炭酸ガス分圧の検査
動脈から血を採取し,酸素や二酸化炭素のガス濃度を測定する検査です。
動脈血酸素分圧が低いほど,酸素の濃度が低く,障害が重大であることを意味します。
動脈酸素分圧ごとの後遺障害等級
【動脈酸素分圧50Torr以下の場合の等級】
等級 | 基準 |
要介護1級2号 | 呼吸機能の低下により常時介護が必要なもの |
要介護2級2号 | 呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの |
3級4号 | 上記のいずれにも該当しないもの |
【動脈酸素分圧50Torr~60Torrの場合の等級】
等級 | 基準 |
要介護1級2号 | 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外(※)+呼吸機能の低下により常時介護が必要なもの |
要介護2級2号 | 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外+呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの |
3級4号 | 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外+上記のいずれにも該当しないもの |
5級3号 | 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲内のもの |
(※)動脈炭酸ガス分圧の限界値範囲は,37Torr~43Torrの間にあることを指します。限界値範囲外の場合,肺の換気機能に異常の生じていることが見込まれます。
【動脈酸素分圧60Torr~70Torrの場合の等級】
等級 | 基準 |
7級5号 | 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外 |
9級11号 | 上記の基準に該当しないもの |
【動脈酸素分圧70Torrを超える場合の等級】
等級 | 基準 |
11級10号 | 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にないもの |
要介護の基準
「常時介護が必要なもの」とは
=生活全般において介護が必要な状態にあること
「随時介護が必要なもの」とは
=日常生活の一部の動作について介護や看視,声かけが必要な状態のこと
②スパイロメトリーの検査+呼吸困難の程度
スパイロメトリーとは,肺活量などを測定する検査です。
具体的には,以下の検査の結果を基準に後遺障害等級認定がなされます。
「%1秒量」
=最初の1秒間に吐き出した空気量
「%肺活量」
=平均的な肺活量と比べて何%の肺活量があるか
これらの検査結果と呼吸困難の程度の組み合わせにより,後遺障害等級が区別されます。
等級と認定基準一覧
【%1秒量35以下又は%肺活量40以下の場合】
①呼吸困難が高度
等級 | 基準 |
要介護1級2号 | 呼吸機能の低下により常時介護が必要なもの |
要介護2級2号 | 呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの |
3級4号 | 上記のいずれにも該当しないもの |
②呼吸困難が中等度
等級 | 基準 |
7級5号 | 中等度の呼吸困難が認められるもの |
③呼吸困難が軽度
等級 | 基準 |
11級10号 | 軽度の呼吸困難が認められるもの |
【%1秒量35~55又は%肺活量40~60の場合】
①呼吸困難が高度又は中等度
等級 | 基準 |
7級5号 | 中高度または中等度の呼吸困難が認められるもの |
②呼吸困難が軽度
等級 | 基準 |
11級10号 | 軽度の呼吸困難が認められるもの |
【%1秒量55~70又は%肺活量60~80の場合】
等級 | 基準 |
11級10号 | 高度、中等度または軽度の呼吸困難が認められるもの |
呼吸困難の程度に関する判断基準
高度 | 呼吸困難のため、連続しておおむね100m以上歩けないもの |
中等度 | 呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同じように歩けないが、自分のペースでなら1km程度の歩行ができるもの |
軽度 | 呼吸困難のため、健常者と同じようには階段の昇降ができないもの |
③運動負荷試験
運動負荷試験とは
=実際に運動をして心肺機能を確認する検査
(例)一定時間の歩行試験等
他の検査では後遺障害等級に該当しないものの,呼吸機能低下や呼吸困難があり,運動負荷試験の結果で明らかに呼吸機能障害があると認められる場合,11級10号の認定可能性があります。
もっとも,運動負荷試験での等級認定は,他の検査では後遺障害等級に該当しない場合のものであるため,認定は容易でない傾向にあります。主治医等による医学的意見やその根拠をより積極的に示すことが望ましいでしょう。
後遺障害等級の判断基準(循環器)
主に心臓の機能に障害が生じた場合,後遺障害等級認定の可能性が生じます。
具体的な機能障害としては,以下の内容が挙げられます。
循環器の機能障害
①心機能が低下したもの
②除細動器又はペースメーカーを植え込んだもの
③房室弁又は大動脈弁を置換したもの
④大動脈に解離を残すもの
①心機能が低下したもの
等級 | 基準 |
9級11号 | 心機能の低下による運動耐容能の低下が中程度であるもの |
11級10号 | 心機能の低下による運動耐容能の低下が軽度であるもの |
「運動耐容能」とは
=運動の負荷に耐えることのできる能力をいい,どの程度の運動強度に耐えられるかによって区別をします。
運動・作業強度の指標には「METs」(メッツ)という単位を用い,この値が大きいほど運動強度が大きいものとなります。
「運動耐容能の低下が中程度であるもの」とは(9級)
=おおむね6METs(メッツ)を超える強度の身体活動が制限されるもの
(例)
平地を健康な人と同じ速度で歩くのは差し支えないものの、平地を急いで歩く、平地を健康な人と同じ程度で階段を上るという身体活動が制限されるもの
「運動耐容能の低下が軽度であるもの」とは(11級)
=おおむね8METs(メッツ)を超える強度の身体活動が制限されるもの
(例)
平地で急いで歩く、健康な人と同じ速度で階段を上るという身体活動に支障がないものの、それ以上に激しいか、急激な身体活動が制限されるもの
②除細動器又はペースメーカーを植え込んだもの
等級 | 基準 |
7級5号 | 除細動器を植え込んだもの |
9級11号 | ペースメーカーを植え込んだもの |
③房室弁又は大動脈弁を置換したもの
人工弁に置換する手術を行った場合,後遺障害等級に該当します。
等級 | 基準 |
9級11号 | 継続的に抗凝血薬療法を行うもの |
11級10号 | 上記に該当しないもの |
④大動脈に解離を残すもの
大動脈は,心臓から出た血液が通る人体の中で最も太い血管ですが,その大動脈に亀裂が入った結果,血管壁の内膜が裂けてしまった状態を大動脈解離と言います。
大動脈解離が起きると,血管が裂けたことで新しい血管の通り道(偽腔)が生まれますが,偽腔の血流が止まっていない状態を「偽腔開存型」と言います。
等級 | 基準 |
11級10号 | 偽腔開存型の解離を残すもの |
後遺障害等級の判断基準(腹部臓器)
腹部臓器は多数ありますが,臓器ごとにその機能低下の程度に応じた等級認定の可能性があります。
①食道の障害
等級 | 基準 |
9級11号 | 食道の狭さくによる通過障害を残すもの |
以下のいずれにも該当する場合を指します。
「食道の狭さくによる通過障害を残すもの」とは
1.通過障害の自覚症状があること
2.消化管造影検査により,食道の狭さくによる造影剤のうっ滞が認められること
②胃の障害
等級 | 基準 |
7級5号 | 消化吸収障害、ダンピング症候群、胃切除術後逆流性食道炎のいずれもが認められるもの |
9級11号 | 消化吸収障害及びダンピング症候群が認められるもの 消化吸収障害及び胃切除術後逆流性食道炎が認められるもの |
11級10号 | 消化吸収障害、ダンピング症候群、胃切除術後逆流性食道炎のいずれかが認められるもの |
13級11号 | 噴門部または幽門部を含む胃の一部を亡失したもの |
「消化吸収障害」とは
以下のいずれかに該当するもの
1.胃の全部を亡失したこと
2.噴門部または幽門部を含む胃の一部を亡失し、低体重等(※)が認められること
(※)①BMI20以下又は②事故前からBMI20以下の場合は体重が10%以上減少
「ダンピング症候群」とは
以下のいずれにも該当するもの
1.胃の全部または幽門部を含む胃の一部を亡失した
2.早期ダンピング症候群に起因する症状(※)または晩期ダンピング症候群に起因する症状(※※)が認められること
(※)食後30分以内に出現するめまい,起立不能等
(※※)食後2時間後から3時間後に出現する全身脱力感,めまい等
「胃切除術後逆流性食道炎」とは
以下のいずれにも該当するもの
1.胃の全部又は噴門部を含む胃の一部を亡失したこと
2.胃切除術後逆流性食道炎に起因する自覚症状(胸焼け,胸痛,嚥下困難等)があること
3.内視鏡検査により食道にの胃切除術後逆流性食道炎に起因する所見(びらん,潰瘍等)が認められること
③小腸の障害
小腸を大量に切除したもの
等級 | 基準 |
9級11号 | 残存する空腸および回腸の長さが100センチメートル以下となったもの |
11級10号 | 残存する空腸および回腸の長さが100センチメートルを超え300センチメートル未満であり,消化吸収障害(低体重等)が認められるもの |
人工肛門を造設したもの
等級 | 基準 |
5級3号 | 小腸内容が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんが生じ,パウチなどの装着ができないもの |
7級5号 | 人工肛門を造設したうち,上記に該当しないもの |
小腸皮膚瘻を残すもの
等級 | 基準 |
5級3号 | 瘻孔から小腸内容の全部または大部分が漏出し,小腸皮膚瘻周辺に著しいびらんが生じ、パウチなどの装着ができないもの(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの) |
7級5号 | 瘻孔から小腸内容の全部または大部分が漏出するが,5級3号(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)に該当しないもの 瘻孔から漏出する小腸内容がおおむね1日100ミリリットル以上で,パウチなどによる維持管理が困難であるもの |
9級11号 | 瘻孔から漏出する小腸内容がおおむね1日100ミリリットル以上だが,7級5号(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)に該当しないもの |
11級10号 | 瘻孔から少量ではあるが明らかに小腸内容が漏出する程度のもの |
小腸の狭さくを残すもの
等級 | 基準 |
11級10号 | 小腸に狭さくを残すもの |
「小腸に狭さくを残すもの」とは
次のいずれにも該当するもの
1.1か月に1回程度,腹痛,腹部膨満感,嘔気,嘔吐などの症状が認められること
2.単純エックス線像においてケルクリングひだ像が認められること
④大腸の障害
大腸を大量に切除したもの
等級 | 基準 |
11級10号 | 結腸のすべてを切除するなど大腸のほとんどを切除したもの |
人工肛門を造設したもの
等級 | 基準 |
5級3号 | 大腸内容が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんが生じ,パウチなどの装着ができないもの |
7級5号 | 人工肛門を造設したうち,上記に該当しないもの |
大腸皮膚瘻を残すもの
等級 | 基準 |
5級3号 | 瘻孔から大腸内容の全部または大部分が漏出し,大腸皮膚瘻周辺に著しいびらんが生じ、パウチなどの装着ができないもの(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの) |
7級5号 | 瘻孔から大腸内容の全部または大部分が漏出するが,5級3号(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)に該当しないもの 瘻孔から漏出する大腸内容がおおむね1日100ミリリットル以上で,パウチなどによる維持管理が困難であるもの |
9級11号 | 瘻孔から漏出する大腸内容がおおむね1日100ミリリットル以上だが,7級5号(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)に該当しないもの |
11級10号 | 瘻孔から少量ではあるが明らかに大腸内容が漏出する程度のもの |
大腸の狭さくを残すもの
等級 | 基準 |
11級10号 | 大腸に狭さくを残すもの |
「大腸に狭さくを残すもの」とは
=次のいずれにも該当するもの
1.1か月に1回程度,腹痛,腹部膨満感などの症状が認められること
2.単純エックス線像において貯留した大量のガスにより結腸膨起像が相当区間認められること
便秘を残すもの
等級 | 基準 |
9級11号 | 用手摘便を要すると認められるもの |
11級10号 | 上記の基準に該当しないもの |
便秘とは
=次のいずれにも該当するもの
1.排便反射を支配する神経の損傷がMRIやCTなどにより確認できること
2.排便回数が週2回以下の頻度であって,恒常的に硬便であると認められること
便失禁を残すもの
等級 | 基準 |
7級5号 | 完全便失禁を残すもの |
9級11号 | 常時おむつの装着が必要であるが,7級5号の基準に該当しないもの |
11級10号 | 常時おむつの装着が必要ではないものの,明らかに便失禁があると認められるもの |
⑤肝臓の障害
等級 | 基準 |
9級11号 | 肝硬変 (ウイルスの持続感染が認められ,かつ,AST・ALTが持続的に低値であるものに限る) |
11級10号 | 慢性肝炎 (ウイルスの持続感染が認められ,かつ,AST・ALTが持続的に低値であるものに限る) |
⑥胆のうの障害
等級 | 基準 |
13級11号 | 胆のうを失ったもの |
⑦すい臓の障害
等級 | 基準 |
9級11号 | 外分泌機能の障害と内分泌機能の障害の両方が認められるもの |
11級10号 | 外分泌機能の障害と内分泌機能の障害のいずれかが認められるもの |
12級13号 | 軽微な膵液瘻を残したために皮膚に疼痛等が生じるもの(局部の神経症状) |
14級9号 | 軽微な膵液瘻を残したために皮膚に疼痛等が生じるもの(局部の神経症状) |
外分泌機能:膵液(消化液)を腸に送り出す機能
「外分泌機能の障害」とは
次のいずれにも該当するもの
1.上腹部痛,脂肪便,頻回の下痢などの外分泌機能の低下による症状が認められること
2.BT-PABA(PFD)試験で異常低値(70%未満)を示すこと
3.ふん便中キモトリプシン活性で異常低値(24U/g未満)を示すこと
4.アミラーゼまたはエラスターゼの異常低値を認めるもの
内分泌機能:ホルモンを血液中に送り出す機能
「内分泌機能の障害」とは
次のいずれにも該当するもの
1.異なる日に行った経口糖負荷試験で境界型または糖尿病型であることが2回以上確認されること
2.空腹時血漿中のC-ペプチド(CPR)が0.5ng/ml以下(インスリン異常低値)であること
3.Ⅱ型糖尿病に該当しないこと
⑧ひ臓の障害
等級 | 基準 |
13級11号 | ひ臓を失ったもの |
⑨腹部臓器周辺のヘルニア
腹壁瘢痕ヘルニア,腹壁ヘルニア,鼠径ヘルニア又は内ヘルニアを残す場合,以下の後遺障害等級認定が考えられます。
もっとも,手術を行うことが通常であり,通常は多くは手術によりヘルニア内容の脱出は認めなくなることから,手術を試みたものの完治できない場合などが対象となります。
等級 | 基準 |
9級11号 | 常時ヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるもの 立位をしたときにヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるもの |
11級10号 | 重激な業務に従事した場合など腹圧が強くかかるときにヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるもの |
後遺障害等級の判断基準(泌尿器)
①腎臓の障害
腎臓に関する後遺障害の等級は,以下の2点を踏まえて判断されます。
腎臓の後遺障害等級認定 基準となる要素
1.腎臓を失ったかどうか
2.GFR値(腎臓が血液をろ過して尿を作った量の値)
具体的な等級及び基準
【一側の腎臓を失ったもの】
等級 | 基準 |
7級5号 | GFR値が30ml/分を超え50ml/分以下のもの |
9級11号 | GFR値が50ml/分を超え70ml/分以下のもの |
11級10号 | GFR値が70ml/分を超え90ml/分以下のもの |
13級11号 | GFR値が90ml/分を超えるもの |
【腎臓を失っていないもの】
等級 | 基準 |
9級11号 | GFR値が30ml/分を超え50ml/分以下のもの |
11級10号 | GFR値が50ml/分を超え70ml/分以下のもの |
13級11号 | GFR値が70ml/分を超え90ml/分以下のもの |
②尿管,膀胱及び尿道の障害
尿路変向術を行ったもの
等級 | 基準 |
5級3号 | 非尿禁制型尿路変向術を行ったもので,尿が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ,パッド等の装着ができないもの |
7級5号 | 非尿禁制型尿路変向術を行ったもので上記に該当しないもの 禁制型尿リザボアの術式を行ったもの |
9級11号 | 尿禁制型尿路変向術(禁制型尿リザボアおよび外尿道口形成術を除く)を行ったもの |
11級10号 | 外尿道口形成術を行ったもの 尿道カテーテルを留置したもの |
排尿障害を残すもの
等級 | 基準 |
9級11号 | 膀胱の機能障害により残尿が100ミリリットル以上であるもの |
11級10号 | 膀胱の機能障害により残尿が50ミリリットル以上100ミリリットル未満であるもの 尿道狭さくのため糸状ブジーを必要とするもの |
14級 | 尿道狭さくのため,「シャリエ式」尿道ブジー第20番が辛うじて通り、時々拡張術を行う必要があるもの |
畜尿障害を残すもの
等級 | 基準 |
7級5号 | 持続性尿失禁を残すもの 切迫性尿失禁および腹圧性尿失禁のため,終日パッド等を装着し,かつパッドをしばしば交換しなければならないもの |
9級11号 | 切迫性尿失禁および腹圧性尿失禁のため,常時パッド等を装着しなければならないが、パッドの交換までは要しないもの |
11級10号 | 切迫性尿失禁および腹圧性尿失禁のため,常時パッド等の装着は要しないが、下着が少しぬれるもの 頻尿を残すもの |
「頻尿」とは
次のいずれにも該当するもの
1.器質的病変による膀胱容量の減少または膀胱・尿道の支配神経の損傷が認められること
2.日中8回以上の排尿が認められること
3.多飲などの他の原因が認められないこと
後遺障害等級の判断基準(生殖器)
①生殖機能を完全に喪失したもの
等級 | 基準 |
7級13号 | 両側の睾丸を失ったもの |
7級 | 【男性】 常態として精液中に精子が存在しないもの 【女性】 両側の卵巣を失ったもの 常態として卵子が形成されないもの |
②生殖機能に著しい障害を残すもの
等級 | 基準 |
9級17号 | 【男性】 陰茎の大部分を欠損したもの 勃起障害を残すもの 射精障害を残すもの 【女性】 膣口狭さくを残すもの 両側の卵巣に閉塞・癒着を残すもの(※) 頸管に閉塞を残すもの(※) 子宮を失ったもの(※) |
「陰茎の大部分を欠損したもの」とは
陰茎を膣に挿入することができないと認められるもの
「勃起障害を残すもの」とは
以下のいずれかに該当するもの
1.夜間睡眠時に十分な勃起が認められないことがリジスキャンによる夜間陰茎勃起検査により証明されること
2.支配神経の損傷など,勃起障害の原因となりうる所見が,神経系検査か血管系検査のいずれかにより認められること
「射精障害を残すもの」とは
次のいずれかに該当するもの
1.尿道または射精管が断裂していること
2.両側の下腹神経の断裂により当該神経の機能が失われていること
3.膀胱頚部の機能が失われていること
「膣口狭さくを残すもの」とは
陰茎を膣に挿入することができないと認められるもの
③生殖機能に障害を残すもの
等級 | 基準 |
11級10号 | 狭骨盤または比較的狭骨盤が認められるもの |
産科的真結合線が10.5cm未満または入口部横径が11.5cm未満のもの が該当する
④生殖機能に軽微な障害を残すもの
等級 | 基準 |
13級 | 【男性】 一側の睾丸を失ったもの(睾丸の亡失に準ずべき程度の萎縮を含む) 【女性】 一個の卵巣を失ったもの |
後遺障害に対する損害賠償額
後遺障害等級が認定された場合,主に後遺障害に対する慰謝料及び逸失利益が発生します。
もっとも,その金額は一律ではなく,計算基準や計算方法によって大きく異なります。保険会社は,弁護士がいない場合には自賠責基準を念頭に金額提示を行い,弁護士が入った場合には裁判基準を念頭に計算するのが通常です。
ここでは,弁護士の有無による損害賠償額の差異に関する一例として,以下のケースを題材に各基準の計算を紹介します。
【ケース】
症状固定時40歳,年収500万円,「胸部臓器の機能に障害を残し,労務の遂行に相当な程度の支障があるもの」11級10号認定
①自賠責基準
①後遺障害慰謝料
=136万円
②後遺障害逸失利益
=195万円
③合計
=331万円
②裁判基準
①後遺障害慰謝料
=420万円
②後遺障害逸失利益
=500万円×20%×18.3270(27年ライプ)
=18,327,000円
③合計
=22,527,000円
③差額
22,527,000円-331万円
=19,217,000円(約6.8倍)
あくまで単純計算の結果であるため,現実にこの金額が受領できるかは別問題ですが,少なくとも弁護士への依頼によって大きく増額する余地のあることが分かります。
内臓の後遺障害は弁護士に依頼すべきか
内臓の後遺障害は,臓器の数,認定基準の数ともに非常に膨大であり,専門の弁護士等でないと個別の事例に該当する後遺障害等級や認定基準を正確に把握することが容易ではありません。しかしながら,適切な等級認定を受けるためには,認定基準の正確な把握が不可欠であり,制度の理解を欠いたまま手続を進めてしまうと,取り返しのつかない不利益につながる可能性が否定できません。
内臓の後遺障害が生じる交通事故は,それ自体,規模の大きな事故である場合が多く,賠償金額の交渉という局面でも弁護士が役割を発揮しやすい傾向にあります。十分な賠償を受けるため,内臓の後遺障害に関しては弁護士への依頼をお勧めします。
内臓の後遺障害に強い弁護士をお探しの方へ
内臓に関する後遺障害は,介護を要するほどに重大なものも多く,今後の生活に大きな不安をお持ちの方も少なくないと思います。
将来の生活を守るためにも,十分な後遺障害等級認定と損害賠償を獲得する必要がありますので,その手段として弁護士への相談やご依頼は積極的にご検討されることをお勧めします。
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