口の後遺障害にはどんなものがある?物が噛めなくなったら?発声が難しくなったら?歯を失ったら?弁護士が徹底解説

●口の後遺障害にはどのようなものがあるか?

●口の後遺障害の判断基準は?

●そしゃく機能の程度はどのように決まるのか?

●後遺障害等級が認定された場合にはいくら請求できるか?

●口の後遺障害については弁護士に依頼すべきか?

という悩みはありませんか?

このページでは,口の後遺障害についてお困りの方に向けて,口の後遺障害等級として問題になる項目やその判断基準口の後遺障害等級が認定された場合の請求内容などを解説します。

口に関する後遺障害の種類

口に関する後遺障害には,以下の種類があります。

そしゃく機能障害口を開けたり物を噛んだりする能力に制限が生じる後遺障害
言語機能障害発声できる音に制限が生じる後遺障害
歯牙障害歯が欠損したことに関する後遺障害
味覚障害味覚を感じられなくなったことに関する後遺障害

後遺障害等級の判断基準(そしゃく障害)

①認定基準

【そしゃくと言語の両方に障害がある場合】

等級基準
1級2号そしゃく及び言語の機能を廃したもの
4級2号そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの
9級6号そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの

【そしゃく又は言語の一方に障害がある場合】

等級基準
3級2号そしゃく又は言語の機能を廃したもの
6級2号そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの
10級3号そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの

②そしゃく機能の判断方法

そしゃく機能の障害については,以下の点を基準に総合的に判断します。

上下咬合咬合(こうごう かみ合わせの意)のズレなど
排列状態歯並びのズレや不足など
下顎の開閉運動歯をかみしめることができる程度など

これらの判断に当たっては,以下のような点を考慮します。

そしゃく機能の判断要素
画像所見(他覚的所見)があること
・他覚的所見と対応するそしゃく状況があること

そしゃく状況に関しては,「そしゃく状況報告書」を踏まえた判断が一般的です。そしゃく状況報告書とは,被害者やその家族が,食べられる食材の内容や程度を記載するものです。

③各基準の具体的内容

「そしゃく機能を廃したもの」
=流動食以外は摂取できないもの

「そしゃく機能に著しい障害を残すもの」
=粥食又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないもの

「そしゃく機能に障害を残すもの」
=以下のいずれかの場合
①固形食物の中にそしゃくができないものがあること(※)
②そしゃくが十分にできないものがあり,そのことが医学的に確認できる場合(※※)

(※)ごはん,煮魚,ハム等はそしゃくできるが,たくあん,らっきょう,ピーナッツ等の一定の固さの食物中にそしゃくできないものがあるなど
(※※)不正咬合,顎関節の障害,開口障害など,そしゃくできないものがあることの原因が医学的に確認できる場合

後遺障害等級の判断基準(言語障害)

①認定基準

【そしゃくと言語の両方に障害がある場合】

等級基準
1級2号そしゃく及び言語の機能を廃したもの
4級2号そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの
9級6号そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの

【そしゃく又は言語の一方に障害がある場合】

等級基準
3級2号そしゃく又は言語の機能を廃したもの
6級2号そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの
10級3号そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの

②言語機能の判断方法

言語機能の障害は,語音(特に子音)の発音にどの程度の制限が生じたかを基準に判断されます。

子音は,以下の4種類に分けることができます。

子音の4種類
口唇音(ま行音,ぱ行音,ば行音,わ行音,ふ)
歯舌音(な行音,た行音,だ行音,ら行音,さ行音,しゅ,し,ざ行音,じゅ)
口蓋音(か行音,が行音,や行音,ひ,にゅ,ぎゅ,ん)
喉頭音(は行音)

これら4種類の子音それぞれについて,発音不能なものがあるか,何種類あるか,といった点を踏まえ,言語機能の障害の程度を判断します。

③各基準の具体的内容

「言語の機能を廃したもの」
=4種の語音(口唇音,歯舌音,口蓋音,喉頭音)のうち,3種以上の発音不能のもの

「言語の機能に著しい障害を残すもの」
=4種の語音のうち,2種の発音不能のもの又は綴音機能(語音を一定の順序に連結すること)に障害があるため,言語のみを用いては意思を疎通することができないもの

「言語の機能に障害を残すもの」
4種の語音のうち,1種の発音不能のもの

後遺障害等級の判断基準(歯牙障害)

①認定基準

等級基準
10級4号14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
11級4号10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
12級3号7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
13級4号5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
14級2号3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

②歯牙障害の判断方法

歯牙障害は,歯科補綴を加えた歯の数によって等級が認定されます。

「歯科補綴を加えたもの」とは
=現実に喪失又は著しく欠損した歯牙に対する補綴

「著しく欠損した」とは
歯冠部(歯肉より露出している部分)の体積の4分の3以上を欠損したもの

「補綴」とは
歯が喪失したり欠損したりしたところを,クラウン(歯全体を覆う被せ物)や入れ歯などの人工物で補うこと

【留意事項】
①認定対象になる歯の条件
→認定対象となる歯は,永久歯を指します。乳歯や含まれず,いわゆる親知らずも含まれません。ただし,乳歯が欠損したことで永久歯の萌出が見込めない場合は含まれます。

②喪失した歯の数より補綴した義歯の数が多い場合
→喪失した歯牙が大きい場合や歯間が広かった場合など,喪失した歯の数よりも多くの補綴を要した場合,等級の認定は喪失した歯の数によって判断されます。

(例)4本を喪失したが,5本の補綴をした場合,4本の歯科補綴として14級2号を認定する

③ブリッジなどで失った歯以外を切除した場合
→交通事故で失った歯の補綴に際して,ブリッジを設ける目的などで他の歯を切除した場合,歯冠部の4分の3以上切除していれば,歯科補綴を加えた本数に含みます。

(例)交通事故で2本喪失したところ,両側2本の歯にブリッジを施した場合,4本の歯科補綴として14級2号を認定する

③歯牙障害に関する診断書

歯牙障害については,歯科用の後遺障害診断書を用いて主治医の記載を依頼します。

後遺障害等級の判断基準(味覚障害)

①判断基準

等級基準
12級相当味覚脱失
14級相当味覚減退

②判断方法

味覚については,基本4味質(甘味,塩味,酸味,苦味)を感じる能力を基準に判断します。

「味覚脱失」とは
=頭部,顎周囲組織の損傷,舌の損傷によって基本4味質すべてが認知できない場合

「味覚減退」とは
=頭部,顎周囲組織の損傷,舌の損傷によって基本4味質のうち1味質以上を認知できない場合

後遺障害に対する損害賠償額

後遺障害等級が認定された場合,主に後遺障害に対する慰謝料及び逸失利益が発生します。
もっとも,その金額は一律ではなく,計算基準や計算方法によって大きく異なります。保険会社は,弁護士がいない場合には自賠責基準を念頭に金額提示を行い,弁護士が入った場合には裁判基準を念頭に計算するのが通常です。

ここでは,弁護士の有無による損害賠償額の差異に関する一例として,以下のケースを題材に各基準の計算を紹介します。

【ケース】
症状固定時40歳,年収500万円,7歯以上に対し歯科補綴を加えたものとして12級3号認定

①自賠責基準

①後遺障害慰謝料
=94万円

②後遺障害逸失利益
=130万円

③合計
224万円

②裁判基準

①後遺障害慰謝料
=290万円

②後遺障害逸失利益
=500万円×14%×18.3270(27年ライプ)
=12,828,900円

③合計
15,728,900円

③差額

15,728,900円-224万円
13,488,900円(約7.0倍)

あくまで単純計算の結果であるため,現実にこの金額が受領できるかは別問題ですが,少なくとも弁護士への依頼によって大きく増額する余地のあることが分かります。

口の後遺障害は弁護士に依頼すべきか

口の後遺障害に関しては,そしゃくについて被害者自ら状態を申告する書面の作成が必要になったり,歯科補綴に関して独自の後遺障害診断書が必要になったりと,他類型の後遺障害にはない対応が必要になりやすいところです。また,それらの対応は,後遺障害等級の結果に直結するものであるため,対応を誤ることは大きな不利益につながってしまいます。

そのため,口の後遺障害に関しては,適切な対応の上で適切な等級認定を受け,さらには適正額の賠償を受領するために,弁護士への依頼が適切でしょう。

口の後遺障害に強い弁護士をお探しの方へ

口の後遺障害は,そしゃくや言語など,生活への支障が極めて大きくなりやすいものが多く,適切な損害賠償を受ける必要性がとても高い分野です。
そのため,口の後遺障害が問題になる場合は,できる限り速やかに,交通事故に長けた弁護士に相談の上,その後の進め方を検討するのが適切です。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
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