●耳の後遺障害にはどのようなものがあるか?
●耳の後遺障害の判断基準は?
●聴力はどのように決まるのか?
●後遺障害等級が認定された場合にはいくら請求できるか?
●耳の後遺障害については弁護士に依頼すべきか?
という悩みはありませんか?
このページでは,耳の後遺障害についてお困りの方に向けて,耳の後遺障害等級の判断基準や検査方法,後遺障害となった場合の請求内容などを解説します。
目次
耳に関する後遺障害の種類
耳の後遺障害には,以下の種類が挙げられます。
機能障害 | 聴力の喪失・低下に関する後遺障害 |
欠損障害 | 耳の大部分を失ったことに関する後遺障害 |
耳鳴り | 耳の中でのみ雑音が生じることに関する後遺障害 |
耳漏 | 外傷により耳漏(分泌物)がある場合の後遺障害 |
後遺障害等級の判断基準(聴力障害)
聴力障害は,「純音聴力レベル」の平均値及び「明瞭度」の最高値を基準に判断されます。
「純音聴力レベル」とは
音波の基本的なもの(=純音)に対する聴こえ方の程度。音が聴こえるかどうか
「明瞭度」とは
言語の音声(語音)に対する聴こえ方の程度。言葉を聞き取れるかどうか
具体的な等級及び認定基準は以下の通りです。
等級 | 基準 |
4級3号 | 両耳の聴力を全く失ったもの ①両耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの ②両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ最高明瞭度が30%以下のもの |
6級3号 | 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの ①両耳の平均純音聴力レベル80dB以上のもの ②両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ最高明瞭度が30%以下のもの |
6級4号 | 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの 1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの |
7級2号 | 両耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの ①両耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの ②両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの |
7級3号 | 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの 1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの |
9級7号 | 両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの ①両耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの ②両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの |
9級8号 | 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの 1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの |
10級5号 | 両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの ①両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの ②両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの |
11級5号 | 両耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上のもの |
【一耳の聴力ともう一耳の聴力の関係】
【両耳聴力と最高明瞭度の関係】
後遺障害等級の判断基準(欠損障害)
等級 | 基準 |
12級4号 | 1耳の耳殻の大部分を欠損したもの |
「耳殻の大部分の欠損」とは,以下の場合を指します。
「耳殻の大部分の欠損」
耳殻の軟骨部の2分の1以上を欠損したもの
ここで「耳殻」とは,耳のうち外に張り出て飛び出している部分をいいます。
一般的に「耳」と呼ぶ楕円形の部位全体を指します。
なお,耳殻の欠損障害が醜状障害にも該当する場合,いずれか上位の等級が認定されます。
後遺障害等級の判断基準(耳鳴り)
等級 | 基準 |
12級相当 | 難聴に伴い著しい耳鳴りが常時あると評価できるもの |
14級相当 | 難聴に伴い常時耳鳴りのあることが合理的に説明できるもの |
【具体的基準】
「難聴に伴い」とは(12級)
①耳鳴りが存在すると思われる純音聴力レベルが,他の純音聴力レベルと比べて低下している場合
②平均純音レベルが40dB未満(=聴力の後遺障害等級)に満たなくてもよい
「著しい耳鳴り」とは(12級)
耳鳴りに係る検査により耳鳴りが存在すると医学的に評価できる場合
「常時耳鳴りのあること」とは(14級)
耳鳴りが常時存在するものの,昼間外部の音によって耳鳴りが遮蔽されるため自覚症状が無く,夜間のみ耳鳴りの自覚症状を有する場合
「合理的に説明できるもの」とは(14級)
耳鳴りの自訴があり、かつ、耳鳴りのあることが騒音暴露歴や音響外傷等から合理的に説明できること
後遺障害等級の判断基準(耳漏)
外傷による耳漏が生じ,手術で治療をしてもなお残った場合には,後遺障害等級認定の対象となります。
等級 | 基準 |
12級相当 | 常時耳漏があるもの |
14級相当 | その他の耳漏があるもの |
後遺障害に対する損害賠償額
後遺障害等級が認定された場合,主に後遺障害に対する慰謝料及び逸失利益が発生します。
もっとも,その金額は一律ではなく,計算基準や計算方法によって大きく異なります。保険会社は,弁護士がいない場合には自賠責基準を念頭に金額提示を行い,弁護士が入った場合には裁判基準を念頭に計算するのが通常です。
ここでは,弁護士の有無による損害賠償額の差異に関する一例として,以下のケースを題材に各基準の計算を紹介します。
【ケース】
症状固定時40歳,年収500万円,1耳の聴力を失ったもの(平均純音レベル90dB以上のもの)として9級9号認定
①自賠責基準
①後遺障害慰謝料
=249万円
②後遺障害逸失利益
=367万円
③合計
=616万円
②裁判基準
①後遺障害慰謝料
=690万円
②後遺障害逸失利益
=500万円×35%×18.3270(27年ライプ)
=32,072,250円
③合計
=38,972,250円
③差額
38,972,250円-616万円
=32,812,250円(約6.3倍)
あくまで単純計算の結果であるため,現実にこの金額が受領できるかは別問題ですが,少なくとも弁護士への依頼によって大きく増額する余地のあることが分かります。
耳の後遺障害は弁護士に依頼すべきか
耳の後遺障害は,特に聴力障害の認定基準が一見して複雑であり,検査の際に認定基準を踏まえて進めることが容易ではありません。重大な後遺障害等級に該当する場合も少なくないため,十分な等級の獲得と金銭賠償の受領を図るためには,弁護士への依頼が非常に有力でしょう。
耳の後遺障害に強い弁護士をお探しの方へ
耳に関する後遺障害は,頭部や顔面の受傷に際して発生することが多く,脳・顔面等の後遺障害と同時に問題となることが少なくありません。
この場合,他の後遺障害が大きな問題になるあまり,耳の後遺障害への必要な対応がなされず,不利益につながってしまうことも散見されます。
耳の後遺障害が懸念される場合は,交通事故に強い弁護士へのご相談が有力です。
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ
法律相談のご希望はお気軽にお問い合わせください
※お電話はタップで発信できます。メールは問い合わせフォームにアクセスできます。