●眼球の後遺障害にはどのようなものがあるか?
●まぶたの後遺障害にはどのようなものがあるか?
●眼の後遺障害の判断基準は?
●後遺障害等級が認定された場合,何が請求できるか?
●後遺障害等級の認定に問題が生じる場合は?
●眼の後遺障害については弁護士に依頼すべきか?
といった悩みはありませんか?
このページでは,眼の後遺障害についてお困りの方に向けて,眼の後遺障害等級の認定基準や,認定手続の方法・内容,認定された場合の損害賠償額などを解説します。
目次
眼球の後遺障害の種類
眼球の後遺障害には,以下の種類が挙げられます。
視力障害 | 視力の低下に関する後遺障害 |
調節機能障害 | ピントを合わせる機能に関する後遺障害 |
運動障害 | 眼球の動きに制限が生じたり,複視が生じたりする後遺障害 |
視野障害 | 視野の広さに制限が生じる後遺障害 |
また,まぶしさを調節する機能に障害(外傷性散瞳)が生じる場合,別途後遺障害等級が認定されることがあります。
まぶたの後遺障害の種類
まぶたに関する後遺障害には,以下の種類が挙げられます。
欠損障害 | まぶたの全部又は一部を失ったことに関する後遺障害 |
運動障害 | まぶたの開閉をするための運動機能に制限が生じる後遺障害 |
後遺障害等級の判断基準(視力障害)
失明及び視力低下が生じた場合に認められる後遺障害です。
視力障害に関する具体的な後遺障害等級は,以下の通りです。
①両眼の視力障害
等級 | 基準 |
1級1号 | 両眼が失明したもの |
2級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの |
2級2号 | 両眼の視力が0.02以下になったもの |
3級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの |
4級1号 | 両眼の視力が0.06以下になったもの |
5級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの |
6級1号 | 両眼の視力が0.1以下になったもの |
7級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの |
9級1号 | 両眼の視力が0.6以下になったもの |
②1眼の視力障害
等級 | 基準 |
8級1号 | 1眼が失明し又は1眼の視力が0.02以下になったもの |
9級2号 | 1眼の視力が0.06以下になったもの |
10級1号 | 1眼の視力が0.1以下になったもの |
13級1号 | 1眼の視力が0.6以下になったもの |
③注意事項
【失明について】
失明とは以下のいずれかの場合をいいます。
「失明」とは
①眼球を失ったもの
②明暗が分からないもの
③明暗がようやく分かる程度のもの
明暗が分かるかどうかは,以下の2つの能力を基準に判断します。
・光覚弁
→暗室にて,面前でペンライト等の照明を点滅させたとき,明暗が弁別できる能力
・手動弁
→面前で手の平を上下左右にゆっくり動かしたとき,動きの方向を弁別できる能力
【視力について】
後遺障害等級の対象とする視力は,矯正視力を指します。そのため,眼鏡やコンタクトレンズなどを着用した状態の視力を基準に判断されます。
【両眼に障害がある場合の等級】
両眼に視力の障害がある場合,1眼ごとの視力障害とどちらを認定すべきかが問題となりますが,この点のルールは以下の通りです。
両眼に障害がある場合
①両眼の視力障害に関する等級で認定し,1眼ごとの等級を併合することはしない
②両眼の等級よりもいずれか1眼の等級の方が上位である場合,1眼のみに障害があるものとみなしてより上位の等級を認定する
(例1)
右が0.1,左が0.02の場合
両眼:6級1号
1眼:8級1号(左について)
→6級1号が認定される(①のルールにより)
(例2)
右が0.6,左が0.02の場合
両眼:9級1号
1眼:8級1号(左について)
→8級1号が認定される(②のルールにより)
したがって,両眼の等級が原則であり,1眼のみの方がこれより上位の場合には例外的に1眼の等級を認定する,ということになります。
後遺障害等級の判断基準(調節機能障害)
等級 | 基準 |
11級1号 | 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
12級1号 | 1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
「著しい調節機能障害」とは以下の場合を指します。
著しい調節機能障害
眼の調節力が損傷を受けなかった方の他眼に比して2分の1以下に減じたもの
(注意事項)
①両眼とも損傷を受けた場合,損傷していない眼の調節機能に異常がある場合は,年齢別の調整力と比較する
②以下のいずれかに当たる場合は障害認定されない
・損傷していない眼の調整力が1.5D以下であるとき
・55歳以上であるとき
5歳ごとの年齢別の調整力
年齢(歳) | 調整力(ジオプトリー(D)) |
15 | 9.7 |
20 | 9.0 |
25 | 7.6 |
30 | 6.3 |
35 | 5.3 |
40 | 4.4 |
45 | 3.1 |
50 | 2.2 |
55 | 1.5 |
60 | 1.35 |
後遺障害等級の判断基準(運動障害)
眼球の運動を維持する筋肉(眼筋)の一個又は数個が麻痺することにより,眼球が偏ってしまうことがあります。
この偏りによる注視野の減少や複視に関する障害が,運動障害です。
等級 | 基準 |
10級2号 | 正面を見た場合に複視の症状を残すもの |
11級1号 | 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
12級1号 | 1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
13級2号 | 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの |
「眼球に著しい運動障害を残すもの」とは,以下の場合を指します。
「眼球に著しい運動障害を残すもの」
=眼球の注視野が2分の1以下に減じたもの
注視野とは
頭部を固定した状態で眼球を動かして直視できる範囲
平均値は単眼視で各方面50度,両眼視で各方面45度とされています。
「複視」は,1つの物体が2つに見えることをいい,以下の全てを満たす場合を指します。
「複視を残すもの」
1.本人が複視のあることを自覚していること
2.眼筋の麻痺等複視を残す明らかな原因が認められること
3.ヘススクリーンテストにより患側の像が健側に比して5度以上離れた位置にあること
なお,10級と13級の差異は以下の通りです。
「正面を見た場合に複視の症状を残すもの」(10級)
→正面視で複視が中心の位置にあること
「正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの」(13級)
→それ以外の場合
後遺障害等級の判断基準(視野障害)
等級 | 基準 |
9級3号 | 両眼に半盲症、視野狭窄、又は視野変状を残すもの |
13級3号 | 1眼に半盲症、視野狭窄、又は視野変状を残すもの |
「半盲症」とは
「半盲症」とは
視野の右半分又は左半分が欠損し,見えなくなってしまう症状をいいます。以下のような種類があります。
同側半盲:両眼の同じ側で半盲が生じる場合
異名半盲:両眼のそれぞれ反対側で半盲が生じる場合
また,視野の上半分または下半分が欠損する場合もあり,「水平半盲」といいます。
「視野狭窄」とは
「視野狭窄」とは
視野が狭くなる症状をいいます。以下のような種類があります。
同心性狭窄:中心部分ははっきり見えるが,周辺部分が見えない
不規則狭窄:視野の一部分が規則性のない形で狭くなる
「視野変状」とは
「視野変状」とは
半盲症や視野狭窄のほか,視野に異常が生じることをいいます。具体的には以下の内容があります。
暗転:視野の中に暗くて見えない部分が生じるもの
視野欠損:視野の一部が見えなくなる状態
後遺障害等級の判断基準(散瞳)
散瞳とは,瞳孔の動きに異常が生じた結果,まぶしさを感じてしまうものをいいます。
瞳孔は,光の刺激を受けると小さくなり,眼に取り込む光の量を調節する機能を有します。これを対光反射と言いますが,対光反射に異常が生じると瞳孔が開いた状態(=散瞳)となり,光の刺激を弱めることができずまぶしさを感じてしまいます。
外傷性散瞳に関する後遺障害等級は,以下の通りです。
【両眼】
等級 | 基準 |
11級相当 | 両眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著名な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの |
12級相当 | 両眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの |
【1眼】
等級 | 基準 |
12級相当 | 1眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著名な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの |
14級相当 | 1眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの |
後遺障害等級の判断基準(まぶたの欠損障害)
等級 | 基準 |
9級4号 | 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
11級3号 | 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
13級4号 | 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
14級1号 | 1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
【具体的基準】
「まぶたに著しい欠損を残すもの」とは
まぶたを閉じた場合に角膜(眼球の色がある部分を覆う膜)を完全に覆えない程度のもの
「まぶたの一部に欠損を残すもの」とは
まぶたを閉じた場合に、角膜を完全に覆うことができるものの、球結膜(白目)が露出してしまう場合
「まつげはげを残すもの」とは
まつげの生えている周縁の2分の1以上にわたってまつげはげを残すもの
後遺障害等級の判断基準(まぶたの運動障害)
等級 | 基準 |
11級2号 | 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
12級2号 | 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
【具体的基準】
「まぶたに著しい運動障害を残すもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。
①まぶたを開けた時にまぶたが完全に瞳孔(黒目)を覆ってしまうもの
②まぶたを閉じたときに角膜(眼球の色がある部分を覆う膜)を完全に覆えないもの
後遺障害に対する損害賠償額
後遺障害等級が認定された場合,主に後遺障害に対する慰謝料及び逸失利益が発生します。
もっとも,その金額は一律ではなく,計算基準や計算方法によって大きく異なります。保険会社は,弁護士がいない場合には自賠責基準を念頭に金額提示を行い,弁護士が入った場合には裁判基準を念頭に計算するのが通常です。
ここでは,弁護士の有無による損害賠償額の差異に関する一例として,以下のケースを題材に各基準の計算を紹介します。
【ケース】
症状固定時40歳,年収400万円,1眼の視力障害(0.06以下)で9級2号認定
①自賠責基準
①後遺障害慰謝料
=249万円
②後遺障害逸失利益
=367万円
③合計
=616万円
②裁判基準
①後遺障害慰謝料
=690万円
②後遺障害逸失利益
=400万円×35%×18.3270(27年ライプ)
=25,657,800円
③合計
=32,557,800円
③差額
32,557,800円-616万円
=26,397,800円(約5.3倍)
あくまで単純計算の結果であるため,現実にこの金額が受領できるかは別問題ですが,少なくとも弁護士への依頼によって大きく増額する余地のあることが分かります。
眼の後遺障害は弁護士に依頼すべきか
眼やまぶたの後遺障害は,その認定基準や検査の内容が一般的になじみの浅い内容であることが多く,被害者の方が自分で等級認定を目指すことは非常に困難が伴いやすいでしょう。また,等級認定の基準が客観的な数値で明確に定められているものも多く,事前に認定基準を踏まえながら治療や検査に臨むことが有益になりやすい類型でもあります。
そのため,弁護士に依頼の上,弁護士と協同して後遺障害等級認定を目指すことで,適切な等級の獲得と金銭賠償の受領に至る可能性が高くなるでしょう。眼やまぶたの後遺障害については,弁護士への依頼をお勧めいたします。
眼の後遺障害に強い弁護士をお探しの方へ
眼の後遺障害は,対象になるケースが決して多くないため,受傷内容によっては交通事故との関係が争点になることも考えられます。
もっとも,後遺障害の程度によっては,将来に渡って非常に大きな制限を強いられるものであるため,交通事故に精通した弁護士を通じて十分な対応を取ることが適切です。
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
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