下肢・足指の後遺障害の種類は?認定基準は?認定された場合の賠償額は?交通事故弁護士による増額のシミュレーションも

●下肢・足指の後遺障害にはどのようなものがあるか?

●下肢・足指の後遺障害の判断基準は?

●下肢・足指の機能障害はどのように判断するか?

●等級が認定された場合にはいくら請求できるか?

●下肢・足指の後遺障害については弁護士に依頼すべきか?

という悩みはありませんか?

このページでは,下肢の後遺障害についてお困りの方に向けて,下肢の後遺障害に関する判断基準等級認定された場合の賠償額などを解説します。

下肢・足指の後遺障害の種類

下肢は,人体の股関節より下の部位をいい,具体的には大腿骨,下腿(脛骨及び腓骨),足根骨,中足骨で構成されます。交通事故の結果,骨折や脱臼が生じるなどした場合に,治療を尽くしても事故前の状態には戻らず,後遺障害の対象となることがあります。

下肢及び足指の後遺障害としては,以下のものが挙げられます。

下肢の後遺障害

欠損障害下肢の一部分を失ったことに関する後遺障害
機能障害関節(股関節、膝関節、足関節)の動きに制限が生じたことに関する後遺障害
変形障害下肢の骨折部が曲がったまま癒合するなどした結果,変形が生じたことに関する後遺障害
短縮障害下肢(股から足までの間)の長さが短くなったことに関する後遺障害

足指の後遺障害

欠損障害足指の一部分を失ったことに関する後遺障害
機能障害①足指の関節の動きに制限が生じたことに関する後遺障害
②足指の一部を失ったうち,欠損障害に該当しないものに関する後遺障害

後遺障害等級の判断基準(下肢の欠損障害)

①両下肢を失った場合

等級基準
1級5号両下肢をひざ関節以上で失ったもの
2級4号両下肢を足関節以上で失ったもの
4級7号両足をリスフラン関節以上で失ったもの

②1下肢を失った場合

等級基準
4級5号1下肢をひざ関節以上で失ったもの
5級5号1下肢を足関節以上で失ったもの
7級8号1足をリスフラン関節以上で失ったもの

③具体的な認定基準

「下肢をひざ関節以上で失ったもの」

以下のいずれかの場合
1.股関節おいて、寛骨と大腿骨とを離断したもの
2.股関節とひざ関節との間において切断したもの
3.ひざ関節において、大腿骨と脛骨及び腓骨とを離断したもの

「下肢を足関節以上で失ったもの」

以下のいずれかの場合
1.ひざ関節と足関節との間で切断したもの
2.足関節において、脛骨及び腓骨と距骨とを離断したもの

「リスフラン関節以上で失ったもの」

以下のいずれかの場合
1.足根骨(腓骨、距骨、舟状骨、立方骨及び3個の楔状骨)において切断したもの
2.リスフラン関節において中足骨と足根骨とを離団したもの

(「障害認定必携」より引用)

後遺障害等級の判断基準(下肢の機能障害)

①下肢の用を全廃したもの

等級基準
1級6号両下肢の用を全廃したもの
5級7号1下肢の用を全廃したもの

「下肢の用を全廃したもの」とは,以下の場合を指します。

3大関節(股関節、ひざ関節、及び足関節)の全てが強直(※)した場合
(3大関節が強直したことに加え、足指全部が強直した場合も含まれる)

※「強直」:関節が全く可動しない場合,又はこれに近い状態(※※)である場合
※※「これに近い状態」:自動の可動域が10%以下になった場合

②関節の用を廃したもの

等級基準
6級7号1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8級7号1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

「関節の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節が強直したもの
2.関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態(※)にあるもの
3.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

※「これに近い状態」とは,自動の可動域が10%程度以下になった場合を指します。
(例)健側の可動域が150度の場合,患側の可動域が15度以下であれば関節の用廃となる

③関節の機能に著しい障害を残すもの

等級基準
10級11号1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
2.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されていないもの

④関節の機能に障害を残すもの

等級基準
12級7号1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

「関節の機能に障害を残すもの」とは,以下の場合を指します。

関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されている場合

⑤動揺関節

動揺関節とは,骨折部の癒合不全や靭帯の断裂などが原因となって,関節の安定性が失われてしまったために,関節がグラグラして安定しなかったり,本来曲がらない方向に曲がってしまったりと,異常な関節運動の起きる状態を言います。膝関節の靭帯損傷に際して発生する場合が多く見られます。
自賠責保険の後遺障害等級認定基準には設けられていないものの,労災保険の認定基準に準じ,関節機能障害の一種として認定される運用となっています。

等級基準
8級7号相当
(用廃)
常に硬性補装具を必要とするもの
10級11号相当
(著しい障害)
時々硬性補装具を必要とするもの
12級7号相当
(障害)
重激な労働等の際以外には硬性補装具を必要としないもの

⑥可動域の測定方法

【主要運動】

関節可動域は,関節ごとに定められる主要運動の測定値を比較します。
下肢の三大関節の主要運動は,以下の通りです。

関節主要運動参考可動域角度
股関節①屈曲・伸展125度・15度(合計140度)
股関節②外転・内転145度・20度(合計65度)
ひざ関節屈曲・伸展130度・0度(合計130度)
足関節屈曲(底屈)・伸展(背屈)45度・20度(合計65度)
「屈曲+伸展」「外転+内転」の合計値を比較

なお,左右いずれも可動域制限が生じている場合,参考可動域との比較を行います。

股関節の主要運動

足関節の主要運動

【参考運動を用いる場合】

関節の運動には,主要運動のほかに参考運動があります。
可動域制限を判断する場合に参考運動を用いるのは,主要運動の可動域が基準をわずかに(=機能障害は5度,著しい機能障害は10度)上回る場合とされます。

関節参考運動参考可動域角度
股関節外旋・内旋45度・45度(合計90度)

後遺障害等級の判断基準(下肢の変形障害)

①偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

 偽関節とは,骨折した部位が変形癒合し,関節でない部分が曲がって関節のようになってしまった状態を指します。関節のようだが関節ではない,ニセの関節というべきものです。

 偽関節に関する後遺障害は2つの種類があり,硬性補装具を必要とするかどうかにより区別されます。硬性補装具を要する場合,以下の等級に該当します。

等級基準
7級10号1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.上腕骨の骨幹部又は骨幹端部にゆ合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの
2.脛骨及び腓骨の両方の骨幹部等にゆ合不全を残し,常に硬性補装具を必要とするもの
3.脛骨の骨幹部等にゆ合不全を残し,常に硬性補装具を必要とするもの

②偽関節を残すもの

等級基準
8級9号1下肢に偽関節を残すもの

「偽関節を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.大腿骨の骨幹部等にゆ合不全を残すが硬性補装具を必要とはしないもの
2.脛骨及び腓骨の両方の骨幹部等にゆ合不全を残すが硬性補装具を必要とはしないもの
3.脛骨の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とするもの

③長管骨に変形を残すもの

等級基準
12級8号長管骨に変形を残すもの

「長管骨に変形を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.大腿骨に変形を残し、外見から想定できる程度のもの(=15度以上屈曲して不正癒合したもの)
2.脛骨に変形を残し、外見から想定できる程度のもの(=15度以上屈曲して不正癒合したもの)
3.大腿骨の骨端部に癒合不全を残すもの
4.脛骨の骨端部に癒合不全を残すもの
5.腓骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもの
6.大腿骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
7.脛骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
8.大腿骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少したもの
9.脛骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少したもの
10.大腿骨が外旋45度以上(=股関節の内旋が0度を超えて可動できない)又は、内旋30度以上(=股関節の外旋が15度を超えて可動できない)で変形癒合しているもの

後遺障害等級の判断基準(下肢の短縮障害)

等級基準
8級5号1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
10級8号1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
13級8号1下肢を1センチメートル以上短縮したもの

下肢の短縮は,上前腸骨棘と下腿内果下端の間の長さを健側の下肢と比較して等級認定を行います。

後遺障害等級の判断基準(足指の欠損障害)

等級基準
5級8号両足の足指の全部を失ったもの
8級10号1足の足指の全部を失ったもの
9級14号1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
10級9号1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの
12級11号1足の第2の足指を失ったもの
第2の足指を含み2の足指を失ったもの
第3の足指以下の第3の足指を失ったもの
13級9号1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの

「足指を失ったもの」とは,足指を中足指節関節から失ったことを指します。つまり,足指をすべて失った場合を指すことになります。

(「障害認定必携」より引用)

後遺障害等級の判断基準(足指の機能障害)

等級基準
7級11号両足の足指の全部の用を廃したもの
9級15号1足の足指の全部の用を廃したもの
11級9号1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
12級12号1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
13級10号1足の第2の足指の用を廃したもの
第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの
第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
14級8号1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの

「足指の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.親指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
2.親指以外の足指について、中節骨又は基節骨で切断したもの
3.親指以外の足指について、遠位指節間関節又は近位指節間関節で離断したもの
4.親指の中足指節間関節又は指節間関節の可動域が1/2以下に制限されるもの
5.親指以外の足指の中足指節間関節又は近位指節間関節の可動域が1/2以下に制限されるもの

後遺障害に対する損害賠償額

後遺障害等級が認定された場合,主に後遺障害に対する慰謝料及び逸失利益が発生します
もっとも,その金額は一律ではなく,計算基準や計算方法によって大きく異なります。保険会社は,弁護士がいない場合には自賠責基準を念頭に金額提示を行い,弁護士が入った場合には裁判基準を念頭に計算するのが通常です。

ここでは,弁護士の有無による損害賠償額の差異に関する一例として,以下のケースを題材に各基準の計算を紹介します。

【ケース】
症状固定時50歳,年収500万円,下肢の関節機能障害で10級11号認定

①自賠責基準

①後遺障害慰謝料
=190万円

②後遺障害逸失利益
=271万円

③合計
461万円

②裁判基準

①後遺障害慰謝料
=550万円

②後遺障害逸失利益
=500万円×27%×13.1661(17年ライプ)
=17,774,235円

③合計
23,274,235円

③差額

23,274,235円-461万円
18,664,235円(約5倍)

あくまで単純計算の結果であるため,現実にこの金額が受領できるかは別問題ですが,少なくとも弁護士への依頼によって大きく増額する余地のあることが分かります。

下肢・足指の後遺障害は弁護士に依頼すべきか

下肢や足指の後遺障害は,申請時の検査内容・診断内容が結果に直結することが多く見られる類型です。特に機能障害は,基本的に後遺障害診断書上の関節可動域の測定値をほぼ唯一の基準にして判断されるものであるため,申請を行う前に,さらには可動域の測定を行う前に,どのような等級の獲得を目指していくのかを明確にして手続を進める必要があります。

これらの進め方や判断に関しては,交通事故に精通した弁護士に依頼をするのが最も確実でしょう。弁護士に依頼し,適切な方針で適切な対応をしてもらうことにより,障害の程度を正確に反映した等級認定や賠償の獲得が可能になります。

②金額交渉に際しての弁護士依頼

具体例で紹介した通り,同じ後遺障害等級認定が得られた場合でも,その具体的な損害賠償額は弁護士の有無で大きく異なります。保険会社は,弁護士の有無で計算を異にする運用をしているため,十分な損害賠償額を獲得するためには弁護士への依頼が必要と考えてよいでしょう。

下肢・足指の後遺障害に強い弁護士をお探しの方へ

下肢・足指に後遺障害が残るケースは,重大な事故である場合が多く,今後の生活のためにも十分な損害賠償を獲得することが非常に重要です。
そして,後遺障害等級認定および金額交渉に際しては,交通事故に精通した弁護士の対応が大変有益になりやすいので,交通事故に長けた弁護士へのご相談・ご依頼をお勧めいたします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
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