醜状障害の判断基準は?認定された場合の賠償額は?弁護士に依頼すると結果は変わるのか?弁護士が詳細解説

●醜状障害とは何か?

●醜状障害は誰がどのように判断するか?

●醜状障害の判断基準を知りたい

●複数の傷跡がある場合はどのように判断されるか?

●醜状障害は逸失利益が請求できるか?

●醜状障害は弁護士に依頼すべきか?

という悩みはありませんか?

このページでは,交通事故の醜状障害でお困りの方に向けて,醜状障害の判断基準や判断方法醜状障害が認められた場合の賠償額などを解説します。

醜状障害とは

醜状障害は,人の目につく人体の露出面に,目立つ傷跡が残った場合の後遺障害をいいます。醜状の具体的な内容としては,瘢痕や線状痕,組織の陥没,色素沈着による変色などが挙げられます。

また,醜状障害が認定される部位としては,以下のものが挙げられます。

醜状障害の対象部位
①外貌(頭部・顔面部・頸部)
②上肢又は下肢の露出面
③日常露出しない部位(胸部・腹部・背部・臀部)

醜状障害の判断方法

醜状障害が後遺障害等級に認定されるかどうかは,自賠責の損害調査を行う「損害保険料率算出機構」によって判断されます。実際には,全国各地の自賠責損害調査事務所において,管轄地域の後遺障害等級認定を行うことになります。

調査事務所では,診断書上に記録された醜状の内容や程度,当該部位の撮影写真,さらには面談を行って目視したときの状態などを踏まえ,後遺障害等級に該当するかを判断します。もっとも,具体的にどこまでの調査を行うのかは,基本的に調査事務所側の判断となっています。

ポイント
醜状障害は人体の露出面における傷跡が後遺障害とされるもの
醜状障害の主な対象部位は,外貌(頭部・顔面部・頸部)と上下肢
醜状障害の判断は,診断書・写真・面談等を通じて行う

醜状障害の判断基準(外貌)

外貌の醜状に関する後遺障害等級には,以下のものがあります。

等級基準
7級12号外貌に著しい醜状を残すもの
9級16号外貌に相当程度の醜状を残すもの
12級14号外貌に醜状を残すもの

この中では,7級が最も上位の後遺障害等級であり,醜状の程度も最も著しい場合となります。
そして,具体的な認定基準は,等級ごと及び部位ごとに定められており,その内容は以下の通りです。

7級12号「外貌に著しい醜状を残すもの」

部位基準
頭部手のひら大(指の部分を含まず)以上の瘢痕又は頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
顔面部鶏卵大面以上の瘢痕、又は10円銅貨代以上の組織陥没
頚部手のひら大以上の瘢痕

9級16号「外貌に相当程度の醜状を残すもの」

部位基準
顔面部5cm以上の線状痕で、人目につく程度のもの

12級14号 外貌に醜状を残すもの

部位基準
頭部鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
顔面部10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3センチメートル以上の線状痕
頚部鶏卵大面以上の瘢痕

なお,瘢痕の大きさや線状痕の長さを確認する際には,以下の点に注意を要します。

①人目につくことが必要
→眉や髪で隠れる部分は醜状として扱われません。また,アゴの下で正面から見えない部分も対象外となります。これらの部分を除いた長さや面積を計測します。

②2つ以上の傷跡がある場合の判断方法
→複数の傷跡は,それらが一体となっている場合,一体となっている面積や長さを合算した数値で等級が判断されます

③事故時に生じたものでない醜状の取り扱い
→治療中に生じた手術痕や,やけど等の治療後に生じた色素沈着なども,醜状障害の対象に含まれます。

ポイント 外貌醜状
等級は7級,9級,12級
それぞれ,頭部・顔面部・頸部の醜状が対象になり得る

醜状障害の判断基準(上肢下肢)

上下肢の場合,その露出面が対象になります。露出面とは以下の通りです。

「露出面」とは
上肢 肩関節から先(指先まで)
下肢 股関節から先(足の背部まで)

そして,上下肢の露出面に関する後遺障害等級には,いかのものがあります。

等級基準
14級4号上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
14級5号下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの

また,上下肢の露出面における醜状障害がさらに重い場合は,以下の等級に該当する場合があります。

等級基準
12級相当・上肢の露出面に手のひらの大きさを相当程度超える瘢痕を残し、特に著しい醜状であると判断されるもの

・下肢の露出面に手のひらの大きさを相当程度超える瘢痕を残し、特に著しい醜状であると判断されるもの

なお,「手のひらの大きさを相当程度超える瘢痕」とは,手のひらの3倍程度以上の大きさの瘢痕を指すとされています。

ポイント 上下肢露出面の醜状
手のひら大の場合,14級
手のひらの3倍以上の場合,12級相当

醜状障害の判断基準(日常露出しない部位)

日常露出しない部位(=胸部・腹部・背部・臀部)については,その全面積の4分の1程度を超える場合,後遺障害等級に該当する可能性があります。具体的な基準は以下の通りです。

等級基準
12級相当全面積の1/2程度を超える瘢痕
14級相当全面積の1/4程度を超える瘢痕

醜状障害と合わせて認定され得る後遺障害

醜状障害が生じる場合,これとあわせて問題になる後遺障害等級が生じることもあります。特に,顔面部の骨折に際して問題になることが多く見られますが,具体的には以下の通りです。

①眼・耳・鼻の欠損

眼(まぶた)や耳,鼻の欠損が生じた場合,それらの等級と醜状障害の後遺障害等級のうち,いずれか上位の等級が認定されます。
例えば,鼻の欠損に際しては9級5号の認定可能性がありますが,同時に7級の醜状障害が認定される場合,より上位の7級が認定されます。

②顔面神経麻痺

顔面の骨折による顔面神経麻痺の影響で口がゆがむなどした場合,神経系統の障害ではあるものの醜状の問題として取り扱われます。
ただし,顔面神経麻痺の影響でまぶたが閉じられない場合,外貌醜状の問題でなく眼(まぶた)の障害として取り扱われます。

口のゆがみ:醜状障害(12級14号)の問題
まぶたが閉じない:眼の障害

醜状障害が認定された場合の慰謝料額

①等級ごとの慰謝料額

醜状障害が後遺障害等級として認定された場合,その等級に応じた慰謝料の賠償が生じます。
後遺障害等級に対する慰謝料を後遺障害慰謝料と呼びますが,該当する後遺障害慰謝料の金額は以下の通りです。

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
7級419万円1000万円
9級249万円690万円
12級94万円290万円
14級32万円110万円

②自賠責基準と裁判基準の違い

自賠責基準は,自賠責保険から等級に応じて自動的に支払われる金額であり,弁護士がいない場合に保険会社が解決案として提示することの多い金額でもあります。
一方,裁判基準は,裁判が行われた場合に認められ得る最大の金額であり,弁護士が交渉を行う場合には,解決内容の目安とされます。

そのため,弁護士に依頼して交渉をしてもらうことで,慰謝料の金額は大きな増額の可能性があります。

醜状障害と逸失利益

逸失利益とは,後遺障害が残った場合,後遺障害によってその後の労働能力が低下した結果,収入が減少する損害を言います。

この点,醜状障害そのものは,必ずしも逸失利益を生じさせるものではありません。醜状が残ったとしても,直ちに労働能力が低下するわけではないからです。
もっとも,営業職やモデル,外見を活かした接客業など,醜状障害が労働能力に影響する職種では,労働能力が低下するとの理解が通常です。また,それ以外の職業であっても,傷跡が残ったことに伴って痛みやしびれがあるなど,労働能力の低下につながる他の症状があれば,その症状を根拠に労働能力が低下すると判断することも少なくありません。
なお,痛みやしびれを根拠に逸失利益を計算する場合,症状の内容や程度によって,神経症状に関する12級又は14級相当の逸失利益が発生するものとみなし,12級又は14級を念頭においた金額計算をする例が多数見られます。

醜状障害については,逸失利益が発生するかどうかをより慎重に検討しなければならないことがある,という理解が適切でしょう。

ポイント 醜状障害の逸失利益
①外見が労働能力に直結する職種の場合,逸失利益発生
②そうでない職種でも,醜状に伴う痛みやしびれを理由に神経症状の逸失利益が発生することも

醜状障害の後遺障害は弁護士に依頼すべきか

醜状障害については,適切な等級認定を目指すため,弁護士への委任が非常に有力です。適切な判断を求めるためには,積極的に情報提供しなければならない場合もあるため,少なくとも弁護士にご相談の上で等級認定の手続に移ることをお勧めします。

醜状障害に特有の弁護士依頼のメリットとしては,以下の点が挙げられます。

①適切な後遺障害診断書の作成・提出

後遺障害等級認定に際しては,まず,後遺障害診断書の記載事項を踏まえての検討となります。そのため,後遺障害診断書に醜状の問題が正しく反映されていなければ,醜状障害が判断の対象にすらならない可能性があります。
弁護士への依頼を通じて,醜状の問題を正しく後遺障害診断書に反映してもらうのが有益です。

②適切な画像資料の提出

醜状障害の場合,後遺障害の調査・判断を行う自賠責損害調査事務所へ,写真などの画像資料を提出するのが通例です。この画像は,醜状の状態を示すとともに,その大きさを正しく伝えるものでなければなりません。画像の撮影方法を誤ると,適切な等級認定ができない可能性が高くなります。
弁護士への依頼を通じて,認定基準を踏まえた有益な画像の用意が可能になりやすいです。

③適切な面談の要求と実施

醜状障害の等級認定に際しては,自賠責損害調査事務所の判断で面談が行われる場合もあります。この面談では,醜状の目視や測定を直接行い,等級認定の判断材料とされます。
一方で,面談の実施は義務ではないため,面談を行うことなく不適切な判断がなされる場合もあり,このようなケースでは面談を要求するなど適切な調査・判断を依頼することが必要です。
弁護士に依頼することで,面談を通じた適切な等級認定を目指すことは重要になりやすいでしょう。

交通事故の醜状障害に強い弁護士をお探しの方へ

醜状障害は,後遺障害等級認定の手続に関しても,等級認定された場合の金額交渉に関しても,専門的判断が要求されやすい類型です。
そのため,等級認定の対象となり得る醜状障害については,弁護士を通じて十分な対応を尽くすのが非常に有益でしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
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