交通事故のむち打ちで後遺障害等級認定を獲得したい人へ,等級認定の重要ポイントや認定のために意識すべきことを徹底解説

●むち打ちではどのような後遺障害等級の認定が受けられるか?

●むち打ちはどんな傷病名がつくのか?

●むち打ちで後遺障害等級認定を受けるのは難しいのか?

●むち打ちで後遺障害等級の認定を受けるコツは?

●むち打ちの後遺障害等級認定を得るために有益な検査は?

●むち打ちの後遺障害については弁護士に依頼すべきか?

といった悩みはありませんか?

このページでは,むち打ちの神経症状における後遺障害についてお困りの方へ,むち打ちに関する後遺障害等級やその判断基準認定を得るためのポイントなどを解説します。

むち打ちの傷病名

むち打ちは,急激な衝撃や動きによって首の筋肉や靭帯が損傷を受けた際に生じる症状です。衝撃を受けた首がムチのようにしなることから,一般に「むち打ち」と呼ばれます。
このむち打ちは傷病そのものではないため,医師の診断する傷病名がむち打ちとなることはなく,具体的には以下のような傷病名が付くことになりやすいです。

むち打ちの傷病名
・頚椎捻挫
・頸部挫傷
・外傷性頸部症候群
・頚椎椎間板ヘルニア
・頚椎症
など

むち打ちの症状

むち打ちの症状は被害者によって様々ですが,代表的なものは以下の通りです。

むち打ちの主な症状
・首の痛みや痺れ
・首の可動域制限
・腕や手の痛み,痺れ
・握力低下
・頭痛
・めまい
・吐き気
・倦怠感
など

むち打ちについて認定され得る後遺障害等級

むち打ちに対する後遺障害等級は,等級認定基準との関係では「神経症状」というものに位置付けられます。これは,交通事故の外傷によって神経系統に異常を来した結果,痛みや痺れといった神経への症状が残存する後遺障害を一般的に指すものです。

具体的な等級とその認定基準は,以下の通りです。

等級認定基準
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

後遺障害等級は,1級から14級まであり,1級が最も上位の(=重い)後遺障害です。神経症状については,12級の方がより上位の後遺障害等級となります。

また,それぞれの認定基準を満たしているかどうかの具体的な考え方は,以下の通りです。

12級13号症状が医学的に証明できる場合
(画像所見などの他覚的所見によって客観的に認められる場合)
14級9号症状が医学的に説明できる場合
(他覚的所見はないものの,受傷内容や治療経過を踏まえると症状の存在が医学的に推定できる場合)

したがって,画像所見など,第三者が客観的に確認できる所見がある場合は12級の認定される可能性があり,そのような客観的な所見がない場合は14級の認定を目指すことになります。

むち打ちで後遺障害等級認定を受ける難易度

むち打ちで後遺障害等級認定を受ける難易度は,類型的には高いことが多く見受けられます。それは,他覚的所見が存在せず,第三者が客観的に症状を認定することが困難であることが多いためです。
後遺障害等級に関する判断は,損害保険料率算出機構(及びこれに属する自賠責損害調査事務所)という機関が行います。つまり,第三者が客観的な基準で判断・認定しなければなりません。この点,むち打ちは自覚症状のみであることが少なくないため,その症状の内容や程度は,厳密には被害者本人にしか分からないという限界があります。
この症状を後遺障害等級として認定し,多額の損害賠償の対象とするのは,容易な判断ではなく,安易な等級認定は控えられる傾向にあるため,むち打ちで等級認定を受ける難易度が類型的に高くなりやすいのです。

逆に,むち打ちで後遺障害等級の認定を受けるための客観的な基準や判断要素を把握し,これに沿って等級認定を目指せば,等級認定の可能性は高くなります

むち打ちで後遺障害等級を受けるコツ

むち打ちで後遺障害等級認定を受けるためには,等級認定に値するほどの症状が残っていると客観的に判断してもらうことが非常に重要です。具体的には,以下の考え方を持つのがコツと言えます。

等級認定されるのは,
①事故直後に重い症状があり
②十分な治療を尽くしても
③重い症状が残存してしまっている

場合である

以下,それぞれの要素について詳細を解説します。

①事故直後に重い症状があること

まずは,交通事故によって生じた症状そのものが重大である,ということが重要な前提になります。そもそも,交通事故による症状がさほどでもないのであれば,後遺障害等級認定がなされるほどの障害は残り得ないからです。

事故直後の症状の重さを裏付ける事情としては,以下のようなものがあります。

【事故態様】
→歩行者と大きな車が衝突した,車の速度が速かったなど,被害者の受ける衝撃の程度が大きいと思われる事故態様である場合,事故直後の症状が重いと評価されやすいです。

【事故による物的損害の程度】
→車両の損傷が激しい,多くの部品交換を要するような多額の修理費が発生しているなど,車両への衝撃が大きい内容である場合,事故直後の症状が重いと評価されやすいです。

【事故直後の診断内容】
事故直後に症状の重大さをうかがわせる診断内容がある場合,症状が重いと評価されやすいです。

【事故直後の画像所見】
事故直後に神経症状の原因となる画像所見が残っている場合,症状が重いと評価されやすいです。

②十分な治療を尽くしたこと

後遺障害等級認定の対象となるのは,必要な治療を尽くしてもなおやむを得ず残存してしまった症状です。そのため,どれだけの治療を尽くしたかは重要なポイントになります。
また,多くの治療を要した場合と少ない治療で済んだ場合とでは,多くの治療を要した場合の方が症状が重いと判断されることが通常です。少ない治療で終わった場合には,少ない治療で足りる程度の症状だったと評価され,後遺障害等級認定は困難になりやすいところです。

十分な治療を尽くしたかどうかの判断要素としては,以下のものが挙げられます。

【治療期間及び実通院日数】
→治療期間が長く,実通院日数が多い方が,等級認定に近づきやすい傾向にあります。一般的には,通院期間6月以上,実通院日数100日以上を要することが目安とされるケースが散見されるところです。
もっとも,長ければ長いほど,多ければ多いほどいいというものではありません。明らかに過剰な診療と評価される治療経過だと,逆に症状とは関係のない理由で(=打算的に)通院したものと評価され,等級認定が得られづらい事情になりかねません。

【治療内容】
→神経ブロック注射など,より症状に対する影響の強い治療を受けている場合,十分な治療を尽くしたものと評価されやすい傾向にあります。具体的な治療方法は主治医とのご相談が適切ですが,可能であれば症状が重いことを把握してもらい,その症状に適した強度の治療を受けるのが望ましいです。

【治療中の症状経過】
治療期間中にどんな症状が出ていたか,という点が具体的に明らかであれば,それに対する治療も尽くされ,結果的に十分な治療を行ったと評価されやすいところです。例えば,首だけでなく上肢や下肢にも症状が出ているほど深刻な症状だったため,これを踏まえた治療内容に移行した,といった場合が挙げられます。

③重い症状が残存してしまっている

症状固定後の段階で,症状が残存してしまっている場合,その程度が問題になります。
その重さに関する判断要素としては,以下のようなものが挙げられます。

【症状の一貫性】
→診断書やカルテの記載上,事故直後と類似した症状が一貫して残存している場合,その症状は重い物と評価されやすいです。

【症状の常時性】
→症状が残存しているとき,それが動作をしたときに生じるのか,動作しなくても常時生じるのかは大きな違いになります。症状に常時性がある場合,その症状は重いと評価されやすいです。

【神経学的検査の結果】
→神経症状に関する後遺障害等級認定の判断に当たっては,その神経症状の程度を推し量るための「神経学的検査」の結果が参照されやすいです。具体的な検査としては,ジャクソンテストやスパーリングテストといった「神経根症状誘発テスト」が挙げられます。

ジャクソンテスト
頭部を後ろに倒しながら圧迫したとき,肩や上腕,前腕などに痛みや痺れが生じるかを確認する検査

スパーリングテスト
頭を後ろに反らせた状態で左右に傾けたとき,肩や腕,手などに痛みや痺れが生じるかを確認する検査

【画像所見】
→14級を目指す場合には画像所見の指摘は困難ですが,何らかの画像所見が医師の先生から指摘される状況であれば,非常に有力な材料になります。

むち打ちで後遺障害等級が認定されづらい場合

①事故態様が軽微な場合

事故態様そのものが軽微である場合,どれだけ治療を尽くしても,もともとの症状が小さいと評価され,後遺障害等級が認定されづらい傾向にあります。事故態様は後から動かすことができないので,事故態様が軽微と評価されやすいケースでは最初から覚悟の上で取り組むのが適切でしょうか。

②通院が短く,少ない場合

通院期間が短く,実通院日数が少ない場合,症状の軽さが意識され,後遺障害等級認定されづらい傾向にあります。等級認定を目指す場合は,リハビリ通院なども含めてできる限り充実した通院を継続しましょう。

③年少者の場合

未成年者などの年少者は,身体に可塑性があり,症状が生涯にわたって残存する可能性が低いと評価されやすい傾向にあります。そのため,むち打ちの神経症状が後遺障害等級認定の対象とされづらい立場にあると言えます。

④既往症がある場合

事故前に同一部位の受傷歴がある場合,事故と症状との因果関係が不明確になるため,後遺障害等級認定が受けづらくなる傾向にあります。

⑤ヘルニアの注意点

神経症状の原因として,ヘルニアが指摘されるケースもあります。ヘルニアは画像所見としての指摘が可能であるため,12級を含む後遺障害等級の対象になる可能性が高そうにも思われます。
しかしながら,ヘルニアに関しては,ヘルニアと交通事故との因果関係が問題になりやすい,という点に注意が必要です。具体的には,ヘルニアが外傷性のものと言えるかが問題になる場合が多く見られます。

ヘルニアは,外傷のみから生じることが少ないと理解されており,交通事故後に指摘されるヘルニアは,交通事故前から存在していたものの,交通事故によって自覚症状が現れ始めた,という経過であることが多数あります。その場合,ヘルニアそのものは外傷で発生したわけではないため,後遺障害等級認定の根拠となる画像所見とは理解されないのです。

ヘルニアの存在が直ちに後遺障害等級の根拠となるものでないことには注意したいところです。

むち打ちの後遺障害等級認定は弁護士に依頼すべきか

むち打ちの後遺障害等級認定を目指す場合,弁護士への依頼は非常に有力な選択肢になるでしょう。
むち打ちの場合には,客観的に症状を立証する手段に乏しいことが多いため,等級認定を目指す場合の主張・立証の内容は正しい工夫が必要になります。その具体的な内容は,むち打ちの後遺障害等級認定の獲得に精通した弁護士への依頼をすることで,より適切なものになり,等級認定に近づきやすくなるでしょう。

むち打ちの後遺障害等級認定に強い弁護士をお探しの方へ

むち打ちは,交通事故の受傷の中で最も多いものです。そのため,後遺障害等級認定についても,過去の先例が非常に多数あります。
しかしながら,症状自体が客観的にわかりづらいため,個別のケースで後遺障害等級認定が得られるかは判断が難しく,等級認定の困難な場合が珍しくありません。
むち打ちの後遺障害等級認定については,弁護士を通じて見込みを相談するのが有力でしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
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