交通事故の示談交渉はどのように行う?自分でやるのと弁護士に依頼するのはどう違う?交通事故示談の要点を徹底解説

●交通事故の示談とは具体的に何か?

●交通事故の示談交渉の流れを知りたい

●保険会社の提示を受け入れてよいか?

●自分で示談交渉できるか?

●示談交渉はどんな点に注意すべきか?

●示談交渉で弁護士に依頼するべき場合は?

というお悩みはありませんか?

このページでは,交通事故の示談交渉についてお困りの方に向けて,示談交渉の流れや内容留意すべき点や弁護士に相談するべき場合などを解説します。

交通事故の示談とは

交通事故における示談とは,交通事故被害者の損害賠償額を当事者間の協議で解決することを言います。交通事故の示談は,加害者側の保険会社と被害者(代理人弁護士)の間で行うのが通常です。
示談が成立した場合,加害者側保険会社が一定の金銭を支払い,それ以上には互いに金銭の関係がない(関係が清算された)ことを確認する内容の合意を取り交わし,終了します。

示談による解決の主な特徴としては,以下の点が挙げられます。

【メリット】

①迅速性裁判では数か月~年単位を要することも
②費用裁判手続の費用が発生せず解決できる
③柔軟さ示談内容は双方が合意できる限り自由
④秘密保持裁判は判決内容が公開される

【デメリット】

①譲歩の必要裁判で賠償され得る満額での合意は,保険会社に利益がなく実現困難
②金額の限界裁判をしなければ請求できない金銭もある(弁護士費用・遅延損害金)

もっとも,必ずしも裁判をすれば示談のときより金額が大きくなるというわけではありません
通常,示談交渉に際しては,互いに言い分の全てを相手にぶつけることはせず,円満解決の可能な金額の水準を協議することになりますが,裁判になるとそのような配慮はなくなります。そのため,裁判になると示談のときには出てこなかった争点が生じ,その争点について不利益な判断がなされれば,示談できたはずの金額より裁判の結果の方が小さな金額になってしまうことは十分に考えられます。

具体的なケースで示談での解決が有益かどうかは,交通事故に精通した弁護士への十分なご相談をお勧めします。

示談交渉の流れ

示談のメインとなる人身損害について,交通事故の発生から示談交渉までの流れは,概ね以下の通りです。

①交通事故の発生当事者間の連絡がスタート
②通院実施医師の指示に沿って入通院治療を受ける
③症状固定治療が終了時期に至る
④後遺障害等級認定後遺障害について等級認定を求める(行わない場合は省略)
⑤示談交渉の準備診断書やレセプトなど,示談交渉に必要な資料を取得する
⑥示談交渉の実施損害賠償額について話し合いをする
⑦示談内容の合意賠償金額や支払方法などについて当事者間で合意する
⑧示談書面の取り交わし合意を証するための書面を取り交わす
⑨入金・解決指定口座に入金がなされ,示談は解決となる

また,示談交渉を実施するときの大まかな流れは,以下の通りです。

【弁護士がいる場合】

①既発生の損害を確認医療機関に支払われた治療費,既に被害者へ支払われた金銭の内容や額を確認する
②弁護士による損害計算弁護士にて請求金額を計算する
③弁護士が相手保険に請求弁護士が相手保険に請求内容を示す
④相手保険の対案保険会社が合意内容の対案を示す
⑤示談交渉合意に至るまで協議を続ける
⑥示談成立口頭で合意を確認した後,保険会社と弁護士の間で書面を取り交わし解決

【弁護士がいない場合】

①保険会社による賠償額提示賠償額の明細を添えて書面で提示されることが一般的
②被害者側の返答承諾すれば示談成立,承諾しない場合は交渉継続
③示談交渉合意に至るまで協議を続ける
④示談成立保険会社と被害者の間で書面を取り交わし解決

相手保険の提示は妥当か

被害者が相手保険会社から損害賠償額の提示を受けた際,「提示金額が妥当か」というご相談が弁護士に寄せられることは非常に多いところです。

結論から言うと,基本的には,保険会社の被害者への提示金額が弁護士の目指す金額と同水準ということはありません。この点の十分な理解のためには,まず自賠責保険と任意保険の関係について把握する必要があります。

自動車保険には,主に自賠責保険と任意保険がありますが,両者の位置付けは以下のように区別できます。

【保険の種類】【加入の要否】【補償の範囲】
自賠責保険法律上強制加入法律等で定められた最低限の補償
任意保険加入するかは任意自賠責保険を超える損害の補償

任意保険は,自賠責保険が行う最低限の補償ではカバーしきれない損害を,加害者本人に代わって支払うべき立場にある,ということになります。そのため,任意保険の立場としては,自賠責の補償でカバーしきれない部分が存在しなければ,自社負担で支払う金銭が必要がなく,最も得である,という結論になります。

以上の経緯から,任意保険会社が被害者の方に提示する損害賠償額は,自賠責保険で補償される金額と同額であることが非常に多く見られます。この金額は,法律等で定められた最低限の補償額でしかないため,基本的には弁護士が交渉で目指す水準との間に開きのあることが通常でしょう。
これに対して,保険会社の提示と弁護士の目標水準に差のないケースもあり得ます。代表例としては,以下のようなものが挙げられます。

1.被害者側に相当程度の過失がある場合
2.通院日数が非常に少ない場合
3.保険会社が特に配慮して金額提示等をしていた場合

なお,保険会社は,被害者との間で示談を取り交わした場合,自社で被害者に支払をした後,自賠責保険に保険金の支払を請求します。被害者に支払う金額と自賠責から受領できる金額が同じであれば,賠償の負担は差引ゼロになる,という寸法です。

ポイント
保険会社の提示が弁護士の目指す金額水準であることは基本的にない
自賠責保険の金額を提示金額とすることが多い
過失がある場合などは目標金額に近いこともある
任意保険は,被害者に支払った後に自賠責保険から回収する方法で補填する

自力で保険会社と示談交渉を行うことは可能か

弁護士に示談交渉を委任する場合,どうしても弁護士費用の問題が生じます。そのため,弁護士に頼らず自力で慰謝料の交渉をする選択肢を検討することもあるかもしれません。

しかしながら,弁護士に依頼せず自力で保険会社と交渉しても,その交渉はあまり奏功しないのが通常です。これは,示談交渉に関する保険会社の運用によるものです。

保険会社は,弁護士の有無で賠償金額の計算方法を変える運用をするのが一般的です。具体的には,弁護士がいない場合には自賠責保険の補償額を念頭に金額提示し,一方で弁護士がいる場合にはいわゆる裁判基準(弁護士基準)と言われる水準を念頭に計算する,というのが保険会社の基本的な運用になっています。
そのため,弁護士に依頼せず自力で交渉を試みても,保険会社の運用上,どうしても相手保険の対応に限界が生じやすく,交渉が奏功しない結果になってしまうのです。
保険会社と慰謝料の交渉を試みる場合には,弁護士への依頼が必須であると理解するのが適切でしょう。

なお,弁護士が保険会社と慰謝料の交渉を行う場合,裁判で認められ得る最大額の80~90%を目指すというのが一般的な運用とされています。この金額と相手保険の提示内容との差額が,弁護士の交渉による増額ということになります。

ポイント
自力交渉は保険会社の運用上困難
弁護士の慰謝料交渉は裁判で認められ得る最大額の80~90%を目指すのが一般的

示談交渉の際に注意すべき項目

①物損の主な示談項目

①修理費修理工場と保険会社の間で協定を行い,金額を定める
②代車費用修理に必要な期間中,代車を借りるための費用
③評価損新車で車両の価値に損害が生じた場合の損害
④休車損害車両が利用できないため得られなくなった利益(収入)

【全損の場合のみ】

①車両時価額車種・年式・走行距離を基準に計算する
②買替諸費用全損のため新たに車両を購入した場合,購入に伴って支出を余儀なくされた費用(※)
※主な買替諸費用としては,登録費用,車庫証明費用,納車費用,リサイクル費用などが挙げられます。

項目のうち,代車費用についてその期間が,評価損についてその有無が,それぞれ問題になることが多く見られます。

代車費用は,基本的に2~4週間程度を目安にすることが多く見られます。現実にそれ以上の期間がかかった場合にどうするか,という争点が生じやすい傾向にあるところです。トラブル回避のためには,自分の保険で代車特約が利用できないか,確認することも有益です。
評価損については,修理歴がついたから必ず発生するわけではなく,基本的に新車にしか生じないとされています。具体的には,登録からの期間,走行距離,車種(高価な方が生じやすい)等が判断基準になるでしょう。評価損の金額は,修理費の10~30%ほどとみなす例が多く見られます。

また,全損とは,車両の修理費が時価額を上回ってしまうことを言います。車両の損害は,車両そのものの価値を超えることはないため,修理費が時価額を上回ってしまうと,修理費全額は支払われず,時価額までの支払となります
全損の場合には,時価額がいくらか,という問題が生じやすいところです。相手保険の主張する金額が低い,と考える場合は,中古車市場における同種車両の販売価格を確認し,これを基準に金額の主張をするのが有力でしょう。

なお,全損の場合,時価額に加えて買替諸費用の支払も受けられるのが一般的です。ただし,買替諸費用が発生するのは現実的に買い替えた場合に限られます。

ポイント 物損で問題になりやすい項目
代車費用の期間
評価損の有無
車両時価額がいくらか

②人身の主な示談項目

①治療費治療に要した実費が対象となる
②入院雑費入院中に発生する生活関係費
③通院交通費通院に要した交通費。自家用車や公共交通機関が基本
④休業損害休業を要した場合に「日額×日数」分が発生する
⑤傷害慰謝料入院期間,通院期間,実通院日数を基準に計算する

【付添看護を要した場合】

①入院付添費入院時に付き添いを要した場合に発生
②通院付添費通院時に付き添いを要した場合に発生

【後遺障害等級認定された場合】

①後遺障害慰謝料後遺障害等級に応じて発生
②逸失利益後遺障害に伴う労働能力の低下により生じた収入減少
③将来介護費介護を要する後遺障害に対して発生


主に争点の生じやすい項目と交渉方法としては,以下のものが挙げられます。

【項目】【争点】【交渉方法等】
通院交通費タクシー利用医師からタクシー通院の指示をもらう

事前に相手保険と相談する
休業損害①休業の必要な期間医師から休業の指示をもらう

休業の事情や内容を事前に保険会社と共有し,承諾を得る
休業損害②自営業者の基礎収入額・休業の必要確定申告書や事故直前の収入額に関する資料を提出する

休業を要する事情を丁寧に説明する
傷害慰謝料対象期間症状固定時期について医師の指示をもらう

保険会社と事前に交渉する
逸失利益①対象期間の長さ後遺障害が仕事に影響を及ぼす具体的な内容を説明する
逸失利益②対象期間(定年後)定年後の再雇用予定などを示す
将来介護費日額どのような介護が必要か,どのような医師の指示があったかを示す(職業付添人を要する方が金額が高くなりやすい)

示談が成立しやすいケース・しづらいケース

交通事故の示談は,争点になる項目が少ないほど示談が成立しやすくなります。特に,争点が慰謝料額のみである場合は,合意に至り,示談が成立しやすくなると言えるでしょう。

一方,当事者間の主張に隔たりが大きい場合は,示談の成立がしづらい傾向にあります。代表例が過失割合に関する争いでしょう。双方がともに被害者であると主張しているなど,過失割合に関する主張が大きく異なっていると,個別の損害項目の交渉に入ることもできず,その結果示談の成立も困難になりやすいところです。

ポイント
慰謝料のみの交渉は特に示談が成立しやすい
過失割合の主張に差が大きいと示談の成立が困難

示談交渉の余地がないケース

代表例が自損事故の場合です。自損事故では,自分の人身傷害保険に対応してもらい,人身傷害保険金を受領するのが通常ですが,人身傷害保険金の慰謝料などは,約款で金額が全て定められており,交渉の余地がありません。いわゆる自賠責基準・裁判基準といったものもないため,注意しましょう。

もっとも,後遺障害等級が何級に認定されるか,後遺障害等級が認定された場合の逸失利益がいくらか,という点については,弁護士に依頼したり交渉してもらったりする余地があり得ます。具体的な判断については弁護士に相談してみることをお勧めします。

ポイント
自損事故は慰謝料の交渉余地がない
後遺障害等級に関する弁護活動の余地はあり得る

弁護士への相談・依頼が有力な場合

弁護士に示談交渉の相談や依頼を行う場合,弁護士への依頼によって弁護士費用を超える利益が得られるのであれば,依頼が有益と言えます。具体的には,以下のような場合に弁護士への依頼が有益になりやすいでしょう。

①過失がない場合

過失がある場合,損害の一部が自己負担になります。その影響で,弁護士への依頼によって得られる利益が目減りしてしまう可能性が生じます。
過失がなければ,過失による利益の目減りが生じないため,弁護士への依頼が有益になりやすいと言えます。

②受傷の程度が大きい場合

骨折を伴っているなど,受傷の程度が大きい場合,損害賠償額も大きくなりやすい傾向にあります。そのため,弁護士への依頼により増額し得る幅も大きくなりやすく,弁護士への依頼が有益になることが多いでしょう。

③後遺障害等級が認定された場合

後遺障害等級が認定されると,後遺障害に対する慰謝料や逸失利益といった損害が新たに発生します。それらの金額は大きなものになりやすいため,弁護士依頼による増額幅も大きくなりやすく,弁護士依頼が有益になるのが通常です。

④弁護士費用特約の利用ができる場合

弁護士費用特約が利用できれば,弁護士依頼による費用を保険会社に支払ってもらうことができます。そのため,弁護士依頼による利益が特に大きくなくても,弁護士への依頼が有益になりやすいでしょう。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

交通事故の示談交渉は,弁護士の有無で結果が大きく変わる可能性があります。
もっとも,実際にご自身のケースで結果が変わるのか,どのように変わる可能性があるのかを判断することは難しく,具体的な検討は交通事故に強い弁護士へのご相談が

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
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