後遺障害等級認定とは何をするの?誰がどんなルールで認定するの?認定を受けるとデメリットはある?悩みを解消したい方への弁護士解説

●後遺障害等級とは何か?

●後遺障害等級はどのように認定されるのか?

●後遺障害等級認定されるとどんな支払があるのか?

●後遺障害等級認定の基準は何か?

●適切な等級認定を受けるためにはどうするべきか?

●後遺障害等級認定を受けるデメリットはあるか?

●後遺障害等級認定については弁護士に依頼すべきか?

というお悩みはありませんか?

このページでは,後遺障害等級認定の手続や判断基準後遺障害等級認定を獲得するためにするべきこと弁護士依頼の要否などを解説します。

後遺障害等級認定とは

交通事故で後遺障害が残った場合,これに対する金銭賠償を受けるためには,特定の後遺障害等級に該当するとの認定を受ける必要があります。交通事故によって負った怪我や病気の後遺症が残った場合に,その障害の程度を評価して等級を付与する制度を,「後遺障害等級認定」といいます。

後遺障害等級認定は,交通事故被害者が被った後遺障害の程度を客観的に評価し,これに基づいて適切な賠償を行うために実施されるものです。後遺障害等級が認定された場合,その等級に応じて慰謝料や逸失利益といった金銭賠償の対象となります。

被害者本人が後遺障害の存在を主張したとしても,それを個別に金銭換算することはできないため,等級という一定のハードルを設けるのが後遺障害等級認定の制度となります。どこまでのハードルを越えたか,つまりどの等級に認定されたかによって,賠償額の計算基準が決まり,後遺障害の程度や内容に応じた適正な金銭賠償が可能になります。

後遺障害等級認定の方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

後遺障害等級認定された場合の支払

後遺障害等級が認定された場合の,被害者への基本的な支払内容は以下の通りです。

①慰謝料

慰謝料とは,精神的苦痛に対する賠償を指します。後遺障害等級の対象になる症状が残存したことに対する精神的苦痛を金銭換算したものがが,後遺障害慰謝料です。
慰謝料の金額は等級によって異なります。等級ごとの後遺障害慰謝料額は,以下の通りです。

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

②逸失利益

後遺障害の逸失利益とは,後遺障害が生じたことによって労働能力が低下した結果,減少する収入額に応じた賠償を指します。
後遺障害等級が認定される場合,等級に応じて労働能力が一定程度減少したものと評価され,労働能力が低下した分だけ将来の収入が減少するものとみなします。その収入減少を逸失利益といい,後遺障害等級が認定された場合には賠償の対象となります。

具体的な計算方法については,こちらの関連記事をご参照ください。

主な認定基準 ①むち打ち

むち打ちは,交通事故の中でも最も事例の多い受傷内容と言ってよいものです。むち打ちの場合,頸部や腰部など,患部の神経症状について等級認定の対象になるか,という問題になるのが一般的です。
想定される等級の内容は以下の通りです。

等級基準
12級局部に頑固な神経症状を残すもの
14級局部に神経症状を残すもの

12級に該当する神経症状は,症状が「医学的に証明」可能な場合を対象とします。症状の原因が根拠となる画像所見で特定できる場合を指すことが通常です。
14級に該当する神経症状は,症状が「医学的に説明」可能な場合を対象とします。証明はできないものの,事故の規模や受傷の程度などから将来において回復困難な障害と評価できる場合が該当します。

主な認定基準 ②上肢・下肢骨折

上肢や下肢の骨折については,以下のような後遺障害等級が考えられます。

【神経症状】
むち打ちの場合と同じく,12級又は14級の等級認定が想定されます。

等級基準
12級局部に頑固な神経症状を残すもの
14級局部に神経症状を残すもの

【可動域制限】
関節可動域が制限された場合,その程度に応じて後遺障害等級認定の可能性が考えられます。主な認定基準は以下の通りです。

等級基準可動域制限の程度
8級関節の用を廃したもの患側が健側の10%程度
10級関節の機能に著しい障害を残すもの患側が健側の2分の1以下
12級関節の機能に障害を残すもの患側が健側の4分の3以下

【人工関節】
人工関節や人工骨頭を挿入した場合,後遺障害等級認定の可能性が見込まれます。主な認定基準は以下の通りです。

等級基準具体的な要件
8級関節の用を廃したもの人工関節挿入+関節可動域2分の1以下
10級関節の機能に著しい障害を残すもの人工関節挿入

【偽関節】
偽関節とは,骨折部に癒合不全が生じ,本来つながるべき部分がきれいにつながらなかった結果,関節のような状態になってしまったものをいいます。関節ではないのに関節のようになってしまった,偽の関節,というべきものです。大腿骨や上腕骨など,長管骨と呼ばれる細長く大きな骨の骨折時に発生することがあります。

偽関節に関する後遺障害等級認定としては,以下の基準があります。

等級基準具体的な要件
7級偽関節を残し,著しい運動障害を残すもの偽関節を残し,硬性補装具を常時使用している場合
8級偽関節を残すもの偽関節を残し,硬性補装具を常時使用するのでない場合

ポイント 上肢・下肢骨折時の主な後遺障害等級
神経症状:14級又は12級
関節可動域制限:4分の3以下で12級以上
人工関節:挿入すれば10級以上
偽関節:偽関節あれば8級以上

主な認定基準 ③体幹骨(脊柱)骨折

人体の中心部を構成する脊柱部の骨折では,上肢や下肢の骨折とは異なる後遺障害等級認定の対象となることがあります。
具体的な後遺障害等級認定としては,以下の基準があります。

【変形障害】
圧迫骨折や破裂骨折に伴って脊柱部の変形が生じる後遺障害です。

等級基準
6級脊柱に著しい変形を残すもの
8級脊柱に中程度の変形を残すもの
11級脊柱に変形を残すもの

具体的基準

脊柱に著しい変形を残すもの(6級)
1.複数の椎体の圧迫骨折で前方椎体高の合計が後方椎体高の合計より椎体1個分以上低くなっている場合
2.圧迫骨折で前方椎体高の合計が後方椎体高の合計より椎体2分の1個分以上低くなっており、かつ、コブ法による側彎度が50度以上ある場合

脊柱に中程度の変形を残すもの(8級)
1.圧迫骨折で前方椎体高の合計が後方椎体高の合計より椎体2分の1個分以上低くなっている場合
2.側彎度が50度以上となっている場合
3.環椎(第一頚椎)または軸椎(第二頚椎)の変形・固定により次のいずれかに当てはまる場合
a.60度以上の回旋位となっている
b.50度以上の屈曲位となっている
c.60度以上の伸展位になっている
d.側屈位となっており、矯正位(頭部を真っ直ぐにした姿勢)で頭蓋底部と軸椎下面の平行線の交わる角度が30度以上となっている

脊柱に変形を残すもの(11級)
1.圧迫骨折が生じ、そのことがエックス線写真等で確認できる場合
2.脊椎固定術が行われた場合
3.3個以上の脊椎について、椎弓切除術などの椎弓形成術を受けた場合

【運動障害】
圧迫骨折などの結果,脊柱部の運動機能に制限が生じる後遺障害です。

等級基準
6級脊柱に著しい運動障害を残すもの
8級脊柱に運動障害を残すもの

具体的基準

脊柱に著しい運動障害を残すもの(6級)
次のいずれかにより頚部および胸腰部が強直したもの
①頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており,そのことがX線写真等により確認できるもの
②頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

脊柱に運動障害を残すもの(8級)
次のいずれかにより頚部または胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの
①頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており,そのことがX線写真等により確認できるもの
②頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

【荷重障害】
脊柱を支える筋肉や組織の変化に伴い,荷重機能に制限が生じる後遺障害です。

等級基準
6級脊柱に著しい荷重障害を残すもの(運動障害に準じて取り扱う)
8級脊柱に荷重障害を残すもの(運動障害に準じて取り扱う)

具体的基準

6級:頚部および腰部の両方の保持に困難があり,常に硬性補装具を必要とする場合
8級:頚部または腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とする場合

主な認定基準 ④頭部外傷

頭部への外傷は,脳に影響を及ぼし,脳機能に関する後遺障害に至ることがあります。
主な後遺障害等級としては,以下のものが挙げられます。

【高次脳機能障害】
頭部外傷の影響で,認知機能,行動制御能力,記憶能力などに制限の生じる後遺障害です。

等級基準
1級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9級神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

【外傷性てんかん】
脳の中枢神経が損傷したことにより,神経細胞に異常が生じ,発作が発生する障害です。発作の頻度や程度に応じた後遺障害等級の定めがあります。

等級基準具体的な要件
5級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの1ヶ月に1回以上の発作があり、かつその発作が転倒する発作等(※)であるもの
7級神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの転倒する発作等が数ヶ月に1回以上あるもの又は転倒する発作等以外の発作が1ヶ月に1回以上あるもの
9級神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの数ヶ月に1回以上の発作が転倒する発作等以外の発作であるもの又は服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの
12級局部に頑固な神経症状を残すもの発作の発現はないが、脳波上に明らかにてんかん性棘波(きょくは)を認めるもの
※転倒する発作:①意識障害の有無を問わず転倒する発作,又は②意識障害を呈し状況にそぐわない行為を示す発作

【遷延性意識障害(せんえんせい いしきしょうがい)】
脳挫傷の影響で意識が戻らない状態,いわゆる植物状態になった場合です。

等級基準
1級(要介護)神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

【脳挫傷痕】
MRI等で脳挫傷痕の存在が認められ,頭痛や神経痛等の症状を引き起こす場合です。

等級基準
12級局部に頑固な神経症状を残すもの

主な認定基準 ⑤外見(傷跡)

外から見える部分に傷跡が残った場合です。傷跡の部位と大きさによって等級の基準が定められています。

【外貌(=頭部・顔面部・頸部)】

等級基準具体的な要件
7級外貌に著しい醜状を残すもの頭部:手の平大(指の部分は含まない)以上の瘢痕または頭蓋骨の手の平大以上の欠損

顔面部:鶏卵大以上の瘢痕または10円硬貨大以上の組織陥没

頸部:手の平大以上の瘢痕
9級外貌に相当程度の醜状を残すもの顔面部:長さ5センチメートル以上の線状痕
12級外貌に醜状を残すもの頭部:鶏卵大以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大以上の欠損

顔面部:10円硬貨以上の瘢痕または長さ3センチメートル以上の線状痕

頸部:鶏卵大以上の瘢痕

【上肢・下肢】

等級基準
12級露出面にてのひらの3倍以上の瘢痕があり,特に著しい醜状と判断される場合
14級露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの

適切な等級認定を受ける方法

望ましい後遺障害等級認定を受けるためには,目指す等級認定の基準に着目し,その基準を満たすことが分かる内容で診断書等の作成を受けることが適切です。

後遺障害等級の中には,測定値のみで結論の出るものもありますが,その判断に用いられる測定値が漫然と測定したものなのか,認定基準を踏まえて測定したものなのかによって,測定値そのものも変化する可能性があり,当然ながら認定結果にも影響し得ます。
また,症状固定前の入通院段階から,主治医の先生に必要な事項を診断書等に記載していただいておく,カルテに残しておいていただくなど,等級認定に備えた記録化,証拠化は非常に重要な意味を持つことも珍しくありません。

特に重大な受傷が生じてしまったケースの場合,等級認定によって極めて大きな金額の変化が生じる可能性もあるため,早期に交通事故に精通した弁護士へのご相談をお勧めします。

後遺障害等級認定のデメリット

後遺障害等級認定に関する疑問として,認定を受けることのデメリットを懸念される場合が散見されます。何らかの障害者とみなされることで,社会生活上の不利益を被るのではないか,という意味ですね。

しかしながら,そのような不利益やデメリットというものは特段ありません。後遺障害等級によって社会生活上の何らかのレッテルを貼られるものではなく,後遺障害等級は単純に交通事故の損害賠償額の基準となるもの,という位置づけにとどまります。

「後遺障害」という語句に特別な懸念をされることなく,後遺障害等級認定を目指して差し支えないでしょう。

後遺障害等級認定を弁護士に依頼すべき場合

後遺障害等級認定は,交通事故の中でも最も大きく損害賠償額に影響し得る性質のものということができます。しかし,その内容は一見では複雑にも映り,日頃から交通事故に携わる立場にないと適切に対処することは容易ではありません。損害賠償額に甚大な影響を及ぼす後遺障害等級認定については,基本的に弁護士への依頼が適切でしょう。

もっとも,弁護士費用の方が高くつく事態,いわゆる費用倒れは避ける必要があります。この点,費用倒れを避けやすいケースとしては,以下の場合が挙げられます。

①お怪我の規模が大きい場合
②ご自身に過失がない場合
③弁護士費用特約がある場合

これらは代表例ですが,他にも弁護士依頼が有益である場合も考えられますので,具体的なケースについては弁護士への相談を実施することをお勧めいたします。

ポイント
適切な等級認定を受けたい:あらかじめ等級認定基準に着目して入通院や検査等を受ける
後遺障害等級のデメリット:特にない
弁護士への依頼:費用倒れが避けられる見込みがあれば積極的に

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

後遺障害等級認定は,その有無や内容で受け取る金額の規模が大きく変わるため,適切な賠償を受領するために極めて重要なものです。
もっとも,その認定基準は多岐に渡り,ご自身の症状が基準を満たしているのか,基準を満たすためにはどう対応すべきか,判断することは容易でありません。
後遺障害等級認定に関しては,交通事故に精通した弁護士へのご相談が非常に有益です。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
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