治療中には何に気を付けるべき?保険会社から送られた書面はどうすればいい?弁護士に依頼する方がいい?弁護士が徹底解説

●交通事故被害の通院時に注意すべきことは?

●入院中に生じた負担はどのように請求できるか?

●仕事の休業が生じた場合に必要な手続は?

●治療中に対応が必要になることは何があるか?

●通院はいつ終了してよいか?

●入通院中に弁護士へ相談するメリットはあるか?

というお悩みはありませんか?

このページでは,交通事故に伴う入通院治療中の対応でお困りの方に向けて,入通院治療時に注意すべきこと必要な対応などを解説します。

通院した際に注意するべきこと

通院時には,医師の問診を受けるのが通常ですが,その際には,可能な限り自覚症状を伝えて把握してもらい,自覚症状を記録してもらうようにしましょう。
その理由は,概ね以下の通りです。

①事故と症状との因果関係を明確にするため
交通事故では,被害者に生じた症状と交通事故との因果関係が問題になることがあります。特に,事故から相当期間が経った後に初めて記録された自覚症状があると,その症状は事故との因果関係がないとの判断になるケースも少なくありません。
交通事故の受傷は,基本的に時間が経ってから自覚症状が出現する性質のものではないため,事故後に他の要因で自覚症状が出てきたと考えられてしまうのです。

そのため,事故直後から同じ症状は継続しており,決して事故から長期間経った後に初めて症状が出たわけではない,ということを記録してもらいましょう。そうすることで,症状と交通事故との因果関係を明確にすることが可能になります。

②治療期間が争いになった場合の資料とするため
交通事故の治療は,症状が固定した段階で終了となりますが,その具体的な時期はしばしば争いになります。特にレントゲンやMRIなどの画像で異常が見られず,自覚症状のみというケースでは,客観的に症状固定の時期を判断することも難しく,保険会社の匙加減で終了時期が判断されることも珍しくありません。保険会社が自社の判断で症状固定とみなし,治療費の支払を終了することは,「打ち切り」と呼ばれることがあります。

この打ち切りのお話が出てきた際,自覚症状の経過や推移が医師によって十分に把握,記録されていれば,打ち切り時期が不適切であることの根拠資料となる可能性があるでしょう。具体的には,症状がまだ固定しておらず,治療によってよくなる見込みがあること,そのためにはどのような治療をどのくらいの期間行うのが妥当と見込まれるか,といった点が明確であれば,保険会社に再考を促しやすくなります。

③後遺障害等級の認定を目指す場合の資料とするため
後遺障害等級認定に際しては,自覚症状の経過を判断材料とすることも珍しくありません。あるタイミングで症状が治った,と指摘されていれば,後遺障害が残存しているとの判断は非常になされやすいでしょう。
この点,事故直後から症状固定までの間における自覚症状の経過が具体的に記録されており,症状固定時にどのような自覚症状が残存しているのかが明確であれば,これを踏まえた後遺障害等級認定の可能性が高くなるでしょう。特に,必要な治療を全て尽くしたものの,頑固な症状が重く残り続けてしまっている,という場合,症状固定時に重い症状が残っていることの裏付けとなり,後遺障害等級認定の根拠となることが考えられます。

ポイント
通院時には自覚症状を確実に伝え,記録してもらう
理由:①事故と受傷との因果関係②治療継続の必要性③後遺障害の残存 の根拠となり得るため

入院中の負担が生じた場合の対応

入院中には,入院先で生活を送るための実費が発生します。日用品代,栄養剤代,テレビカード代,新聞代などが典型例ですが,これらの費用は,基本的に「入院雑費」として損害に計上されることとなります。
入院雑費は,いわゆる裁判基準だと入院1日あたり1,500円となっており,実際に1,500円発生しているかにかかわらず損害賠償の対象となるのが基本的な運用です。

この点,入院中の負担として問題になりやすいものには,以下のようなものもあります。

①家族の休業損害

入院中の被害者のために,家族が仕事を休業して病院へ行った場合,その家族の休業損害が賠償の対象になるのか,という点です。
心情的には,家族のために仕事を休んで駆け付けた場合にそのマイナスを補填してほしい,と感じるところですが,法的にはその必要性が問題になりやすいところです。

まず,医師の付添指示がある,症状の性質上付添が必要である,という場合には,入院中の付添費として支払の対象になることが見込まれやすいです。休業してまで入院先に付き添う必要のあることが客観的にわかるためですね。

一方,客観的には付添いの要否が不明確な場合,保険会社との協議の問題になるでしょう。一般的には,事前に相談の上,期間や回数を区切って行うのであれば,円滑に支払われることが多い傾向にあります。事前相談なく後から漫然と請求しても,要求通りに支払われる性質のものでないことは押さえておきましょう。

②お見舞い交通費

お見舞い時の交通費は,必要かつ合理的な範囲であれば交通事故の損害に含む,というのが基本的な運用です。実際のケースでは,できる限り事前に相手保険と個別の相談を行い,その了承を得た上で請求するのが適切でしょう。

この点も,やはり無尽蔵に認められる性質のものではないため,最後に漫然と請求すれば足りるというわけでないことに注意が必要でしょう。

③個室差額ベッド代

被害者の希望で個室で入院した場合,個室の方が複数人部屋よりも費用が高いため,複数人部屋を使っていれば生じたであろう金額との差額が発生します。これは,交通事故の損害に含まれず,加害者側の保険に請求できないことが通常です

もっとも,病院都合で個室になった場合や,受傷内容や治療の性質上個室とせざるを得ない場合など,被害者の希望と関係なく個室を利用した場合には,個室代も含めた金額が損害額となるでしょう。

ポイント
入院中の出費は主に入院雑費の対象
お見舞いや付き添いの費用は必要かつ合理的な範囲で請求可能
個室差額ベッド代は自己都合だと請求不可

仕事の休業が生じた場合の対処

交通事故に伴って仕事の休業が生じた場合,休業損害の請求が必要です。休業を強いられると生活費に直結しますので,早期に適切な請求を行いましょう。
その請求方法は,会社員と自営業の場合で異なります。

①会社員の場合

「休業損害証明書」及び「事故前年分の源泉徴収票」の提出を要するのが通常です。休業損害証明書は,保険会社に書式があり,これを用いてご勤務先に記載していただくことになります。
そのため,相手保険会社から休業損害証明書の書式を送ってもらい,勤務先に休業損害証明書への記載と源泉徴収票の用意をしてもらうのがスムーズでしょう。

【休業損害証明書の書式例】

②自営業者の場合

「事故前年分の確定申告書」の提出を要するのが通常です。また,収入減少の金額として主張したい内容がある場合は,その内容が分かる資料をできる限り詳細に提出するのが適切です。
事業の開始から間もないなど,確定申告の実績がない場合には,事故直前の収入額が分かる資料などを個別に提出し,保険会社の検討を求める必要が生じます。

会社員のように休業を証明してくれる人がいないため,より丁寧で粘り強い説明を行う必要が生じることもあります。

治療中の期間に対応を要する事項

交通事故の損害賠償は,基本的に通院終了後に行うこととなります。それは,通院が終了しないと慰謝料などの損害額が確定しないためです。
もっとも,治療期間中に対応したり解決したりするべきことも複数あります。主なものは以下の通りです。

①物損の解決

物的損害は,通院が終了しなくても損害額が確定するため,通院終了前に解決するのが一般的です。
一般的な物損の内容は以下の通りです。

①車両修理費修理見積りを取り,その金額を基準に損害額を計算します。
②車両時価額全損の場合,①修理費でなく時価額が車両損害額です。車種や年式を基準に計算します。
③レッカー代事故車両を運搬するのに要した実費が対象となります。
④代車費用事故車両の修理中,全損時の新車取得前など,車両が利用できない間に代車を利用した費用です。概ね2~4週間程度を対象に実額が支払われるのが一般的です。
⑤携行品損害携帯電話や衣服,ヘルメットなど,事故により損傷した物品の損害が該当します。通常,物品の写真と購入時期及び購入価格を保険会社と共有し,物品の現在価格を基準に計算します。

②同意書

交通事故において保険会社とやり取りする「同意書」は,保険会社が医療機関との間で自分の情報をやり取りすることを同意する,という意味の書面です。
医療機関の有する個人情報を保険会社が取得するためには,患者の同意が必要であるため,その同意を同意書という形で取り付けるのです。

同意書への署名押印を求められた場合,自分で医療機関から診断書を取り付けるような例外的な場合を除いて応じるのが適切でしょう。対応を拒否した場合,保険会社が医療機関とやり取りできず,被害者自身が医療機関と必要なやり取りをしない限り治療費が支払われない可能性もあり得ます。

③健康保険利用の手続

交通事故の入通院においても健康保険を利用するケースがあります。このとき,健康保険の利用に必要な手続に「第三者行為による傷病届」という届け出がありますが,これは,健康保険を利用する段階で極力速やかに提出するのが適切です。

多くの場合,ご加入の健康保険組合等から必要書面が受領できるため,相手保険に記載してもらうべき事項を記載してもらった上,自身の情報も記入して提出するのが円滑でしょう。

ポイント
物損は入通院中の解決が通常
同意書の作成には応じるのが適切
健康保険利用の場合は早めに書面提出を

自己判断による通院終了のメリット

通院の終了時期について,自己判断で終えていいのか,という点は疑問として生じやすいところです。

この点,早期解決という面では自己判断で通院を終了するのも決して不合理ではありません。通院自体が時間的拘束や負担を伴う行為であり,通院が終了しない限り交通事故の解決はできないため,早期終了を優先するという判断もあり得るでしょう。

もっとも,通院期間を自ら短縮することになるため,賠償金額は小さくなることが否めません。自己判断で通院終了をご検討の場合は,具体的にどのようなメリット・デメリットが生じるかも含め,弁護士にご相談されると有益でしょう。

入通院中に弁護士相談するメリット

交通事故の賠償額計算が通院終了後になる関係で,弁護士が賠償額を増額させるために役割を発揮するタイミングも通院終了後となります。
もっとも,入通院中に弁護士相談することは決して無駄でなく,入通院中の弁護士相談には以下のようなメリットが挙げられます。

①窓口対応を弁護士に委ねられる

弁護士に速やかに依頼する場合,弁護士が相手保険との連絡窓口となり,連絡の全てを受けることが可能です。そのため,電話連絡などに応じるご負担の軽減につながります。

②事前に見通しを確認できる

弁護士に相談し,入通院中でわかる限りの見通しを把握することで,その後の対応がより容易になります。また,現状で把握すべきこと,把握する必要のないことを区別・整理できれば,解決のための検討の負担は大きく軽減するでしょう。

③今後の弁護士依頼が円滑になる

弁護士相談を実施し,具体的な相談や助言などがなされていれば,その後具体的な依頼を希望することとなったときの手続はより円滑になります。また,事前に信頼関係の築ける弁護士を見つけられれば,依頼時の弁護士探しの負担は大きく軽減できるでしょう。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

交通事故の入通院治療中は,ケースによって必要となる対応の内容や量が様々です。特に,お怪我の程度が大きい事故であるほど,必要なご対応も多くなりやすい傾向にあります。
それらのご対応は,多くの場合相手保険会社から案内を受けることになりますが,保険会社が被害者に有益な案内をしてくれるわけではないため,案内の内容を十分に理解して対応する必要があります。
交通事故に強い弁護士に依頼すれば,適切な対応を任せることができ,安心して治療に専念できるでしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
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