
交通事故の被害に遭った際,治療が終了してもなお症状が残ってしまう場合には,後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。後遺障害等級が認定された場合,受領できる慰謝料額などが大きく変わるため,等級の認定基準を把握することは重要です。
自賠責保険では,1級から14級の後遺障害等級が定められており,それぞれに詳細な認定基準が設けられています。ここでは,後遺障害9級の対象となる症状や認定の基準,認定された場合の慰謝料額などを弁護士が解説します。

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目次
- 1 後遺障害9級の認定基準
- 1.1 【1号】両眼の視力が0.6以下になつたもの
- 1.2 【2号】一眼の視力が0.06以下になつたもの
- 1.3 【3号】両眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの
- 1.4 【4号】両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
- 1.5 【5号】鼻を欠損し,その機能に著しい障害を残すもの
- 1.6 【6号】咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
- 1.7 【7号】両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
- 1.8 【8号】一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり,他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
- 1.9 【9号】一耳の聴力を全く失つたもの
- 1.10 【10号】神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
- 1.11 【11号】胸腹部臓器の機能に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
- 1.12 【12号】一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの
- 1.13 【13号】一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの
- 1.14 【14号】一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの
- 1.15 【15号】一足の足指の全部の用を廃したもの
- 1.16 【16号】外貌に相当程度の醜状を残すもの
- 1.17 【17号】生殖器に著しい障害を残すもの
- 2 後遺障害9級の慰謝料
- 3 後遺障害9級の逸失利益
- 4 後遺障害等級の認定を受ける方法
- 5 弁護士依頼のメリット
- 6 交通事故に強い弁護士をお探しの方へ
- 7 お問い合わせ
後遺障害9級の認定基準
9級の認定基準一覧
1号 | 両眼の視力が0.6以下になつたもの |
2号 | 一眼の視力が0.06以下になつたもの |
3号 | 両眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの |
4号 | 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
5号 | 鼻を欠損し,その機能に著しい障害を残すもの |
6号 | 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの |
7号 | 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの |
8号 | 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり,他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの |
9号 | 一耳の聴力を全く失つたもの |
10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
11号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
12号 | 一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの |
13号 | 一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの |
14号 | 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの |
15号 | 一足の足指の全部の用を廃したもの |
16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
17号 | 生殖器に著しい障害を残すもの |
【1号】両眼の視力が0.6以下になつたもの
後遺障害等級の対象とする視力は,矯正視力を指します。そのため,眼鏡やコンタクトレンズなどを着用した状態の視力を基準に判断されます。
両眼の矯正視力が0.6以下になった場合,認定対象となります。
【2号】一眼の視力が0.06以下になつたもの
同じく矯正視力を基準に判断されます。
一眼の矯正視力が0.06以下になった場合,認定対象となります。
【3号】両眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの
「半盲症」とは
「半盲症」とは
視野の右半分又は左半分が欠損し,見えなくなってしまう症状をいいます。以下のような種類があります。
同側半盲:両眼の同じ側で半盲が生じる場合
異名半盲:両眼のそれぞれ反対側で半盲が生じる場合
また,視野の上半分または下半分が欠損する場合もあり,「水平半盲」といいます。
「視野狭窄」とは
「視野狭窄」とは
視野が狭くなる症状をいいます。以下のような種類があります。
同心性狭窄:中心部分ははっきり見えるが,周辺部分が見えない
不規則狭窄:視野の一部分が規則性のない形で狭くなる
「視野変状」とは
「視野変状」とは
半盲症や視野狭窄のほか,視野に異常が生じることをいいます。具体的には以下の内容があります。
暗転:視野の中に暗くて見えない部分が生じるもの
視野欠損:視野の一部が見えなくなる状態
【4号】両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
「まぶたに著しい欠損を残すもの」とは
まぶたを閉じた場合に角膜(眼球の色がある部分を覆う膜)を完全に覆えない程度のもの
まぶたが欠損した結果,両目について閉じたときに角膜が完全に覆われない状態となった場合,9級4号の認定対象になります。
【5号】鼻を欠損し,その機能に著しい障害を残すもの
「鼻を欠損し」たとは,以下の場合を指します。
「鼻を欠損し」たとは
鼻軟骨部の全部又は大部分の欠損をしたこと
鼻は,上部に鼻骨と呼ばれる骨であり,鼻骨の下に軟骨部があります。軟骨部は,一般的に鼻と呼ぶ三角錐の形に隆起した部位を指すものと理解して差し支えないでしょう。
したがって,鼻の三角錐形の部分が全部又は大部分欠損した場合に,欠損障害に該当し得ることになります。
著しい機能障害とは
鼻呼吸困難,または嗅覚脱失をいいます。
嗅覚の障害については,「嗅覚脱失」と「嗅覚減退」が挙げられますが,これらは「T&Tオルファクトメータ」(嗅覚測定用の基準臭)による検査で認知域値(においを判別・表現できる最低濃度)を測定し,判定されます。具体的な基準は以下の通りです。
「嗅覚脱失」認知域値5.6以上
「嗅覚減退」認知域値2.6以上5.5以下
鼻呼吸困難,または嗅覚脱失をいいます。
嗅覚の障害については,「嗅覚脱失」と「嗅覚減退」が挙げられますが,これらは「T&Tオルファクトメータ」(嗅覚測定用の基準臭)による検査で認知域値(においを判別・表現できる最低濃度)を測定し,判定されます。具体的な基準は以下の通りです。
「嗅覚脱失」認知域値5.6以上
「嗅覚減退」認知域値2.6以上5.5以下
このうち,著しい機能障害に位置付けられるのは「嗅覚脱失」となります。
【6号】咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
そしゃく機能と言語機能の両方に障害を残す場合が該当します。
①そしゃく機能の障害については,以下の点を基準に総合的に判断します。
上下咬合 | 咬合(こうごう かみ合わせの意)のズレなど |
排列状態 | 歯並びのズレや不足など |
下顎の開閉運動 | 歯をかみしめることができる程度など |
これらの判断に当たっては,以下のような点を考慮します。
そしゃく機能の判断要素
・画像所見(他覚的所見)があること
・他覚的所見と対応するそしゃく状況があること
そしゃく状況に関しては,「そしゃく状況報告書」を踏まえた判断が一般的です。そしゃく状況報告書とは,被害者やその家族が,食べられる食材の内容や程度を記載するものです。

「そしゃく機能に障害を残すもの」
=以下のいずれかの場合
①固形食物の中にそしゃくができないものがあること(※)
②そしゃくが十分にできないものがあり,そのことが医学的に確認できる場合(※※)
(※)ごはん,煮魚,ハム等はそしゃくできるが,たくあん,らっきょう,ピーナッツ等の一定の固さの食物中にそしゃくできないものがあるなど
(※※)不正咬合,顎関節の障害,開口障害など,そしゃくできないものがあることの原因が医学的に確認できる場合
②言語機能の障害は,語音(特に子音)の発音にどの程度の制限が生じたかを基準に判断されます。
子音は,以下の4種類に分けることができます。
子音の4種類
①口唇音(ま行音,ぱ行音,ば行音,わ行音,ふ)
②歯舌音(な行音,た行音,だ行音,ら行音,さ行音,しゅ,し,ざ行音,じゅ)
③口蓋音(か行音,が行音,や行音,ひ,にゅ,ぎゅ,ん)
④喉頭音(は行音)
これら4種類の子音それぞれについて,発音不能なものがあるか,何種類あるか,といった点を踏まえ,言語機能の障害の程度を判断します。
「言語の機能に障害を残すもの」
=4種の語音のうち,1種の発音不能のもの
【7号】両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
具体的な認定基準は以下の通りです。
①両耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり,かつ,最高明瞭度が70%以下のもの
【一耳の聴力ともう一耳の聴力の関係】

【両耳聴力と最高明瞭度の関係】

【8号】一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり,他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
具体的な認定基準は以下の通りです。
1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上(=耳に接しなければ大声を解することができない程度)
かつ
他耳の平均純音聴力レベルが50dB以上(一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度)
【9号】一耳の聴力を全く失つたもの
「一耳の聴力を全く失つた」とは,片耳の平均純音聴力レベルが90dB以上の状態であることをいいます。
片耳の聴力がこの状態にまで低下した場合,9級9号の認定対象になります。
【10号】神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
通常の労務に服することはできるが,社会通念上,就労可能な職種が相当程度に制約されるものを指します。
神経系統の機能や精神への障害の代表例としては,脳の器質的損傷に伴う高次脳機能障害,脳挫傷や脊髄損傷などによる身体性機能障害,脳の器質的損傷を伴わない非器質性精神障害などが挙げられます。
具体的な認定基準は,傷害の具体的な内容によって個別に定められています。
【1.高次脳機能障害】
脳機能の4能力のいずれか1つが相当程度失われていることを要します。
高次脳機能障害の4能力
①意思疎通能力
→職場などで他人と適切にコミュニケーションできるか
②問題解決能力
→作業課題の指示や要求水準を正しく理解し,適切に判断して円滑に業務遂行できるか
③作業負荷に対する持続力・持久力
→一般的な就労時間に耐えられるか
④社会行動能力
→職場で他人と円滑な共同作業ができるか,社会的行動ができるか
【2.身体性機能障害】
軽度の単麻痺が認められるもの
(単麻痺:片手又は片足のみの麻痺)
【3.非器質性精神障害】
非器質性精神障害の精神症状としては,以下のようなものが挙げられます。
精神症状
①抑うつ状態
②不安の状態
③意欲低下の状態
④慢性化した幻覚・妄想性の状態
⑤記憶又は知的能力の障害
これらの精神症状については,以下の「a」又は「b」のいずれかに該当するときに認定対象となります。
a.就労している者又は就労の意欲のある者であって,以下の判断項目のうち②~⑧のいずれか1つの能力が失われているもの又は判断項目の4つ以上についてしばしば助言・援助が必要と判断されるもの
判断項目
①身辺日常生活
②仕事・生活に積極性・関心を持つこと
③通勤・勤務時間の遵守
④普通に作業を持続すること
⑤他人との意思疎通
⑥対人関係・協調性
⑦身辺の安全保持,危機の回避
⑧困難・失敗への対応
b.就労意欲の低下又は欠落により就労していない者であって,身辺日常生活について時に助言・援助を必要とする程度の障害が残存しているもの
【4.外傷性てんかん】
数ヶ月に1回以上の発作が転倒する発作等(※)以外の発作であるもの又は服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの
※転倒する発作:①意識障害の有無を問わず転倒する発作,又は②意識障害を呈し状況にそぐわない行為を示す発作
【5.頭痛】
通常の労務に服することはできるが,激しい頭痛により,時には労働に従事することができなくなる場合があるため,就労可能な職種が相当程度に制約されるもの
【6.失調・めまい・平衡機能障害】
通常の労務に服することはできるが,めまいの自覚症状が強く,かつ,眼振その他平衡機能検査に明らかな異常所見が認められ,就労可能な職種が相当程度に制約されるもの
【7.疼痛性感覚異常(RSD・カウザルギー)】
通常の労務に服することはできるが,疼痛により時には労働に従事することができなくなるため,就労可能な職種が相当程度に制約されるもの
【11号】胸腹部臓器の機能に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
「胸腹部臓器の機能障害」と呼ばれるものです。胸腹部の臓器に障害が残った結果,労務自体はできるもののかなりの制限が生じる場合に,9級11号の認定対象となります。
具体的な認定基準は,臓器ごとに定められています。
1.呼吸器
動脈酸素分圧60Torr~70Torrで,動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲内(37Torr~43Torrの間)の場合
2.循環器
a.心機能の低下による運動耐容能の低下が中程度であるもの
「運動耐容能」とは
=運動の負荷に耐えることのできる能力をいい,どの程度の運動強度に耐えられるかによって区別をします。
運動・作業強度の指標には「METs」(メッツ)という単位を用い,この値が大きいほど運動強度が大きいものとなります。
「運動耐容能の低下が中程度であるもの」とは(9級)
=おおむね6METs(メッツ)を超える強度の身体活動が制限されるもの
(例)
平地を健康な人と同じ速度で歩くのは差し支えないものの、平地を急いで歩く、平地を健康な人と同じ程度で階段を上るという身体活動が制限されるもの
b.ペースメーカーを植え込んだもの
c.人工弁に置換する手術を行った場合で,継続的に抗凝血薬療法を行うもの
3.食道の障害
食道の狭さくによる通過障害を残すもの
以下のいずれにも該当する場合を指します。
「食道の狭さくによる通過障害を残すもの」とは
1.通過障害の自覚症状があること
2.消化管造影検査により,食道の狭さくによる造影剤のうっ滞が認められること
4.胃の障害
消化吸収障害及びダンピング症候群が認められるもの
消化吸収障害及び胃切除術後逆流性食道炎が認められるもの
「消化吸収障害」とは
以下のいずれかに該当するもの
1.胃の全部を亡失したこと
2.噴門部または幽門部を含む胃の一部を亡失し、低体重等(※)が認められること
(※)①BMI20以下又は②事故前からBMI20以下の場合は体重が10%以上減少
「ダンピング症候群」とは
以下のいずれにも該当するもの
1.胃の全部または幽門部を含む胃の一部を亡失した
2.早期ダンピング症候群に起因する症状(※)または晩期ダンピング症候群に起因する症状(※※)が認められること
(※)食後30分以内に出現するめまい,起立不能等
(※※)食後2時間後から3時間後に出現する全身脱力感,めまい等
「胃切除術後逆流性食道炎」とは
以下のいずれにも該当するもの
1.胃の全部又は噴門部を含む胃の一部を亡失したこと
2.胃切除術後逆流性食道炎に起因する自覚症状(胸焼け,胸痛,嚥下困難等)があること
3.内視鏡検査により食道にの胃切除術後逆流性食道炎に起因する所見(びらん,潰瘍等)が認められること
5.小腸の障害
a.小腸を大量に切除し,残存する空腸および回腸の長さが100センチメートル以下となったもの
b.小腸皮膚瘻を残すもののうち,瘻孔から漏出する小腸内容がおおむね1日100ミリリットル以上であるもの
(パウチなどによる維持管理が困難であるものを除く)
6.大腸の障害
a.大腸皮膚瘻を残すもののうち,瘻孔から漏出する大腸内容がおおむね1日100ミリリットル以上であるもの
(パウチなどによる維持管理が困難であるものを除く)
b.便秘を残し,用手摘便を要すると認められるもの
便秘とは
=次のいずれにも該当するもの
1.排便反射を支配する神経の損傷がMRIやCTなどにより確認できること
2.排便回数が週2回以下の頻度であって,恒常的に硬便であると認められること
c.便失禁を残し,常時おむつの装着が必要であるもの
(完全便失禁を残す場合を除く)
7.肝臓の障害
肝硬変
(ウイルスの持続感染が認められ,かつ,AST・ALTが持続的に低値であるものに限る)
8.すい臓の障害
外分泌機能の障害と内分泌機能の障害の両方が認められるもの
外分泌機能:膵液(消化液)を腸に送り出す機能
「外分泌機能の障害」とは
次のいずれにも該当するもの
1.上腹部痛,脂肪便,頻回の下痢などの外分泌機能の低下による症状が認められること
2.BT-PABA(PFD)試験で異常低値(70%未満)を示すこと
3.ふん便中キモトリプシン活性で異常低値(24U/g未満)を示すこと
4.アミラーゼまたはエラスターゼの異常低値を認めるもの
内分泌機能:ホルモンを血液中に送り出す機能
「内分泌機能の障害」とは
次のいずれにも該当するもの
1.異なる日に行った経口糖負荷試験で境界型または糖尿病型であることが2回以上確認されること
2.空腹時血漿中のC-ペプチド(CPR)が0.5ng/ml以下(インスリン異常低値)であること
3.Ⅱ型糖尿病に該当しないこと
9.腹部臓器周辺のヘルニア
常時ヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるもの
立位をしたときにヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるもの
腹壁瘢痕ヘルニア,腹壁ヘルニア,鼠径ヘルニア又は内ヘルニアを残す場合に認定対象となります。もっとも,手術を行うことが通常であり,通常は多くは手術によりヘルニア内容の脱出は認めなくなることから,手術を試みたものの完治できない場合などが対象となります。
10.腎臓の障害
a.一側の腎臓を失い,GFR値が50ml/分を超え70ml/分以下のもの
b.腎臓を失っておらず,GFR値が30ml/分を超え50ml/分以下のもの
11.尿管,膀胱及び尿道の障害
a.尿路変向術を行ったもの
→尿禁制型尿路変向術(禁制型尿リザボアおよび外尿道口形成術を除く)を行ったもの
b.排尿障害を残すもの
→膀胱の機能障害により残尿が100ミリリットル以上であるもの
c.畜尿障害を残すもの
→切迫性尿失禁および腹圧性尿失禁のため,常時パッド等を装着しなければならないが、パッドの交換までは要しないもの
【12号】一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの
「手指を失ったもの」とは,以下の場合を指します。
1.手指を中手骨又は基節骨で切断したもの
2.親指については指節間関節、それ以外の指については近位指節間関節において、基節骨と中節骨が離断したもの

(「障害認定必携」より引用)
【13号】一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの
「手指の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。
1.手指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
2.中手指節関節又は近位指節間関節(親指については指節間関節)の可動域が1/2以下に制限されるもの
3.親指について、橈側外転又は掌側外転のいずれかの可動域が1/2以下に制限されるもの
4.手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚完全に脱失したもの
「親指を含む2本の指」又は「親指以外の3本の指」について用廃となった場合,9級13号の認定対象となります。
【14号】一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの
「足指を失ったもの」とは,足指を中足指節関節から失ったことを指します。つまり,足指をすべて失った場合を指すことになります。

(「障害認定必携」より引用)
足の「親指を含む2本の指」について,付け根から先のすべてを失った場合,等級認定の対象となります。
【15号】一足の足指の全部の用を廃したもの
「足指の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。
1.親指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
2.親指以外の足指について、中節骨又は基節骨で切断したもの
3.親指以外の足指について、遠位指節間関節又は近位指節間関節で離断したもの
4.親指の中足指節間関節又は指節間関節の可動域が1/2以下に制限されるもの
5.親指以外の足指の中足指節間関節又は近位指節間関節の可動域が1/2以下に制限されるもの
【16号】外貌に相当程度の醜状を残すもの
醜状障害と呼ばれるものです。
醜状障害は,人の目につく人体の露出面に,目立つ傷跡が残った場合の後遺障害をいいます。醜状の具体的な内容としては,瘢痕や線状痕,組織の陥没,色素沈着による変色などが挙げられます。
9級16号は外貌の醜状障害に関するものですが,外貌とは,頭部・顔面部・頸部の各部位を指します。それぞれの部位について,認定基準は以下のとおり定められています。
9級16号「外貌に相当程度の醜状を残すもの」
部位 | 基準 |
顔面部 | 5cm以上の線状痕で、人目につく程度のもの |
なお,瘢痕の大きさや線状痕の長さを確認する際には,以下の点に注意を要します。
①人目につくことが必要
→眉や髪で隠れる部分は醜状として扱われません。また,アゴの下で正面から見えない部分も対象外となります。これらの部分を除いた長さや面積を計測します。
②2つ以上の傷跡がある場合の判断方法
→複数の傷跡は,それらが一体となっている場合,一体となっている面積や長さを合算した数値で等級が判断されます。
③事故時に生じたものでない醜状の取り扱い
→治療中に生じた手術痕や,やけど等の治療後に生じた色素沈着なども,醜状障害の対象に含まれます。
【17号】生殖器に著しい障害を残すもの
具体的な認定基準は以下の通りです。
【男性】
陰茎の大部分を欠損したもの
勃起障害を残すもの
射精障害を残すもの
【女性】
膣口狭さくを残すもの
両側の卵巣に閉塞・癒着を残すもの(※)
頸管に閉塞を残すもの(※)
子宮を失ったもの(※)
(※)画像所見により認められるものに限る
「陰茎の大部分を欠損したもの」とは
陰茎を膣に挿入することができないと認められるもの
「勃起障害を残すもの」とは
以下のいずれかに該当するもの
1.夜間睡眠時に十分な勃起が認められないことがリジスキャンによる夜間陰茎勃起検査により証明されること
2.支配神経の損傷など,勃起障害の原因となりうる所見が,神経系検査か血管系検査のいずれかにより認められること
「射精障害を残すもの」とは
次のいずれかに該当するもの
1.尿道または射精管が断裂していること
2.両側の下腹神経の断裂により当該神経の機能が失われていること
3.膀胱頚部の機能が失われていること
「膣口狭さくを残すもの」とは
陰茎を膣に挿入することができないと認められるもの
後遺障害9級の慰謝料
等級ごとの後遺障害慰謝料
後遺障害等級 | 【自賠責基準】 | 【裁判基準】 |
1級 | 1150万円 | 2800万円 |
2級 | 998万円 | 2370万円 |
3級 | 861万円 | 1990万円 |
4級 | 737万円 | 1670万円 |
5級 | 618万円 | 1400万円 |
6級 | 512万円 | 1180万円 |
7級 | 419万円 | 1000万円 |
8級 | 331万円 | 830万円 |
9級 | 249万円 | 690万円 |
10級 | 190万円 | 550万円 |
11級 | 136万円 | 420万円 |
12級 | 94万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
後遺障害9級の場合,自賠責保険からは249万円の慰謝料が支払われます。また,裁判基準の慰謝料は690万円となります。
後遺障害9級の逸失利益
後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。
後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」
このうち,労働能力喪失率は等級ごとに設けられており,等級が上位であるほど喪失率も大きくなります。
1級 | 100% |
2級 | 100% |
3級 | 100% |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 35% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
後遺障害9級の場合は,労働能力喪失率が35%となります。
計算例
年収500万円,40歳,9級認定
計算式
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」
=500万円×0.35×18.3270(27年ライプニッツ)
=32,072,250円
後遺障害等級の認定を受ける方法
①手続の方法
認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。
1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。
2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。
3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。
項目 | 【事前認定】 | 【被害者請求】 |
提出する人 | 対人賠償保険 | 被害者自身 |
提出書面 | 必要書類一式 | 必要書類以外も提出可 |
提出物の収集 | 保険会社が行う | 被害者自身が行う |
②手続の流れ
後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。
【事前認定の場合】
①症状固定の判断 | 医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。 |
②後遺障害診断書の作成 | 主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。 |
③後遺障害診断書の提出 | 相手保険に後遺障害診断書を提出します。 |
④事前認定の実施 | 相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。 |
⑤後遺障害等級の結果通知 | 相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。 |
【被害者請求の場合】
①症状固定の判断 | 医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。 |
②後遺障害診断書の作成 | 主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。 |
③申請書類の準備 | 治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。 |
④被害者請求の実施 | 必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。 |
⑤後遺障害等級の結果通知 | 申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。 |
事前認定は,後遺障害診断書を相手保険に提出するのみで足りるため,手続が簡便であるというメリットがあります。一方で,自賠責保険に提出される資料は必要不可欠なもののみであるため,認定に有用な資料を追加で提出したい,という場合には適していません。
一方,被害者請求は,後遺障害診断書以外の提出書面も全て積極的に提出する必要があるため,手続負担が大きくなりやすいところです。しかし,提出できる資料は不可欠なものに限られず,判断に際して考慮してほしい資料や内容を任意に提出できるというメリットがあります。
後遺障害等級のうち,検査結果の数値で認定結果が決まる場合には,事前認定か被害者請求かという手段よりもその検査結果が重要になるでしょう。検査結果が認定基準を満たしている限り,どちらの方法でも差し支えないという結論になります。
一方,認定基準が数値だけでは判断できず,複数の事情を総合的に踏まえる必要がある場合,考慮してもらうべき事情を積極的に提出することが有益になり得ます。この点,必要な診断書等以外の資料を積極的に提出したい場合には,被害者請求の方法を取る必要があります。
そのため,数値で判断が可能な内容かどうかによって,事前認定と被害者請求を適宜選択することが有力でしょう。
弁護士依頼のメリット
①必要な対応を弁護士に任せることができる
交通事故被害に遭った場合,主に相手保険との間でやり取りが必要になり,その内容は多岐に渡ることが少なくありません。そのため,ただでさえ被害に遭って心身のダメージを抱えている中,相手保険への対応でさらに疲弊させられてしまうということが生じがちです。
この点,弁護士に依頼をすれば,その後の必要な対応を全て弁護士に任せることが可能です。弁護士に適切な対応をしてもらうことで,不要な負担を感じることなく解決を目指せるでしょう。
②後遺障害等級認定に必要なことが分かる
後遺障害等級認定を目指す場合,その等級認定基準を満たしていると判断してもらうことが必要になります。そうすると,あらかじめ等級認定基準を踏まえた上で,基準を満たす内容の資料を提出する形で申請を試みることが不可欠です。
しかしながら,等級認定基準を正確に把握することは,交通事故分野に精通していない限りは容易でありません。
この点,弁護士に依頼することで,等級認定基準を踏まえた申請の準備を弁護士に検討してもらうことが可能になります。そのため,後遺障害等級認定のために必要な対応が分かり,適切な申請ができるようになるでしょう。
③慰謝料などの増額が期待できる
交通事故の場合,弁護士が交渉を行うことで,慰謝料などの増額ができる場合が非常に多く見られます。これは,保険会社が,弁護士の有無で慰謝料などの賠償額を異にする運用をしているためです。
弁護士に依頼することで,慰謝料をはじめとした損害賠償額の増加が期待できるでしょう。また,後遺障害等級が認定された場合,後遺障害に応じた慰謝料なども発生するため,弁護士による増額の余地はさらに大きくなることが見込まれます。
交通事故に強い弁護士をお探しの方へ
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。


藤垣法律事務所代表弁護士。岐阜県高山市出身。東京大学卒業,東京大学法科大学院修了。2014年12月弁護士登録(67期)。全国展開する弁護士法人の支部長として刑事事件と交通事故分野を中心に多数の事件を取り扱った後,2024年7月に藤垣法律事務所を開業。弁護活動のスピードをこだわり多様なリーガルサービスを提供。