自損事故ではどこからどんな補償が受けられる?慰謝料は交渉できる?弁護士費用特約があれば依頼すべき?自損事故の疑問を全て解決

●自損事故の場合はどのような救済が受けられるか?

●自損事故で慰謝料の増額を図りたい場合はどうすべきか?

●自損事故で弁護士費用特約が使えないと言われたが本当か?

●自損事故の対応は弁護士に依頼すべきか?

というお悩みはありませんか?

このページでは、自損事故の対応でお困りの方に向けて、自損事故の場合に得られる補償の内容や特徴弁護士に依頼するメリットデメリットなどを解説します。

自損事故で受けられる救済

自損事故の場合,経済的な救済を受けるためには,自分の加入する自動車保険を利用するほかないのが通常です。

自損事故では,自分に危害を加えた加害者が存在しないため,加害者への請求というものが観念できません。そのため,他人に請求する余地はない,ということになります。

この点,自動車保険では,自損事故で損害を被ってしまった場合にも一定の補償をする保険が存在するため,その保険に加入している限り,保険金の支払という形で金銭的な救済を受けることが可能です。
自損事故が起きてしまった場合には,自分の保険でどのような補償を受けることができるか,速やかに確認するようにしましょう。

ポイント
自損事故の救済は自分の自動車保険から受けるほかない

自損事故で補償がある保険①人身傷害保険

人身傷害保険は,事故によって身体に損害を受けた場合,その損害に対して保険金が支払われる,という内容の保険です。対人賠償保険が事故相手の人身損害への支払の保険とすれば,人身傷害保険は自分の人身損害への支払を行う保険,という区別ができるでしょう。

主な内容は以下の通りです。

人身傷害保険の主な内容

1.補償範囲
事故による怪我,死亡,後遺障害などに対して保険金が支払われます。保険金の額は契約内容に基づいて決まります。

2.補償内容
医療費
→怪我の治療にかかった医療費が補償されます。

休業損害
→怪我によって仕事を休む場合,その間の収入の一部を補償します。

死亡・後遺障害
→事故によって死亡した場合や後遺障害が残った場合に保険金が支払われます。

なお,人身傷害保険の支払金額は,その計算方法が保険の約款に定められており,約款に従って算出されることになります。

ポイント
人身傷害保険は,自分の人身損害を補償してくれる保険
支払金額の計算方法は約款に定められている

自損事故で補償がある保険②自損事故保険

自損事故保険は,文字通り自損事故の場合に利用可能な保険です。一般的には,人身傷害保険が含まれない保険内容の場合に,自動的に付帯されることが多く見られます。

自損事故保険の内容は,人身傷害保険の補償金額が縮小したもの,とイメージすると分かりやすいことが多いです。人身傷害保険がない場合に自損事故でケガを負ったときには,自損事故保険があることで,人身傷害保険ほどではないものの一定の保険金を受け取ることが可能になります。

自損事故保険の主な内容

1.補償内容

死亡保険金
→事故によって被保険者が死亡した場合に支払われる保険金です。

後遺障害保険金
→事故によって後遺障害が残った場合に支払われる保険金です。

介護保険金
→事故によって介護の必要が生じた場合に支払われる保険金です。

入通院保険金
→入院日数又は通院日数に応じて支払われる保険金です。

2.支払方法
→定額払いとされているケースが多く見られます。死亡の場合,後遺障害の場合など,事前にケースごとの保険金額が設定されており,これに沿った支払いとなります。

3.メリット・デメリット
→保険料が安価になりやすい一方,補償の内容に限りがある点がデメリットです。

自損事故で補償がある保険③搭乗者傷害保険

搭乗者傷害保険とは,自動車に搭乗中に交通事故が発生し、その結果として乗車していた人が怪我をしたり死亡したりした場合に、補償金を支払う保険です。この保険は、運転者だけでなく同乗者も対象となることが特徴的です。

また,搭乗者傷害保険は,一定の条件を満たした場合に,これに応じた定額の保険金が支払われる,という内容になっていることが一般的であり,大きな特徴でもあります。
支払われる金額が決まっているため,早期に受領することが可能になりやすく,事故後の損害を早期に補填するための保険として活用されることが多いものです。

搭乗者傷害保険の主な内容

1.補償の対象
→契約車両に搭乗中の全ての乗車人(運転者および同乗者)
→車両の事故による怪我、死亡、後遺障害など

2.補償内容

死亡保険金
→事故によって死亡した場合に支払われる保険金です。

後遺障害保険金
→事故によって後遺障害が残った場合に支払われる保険金です。

入院・通院保険金
→事故による怪我で入院や通院が必要となった場合の保険金です。日額で支払われることが一般的です。

手術保険金
→事故による怪我で手術を受けた場合の補償金です。

3.支払方法
→定額払いとされることが通常です。

4.メリット
→定額払いのため,迅速に支払われやすく,経済的負担の軽減につながります。
→同乗者も補償の対象となるため,補償の範囲が広い保険です。

搭乗者傷害保険は,迅速な支払いがなされる有益な保険ですが,一方でその金額には限りがあります。搭乗者傷害保険だけで損害のすべてをカバーするのは現実的でないため,とりあえず一定の支払を受ける,という動きに適した保険ということができます。

ポイント
搭乗者傷害保険は,車の搭乗者に定額の支払を行う保険
迅速な支払いが大きなメリットだが,金額には限りがある

自損事故で補償がある保険④車両保険

車両保険は,事故によって損傷した自動車の損害を補償するための保険です。対物賠償保険が事故相手の物損を補償するための保険であるとすれば,車両保険は自分の物損を補償するための保険である特別できるでしょう。

自動車事故が発生した場合,事故車両をどうするのか,という点は必ず生じることになります。特に重大な事故で車両が自走できない場合には,車両をどのように移動させるかという問題も生じかねませんが,車両保険にはレッカー費用の補償も含まれていることが一般的であるため,車両保険を利用することで車両の適切な処理も可能になります。

ただし,車両保険の中には,自損事故の場合を対象外としているものもあります。車両保険の利用に際しては,加入する車両保険が自損事故も対象に含めたものであるかどうか,十分に確認することが必要です。

ポイント
車両保険は,自分の物的損害を補償する保険
自損事故を対象外としていることもある点に注意

自損事故は慰謝料の増額交渉が可能か

交通事故で弁護士に依頼する主な理由に,慰謝料の増額交渉が挙げられます。交通事故被害者が請求できる慰謝料には,自賠責基準,任意保険基準,裁判基準といった複数の基準があり,弁護士が裁判基準を念頭に慰謝料を請求・交渉することで,慰謝料の増額が実現される,というものです。

しかし,自損事故の場合には慰謝料の増額交渉は行う余地がありません。
自損事故における慰謝料は,自分が加入する人身傷害保険から支払われることになりますが,人身傷害保険で支払われる慰謝料の金額は,保険約款によって明確に定められています。そのため,保険約款で定めた方法以外の計算はあり得ず,交渉の余地もないのです。

人身傷害保険は,保険契約上のサービスであるところ,サービス内容は全て約款で決まっています。保険会社は,契約したサービスの範囲内でのみ支払う義務を負うのであって,それ以上の請求や交渉に応じる義務が一切ないため,慰謝料を交渉する余地もないということになります。

ポイント
自損事故は慰謝料を交渉する余地がない

自損事故は弁護士費用特約が利用可能か

交通事故に関して弁護士に依頼をする場合,弁護士費用特約の利用が有益です。弁護士費用特約が利用できれば,弁護士に依頼するための費用を保険が負担してくれるため,基本的に自己負担なく弁護士に依頼することが可能になります。

しかしながら,自損事故では弁護士費用特約の利用ができません。自損事故で弁護士に依頼するという場合には,弁護士費用を自己負担することが必要となります。

弁護士費用特約は,交通事故被害者が加害者へ請求する場合に利用できる保険です。代表例としては,被害者が加害者の保険会社から賠償額の提示を受けた際,といったケースが挙げられるでしょう。被保険者が被害者の立場にあって,第三者である加害者へ損害賠償を請求する,というときの弁護士費用を負担してくれるのが,弁護士費用特約となります。
一方,自損事故の場合,金銭は自分の保険から支払われます。この場合に弁護士費用特約が利用できてしまうと,保険会社としては自社への金銭請求に必要な弁護士費用を自社で負担する,という不合理な関係になってしまうため,自損事故は弁護士費用特約の対象外となるのです。

ポイント
自損事故は弁護士費用特約の利用ができない

自損事故の対応は弁護士に依頼すべきか

自損事故の場合に弁護士へ依頼すべきかは,個別の内容によって判断が異なる問題です。具体的には,弁護士への依頼によって経済的な利益が生じ得るか,という点を基準に検討することが適切でしょう。
以下のような場合には,弁護士に依頼すべき場合と考えられます。

①後遺障害等級が見込まれる場合

事故の規模や受傷の程度が大きく,後遺障害等級の認定が見込まれる場合,どのような等級が認定されるかによって,受領できる金額に大きな差が生じます。

もっとも,自損事故では自賠責保険の等級認定を獲得することができないため,実際に等級を認定するのは自分の加入保険ということになります。人身傷害保険を利用している場合,保険会社が医療機関から取り付けた診断書等を踏まえ,自社で等級認定し,認定された等級に対する保険金の支払を行う流れを取ることが通常です。

この点,漫然と保険会社に手続を委ねるのではなく,等級認定に有用な医学的意見や検査結果などを提出し,積極的に等級認定を目指す動きを取ることは有力な手段となり得ます。
そして,積極的な後遺障害等級認定の獲得を試みる場合は,弁護士に依頼し,具体的な方法・内容を判断してもらうことが適切でしょう。

②逸失利益の交渉が見込まれる場合

自損事故で支払を行う人身傷害保険は,支払われる保険金額の計算方法が全て約款で定められています。そのため,慰謝料を交渉する余地はありません。

もっとも,後遺障害等級が認定された場合の逸失利益については,交渉の余地が残されていることも少なくありません。主な理由は,逸失利益が生じる期間(=労働能力喪失期間)に交渉の余地があり得るためです。
逸失利益は,その金額が大きくなりやすく,交渉が奏功した場合のメリットも大きくなりやすいため,交渉の余地があるかどうか,弁護士の判断を仰ぐことをお勧めします。

ポイント 弁護士依頼すべき場合
上位の後遺障害等級の獲得を目指す場合
後遺障害逸失利益の交渉を試みる場合

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

自損事故の場合、自分の加入する自動車保険からの補償を受けることになるため、その手続や金額、運用などは被害事故の場合とは根本的に異なります。
そのため、弁護士に依頼する実益がないケースも多数ありますが、後遺障害が見込まれるような重傷事故の場合では弁護士委任も有力な選択肢になり得ます。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
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