【交通事故解決事例】異議申立ての結果,後遺障害5級→4級と上位等級の認定が獲得でき,約1,050万円の増額に至った事例

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】
・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

今回は,後遺障害5級の認定後,異議申立てによってより上位の4級が認定され,増額交渉に成功した事例を紹介します。

事案の概要

被害者は,青信号に従って横断歩道を渡っていたところ,対面から右折してきた自動車から衝突されました。
被害者は,頭部を強く受傷しており,相当な間意識を失うほどの重篤な状況にありましたが,幸いにも一命を取り留めました。ただ,脳に障害を受け,いわゆる高次脳機能障害が残るに至りました

高次脳機能障害とは,頭部の傷害によって脳の高次機能である認知,記憶,思考,判断,言語,行動等を司る部分が損傷を受けた場合に生じる障害です。高次脳機能障害の主な症状としては,記憶障害や言語障害,感情制御機能の障害等が挙げられます。

被害者は,弁護士が相談を実施した段階では既に後遺障害等級の認定を受けており,その内容は高次脳機能障害について5級を認定するというものでした。
また,これを踏まえ,加害者の保険会社から損害賠償額の提示も受けている状況でした。提示額の総額は約3,350万円という内容でした。

ポイント
高次脳機能障害について5級認定済み
保険会社から約3,350万円の賠償額提示あり

法的問題点

①等級認定結果の合理性

【高次脳機能障害】

被害者には,高次脳機能障害について後遺障害5級の認定がなされていましたが,高次脳機能障害には,以下の通り複数の後遺障害等級が定められています。

【高次脳機能障害の後遺障害等級】

等級基準
1級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9級神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

そのため,被害者の高次脳機能障害が5級と認定されることの合理性は慎重に検討する必要がありました。
この点,弁護士が被害者と直接対面し,被害者に生じている症状の内容や程度を丁寧に確認した結果,後遺障害5級の結果は決して被害者に不利益なものではないと判断することができました。

【その他の後遺障害】

弁護士が被害者と対面での相談を実施したところ,被害者の頭部に相当程度の大きさをしたへこみが見受けられました。もっとも,従前の等級認定結果では,頭部のへこみに関しては非該当との判断がなされていました

この点,頭部の醜状障害としては,「鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損」がある場合に12級14号「外貌に醜状を残すもの」に該当するという基準があります。ただし,この欠損は人目につく程度のものであることが必要とされます。

被害者の場合には,頭蓋骨に「鶏卵大面以上の欠損」があり,正面から見て頭部の不自然な形状が判別できることから「人目につく程度のもの」であるとも考えられる状況でした。しかし,従前の等級認定では,簡単な顔写真の確認のみで非該当とされていました。

ポイント
高次脳機能障害5級は適正な結果
頭蓋骨の一部欠損について醜状障害12級の認定が考えられる

②損害賠償額の合理性

後遺障害等級が伴う場合,交通事故の損害賠償としては,「慰謝料」「逸失利益」が主な項目となります。

【慰謝料】

保険会社からの金額提示は,後遺障害等級5級に対する慰謝料が800万円という内容になっていました。
この点,後遺障害慰謝料の金額については,以下のような基準が設けられています。

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害5級の場合,いわゆる裁判基準では慰謝料額が1,400万円とされています。弁護士が交渉を行う場合,慰謝料は裁判基準満額の80~90%で合意する場合が多く見られ,90%の実現が一つの目標になりやすいところですが,90%であれば1,260万円と,相手保険の提示から見ると1.5倍以上になります。

後遺障害慰謝料に関しては,弁護士の交渉による増額余地が多分に残されている状況であると判断することができました。

【逸失利益】

後遺障害の逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

この点,逸失利益については,主に「労働能力喪失期間」がどの程度の期間であるか,という点が争点になりやすいところです。もっとも,本件の被害者に関しては,比較的高齢であったこともあり,「労働能力喪失期間」の内容が弁護士から見ても合理的であり,逸失利益の金額は弁護士が目標とする金額と比較しても遜色のない水準であることが確認できました。

今回の事故が大きな規模で,被害者に重大な損害が生じたことを踏まえ,保険会社は逸失利益を全面的に譲歩するスタンスを示しているものと推察されました。

ポイント
後遺障害慰謝料に増額の余地が多く残されている
逸失利益は,保険会社の全面譲歩により適正額であった

③問題点まとめ

以上を踏まえ,問題点は以下の2点に絞られました。

本件の具体的な問題点

1.頭部のへこみが12級に認定されるか
2.後遺障害慰謝料が増額されるか

弁護士の活動

①後遺障害等級に関する異議申立て

最終的な目標は金額交渉等による増額ですが,まずは,金額交渉の前提として後遺障害等級の獲得が必要です。本件では,頭部のへこみが後遺障害等級認定の対象とされていない点を覆すことが必要でした。

この点,醜状障害と呼ばれる後遺障害の判断方法は,面談を行って直接目視してもらうことが適切です。見た目の変化が後遺障害等級の対象となる以上,その見た目の変化を正確に把握してもらうため,面談を実施するべきであるというわけですね。
しかし,本件では,写真での簡単な画像調査のみで安易に非該当の結果になっていることが見受けられました。また,被害者と面談をした弁護士としては,しっかりと面談を実施してもらえれば被害者の頭部のへこみは等級認定の対象になるであろうとの見立てもありました。

そこで,弁護士受任前に行われた後遺障害等級に対して,異議申立てを実施するとともに,後遺障害等級の認定調査を行う「自賠責損害調査事務所」にて被害者の面談を行うよう求めました。
また,面談に際しては,被害者と事前に十分な打ち合わせを行い,面談当日に弁護士も同行することとしました。被害者が自分で等級認定に必要な説明を行うのは容易でないため,説明や案内をサポートするため,弁護士が同席することとしたのでした。

なお,面談を実施する前提としては,「自賠責損害調査事務所」に面談が必要であると判断してもらうことが必要となります。そのため,弁護士が異議申立てを行う際には,頭部のへこみに関する詳細な説明を提出した上,複数の鮮明な写真を添付することで,必要な書面上の説明も尽くしました。

②異議申立ての結果

異議申立て及び面談を行い,調査担当者に被害者の頭部のへこみを把握してもらうことができた結果,頭部の醜状障害について希望通り12級の認定を受けることができました。
被害者の後遺障害等級は,高次脳機能障害の5級と頭部醜状障害の12級をあわせて,併合4級との認定になり,申立て前よりも上位等級の認定に至りました。

③損害賠償額の交渉

後遺障害等級認定を獲得した後,弁護士にて相手保険担当者との金額交渉に着手しました。

この点,主な争点は800万円と提示されていた「後遺障害慰謝料」でした。
異議申立てにより併合4級となったことで,弁護士の目標額は4級の裁判基準1,670万円の90%に当たる1,503万円(約700万円増)と想定できる状況でした。弁護士にて,このような金額水準を踏まえて慰謝料の交渉を実施しました。

また,後遺障害慰謝料以外には,「入通院慰謝料」や「休業損害」,「逸失利益」についても一定の交渉を実施することとしました。保険会社は,弁護士の有無によって金額計算の内容を変える運用をしていることが多く,弁護士の交渉によってはこれらの項目も一定程度の増額がなされ得ると判断しました。

ポイント
頭部のへこみは,異議申立てと面談を通じて12級獲得
併合4級を踏まえた後遺障害慰謝料の交渉を実施(目標約700万円増)
入通院慰謝料,休業損害,逸失利益についても交渉を実施

活動の結果

弁護士による活動の結果,被害者に対する賠償金額は合計で約4,400万円となりました。
弁護士依頼前の提示額約3,350万円と比較すると,約1,050万円の増額が実現されました。

弁護士によるコメント

本件の具体的な弁護活動は,醜状障害に関する異議申立てと慰謝料交渉の2点でした。それぞれの対応は,適切に尽くせば望ましい結果を獲得することは決して難しいわけではありません。実際に,弁護士が活動を行った結果,比較的円滑に上位等級の認定と慰謝料の増額が実現されることとなりました。

しかし,弁護士依頼前にはこれらの問題が解消できていなかったことも事実です。そのため,被害者は得られるはずの賠償額を1,000万円以上逃す可能性があるところでした。これは非常に重大な問題であると思います。

後遺障害等級を認定する自賠責保険も,賠償金額を提案する相手の任意保険も,そのような問題点を積極的に指摘してくれることはありません。被害者が積極的に問題意識をもって弁護士に相談・依頼しなければ,被害者は十分な補償を受けられない可能性がある,という交通事故分野の問題が浮き彫りになった事例と言えるでしょう。

交通事故被害に関しては,やはり弁護士へのご相談が望ましいと考える次第です。

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