未成年の刑事事件の特徴は?どんな処分をされるのか?逮捕される?前科は?将来の影響を防ぎたい方への徹底解説

●未成年の場合,刑事事件の取り扱いはどうなるのか?

●取り扱いが変わるのは18歳か?20歳か?

●未成年は何歳から逮捕されるか?

●未成年が逮捕された場合,早く釈放してもらえないか?

●少年院とは何か?少年鑑別所とは何か?

●未成年の事件は弁護士に依頼すべきか?

といった悩みはありませんか?

このページでは,未成年に対する刑事事件(少年事件)についてお困りの方に向けて,少年事件の制度や年齢別の取り扱い手続や処分(処遇)の内容などを解説します。

未成年と成人の刑事事件の違い

①制度の違い概要

未成年が行った刑事事件は,「少年事件」といい,成人と異なる手続の対象となります。
少年事件と成人の刑事事件は,その制度の目的が異なるため,手続にも様々な違いがあります。

成人の刑事事件は,犯罪に対して刑罰を行う手続であるのに対し,少年事件は,少年がどうすれば更生できるのかを検討するための手続です。そのため,少年事件では刑罰が科されず,代えて少年の更生に必要な「保護処分」がなされることとなります。
保護処分としては,少年院に収容して更生を図る「少年院送致」や,保護観察所・保護司による監督を通じて更生を図る「保護観察」が代表的ですが,いずれも犯罪に対する制裁でなく,非行からの立ち直りに向けた措置であるという特徴があります。

②共通点

未成年と成人では,刑事事件に対する手続が異なりますが,手続の共通点もあります。
具体的には,事件が捜査されている間の取り扱いは,未成年と成人との間で基本的に相違はありません。

厳密には,未成年の場合のみ少年鑑別所での勾留ができるといった違いもありますが,逮捕や勾留,勾留中の捜査など,基本的な枠組みは同様です。
未成年と成人との違いが鮮明に現れるのは,犯罪捜査が一段落した後の手続ということになるでしょう。

何歳までが成人と区別されるか

少年事件の対象となる年齢は,20歳未満とされています。近年,成人年齢が20歳から18歳となる法改正もありましたが,少年事件の対象年齢に変更は生じていません。
そのため,少年事件の対象となる「少年」は,20歳未満の男女を指します。

ポイント
20歳未満は少年事件の対象になる
少年事件は刑罰を科すのでなく更生を図るための手続
捜査されている間の取り扱いは,成人の事件と基本的に同じ

18歳以上の場合の特例

もっとも,成人年齢が18歳へ引き下げられたことに伴い,18歳以上20歳未満の少年については,取り扱いに新たな定めが設けられました。
少年が18歳又は19歳の場合,「特定少年」とされ,主に以下のような違いが生じます。

①原則逆送事件の拡大

逆送とは,成人の刑事事件と同じ扱いを受けること,と理解して差し支えありません。
少年でありながら,成人のように刑罰の対象になることを指します。
少年事件でも,「原則逆送事件」に該当すると,原則として成人と同じように刑罰を受けることになるのです。

特定少年の場合は,他の少年よりも原則逆送事件の範囲が広くなっています。具体的な要件は以下の通りです。

・罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき
・故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた罪の事件
・死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁固に当たる罪の事件

特徴的なのは,家庭裁判所が「刑事処分を相当と認めるとき」に可能である点と,「短期1年以上」の罪の事件でも原則逆送となっていることです。
特定少年以外では,「16歳以上」かつ「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件」のみが原則逆送事件とされているため,その範囲は大きく広がっていることが分かります。

②実名報道の一部解禁

少年については,少年法で実名報道が禁止されていますが,特定少年については,逆送後にその事件で起訴された場合に実名報道の禁止がありません。

なお,起訴後に実名報道の禁止がなくなるのは,「公判請求」された場合のみです。公判請求は,公開の法廷で正式な刑事裁判を行う内容の起訴をいいます。
公判請求と対になるのは「略式請求」で,こちらは公判を省略する内容の起訴です。略式請求の場合は,引き続き実名報道は禁じられます。

③保護観察や少年院送致の期間

通常,保護観察や少年院送致を行う場合,期間を定めずに処分されていましたが,特定少年の保護処分は期間の定めをあわせて行う必要があります。具体的な内容は以下の通りです。

・6月の保護観察
・2年の保護観察
・3年以内の少年院送致

また,特定少年の場合,「犯罪の軽重」を考慮して処分を決めることとされたため,重大な犯罪であるほど少年院送致になりやすく,その期間も長くなりやすいとのルールになりました。

④不定期刑の不適用

少年事件が逆送され,刑罰の対象になる場合,「不定期刑」を科すのが原則です。「●年以上●年以下の懲役」というように,刑罰の期間に幅を設け,少年の更生が見られた場合に刑罰を軽減させる目的があります。

しかし,特定少年の場合にはこの不定期刑が適用されないため,言い渡される刑罰は成人と同じものになります。

未成年は何歳から逮捕されるか

少年の犯罪行為が確認された場合,捜査機関が逮捕を行うのは,少年が14歳以上の場合です。
法律上,刑事責任を負うのが14歳以上とされているため,捜査(逮捕を含む)を行う対象も14歳以上とされています。
なお,14歳以上で犯罪行為に及んだ少年を「犯罪少年」と言います。犯罪少年は逮捕されることがあります。

一方,14歳未満の場合,刑事手続の対象とはなりませんが,児童福祉法に基づいて児童相談所が保護措置を取ることになります。
保護措置としては,一時保護,保護者指導,施設入所といったものがありますが,刑事事件として捜査を受けることはありません。
なお,14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年を「触法少年」と言います。触法少年の行為は犯罪にならないため,触法少年は逮捕されません。

ポイント
14歳未満は逮捕されない
14歳以上は逮捕され得る
18歳,19歳は「特定少年」とされ取り扱いが成人と近くなる

未成年の刑事事件の特徴 ①起訴・不起訴がない

少年事件の場合,警察や検察で捜査が遂げられた後,原則として全ての事件が家庭裁判所に送致されます。その後,家庭裁判所における審判の対象となり,保護処分がなされます。
そのため,検察庁が捜査を遂げた段階で,少年を起訴することはできず,逆に不起訴とすることもできません(逆送された場合を除く)。

これは,刑罰を科せられないという意味で有益であることは間違いありません。ただ一方で,成人であれば不起訴で終了したであろう事件でも,少年の場合には家庭裁判所で審判を受けなければならない可能性がある,という意味でもあります。刑罰を科す必要がなくなっても,更生の必要がないということにはならないわけですね。

未成年の刑事事件の特徴 ②処分は家庭裁判所が決定する

少年事件の最終的な処分は,家庭裁判所によって決定されます。家庭裁判所による少年への処分としては,以下のようなものが挙げられます。

①保護観察
概要: 少年を家庭や社会の中で更生させるために,保護観察官が指導監督を行います。
目的: 少年が社会生活を送りながら更生できるよう支援すること。
期間: 原則として20歳まで。短期の場合は6か月程度で解除が検討される。

②児童自立支援施設送致
概要: 少年が家庭や社会から離れて生活することが必要と判断された場合,児童自立支援施設に入所させる。
目的: 生活指導や職業訓練を通じて,少年の自立を支援すること。
期間: 少年の状況に応じて施設に収容される期間が決まる。

③児童養護施設送致
概要: 家庭環境が悪い少年に対し,適切な養護と生活指導を提供するために児童養護施設に入所させる。
目的: 安定した環境での生活を提供し,少年の健全な成長を支援すること。
期間: 少年の状況に応じて施設に収容される期間が決まる。

④少年院送致
概要: 重度の非行や犯罪行為を行った少年に対し,更生と再教育を目的として少年院に収容する。
目的: 専門的な教育や訓練を通じて,少年の更生を図ること。
期間: 少年の更生状況に応じて決定される。標準期間は1年程度。

⑤試験観察
概要: 一定期間,家庭裁判所の観察下に置き,少年が更生するかどうかを見極める。
目的: 少年が再び非行を犯さず,社会生活を送れるかどうかを判断すること。
期間: 数ヶ月程度が一般的。

⑥その他の措置
家庭裁判所の指導
→保護者に対して少年の監督や教育の方法について指導が行われることもあります。
福祉機関との連携
→少年の状況に応じて,福祉機関や医療機関との連携が図られ,必要な支援が提供されます。

⑦一般的な運用
基本的には,保護観察とするか少年院送致とするか,という判断になります。
どちらにするかの判断が難しいケースでは,試験観察として一定期間保護観察類似の状況に置き,試験観察中の経過を踏まえて保護観察で足りるかを判断することがあります。

未成年の刑事事件の特徴 ③裁判でなく審判が行われる

少年事件は,「審判」という手続で処分が決定されるのが一般的です。
この審判は,成人の受ける裁判(公判)とは多くの面で異なるものですが,代表的な相違は以下の通りです。

①非公開であること

少年審判は非公開の場で行われます。これは,少年のプライバシーを保護することで,更生の機会を確保するための制度であるとされています。
成人の公判が原則として公開されていることとは非常に大きな違いと言えます。

②調査の上で行われること

少年審判は,家庭裁判所における「調査」の上で,調査の結果を踏まえて行われます
調査は,家庭裁判所の調査官が中心となって,少年の家庭環境や内面の問題点などを把握するための手続です。調査官は,少年とコミュニケーションを取ったり,家族と面談を行ったりしながら,審判においてどのような保護処分を行うべきか検討し,裁判官に進言します。

調査官は,審判の場にも立ち会い,少年への指導を兼ねた質問を行うなどすることもあります。裁判官の判断は,調査官の意見を強く尊重する傾向にあるため,調査官の存在は少年審判において非常に重要です。

③教育的配慮がなされること

少年審判は,少年の更生のため最良の処分を決定するものであるため,少年に対する教育的配慮の上で行われます。裁判官や調査官は,少年から期待する回答が得られなかったり,少年の理解が不足していたりする場合には,粘り強く質問や説明を繰り返すことで少年の理解や反省を促すこともあります。

④保護者が同席すること

少年審判では,親権者等の保護者による同席が一般的です。保護処分の検討には,処分後の少年の環境が非常に重要な判断要素となるため,保護者に対しても事件の受け止めや今後の監督方針などが質問されます。
出席者は同居する親であることが通常ですが,その他,雇用を継続する予定の雇用主や,少年と関わりの深い教員の出席が有益なケースもあり得るところです。

未成年の刑事事件の特徴 ④処分の判断基準は「要保護性」

①要保護性とは

少年審判における保護処分は,「要保護性」を基準に判断するものとされています。
要保護性とは,少年の更生を実現するために外部からはどれだけ手を出す必要があるか(保護の必要があるか)という程度を言います。要保護性が高い場合は,少年院送致などの保護処分が必要になり,要保護性がない場合は,特段の処分なく少年や家族に委ねても構わない,という結論になるでしょう。

②要保護性の判断基準

要保護性の判断要素としては,以下のようなものが挙げられます。

非行の内容と状況
→非行の種類として,少年が犯した非行や犯罪の内容,その重大性や継続性が判断基準となります。また,犯行時の状況として,非行を行った際の状況や背景,計画性の有無なども考慮されます。

少年の性格や行動特性
→性格評価として,少年の性格,行動特性,精神状態などが調査されます。攻撃性や衝動性,反社会的行動の傾向などが評価の対象となります。また,更生の可能性に関し,少年が反省しているか,更生の意欲があるかなども重要な要素です。

家庭環境と生活環境
→家庭の状況として,少年の家庭環境,親の監護能力,家庭内の問題(例えば,虐待や家庭内暴力の有無)などが評価されます。また,学校生活や地域社会での関係,友人関係など,日常生活の環境も考慮されます。

過去の非行歴
→少年が過去にどのような非行を行っていたか,その頻度や内容が判断材料となります。また,過去に保護処分を受けたことがあるか,その後の経過なども重要です。

③要保護性の判断方法

要保護性に関する調査は,主に調査官が行い,その結果を裁判官が確認する方法で判断されます。調査官は,要保護性の有無について裁判官に意見を提出し,裁判官はそれを尊重するので,調査官に要保護性がないとの意見を出してもらうことができれば,それだけ軽微な処分が見込まれることになります。

ポイント
少年の刑事事件は起訴不起訴の対象とならず,少年審判の対象になる
少年審判は家庭裁判所にて必要な調査の上で行われる。判断の基準は要保護性

少年院とは・少年鑑別所とは

①少年院

少年院は,非行や犯罪を犯した少年を収容し,更生と教育を行う施設です。施設に収容の上,学習教育,職業訓練,生活指導,矯正教育などのプログラムを提供することで,少年の更生を図ります。
少年院には,以下のような種類があります。

第1種少年院(従来の初等・中等少年院)心身に著しい障害がない概ね12歳以上23歳未満の者が対象
第2種少年院(従来の特別少年院)心身に著しい障害がなく,犯罪傾向が進んだ概ね16歳以上23歳未満の者が対象
※第1種よりも事件の重大性や再非行の恐れが大きい
第3種少年院(従来の医療少年院)心身に著しい障害がある概ね12歳以上26歳未満の者が対象
第4種少年院刑の執行を受ける者が対象
第5種少年院特定少年のうち,2年間の保護観察処分を取り消された者が対象

②少年鑑別所

少年鑑別所とは,少年の心身の状態や生活状況を鑑別するための施設です。
通常,被疑者として勾留された後,家庭裁判所に送致された段階で,少年鑑別所に移され,収容が継続します。少年鑑別所での鑑別結果も,調査官の意見や裁判官の保護処分に影響します。
基本的に,少年事件が家庭裁判所に送致された後,審判が行われるまでの間,少年が収容される施設と理解して差し支えないでしょう。

主な特徴は以下の通りです。

【鑑別の内容】

心理鑑別心理検査や面接を通じて,少年の性格,精神状態,非行の原因などを評価します。
身体鑑別少年の身体的健康状態を確認するための健康診断や医学的評価が行われます。
生活環境調査少年の家庭環境や生活状況を調査し,非行に至る背景や更生のために必要な環境要因を評価します。


【鑑別技官の存在】
鑑別技官(専門職)は,少年の心身の状態や生活環境を科学的に評価し,家庭裁判所に対して鑑別結果を報告します。鑑別技官には,心理学,医学,教育学などの専門知識を持つ職員が含まれます。

【生活環境】

規則正しい生活少年鑑別所では,規則正しい生活が求められます。日課表に基づいて,学習や運動,面談などが行われます。
教育プログラム鑑別期間中,少年は基礎的な学習や生活指導を受けます。特に,鑑別の結果に基づいた個別指導が行われることもあります。

【収容期間】
原則として4週間とされ,概ね4週目に少年審判が行われる傾向にあります。
審判の結果,保護観察処分や不処分になると,審判が終了次第帰宅することができます。

未成年の事件は弁護士に依頼すべきか

少年事件は,審判というあまり馴染みのない手続の対象となる上,審判に向けた環境調整や更生の試みは早期に開始する必要があります。それらの対応は,手続に精通した弁護士への依頼が適切です。

また,少年の場合,成人よりも変化に富んでおり,事件直後と審判終了時では別人のように成熟するケースも少なくありません。そのような少年に対する処分は,必然的に軽微なものとなりやすいです。審判に向けて少年の成熟を促すため,少年事件に精通した弁護士への依頼が適切でしょう。
もっとも,これは周囲の適切な協力を前提とするものであって,少年がひとりでに変化していくわけではありません。具体的な協力の内容や方法は,事件や少年により様々ですので,あわせて弁護士へのご相談をお勧めいたします。

加えて,被害者のいる事件で被害者との示談を試みる場合にも弁護士が必須です。被害者との示談は最終的な処分にも多大な影響を及ぼしますので,この点でも弁護士に依頼するべきということができるでしょう。

未成年の刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

未成年が当事者となった刑事事件は,成人とは異なる手続の対象になります。処分の内容や判断基準も異なり,必然的に必要な弁護活動も異なってきますので,未成年の刑事事件(少年事件)に精通した弁護士への相談・依頼が適切でしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

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