公務員が刑事事件を起こすと職場にバレる?起訴されると失職する?前科がついた場合は?制度の詳細や弁護活動を解説します

●公務員が被疑者の場合,取り扱いに特徴はあるか?

●公務員の事件は職場にバレてしまうのか?

●公務員が逮捕されると職を失ってしまうのか?

●公務員が起訴されると職を失ってしまうのか?

●弁護士に依頼することで失職を防げるか?

といった悩みはありませんか?

このページでは,公務員の刑事事件についてお困りの方に向けて,公務員が被疑者・被告人となった場合の特徴や,公務員の仕事への影響などを解説します。

公務員が被疑者の場合の特徴 ①報道の対象になりやすい

公務員が被疑者となる刑事事件は,報道されやすいという特徴があります。刑事事件が報道される場合,逮捕された事件について,逮捕の直後に行われるのが一般的ですが,全てが報道されているわけではなく,報道の対象とすべき事件を取捨選択するのが基本的な運用です。

公務員の刑事事件が報道されやすい主な理由としては,以下の点が挙げられます。

①公務員の社会的責任
公務員は公共の利益のために働く立場にあり,高い倫理基準や責任が求められます。そのため,刑事事件に関与することは社会的な関心を引きやすく,報道価値が高いと見なされます。

②公共の信頼
公務員の不祥事は,政府機関や公共サービスに対する信頼を損なう可能性があります。メディアは公共の利益を守るために,このような事件を積極的に報道し,透明性と説明責任を確保しようとします。

③報道の役割
報道機関は公共の知る権利を守る役割を果たしています。公務員の刑事事件は公共の利益に関わるため,報道機関はこれを伝える義務があると判断することが多いです。

④市民の関心
市民は,公務員の行動が自分たちの生活に直接影響を与えるため,公務員の刑事事件には高い関心を持っています。この関心が報道機関の報道方針に影響を与えることがあります。

公務員が被疑者の場合の特徴 ②職場への通知がなされやすい

公務員の刑事事件は,職場である国や自治体への通知が見込まれやすいです。その主な理由としては,以下の各点が挙げられます。

①報道機関による報道
公務員の刑事事件は報道されやすく,報道を通じて事件が広く知られるため,職場の同僚や上司にも知られるきっかけとなることが多く見られます。

②警察からの通知
公務員が刑事事件に関与した場合,警察や検察は通常,所属する行政機関に通知します。これは,所属機関が適切な対応を取るために必要な手続とされることが一般的です。

③内部調査
公務員が刑事事件に関与した場合,所属する機関は内部調査を行うことがあります。この調査により,事件の詳細が職場内で共有されることになります。

④行政手続
公務員が刑事事件に関与した場合,懲戒処分などの行政手続が行われることがあります。この過程で,職場内で事件に関する情報が共有されることが多いです。

⑤職務上の影響
公務員の刑事事件は,その職務遂行能力に直接的な影響を及ぼす可能性があります。そのため,職場は迅速に対応する必要があり,事件に関する情報が共有されます。

公務員が刑事事件で受ける処分 ①休職させられることがある

公務員の場合,刑事事件の影響で仕事を休職させられる場合があります。
本人の意に反して休職させるこの制度を「起訴休職」と言い,国家公務員,地方公務員いずれにも存在するルールです。

①休職させられるケース

「起訴休職」という制度名の通り,起訴された場合に用いられる制度ですが,起訴された場合の全てに当てはまるわけではありません。
前提として,起訴のやり方には,大きく以下の二通りがあります。

公判請求公開の裁判を求める方法。公判を開いた上で,裁判所が判決を言い渡すことになります。
略式請求公判を省略し,書面の交付のみで裁判を行う方法。罰金の場合に限り行うことができます。

起訴する場合の手続は,公判請求するのが原則であり,例外的に軽微な処理で済ませる場合に略式請求を行う,という運用がなされています。

このうち,起訴休職の対象となるのは,公判請求をされた場合に限られます。略式請求は起訴休職の対象にはなりません。
そもそも,略式請求の場合には,起訴後ただちに裁判所の決定が出ることもある上,起訴された事実が分かるのが裁判所の決定後であることも多いため,現実的にも休職の措置を取ることは難しいでしょう。

②休職させられる理由

公務員が刑事事件の被告となることで職務の遂行に支障をきたす恐れがあることへの備えや,公務員としての信用を保持する目的があるとされています。
公務員が公共の利益のために業務を行う立場であること,その業務への国民の信頼が前提となることが,制度の背景にあります。

公務員が起訴されたという事実に着目した制度なので,起訴された事件の内容にかかわらず,公判請求された段階で起訴休職とされることになります。

③休職の期間

休職を要する期間は,起訴された日から判決が確定する日までとされています。
つまり,公判の手続が終了したと確認が取れるまでの間は,休職を強いられることになるのが通常です。

④休職中の給与

原則
休職期間中,給与を受けてはならないのが原則です。
起訴休職中の公務員は,職印としての身分を保有するものの,職務には従事しないため,職務の対価である給与も受けてはならない,ということになります。

特別の定め(国家公務員)
→国家公務員については,「一般職の職員の給与に関する法律」によって,起訴休職中にも,給与及び各種手当について60%以内の金額を支給することができると定められています。
一般的には,60%の金額を支給することが多いようです。

特別の定め(地方公務員)
→地方公務員の場合,各自治体の条例によって制度が定められることになりますが,国家公務員と同じく60%までの支給が可能であるとのルールになっていることが一般的です。

公務員が刑事事件で受ける処分 ②失職する場合

①失職の根拠となる制度

公務員の刑事事件では,法律上のルールとして直ちに失職する結果となる場合があります。これを「当然失職」と言います。
国家公務員については,国家公務員法に,地方公務員については地方公務員法に,それぞれ定めがなされています(ただし,地方公務員の場合は各自治体の条例で例外を定めることが可能です)。

当然失職の対象となるのは,禁錮以上の刑になった場合です。これは執行猶予付きの判決も含みます。
刑罰には,軽いものから罰金,執行猶予,実刑の概ね3種類あるところ,罰金以外は当然失職の対象であることになります。そして,罰金の場合は略式請求,執行猶予又は実刑の場合には公判請求されるのが通常であるため,公判請求された段階で休職,判決が確定した段階で失職,という流れをたどることが多く見られます。

②失職の理由

当然失職が生じるのは,公務員の欠格条項に関係しています欠格とは,その資格を欠いていることをいい,つまりは公務員になる資格を欠いているのはどういう場合かを定めたのが欠格条項です。

この点,公務員の欠格条項には,「禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者」というものがあります。これは,「実刑や執行猶予の刑になると公務員になる資格がありませんよ」という意味です。

そのため,公務員になった後,実刑や執行猶予の刑罰を受けた場合,事後的に公務員となる資格がなくなったこととなるため,失職に至るというわけですね。
当然失職は,公務員の職務倫理や法的遵守が厳しく求められることを反映した措置であると言えます。

公務員が刑事事件で受ける処分 ③懲戒処分を受ける場合

当然失職の対象とならない場合,具体的には罰金刑や不起訴処分にとどまった場合については,別途懲戒処分の対象になるかどうかが問題になります。
刑事事件の対象となる行為は,「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行」に該当するため,国家公務員法及び地方公務員法に基づく懲戒処分の対象になることがあり得るのです。

①懲戒処分の種類

免職 職を解かれる最も重い処分。
停職一定期間の職務停止。期間中は給与が支給されません。
減給給与を減額する処分。一定期間、給与の一部が差し引かれます。
戒告書面での厳重注意。職務には影響しませんが、記録が残ります。

なお,懲戒免職の場合,退職手当法により退職の全部又は一部が不支給となるのが通常です。そのため,経済的にも非常に不利益の大きな処分となります。

②懲戒処分の判断基準

国家公務員の場合には,人事院が懲戒処分の指針を公表していますが,そこで示されている判断材料は以下の通りです。

・非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか
・故意又は過失の度合いはどの程度であったか
・非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか
・他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか
・過去に非違行為を行っているか
・日頃の勤務態度や非違行為後の対応等

刑事事件との関係では,刑事処分の重さと懲戒処分の重さが比例する傾向にあります。
重大な懲戒処分を避ける意味でも,刑事事件への対応は適切に行うべきでしょう。

ポイント 公務員の特徴
逮捕直後に報道されやすい
職場に事件が発覚しやすい
公判請求されると起訴休職の対象になる
執行猶予以上の刑罰を受けると当然失職の対象になる
当然失職の対象外である場合は,懲戒処分を受けるかが問題になる

公務員の事件で弁護士に依頼すべき場合

①刑事処分の軽減を目指す場合

公務員の刑事事件では,公務員としての地位への影響も生じるため,刑事処分の軽減を目指す必要性が他の場合よりも非常に高い,という点に特徴があります。
もっとも,刑事事件の処分を軽減させるのに必要な動きは,自分だけで取るのが非常に困難です。弁護士に依頼の上,具体的な活動方針や内容を十分に相談して実行に移すのが適切でしょう。

②懲戒処分の軽減を目指す場合

不起訴処分や罰金刑にとどまった場合,当然に失職することはありませんが,懲戒処分を受ける可能性は否定できません。このとき,懲戒処分は裁量的な判断の対象になるため,その裁量の範囲内でできるだけ軽い処分にもらうよう試みることが適切でしょう。
弁護士に依頼した場合は,刑事処分を可能な限り軽くすることはもちろん,懲戒処分の判断に際しても意見書を提出するなどし,法律家及び弁護人の立場から処分の軽減を促す活動が可能です。

③職務への影響を防ぎたい場合

特に,逮捕や勾留といった身柄拘束の対象になる場合には,職務や職場関係者に大きな影響を及ぼすことが避けられません。中でも,刑事事件の内容や状況が職場にどう伝わるか,という点は,非常に重大な問題となりやすいところです。
弁護士に依頼した場合,弁護士から適宜適切な情報提供を行うなどしながら,職務や職場関係者に対する影響を最小限に抑える弁護活動が可能です。

公務員の刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

公務員の方は,公共の利益を代表する立場にあることから,刑事事件の被疑者・被告人となった場合には民間の方とは違う不利益を受ける可能性があります。
もっとも,必ず不利益な処分を受けるわけではなく,刑事事件に強い弁護士に依頼をして適切な対応をしてもらえれば,処分を避けられることも少なくはありません。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

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