【特殊詐欺事件の不起訴処分】不起訴になるケースや不起訴になった場合の効果,特殊詐欺事件特有の注意事項などを解説

このページでは,特殊詐欺事件の不起訴処分について知りたい方へ,不起訴処分を目指す方法や不起訴処分となった場合のメリットなどを弁護士が徹底解説します。不起訴処分を目指す場合の参考にしてみてください。

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特殊詐欺事件で不起訴を目指す方法

①被害者との示談

特殊詐欺事件は、不特定多数の被害者から計画的に金品を騙し取る詐欺事件を指すのが一般的です。特殊詐欺事件には、必ず具体的な被害者が存在するため、不起訴を目指すに当たっては被害者との示談を試みる手段が非常に有力となるでしょう。

刑事事件における示談は、一定の金銭を支払うことと引き換えに、加害者の刑事処罰を希望しない(加害者を許す)という内容の合意となるのが通常です。被害者が加害者の刑事処罰を希望しなければ、不起訴になる可能性は飛躍的に高くなります。

被害者としては、加害者から示談の話が来なければ騙し取られた金銭を取り戻すことは難しいため、損害を回復する唯一の手段として示談に応じるメリットが生じるケースも少なくありません。特殊詐欺事件では、被害者が経済的な救済を受けることが難しくなりやすいため、示談は被害者にとっても有益な解決になり得る点で、非常に有力な試みと言えるでしょう。

ポイント
被害者が刑事処罰を希望しなければ、不起訴の可能性が飛躍的に高まる
示談は、被害者にとって経済的な救済を受ける唯一の手段になり得る

②役割が大きくないことの主張

特殊詐欺事件は、単独で行われることはほとんどなく、組織的、計画的事件であることが通常です。そして、組織的な犯罪では、共犯者間の役割の差を踏まえて刑事処分が判断される傾向にあります。主導的な役割を果たした人物に対する刑罰は重く、従属的な役割にとどまった人物への刑罰は比較的軽く判断されることが通常です。

そのため、不起訴のような軽微な処分を求める場合には、事件に対する自身の役割が大きくないことを主張することも有力な方針になり得ます。例えば、ただ指示を受けて金品を受け取っただけである、金品の運搬に一部関与しただけであるなど、詐欺そのものの計画や実行に加担していない場合については、その役割が大きくないと評価されやすいでしょう。

ポイント
組織的事件では、役割の大きさで共犯者間に処分の差が生じる
詐欺そのものの計画や実行に加担していない場合、役割が大きくないと判断されやすい

③否認事件の場合

特殊詐欺事件における否認事件としては、犯罪の故意がないとの主張が一定数あります。特に、「闇バイト」という言葉で話題になったように、SNSを通じてアルバイトに応募し、知らず知らずのうちに特殊詐欺事件へ関与してしまうことになった場合、犯罪に関わったことの認識がなく、故意が問題になりやすいところです。

この点、犯罪の故意が立証できない場合、刑事処罰を科すことができないため、捜査機関としては不起訴処分とすることになります。裏を返せば、犯罪の故意が立証できない、との判断を促す方法で不起訴処分を目指すのは有力な方針の一つと言えるでしょう。

特殊詐欺事件で故意がないと判断されるためには、「詐欺事件に関与していると知らなかった」だけではなく、「詐欺事件に関与していたとしても構わない、とは思っていなかった」と評価されることが必要です。「詐欺事件に関与していたとしても構わない」と考えていた場合、詐欺事件への関与を知っていた場合と同様、故意があるとの取り扱いになってしまうことに注意しましょう。

ポイント
特殊詐欺事件の場合、犯罪の故意がないと主張するケースは一定数あり得る
詐欺事件に関与していたとしても構わない、という場合も故意あり

特殊詐欺事件で不起訴になる可能性

特殊詐欺事件の場合、犯罪の立証が可能である以上は起訴することが一般的です。初犯である、反省しているなどといった理由で不起訴にしてもらえる可能性は非常に低いと考える必要があるでしょう。それだけ、特殊詐欺事件は重大事件として取り扱われています。
例外的に、被害者が加害者のことを特に許している場合は、被害者の意向を汲んで不起訴処分とする可能性も低くありませんが、大きな経済的被害を受けた被害者が加害者側を安易に許すことは考えにくいです。そのため、被害者の許しを得るための積極的な努力は不可欠でしょう。

特殊詐欺事件で不起訴が困難になりやすい具体的な理由としては、以下の点が挙げられます。

特殊詐欺事件で不起訴が困難な理由

1.悪質な事件類型である

2.被害規模が大きい

3.組織的犯罪である

4.社会的影響が大きい

【1.悪質な事件類型である】

特殊詐欺事件は、一般的に判断能力が高くない高齢者をターゲットに、虚偽のストーリーを作り上げて被害者を誤解させ、多額の金銭を騙し取ろうとする事件類型です。計画性が非常に高く、「魔が差した」という程度の動機で行われる可能性が考えにくい内容であることから、悪質な事件類型と評価されることが一般的です。

刑事事件では、突発的で衝動的な事件よりも、計画的な事件の方が、刑事処分が重くされる傾向にあります。なぜなら、犯罪行為をしようという意思がより強く、そのような悪質な意思決定に対しては十分な刑罰を科して悔い改めさせる必要が大きくなるためです。

特殊詐欺事件の場合、計画性から悪質な意思決定があったと評価されやすいため、不起訴が困難な傾向にあります。

【2.被害規模が大きい】

特殊詐欺事件は、被害者に多額の金銭を振り込ませたり、手渡しさせたり、キャッシュカードそのものを騙し取って残高を全て引き出したりといった手口が取られるため、被害の規模が大きくなりやすい事件類型です。詐欺のような財産に対する犯罪(財産犯)では、被害規模が大きければ大きいほど、その犯罪行為に対する処罰も重くなりやすい傾向にあります。

特に、1件のみでなく複数件に関わっている場合、事件数の分だけ被害規模も大きくなっていくため、刑事処分もより重いものになりやすく、不起訴が難しい要因となるでしょう。

【3.組織的犯罪である】

特殊詐欺事件は、一定の人数で組織的に行われることが通常です。この点、刑事事件では、単独で実行するものより組織的に犯罪を成功させようとするものの方が、刑事処分が重くなりやすい傾向にあります。

組織的な犯罪は、その背後に反社会的勢力が関与しているケースも少なくありませんが、反社会的勢力と関係ある組織である場合には、刑事処分がより重くなりやすいところです。犯罪の立証が困難な場合を除き、不起訴処分は難しくなるでしょう。

【4.社会的影響が大きい】

特殊詐欺事件は、広く行われた結果社会問題になるなど、社会的影響力が非常に大きな傾向にあります。特に、被害者となる危険があるのみならず、SNS上での「闇バイト」として加害者として関与してしまう恐れもあることから、事件に対する国民の理解を促す必要が大きいと考えられているところです。

そのため、特殊詐欺事件の場合、安易に不起訴などの軽い処分とすることで社会の秩序が乱れる結果にならないよう、相応に重い刑事処罰を科して社会に知らしめることが重要視されやすいでしょう。

不起訴の意味・種類

不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。

不起訴処分には,以下のような類型があります。

不起訴処分の類型

1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。

2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。

3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。

4.その他の類型

・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など

・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など

なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある

逮捕と不起訴の関係

逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。

これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

刑事手続の流れ

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。

ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も

不起訴になった場合の効果

不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。

①前科がつかない

前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。

そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。

前科がつかないことのメリット

1.資格に対する影響を避けられる

国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません

2.就職・転職への影響を避けられる

前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます

3.海外渡航の制限を避けられる

前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。

②釈放される

不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。

③逮捕されない

不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。

④取り調べを受けない

不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。

特殊詐欺事件で不起訴を目指す場合の注意点

①示談で不起訴を目指すのが困難な場合

特殊詐欺事件では、示談を行う方法で不起訴を目指そうとしても、結果に結びつかないことが珍しくありません。特に、事件が複数ある場合には注意が必要です。

被害者複数、事件複数という場合、個別の事件ごとに起訴不起訴が判断されます。そうすると、被害者のうち一人だけでも示談に至らなければ、その件は起訴されてしまい、ほかの事件で示談ができていたとしても不起訴の目標が実現できない結果とならざるを得ません。
また、被害者全員との示談に乗り出した後に一人だけ示談できないことが明らかになった場合、ほかの被害者に対する示談の試みをなかったことにするわけにもいきません。そのため、不起訴が実現できないと分かりながらも、応じてくれた被害者との示談を進める必要が生じることになります。

②経済的負担

特殊詐欺事件は、被害規模が1件当たり百万円単位などと大きくなりやすい類型です。そのため、特殊詐欺事件で示談を目指そうとすると、それだけ大きな経済的負担を覚悟する必要がある点には注意したいところです。

一般的に、受け子(被害者から金品を受け取る役割)や出し子(被害者の口座から金銭を引き出す役割)といった末端の立場である場合、その役割に対する報酬は大きくありません。被害の規模と比較すれば、そのごく一部にとどまることが通常です。
しかしながら、被害者との関係では、被害全額を賠償する義務を負っているため、示談を目指すのであれば基本的に被害者の損害を全て埋め合わせることが必要となります。少なくとも、自分の受け取った報酬を吐き出すのみで足りる問題ではありません。

そうすると、事件を通じて得た利益とは比較にならない金額の経済的負担を想定する必要が生じることになります。特殊詐欺事件で不起訴を目指す場合は、経済的負担を十分に考慮しながら進めることをお勧めします。

③末端の役割であれば不起訴になるか

特殊詐欺事件の場合、組織内での役割が刑事処分に大きく影響します。当然ながら、最も末端の役割と言える立場であれば、組織内では最も処分が軽微になりやすいでしょう。

しかしながら、末端の役割であるため処分が軽微になる、と言っても、決して不起訴処分が見込まれるわけではない点には注意が必要です。
特殊詐欺事件は、そもそもの事件規模が大きく、悪質な類型と考えられています。そのため、いかに末端の役割であっても、不起訴とされるまで軽い評価になるわけではありません。

特殊詐欺事件では、「初犯だから」「末端の役割だから」という理由で安易に不起訴処分とされることは考えにくいため、不起訴を目指す場合にはより積極的な努力が必要になるでしょう。

④手続に要する期間

特殊詐欺事件の場合、逮捕勾留といった身柄拘束の上で捜査されることが一般的です。捜査に伴う逮捕勾留の期間は、逮捕から勾留までが72時間以内、勾留が合計で20日以内(勾留10日間、勾留延長が最大10日間)となるため、最長で23日以内の手続になるところです。

もっとも、特殊詐欺事件では余罪が多いため、この逮捕勾留が事件の数だけ繰り返される傾向にあります。仮に5件の捜査が行われれば、それだけで100日を超える身柄拘束が想定されることになります。
しかも、事件が起訴された後も、特に保釈されない限り、裁判が終わるまで身柄拘束は続きます。起訴後、裁判が終わるまでの期間は数か月となりやすいでしょう。

そのため、特殊詐欺事件では、事件の数だけ逮捕勾留が繰り返された後、起訴されて裁判が終わるまでの数か月間も勾留され続けるなど、長期間を要しやすい可能性に注意が必要です。

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