●キャッシュカードと暗証番号を渡してしまった…
●口座の譲渡はどんな犯罪になるのか?
●口座が凍結されてしまったらどうすればいいか?
●口座譲渡で逮捕されてしまうか?
●口座譲渡は初犯でも起訴されるか?
●口座譲渡の事件では弁護士に何を依頼できるか?
といった悩みはありませんか?
このページでは,口座譲渡についてお困りの方に向けて,口座譲渡がどんな犯罪になるか,口座譲渡で弁護士に相談すべきかなど解説します。
目次
口座譲渡はどんな犯罪か
自身の銀行口座を他人に譲渡する行為は,「犯罪収益移転防止法」に違反する犯罪行為です。犯罪収益移転防止法は,正式名称を「犯罪による収益の移転防止に関する法律」といい,いわゆるマネーロンダリングを防ぐために設けられた法規制です。
譲渡された口座は,ほとんどの場合,詐欺事件等の被害者が振込を行う場合の振込先口座になります。被害者からの振込先口座を無関係の第三者の口座とすることで,詐欺事件の犯人が特定されることを防ぐ手法で,組織的詐欺事件の常套手段とも言えます。
そのため,口座の譲渡が詐欺被害を助長し,被害者の金銭の追跡を困難にすることから,犯罪収益移転防止法により禁じられているのです。
なお,譲渡するための口座を新規に開設した場合,その開設行為は金融機関に対する詐欺罪に該当する可能性もあります。
金融機関は,譲渡目的の口座開設を認めていないため,譲渡目的でないと騙して口座を開設させた,とみなされるからです。
口座譲渡の刑罰
口座の譲渡に対する刑事罰の内容は,以下の通りです。
→1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金,又はその併科
また,業として(反復継続して)口座譲渡行った場合には,刑罰が以下のように加重されます。
→3年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金,又はその併科
口座譲渡に対する刑罰は,懲役刑と罰金刑の併科が可能であることが特徴です。
一般的に,懲役刑は罰金刑より重く,重い懲役刑を科すか,軽い罰金刑とするかの選択となりますが,併科が可能な場合,重い懲役刑を科しつつ罰金も同時に科すことが可能です。
犯罪収益移転防止法の違反行為が経済的な収益を生み出す可能性を踏まえ,得られた収益を吐き出させる可能性を広げる意味があるとされています。
ポイント
口座譲渡は犯罪収益移転防止法違反となる犯罪行為
口座譲渡の刑罰は懲役刑と罰金刑の併科が可能
口座譲渡が事件化する場合の流れ
口座の譲渡が発覚する最も典型的なケースは,その口座を用いた詐欺被害が生じ,詐欺事件に関する捜査や金融機関の対応の過程で口座が譲渡されたものだと分かる,という流れです。
口座が詐欺事件に用いられる場合,捜査の着手時点で詐欺事件の客観的な根拠となり得るのは,通話時の発信者情報と振込先の口座情報程度であることが非常に多いため,捜査機関としては,電話や口座の名義が主犯の人物とは異なることを想定しながらも,それらの名義をたどらざるを得ないのが通常です。
警察が口座名義人とコンタクトを取り,口座が詐欺事件に用いられた経緯を確認する中で,口座譲渡の事実が判明していきます。
また,その口座に犯罪収益が入金されていると疑われる場合,金融機関が取引停止措置(いわゆる口座凍結)を行い,犯罪収益が散逸しないように対応することが一般的です。そして,取引停止措置がなされた場合,その旨が金融機関から口座名義人に通知されることになります。口座凍結された名義人は,警察に出頭・相談するなどの対応を取りますが,その中で口座譲渡の事実が明るみになるケースも多数見られます。
その他には,複数の飛ばし口座を用いて多くの詐欺事件を犯していた組織がいる場合,他の口座を用いた詐欺事件の捜査がきっかけとなって,芋づる式にひと通りの飛ばし口座が特定され,あわせて口座譲渡の事実が判明する,というケースもあります。
このようなケースは,犯罪被害者の被害申告がなされておらず,事態が一定期間放置されている可能性が高いため,事件の発生から口座譲渡の事件化までに相当程度の期間が空くことも少なくありません。
口座譲渡と逮捕
口座譲渡の事件は,決して逮捕を前提とした捜査が行われるわけではありません。
その口座を利用した詐欺事件の共犯者であれば,逮捕が非常に見込まれやすく,長期間の身柄拘束が想定されやすいですが,口座を譲渡した人物が詐欺事件の共犯者である可能性が低いことは,捜査機関もあらかじめ織り込み済みであることがほとんどです。
そして,口座の譲渡そのものは,組織的詐欺ほどの重大事件とはされておらず,被疑者本人が犯罪事実を認めていればそれほど証拠関係が複雑な類型でもないことが多いため,逃亡や証拠隠滅のために被疑者を逮捕することは決して必要とはされていないのが現在の運用です。
もっとも,逮捕をしない捜査手法を在宅事件といいますが,在宅事件とするのは被疑者が自ら出頭などの捜査協力をしてくれることが大前提です。出頭の求めになかなか応じず,持参や提出を求められた証拠も出し渋るようだと,在宅事件とする前提が崩れてしまい,逮捕の必要が大きくなりやすいでしょう。
特に,口座譲渡の場合,金融機関の判断による口座凍結がなされやすい,という特徴がありますが,口座凍結をした金融機関は,口座名義人に最寄警察署への出頭を勧めることが一般的です。このような金融機関の案内にはできる限り従い,捜査協力の姿勢を示すことは怠らないようにしましょう。
警察への連絡や出頭に不安を感じる場合は,弁護士に依頼の上,弁護士とともに行うことも可能ですので,できるだけ早く弁護士にご相談されることをお勧めします。
ポイント
口座譲渡はその口座を用いた詐欺事件がきっかけで捜査の対象になりやすい
口座譲渡に対する捜査は決して逮捕を前提とするわけではない
口座譲渡の刑事処分
①口座譲渡の起訴・不起訴
口座譲渡の事件は,犯罪事実の存在が明らかである限り,起訴されることが多い犯罪類型です。
事件によっては,犯罪事実の存在が明らかであっても反省状況を踏まえて不起訴(起訴猶予)とされるケースはあります。しかし,口座譲渡の場合に反省状況のみで不起訴処分となる例はあまり見られません。不起訴処分を目指すためには,より積極的な努力を要するでしょう。
具体的には,以下のような動きが挙げられます。
示談
→詐欺事件の被害者との間で示談を行い,被害者の許しを獲得するのは有力な手段です。詐欺事件の被害者は,厳密には口座譲渡の被害者ではありませんが,口座譲渡によって実質的な被害を被った人物であるため,示談ができることによって処分の軽減につながりやすいでしょう。
自首
→口座を譲渡した後,それが犯罪事実であると分かった場合,捜査を受けるよりも前に自ら警察に出頭し,犯罪事実を話して捜査を受ける動きは有力です。自首に該当するのは,捜査機関が犯罪事実を把握していなかった場合には限られますが,自首が成立するかどうかにかかわらず,自ら出頭したという事実が刑事処分を軽減させる非常に大きな事情になることは間違いありません。
②口座譲渡の具体的な刑罰
口座譲渡の事件が起訴された場合,刑罰が科せられることになりますが,その刑罰の内容としては罰金刑となることが多数見られます。
一般的には,金銭を対価に個人が他者に口座譲渡したような代表的事例だと,40~50万円ほどの罰金刑となるケースが多く見られるようです。
もっとも,件数が多かったり,他者の口座譲渡にも関与していたりと,より悪質な態様の場合には,罰金にはとどまらず,懲役刑の対象となることも否定はできません。
口座譲渡で弁護士に相談すべき場合
①口座譲渡した行為が犯罪だと気づいたとき
口座譲渡をしてしまった後,自身でネット検索などをして犯罪だと気が付いたときには,できる限り早く弁護士に相談,依頼を行うようにしましょう。
譲渡した口座がどれほどの重大事件に利用されるのか分かりませんし,そのままの状態で放置しておくメリットもありません。
弁護士にご相談いただくと,今後の不利益を最小限に抑えるための対応方法や弁護士依頼のメリットなど,適切な動き方について案内を受けることが可能です。
②口座が詐欺事件に用いられたと分かったとき
口座に不正な入金があった,銀行から口座凍結の連絡があったなど,自身の口座が詐欺事件に用いられたと分かったときにも,できるだけ早く弁護士への相談,依頼を検討しましょう。
実際に詐欺の被害に遭った被害者がおり,その被害者は警察に相談をする可能性が高く見込まれます。警察から捜査されるより前に,先回りをして適切な対応を取ることで,逮捕を回避したり,刑事処分を最小限に抑えたりすることも可能です。
③出頭時の逮捕を避けたいとき
口座譲渡の事件では,自ら警察署に問い合わせたり,警察に出頭したりする必要の生じることが多いです。その際,出頭した先でそのまま逮捕されるリスクも否定できません。
自身からの連絡や出頭を控えているケースでは,弁護士に相談・依頼し,弁護士を通じて捜査機関に対処することで,出頭時の逮捕の可能性を大きく低下させることが可能になります。
④処分の軽減や不起訴を目指したいとき
口座譲渡は,起訴されることの多い犯罪類型であるため,特に不起訴を目指したい場合には,弁護士に相談・依頼の上,不起訴になる余地はあるか,不起訴を目指す場合にはどのような対応が有力か,可能な限り検討し,実行するようにしましょう。
口座譲渡の刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ
口座譲渡の事件は,放置してしまうとより重大な詐欺事件につながる可能性が非常に高いため,早期の対応が非常に重要となります。
早期に適切な対応を取ることによって,逮捕や刑罰を避けられる場合もありますので,口座譲渡の事件に精通した弁護士へ少しでも早くご相談されることをお勧めします。
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。
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