
このページでは,器物損壊事件で警察から呼び出された場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
器物損壊事件に関する呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

目次
器物損壊事件で呼び出された場合の対応法
①初めて呼び出しを受けた場合
初めて呼び出しを受けたときの基本的な対応方針としては,まず連絡を無視しない,ということが非常に重要です。
器物損壊事件で呼び出しの連絡が来た,という場合,捜査機関の方針としては,呼び出しに応答してくれるのであれば,比較的穏やかな手続で進めるつもりである可能性が高いでしょう。そのため,捜査機関の期待通りに応答し,連絡が円滑に取れる人物だと分かってもらえれば,逮捕などの大きな不利益は回避しやすくなります。
一方,呼び出しを無視してしまうと,捜査機関から見て呼び出しに応じてくれる人なのかが分かりません。呼び出しに応じてくれれば穏やかな手続でよかったのに,呼び出しを無視したばかりに逮捕などの強制的な手続を取らざるを得ない,と判断されてしまうと,その不利益は極めて大きくなります。
そのため,まずは呼び出しに対して無視せず応じる,留守番電話に担当者名や用件が録音されていれば折り返しなどの対応をするなど,呼び出しへの応答がしてくれる人物だと分かってもらうためのリアクションを取るようにしましょう。
ポイント
無視しないことが最重要
呼び出しの連絡に応じていれば,穏やかな手続で進むことが通常
②2回目以降の呼び出しを受けた場合
1回目の呼び出しで話を聞かれるなどした後,2回目以降に呼び出しが行われるのは,供述調書などの書面を作成する目的であることが一般的です。1回目の呼び出しで供述調書を作成するケースもありますが,1回目に供述調書が作成されなかったケースでは,2回目以降の呼び出しは調書作成の目的であると考えて基本的に間違いないでしょう。
供述調書の作成に当たっては,作成時に求められる署名押印の意味を把握しておくことが重要です。
供述調書への署名押印は,調書の内容が自分の発言と一致することのお墨付きという意味合いのものです。調書の作成者は捜査担当者であり,自分の発言を他人が文字起こししているため,その文字起こしに誤りがないことを署名押印という方法で明らかにしているのです。
そのため,署名押印を求められた際には,内容に間違いがなければ応じる,という方針が合理的です。内容に一部誤りがあれば,訂正を求めることができるため,誤りのない供述調書にしてもらいましょう。
ポイント
供述調書の作成目的であることが一般的
署名押印は,内容に間違いがないことのお墨付きの意味
③事件の記憶がない場合
器物損壊事件の場合,事件当時の記憶がなく,自分が加害行為をしてしまったかどうか分からない,というケースも散見されます。代表例が,深酒で泥酔状態になってしまった後,路上や店舗などで加害行為をした,と言われているケースです。
この点,事件の記憶がない場合には,記憶がないことを前提とはしつつ,疑われている加害行為を認めるか認めないか,という点をできるだけ早期にはっきりさせることをお勧めします。特に,自分がしたことで間違いないであろうという場合,「覚えていない」とだけ答えてしまうと,「自分がしたとは認めていない」という意味で解釈されることは踏まえておきたいところです。
認めるかどうかの判断材料としては,周囲の人や捜査担当者から当時の話を聞き,その内容を総合することが有効です。泥酔状態で記憶がない場合には,酔いが覚めた後に冷静な対応を尽くすことで,不利益を最小限に抑える結果につながりやすいでしょう。
ポイント
認めるかどうかをできるだけ早くハッキリさせる
覚えていないとの回答は,認めないという意味で理解される
④否認事件の場合
疑われている犯罪行為をしていない,という否認事件の場合には,まずその争点を自分の中で明確に把握することが非常に重要です。
一口に否認事件と言っても,その具体的な内容は争点によって様々です。器物損壊事件では,自分が行ったものではない(=犯人性の否認),わざとおこなったことではない(=故意の否認)などが代表的な争点ですが,いずれが争点であるかによって,適切な対応方法や注意すべき点が大きく異なります。犯人性が争点であるのに,「わざとやったわけではない」と述べるのは,むしろ不利益を招くでしょう。
また,争点を把握した後は,できればその争点について法的な判断を行うときの基準や根拠になるものを理解しておきたいところです。この点は,高度に法律的な問題となるため,弁護士への相談をお勧めします。
ポイント
争点を明確に把握する
争点の判断基準や根拠を理解する
器物損壊事件の呼び出しに応じると逮捕されるか
器物損壊事件の場合,呼び出しに応じたことをきっかけに逮捕されるという流れは基本的に考えにくいでしょう。呼び出しに対してあまりに不合理な対応をしない限りは,逮捕しないとの判断をすることが通常です。
器物損壊事件で逮捕をするのであれば,呼び出しを行うのではなく,予告をしないまま突然自宅等に訪れ,逮捕状を示して逮捕(=通常逮捕)をすることが一般的と言えます。逃亡や証拠隠滅を防ぐ手段として,その方が優れているためです。
ただし,例外的に,呼び出し後に逮捕の判断に至る場合もあり得ます。一例としては,犯人でないと思っていた人を呼んだ(又は犯人がだれか分からない状態で呼んだ)後,呼び出した相手が犯人であると特定できるだけの新事情が発覚した場合が挙げられます。
この場合,事件の程度などから「犯人が特定できれば逮捕する」との捜査方針だったときには,呼び出した人物を犯人だと特定でき次第,逮捕に踏み切る可能性があり得ます。
ポイント
基本的には考えにくい
呼び出し後に犯人と特定された場合には例外的にあり得る
器物損壊事件で警察が呼び出すタイミングや方法
①事件直後
器物損壊事件は,被害者や目撃者の面前で行われた場合,現行犯で問題になり,警察が関与する流れとなることが一般的です。そして,現行犯で問題になったケースでは,事件から間もないタイミングで呼び出しを受け,取り調べを受けることが見込まれやすいでしょう。
また,事件直後に,事件現場へ警察が駆け付けた際には,そのまま警察署への動向を求められる形になることも多く見られます。
②加害者を特定したとき
被害者などによる事件の把握が現行犯でなかった場合には,被害者が捜査機関に捜査を求め,捜査機関によって加害者の特定が試みられる,という流れになりやすいです。このようなケースでは,加害者として特定された段階で,警察が呼び出しを行うことが想定されるでしょう。
呼び出しのタイミングは,加害者として特定されてから間もない時期であることが一般的です。警察担当者のスケジュールに問題がない限り,期間を空けるメリットはないため,特定され次第の呼び出しとなるでしょう。
また,捜査開始から加害者特定までの期間は,ケースや証拠関係によって様々ですが,概ね1~6か月程度が目安になりやすい傾向が見られます。
③関係者から事情を聴取した後
複数の関係者や目撃者がいた場合,それらの人物から事情を聴取した後に呼び出されるケースもあり得ます。これは,特に被害者と加害者の言い分に相違が見られる場合,第三者の話を踏まえて再度呼び出す,という流れで行われやすい動きです。
呼び出しの時期は特定が困難ですが,必要な第三者からの聴取の後,それほど間を空けずに行われることが一般的です。
④被害弁償を促すとき
器物損壊事件は,被害者の財産に対して損害を与えるという内容です。そのため,事件の解決としては,被害者の経済的な損害が補填される,という結果になることが最も望ましいと言えるでしょう。
捜査機関としても,被害弁償による損害の補填を促したい,と考えることは少なくないため,その旨を加害者側に伝える目的で呼び出すケースがあり得ます。
このような呼び出しは,一通りの取調べが終わった後の終盤の時期になされることが多いでしょう。捜査を尽くした段階で,「被害弁償ができれば,互いにとってより望ましい結果に近づくであろう」と判断した場合に,加害者側へ助け舟を出す意味も込めて行われる傾向にあります。
器物損壊事件の呼び出しに応じたときの注意点
①被害者との解決を目指す重要性
器物損壊事件の場合,被害者との解決の有無が最終的な結果を決定的に左右します。被害者と適切な解決ができていれば,確実に不起訴処分となり,前科が付かない結果を獲得できるため,器物損壊事件では何よりも被害者との解決を目指すことが重要です。
器物損壊事件について呼び出しを受けた場合,目先の対応や警察に出頭した際の不安が先行しがちですが,被害者との解決の重要性と比較すれば比較的小さな悩み事にとどまると言ってよいでしょう。特に,心当たりのある事件について呼び出しを受けた際には,とにかく被害者との解決が目指せないか,弁護士に相談するなどして方法を検討することに注力することをお勧めします。
②反省の深さを示す努力の重要性
器物損壊事件は,比較的軽微な事件類型と理解されています。そのため,他の重大な事件類型よりも,不起訴処分にしてもらえるケースが多い傾向にもあります。
より重大な事件類型では,どれだけ反省の意思を表明してもそれだけで不起訴になることは考えにくいですが,器物損壊事件の場合,その内容によっては反省の深さが不起訴処分に直結するケースもあり得ます。そのため,呼び出しに応じた際,どれだけ反省の深さが示せるか,という点が,他の事件類型よりも重要度の高いポイントとなることに注意すべきです。
もちろん,どの事件類型でも反省の意思を示すことは重要なポイントですが,特に結論に結びつくケースが多いことを踏まえ,意識的に努めることが望ましいでしょう。
③警察の呼び出しと検察の呼び出しとの区別
呼び出しを受ける場合,警察からの呼び出しなのか検察からの呼び出しなのか,という点は適切に区別することをお勧めします。
警察は,事件の捜査を一通り行うと,検察庁に事件を送致します。そして,送致を受けた検察庁が,起訴するか不起訴するかの判断を行い,それにより事件の捜査が終了する,という流れを辿ります。
そのため,警察署からの呼び出しは比較的初期の段階,検察庁からの呼び出しは比較的終盤の段階である,との理解が可能です。それのみならず,場合によっては検察庁での呼び出し段階では起訴不起訴の処分が事実上決まっているケースも少なくありません。
処分の軽減を目指したい場合,検察庁の呼び出しに応じた後では時期遅れになってしまっている可能性があるため,十分に注意しましょう。
警察が呼び出す主な目的
警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。
①参考人である場合
参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。
参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。
②身元引受人である場合
身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。
身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。
身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。
③被疑者である場合
被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。
被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。
被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。
参考人 | 身元引受人 | 被疑者 | |
呼び出しの理由 | 事件の情報獲得 | 被疑者の出頭確保 | 犯人候補の取り調べ |
逮捕の可能性 | 通常なし | なし | あり |
前科の可能性 | 通常なし | なし | あり |
警察の呼び出しを拒むことは可能か
警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。
①参考人の場合
参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。
ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。
そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。
②身元引受人の場合
身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。
もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。
被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。
③被疑者の場合
被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。
被疑者を取り調べる方法
1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める
この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。
そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。
ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意
呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット
被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。
①逮捕を回避できる
呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。
この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。
②不適切な取り調べを防げる
警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。
この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。
弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。
③前科を防げる
被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。
この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。
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藤垣法律事務所代表弁護士。岐阜県高山市出身。東京大学卒業,東京大学法科大学院修了。2014年12月弁護士登録(67期)。全国展開する弁護士法人の支部長として刑事事件と交通事故分野を中心に多数の事件を取り扱った後,2024年7月に藤垣法律事務所を開業。弁護活動のスピードをこだわり多様なリーガルサービスを提供。