住居侵入罪・建造物侵入罪になるのはどこから?逮捕される可能性は?早期釈放はできるか?ケース別の弁護活動もすべて解説

●どこからが住居侵入罪に該当する行為か?

●住居侵入と建造物侵入はどのように区別されるか?

●泥酔中に住居侵入したと言われた。どうなるか?

●住居侵入・建造物侵入は逮捕されるか?

●住居侵入・建造物侵入事件での早期釈放は可能か?

●住居侵入・建造物侵入はどんな刑罰になるか?

●住居侵入事件で弁護士に依頼するメリットは?

といった悩みはありませんか?

このページでは,住居侵入・建造物侵入の事件でお困りの方に向けて,住居侵入事件や建造物侵入事件の具体例捜査や処分の流れ弁護士に依頼するメリットなどを解説します。

住居侵入罪にあたる行為

住居侵入罪とは,正当な理由なく人の住居に侵入する犯罪です。
住居侵入罪として問題になる行為には例として以下のようなものが挙げられます。

①窃盗目的で住宅に侵入する行為
いわゆる空き巣などが該当します。窃盗行為が行われた場合,あわせて窃盗罪又は窃盗未遂罪が成立します。
もっとも,窃盗行為を実行せずに立ち去ったとしても,住居侵入罪は変わらず成立します。

②わいせつ行為目的で帰路の後をつけ,住宅に侵入する行為
路上で目撃した被害者へのわいせつ行為を企図した人が,その場ではわいせつ行為を行わず,自宅に入る被害者の後をつけて住宅に侵入した場合です。
わいせつ行為がなされた場合,内容等に応じて不同意わいせつ罪などの性犯罪が別途成立します。また,わいせつ行為がなされなかった場合でも住居侵入罪は変わらず成立します。

③知人の自宅の合鍵を作り,それを用いて居宅に侵入する行為
加害者と被害者が勤務先の同僚等の関係にある場合に,加害者が被害者の所持品から鍵を持ち出して合鍵を作製し,その合鍵を用いて被害者方に侵入するケースです。
合鍵を持ち出した段階で,その行為について窃盗罪の成立することが一般的です。

④更衣室や浴室を覗く目的で住宅の敷地内に侵入する行為
庭などの敷地から,住宅の更衣室や浴室を覗くことができる状況にある場合,その敷地に入る行為は住居侵入罪に該当するのが通常です。
住居侵入罪は,住居のみでなく,その住居に付属して一体となった場所に侵入する行為も対象とするものと理解されます。そのため,庭や駐車場,塀と玄関の間のスペースなど,住居に付属した私有地への侵入行為は,住居侵入罪に該当するところです。

なお,覗き行為が行われた場合,軽犯罪法違反などの犯罪があわせて成立するでしょう。

⑤下着窃盗のためベランダに侵入する行為
ベランダに洗濯物が干してある場合に,これを盗むためベランダに立ち入ったり手を伸ばしたりする行為にも住居侵入罪が成立します。
ベランダも,居室そのものではありませんが住居の一部に含まれるとの理解が一般的です。そのため,正当な理由なくベランダに侵入すれば,住居侵入罪の対象となります。

ポイント
住居侵入事件の典型例は,窃盗目的やわいせつ目的での居宅への侵入
合鍵を作って侵入する事件は,鍵の窃盗罪も成立しやすい
敷地内やベランダに侵入する行為も該当し得る

住居侵入と建造物侵入の区別

住居侵入罪と類似する犯罪に,建造物侵入罪があります。建造物侵入罪は,文字通り建造物に正当な理由なく侵入する犯罪です。

ここで,建造物とは,人が出入りする構造物のうち,住居以外の建物を指すのが通常です。そのため,住居侵入罪は人が日常的に生活する場所への侵入を,建造物侵入罪は住居でないが人が出入りする建物への侵入を,それぞれ対象としていると言えるでしょう。
建造物の具体例としては,商業施設やオフィスビル,学校,工場,倉庫などが挙げられます。

なお,住居侵入罪と建造物侵入罪は,守ろうとする権利や利益(保護法益)にも相違があるとされます。
具体的には以下の通りです。

住居侵入罪個人の生活の平穏 プライバシーの保護
建造物侵入罪建物の安全性 公共の秩序の保護

住居侵入・建造物侵入事件の捜査と逮捕

①後日逮捕

住居侵入事件や建造物侵入事件の捜査は,現行犯に限らないことが特徴の一つです。
これは,侵入行為がされた時点では発覚せず,侵入行為が度重なったり,侵入行為による損害が発覚したりしたときに,後から侵入の被害を知ることが多い事件類型であるためです。

また,後日になって捜査が開始された場合,捜査機関としては,被疑者が特定できた段階で後日逮捕をするか,逮捕せず在宅事件として取り扱うかを選択しますが,住居侵入事件では後日逮捕される場合が多く見られます。
これは,住居侵入行為が被害者のプライバシーを非常に大きく侵害する行為であり,被害者側の恐怖や生活の平穏に配慮する必要があるためと思われます。自宅に侵入したであろう被疑者が特定されたにもかかわらず,その居所が分からないとなると,被害者としては多大な精神的負担を強いられることが想像に難くないところです。

②現行犯逮捕

もちろん,侵入行為がなされた現場で,現行犯で問題になることも少なくありません。この場合,逮捕に至るかどうかは,概ね以下のような事情から判断される傾向にあります。

侵入行為の程度・内容
→居宅の中まで立ち入っている場合,敷地や共用部までの立ち入りと比較して逮捕の可能性は高くなります。

侵入目的
→わいせつ行為目的など,侵入目的が悪質な場合には逮捕の可能性が高くなります。

侵入行為の計画性
→思い付きではなく,事前に計画されたことの伺われる侵入行為の場合,逮捕の可能性が高くなります。

再被害の恐れ
→泥酔者が突発的に行ったような場合と,明確な意思で被害者の居宅を狙って侵入した場合とでは,再被害の恐れに大きな差があり,逮捕の可能性も変化します。

住居侵入・建造物侵入で早期釈放は可能か

住居侵入事件や建造物侵入事件で早期釈放の可能性があるかは,侵入行為の程度(犯罪行為の重大さ)によって大きく区別されやすい傾向にあります。

①侵入行為の程度が軽微な場合

敷地やマンション共用部への立ち入り,店舗入り口などへの立ち入りといった,侵入行為が比較的軽度なものである場合,早期釈放されることも少なくありません。
具体的な判断要素としては,以下のようなものが挙げられます。

被疑者の認否認めている場合の方が,否認している場合よりも早期釈放につながりやすくなります。
身元が確かであるか同居人が身元を引き受けられる場合,早期釈放につながりやすくなります。
侵入行為以外の重大犯罪があるか窃盗やわいせつ行為など,侵入行為の上で重大犯罪が行われた場合には,事件の重大性を踏まえて早期釈放はされづらくなります。
余罪が想定されるか継続的に同じ住居へ侵入していたなど,同種の余罪が想定される場合,余罪に関する証拠隠滅の防止などを理由に早期釈放がされづらくなります。

②侵入行為の程度が重大な場合

居室の中に立ち入っているなど,侵入行為の程度が重大な場合には,早期釈放は非常に困難なことが多数見られます。逮捕後も身体拘束が続く場合,手続としては10~20日間の勾留が行われますが,重大な住居侵入事件では20日間の勾留を想定する場合が多いでしょう。
また,類型的に同種の余罪が発覚することも少なくありませんが,余罪がある場合,余罪についての再逮捕・再勾留が続けて行われ,身体拘束期間がより長期化する場合もあります。
余罪での再逮捕・再勾留が行われると,「逮捕+勾留」の身柄拘束期間(概ね22~23日程度)がその件数分繰り返されることになるため,トータルで数か月に及ぶことも珍しくはないところです。

侵入行為が重大な住居侵入事件の場合,早期釈放を求めることは容易でないので,余罪の発覚を防ぐ,身に覚えのない余罪はしっかり否認するなど,余罪での逮捕勾留が繰り返されないことを目指すのが有力な対応になりやすいでしょう。

住居侵入・建造物侵入の刑事処分

住居侵入事件・建造物侵入事件では,起訴されるかどうかの判断に際して,被害者の処罰感情が強く重視されます。
住居の居住者や建造物の管理者が,加害者の刑罰を希望する場合は起訴され,刑罰を科さないことを希望する場合には起訴されない,という運用が数多く見られるところです。

そのため,住居侵入・建造物侵入の事件では,被害者との示談を試み,被害者の宥恕(許し)を獲得することが非常に有益な対応になるでしょう。
起訴前に示談が成立し,被害者の宥恕が得られていれば,不起訴処分となるのが一般的です。

一方,起訴が免れなかった場合の処罰としては,実刑判決の対象となるケースは決して多くありません。
比較的軽微な侵入行為であれば罰金刑も考えられますし,重大な侵入行為であったとしても執行猶予付きの判決になることが代表的です。
もっとも,多数の余罪があるケース,侵入の際に重大事件を犯しているケースなどは,初犯でも実刑判決にならないとは限りません。

この点,起訴後であっても示談の試みは有力であり,示談が成立している住居侵入事件で実刑判決になるのは非常に稀ということができるでしょう。
起訴が免れなかった場合でも,示談の試みにより処分を可能な限り軽減することは重要です。

ポイント
侵入行為が軽微であれば早期釈放も
侵入行為が重大な場合は余罪も含めて勾留が数か月に及ぶことも
刑事処分は被害者の処罰感情を強く重視して決定される

住居侵入・建造物侵入事件で弁護士に依頼するべき場合

弁護士への依頼を検討すべき場合には,以下のようなケースが挙げられます。

①逮捕の回避を目指す場合

まだ捜査されていないが,今後の逮捕が懸念されるという場合,弁護士に依頼の上で自首を行うことが非常に有力です。
自首を行うと,自ら犯罪捜査のきっかけを作ることにはなりますが,自分から出頭している以上,逮捕が必要だと判断される可能性は大きく低下するのが通常です。
放置していては逮捕が危ぶまれるという状況では,自首による逮捕回避を検討するのが適切でしょう。

もっとも,その手順や方法を誤ると,せっかく自首をしても望んだ効果が得られない可能性も高くなってしまいます。自首を検討する場合は,弁護士との同行など,弁護士への依頼をお勧めいたします。

②早期釈放を目指す場合

逮捕されたケースで早期釈放を目指す場合も,弁護士への依頼が適切と言えます。
住居侵入事件では,内容により早期釈放が実現できるかどうかの見込みが大きく異なりやすく,正確な見込みに沿った弁護活動が必要です。現実的に成功する可能性がない方法を取った場合,かえって捜査の長期化を招き,釈放時期を遅らせることにもなりかねません。

釈放を目指す場合,弁護士へ依頼の上,具体的な見込みと釈放に向けた弁護活動の案内を受けることをお勧めいたします。

③刑罰の軽減を目指す場合

刑罰の軽減を目指すためには,被害者との示談が必要不可欠です。
もっとも,当事者間での示談交渉は困難であるため,示談を試みる場合には弁護士への委任が必須となります。

示談に強い弁護士に依頼の上,弁護士を通じて示談交渉を試みることで,刑罰の軽減が実現しやすくなるでしょう。

④接見禁止処分のある場合

証拠隠滅などを防ぐため,弁護士以外との面会を禁じられることがあります。これを「接見禁止」処分と言います。
接見禁止の場合,弁護士しか被疑者の方と会えず,捜査への適切な対応は困難になります。弁護士に委任の上,弁護士とご本人との接見を実施し,早期に適切な対応方針を立てるのが適切でしょう。

⑤否認事件の場合

否認事件では,犯罪事実の立証ができるか,という点が最大の問題になりますが,その判断は非常に専門的な内容となり,弁護士への依頼なく検察と協議をすることは困難です。
事件の内容や否認のポイント,争点の判断基準などについて,弁護士に相談・依頼の上,法的に適切な主張を行うことで,不起訴処分を引き出すことが可能になり得るでしょう。

住居侵入・建造物侵入の刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

住居侵入・建造物侵入の事件は,個別の内容によってその後の流れや処分の見通しに幅の生じやすい事件類型です。正しい見通しを持つことができれば,できる限り有益な結果に向けて最善の対応を尽くすことが可能になります。
一方で,見通しを誤り,有効とは言えない対応に終始した場合,取り返しのつかない不利益が生じる可能性も否定できません。
そのため,個別の内容を踏まえて刑事事件に強い弁護士の意見をお聞きになることをお勧めします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

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