
このページでは,ひき逃げ事件の逮捕に関して,刑事弁護士が徹底解説します。逮捕の可能性はどの程度あるか,逮捕を避ける方法はあるか,逮捕された場合に釈放を目指す方法はあるかなど,対応を検討する際の参考にしてみてください。

目次
ひき逃げ事件で逮捕される可能性
ひき逃げ事件は,逮捕の可能性が十分に考えられる事件類型です。逮捕を避ける手段に乏しい場合も珍しくはないため,事件によっては逮捕を覚悟すべきケースも少なくはないでしょう。
ひき逃げ事件は類型的に逮捕の可能性が高いものですが,逮捕が見込まれやすい理由としては,以下の点が挙げられます。
ひき逃げ事件で逮捕されやすい理由
1.事件の重大性
2.逃亡の恐れ
3.被害者の救済
【1.事件の重大性】
ひき逃げは,非常に違法性の程度が大きい犯罪行為と考えられています。ひき逃げとは,自動車運転者が交通事故後に被害者を救護する義務(救護義務)に反してその場を立ち去ることを言いますが,それだけ救護義務を果たすことが重要と理解されているのです。
刑事事件の場合,事件が重大であるほど処分も重くなるため,重い処分を避ける目的で証拠隠滅などされる危険が大きい,と評価されることが通常です。そのため,重大であるひき逃げ事件は,証拠隠滅等を防ぐために逮捕されやすい事件類型ということになります。
【2.逃亡の恐れ】
逮捕するかどうかは,逃亡の恐れがあるかどうかを重要な判断基準として決められます。この点,ひき逃げ事件は,まさに事故現場から逃亡してしまった事件であるため,類型的に逃亡の恐れが高いと評価されやすい傾向にあります。
また,ひき逃げ事件は,事故の発生に気づいていない場合を除き,事件が捜査されていることが加害者にとって明らかです。被害者側が警察に通報などをしない可能性はほとんどないため,ひき逃げの自覚があれば,事件は捜査されていると理解するのが通常でしょう。
そうすると,加害者が逃亡を続ける動機はさらに大きくなってきます。ひき逃げをした加害者が逃亡を継続することになりやすいため,今後の逃亡を防ぐためにも逮捕の可能性が高くなります。
【3.被害者の救済】
ひき逃げ事件では,被害者に相当程度大きな損害が生じているケースが少なくありません。被害者は身体や車両にダメージを受けていることが多く,その救済が不可欠な状況となりやすいでしょう。
この点,被害者の救済は,加害者が損害を補填する形で実現する必要があります。そうすると,加害者を特定した上で,加害者が逃れられないよう逮捕することが,被害者の救済にとって適切な方法と判断されやすいことになります。
また,被害者の感情面に配慮する観点でも,逮捕をしない取り扱いは被害者の理解が得られづらいため,逮捕をすることが有力になりやすいところです。
逮捕の種類・方法
法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。
①現行犯逮捕
現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。
典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。
ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所のそれぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。
なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。
準現行犯逮捕が可能な場合
1.犯人として追いかけられている
2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている
3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある
4.身元を確認されて逃走しようとした
ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能
②通常逮捕(後日逮捕)
通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。
裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。
通常逮捕の要件
1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。
2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。
通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。
ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要
③緊急逮捕
緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。
緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。
緊急逮捕の要件
1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う
緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。
緊急逮捕と現行犯逮捕の違い
現行犯逮捕 | 緊急逮捕 | |
逮捕状 | 不要 | 逮捕後に請求が必要 |
一般人の逮捕 | 可能 | 不可能 |
逮捕後の流れ
逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。
逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。
ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される
逮捕による不利益
逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。
①社会生活を継続できない
逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります。
また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。
②仕事への影響
逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。
また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。
③家族への影響
逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。
このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。
④報道の恐れ
刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。
万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。
⑤前科が付く可能性
逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。
ひき逃げ事件で逮捕を避ける方法
①自ら警察に出頭する
ひき逃げ事件で逮捕の可能性が高まる大きな理由の一つが,現に逃亡をしており今後も逃亡することが危険視される,という点にあります。裏を返せば,逃亡の恐れがないと判断してもらうことができれば,逮捕の可能性は大きく後退するケースが多数です。
そのため,自ら警察に出頭することで,逃亡の意思がないことを表明する方法は有力と言えます。一般的に,自ら出頭した人がその後に逃走するというのは,不合理な行為であって考えにくいとの理解がなされるでしょう。
また,自ら出頭する行為は,捜査機関に犯罪事実などが発覚していない段階であれば自首に該当する可能性があります。自首が成立すれば,逮捕回避や処分の軽減などに対して,より有益な効果が期待できます。
②被害者への謝罪を尽くす
ひき逃げ事件における逮捕は,被害者保護の観点を強く考慮したものであることが少なくありません。つまり,重大な被害を受けた被害者の無念や憤りを踏まえ,被疑者にも相応の重い措置(=逮捕)を行う,という判断がなされやすいところです。
そうすると,被害者側が強い被害感情を抱えておらず,被害者保護のために逮捕する必要はないと判断してもらうことができれば,逮捕の可能性は大きく減少することが見込まれます。そのため,加害者としては被害者側に可能な限りの謝罪を尽くし,その感情に配慮した行動を取ることが有力な手段となります。
なお,被害者に対しては,感情面はもちろん経済面でも配慮の必要があります。経済的な配慮のためには,自動車保険の担当者へと円滑に引き継ぐなど,保険を通じた支払の便宜を図る動きが一案でしょう。
③金銭賠償を行う
ひき逃げ事件では,経済的な損害を被った被害者が泣き寝入りになることを防げるよう,加害者の身元を確保する目的で逮捕される場合もあります。被害者としては,捜査機関が加害者を特定し,逮捕してくれなければ,現実的に損害賠償を請求できないというケースも決して珍しくありません。
逆に,加害者から被害者への金銭賠償が尽くされていれば,被害者が金銭を回収するための配慮として逮捕をする必要はなくなります。また,適切な金銭賠償が行われている場合,当事者間の関係も比較的解決に近い状態であることが見込まれるため,逮捕という強い態様の捜査をする必要性はより低くなることが期待できるでしょう。
ひき逃げ事件の逮捕は弁護士に依頼すべきか
ひき逃げ事件の逮捕を防ぎたい場合や,逮捕後の対応を万全にしたい場合は,弁護士への依頼が適切です。弁護士への依頼によって,最悪の事態を防ぎ,身柄拘束に伴う不利益を最小限にとどめることが可能になり得るでしょう。
ひき逃げ事件の逮捕に関して弁護士に依頼するメリットとしては,以下のような点が挙げられます。
①逮捕リスクの高さを把握できる
同じひき逃げ事件であっても,具体的な逮捕リスクの程度は個別の事件によって様々に異なります。もっとも,具体的な事件における逮捕リスクの高さを正確に把握することは,決して容易ではなく,専門家以外には困難である場合がほとんどでしょう。
この点,弁護士に依頼することで,自分の事件はどの程度の逮捕リスクがある内容か,自分の現状はどの程度の逮捕リスクがある状況か,といった点を理解することができます。逮捕リスクの高さを正しく理解することは,事件に応じた適切な対応方法の判断と直結するため,非常に重要なポイントということができるでしょう。
②手続の見通しが分かる
ひき逃げ事件の場合,見込まれる手続や処分の内容によって,手続の流れに複数の可能性があります。そして,複数の可能性のうちどの流れであるかによって,いつどのような対応をすべきかが変わってくるため,自分の事件はどの流れを辿るのか,正しく見通すことが必要となります。
この点,弁護士に依頼すれば,手がかりとなる事情をもとに,今後の手続の見通しを立ててもらうことが可能です。また,その見通しを踏まえて,どのタイミングでどのような対応をするか,といった方針を検討してもらうこともできるでしょう。
ケースによっては,見通しを一つに絞ることが難しい場合もあり得ますが,現実的に見込まれる可能性が絞れるだけでも,その後の検討の容易さは極めて大きく変わるでしょう。
③逮捕後の対応を迅速にしてもらえる
ひき逃げ事件の場合,逮捕される可能性を踏まえた検討や対応も不可欠です。逮捕が避けられず,逮捕後の対応が必要となったときには,できるだけ早く弁護士に適切な対応を講じてもらうことが重要となります。
この点,あらかじめ弁護士に依頼していれば,逮捕後の弁護活動を迅速に開始してもらうことが可能です。弁護士に依頼していない状態だと,家族など周囲の関係者が弁護士探しをし,弁護活動を依頼してもらう必要がありますが,そこにはやむを得ず大きなタイムロスが生じます。
逮捕後の手続に法律上の時間制限があることも踏まえると,速やかに弁護活動が開始できるメリットは非常に大きなものと言えます。
ひき逃げ事件の逮捕に関する注意点
①対応を要する時期
ひき逃げ事件では,逮捕を防ぐための対応をいつ要するか,という点がケースにより様々です。被害者側が捜査を求めるタイミング,捜査の結果加害者が特定されるタイミングなどが,個々人の判断や発見される証拠等によって大きく異なるためです。事件によっては,事故発生直後に対応をしなければならないこともあり,一方で一向に逮捕できる状況に至らない事件もあります。
そのため,ひき逃げ事件の逮捕に関しては,いつ具体的な対応を要するかが事前には分からない,という点に注意することが必要です。この点,通常,対応が遅れるメリットはほとんどないため,対応するのであれば早めに行うに尽きるでしょう。
②逮捕の回避が困難な場合
ひき逃げ事件の場合,捜査の進展などによっては,逮捕を回避するための方策を講じるための時間的余裕がない場合も少なくありません。捜査機関が速やかに加害者を特定した場合,何をする間もなく逮捕されてしまう場合は十分に考えられます。
また,捜査機関が被疑者の逮捕を決めており,その判断が変わる余地がない場合には,逮捕回避の努力を尽くしても結果的に逮捕が防げない場合はあり得ます。重大な事件類型である以上,逮捕を避ける手段がない可能性も踏まえておくことが必要です。
③逮捕後の考え方
ひき逃げ事件は,逮捕が防げない可能性も低くはないため,逮捕された場合の考え方についても押さえておくことが適切です。逮捕後の対応を十分に尽くせれば,最終的な結論はより不利益の小さなものになることも十分に考えられます。
この点,逮捕後の基本的な考え方としては,一定期間の身柄拘束を想定しつつ,最終的な刑事処罰の回避や軽減を目指す,という方針が有力でしょう。
ひき逃げ事件で逮捕された場合,速やかに釈放されるケースは残念ながら多くありません。事件類型上,収集の必要な証拠が多く想定される上に,逃亡や証拠隠滅の危険が大きいと評価されやすいためです。そのため,早期釈放のみに執着することは結果の伴わないことが多いでしょう。
一方,最終的な刑事処分が軽減する可能性は十分にあり得ます。被害者側への対応などを通じて,処分の軽減が期待される状況となれば,結果的に釈放が早まる可能性すらあり得るところです。
そのため,逮捕後の基本的な考え方としては,早期釈放に執着せず処分の軽減を目指す,というスタンスをお勧めします。
刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。


藤垣法律事務所代表弁護士。岐阜県高山市出身。東京大学卒業,東京大学法科大学院修了。2014年12月弁護士登録(67期)。全国展開する弁護士法人の支部長として刑事事件と交通事故分野を中心に多数の事件を取り扱った後,2024年7月に藤垣法律事務所を開業。弁護活動のスピードをこだわり多様なリーガルサービスを提供。