横領罪で会社と示談したい、逮捕を防ぎたい、実刑判決を回避したい…横領事件の悩みと解決方法を一挙解説

●横領罪はどのような場合に成立するか?

●横領が職場に発覚した場合にはどうすべきか?

●横領事件は逮捕されるか?

●横領事件では実刑判決になるか?

●横領事件は弁護士に依頼すべきか?

●横領事件ではどんな弁護活動が可能か?

●横領事件の示談での注意点は?

といった悩みはありませんか?

このページでは,横領事件の対応に関してお困りの方に向けて,横領事件の流れ横領事件の捜査,刑罰,弁護活動等について詳細に解説します。

横領罪とは

横領罪とは,他人の物を占有している人が,その物を領得する犯罪です。
典型例は,人から預かっていたお金を自分のために使ってしまう,というケースでしょう。

①横領罪と窃盗罪の区別

横領罪は窃盗罪との区別が問題になりやすいですが,両者の違いは,対象物が他人が占有しているものか,自己の占有するものか,という点にあります。

窃盗罪は,他人が占有しているものを,その他人の了承なく自分の占有に移す犯罪です。例えば万引きは,店舗が占有する商品を勝手に自分の持ち物にしてしまう犯罪というわけですね。
一方の横領罪は,もともと自分が占有をしている物を自分の物(所有)にしてしまう,という犯罪類型です。会社のお金を預かっていた(占有していた)としても,あくまでお金は会社の物であるため,そのお金を自分のために使ってしまうと横領罪になる,というわけですね。

②横領罪の類型

横領罪には,大きく分けて以下の3つの類型があります。

単純横領罪(刑法第252条第1項)自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
業務上横領罪(刑法第253条)業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
占有離脱物横領罪(刑法第254条)遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。

横領事件として最も問題になりやすいのは,「業務上横領罪」でしょう。
経理担当者が勤務先の金銭を横領した場合などが代表的です。
一方,単純横領罪が成立するのは,業務の伴わない場合であり,友人から預かっていた金銭を使い込むようなケースが該当します。

また,占有離脱物横領罪は,横領罪ではありますが置き引きなどの窃盗類似の事例で問題になりやすいところです。

ポイント
窃盗と横領の区別は,対象物がどちらの占有していたものか,という点が基準
勤務先に対する業務上横領事件が問題になりやすい

横領事件が職場に発覚した場合の対応

職場での業務上横領事件では,職場に発覚する形で問題が明らかになる場合が大多数です。
そして,それが刑事事件化するのは,職場が警察等の捜査機関に捜査を求めた場合,ということになります。
そのため,横領事件が職場に発覚した場合,職場に対してどのような対応を取るのかは,極めて重要な事項になってきます。

①金銭賠償

横領事件が職場に発覚した場合,横領をしてしまった従業員のすべき対応は,何よりも金銭賠償に尽きます。

会社としては,横領行為によって財産が失われてしまったわけですから,その財産的損害がどのように補填できるのか,又はできないのか,という点が最大の懸案事項ということになります。
例えば,預貯金から一定の支払がなされた上で,何らかの仕事を続けるなどして継続的な返済を行うことにより,損害額全体の補填が見込まれるのであれば,会社にとってはそれが最も有益な結論であると理解されることがほとんどです。逆に,刑事事件としたために得られたはずの返済が得られなくなってしまうとなると,会社には不利益が残ってしまいます。
そのため,まずは具体的な返済方法や計画を具体的に示すよう努め,会社にとって刑事事件化が不合理な選択肢であると理解してもらうことが非常に重要になるでしょう。

②事実関係の確認への協力

金銭賠償を行う前提として,横領行為によって会社にはどれだけの損害が生じたのか,という事実関係の確認が不可欠です。

この点,業務上横領事件が生じてしまっている状況では,横領をした従業員のみが把握している財産の流れも多く,全体像を明らかにするためには従業員側の協力が必要となるところです。
会社としても,事件の詳細を確認することは非常に煩雑な作業を要するため,従業員の協力によって円滑化すれば,その後の話し合いに対してもプラスの材料として考慮することが多くなるでしょう。

逆に,自分の行為とは関係なく生じている被害についてまで横領を疑われる可能性もあります。業務上横領事件の起きる会社の財産管理は十分でないことも多く,事件の発覚後になって様々な金銭の不足が明らかになることも少なくありませんが,その全てが一人の従業員の行為によるものと誤認される場合もあるのです。
そのような疑いをかけられたときには,自身の行為によるものとそうでないものを区別の上,自身の行為による損害について可能な限り具体的かつ詳細な説明を尽くすなど,事実確認への協力に努めるのが適切でしょう

③適切な対応をしても刑事事件化が避けられないケース

金銭賠償や調査協力など,できる限りの対応を尽くしても,なお刑事事件化が避けられない場合はあり得ます。

例えば,損害の規模があまりに大きい場合,従業員に全額の賠償ができないことが明らかであるため,最初から刑事事件として処分してもらうことを会社が求める場合が考えられます。
また,会社がコンプライアンス(法令順守)に厳しく,法令違反については厳格な対応を取る方針である場合には,事件の大小にかかわらず刑事事件化を求めることもあり得ます。

刑事事件とすることを求めるかどうかは,専ら被害者である会社側の判断になり,刑事事件化されたことに何らかの不服を申し立てる余地はありません。それだけに,できる限り会社の温情的な判断を引き出すような真摯な対応が望ましいことは間違いないでしょう。

ポイント
職場に発覚した場合は,可能な限りの賠償と調査協力を
コンプライアンスに厳しい勤務先の場合は,それでも厳格な方針となる場合あり

横領事件で逮捕される場合

横領事件では,逮捕されるケース,されないケースいずれも考えられるところです。
逮捕されやすい場合としては,以下のようなものが挙げられます。

①事件の規模が大きい

横領事件は金額的な規模が様々ですが,被害金額の規模が大きければ大きいほど,逮捕の可能性は高くなる傾向にあります。
金額の規模が大きいケースは,最終的な処罰も実刑判決などの重大な刑罰になりやすいため,逃亡や証拠隠滅の可能性が類型的に高く,逮捕の必要性も高いと判断されやすいためです。

②組織的事件である

複数の共犯者が関与する組織的事件では,共犯者間のやり取りが秘密裏に行われている場合が多く,それらの証拠は容易に隠滅される可能性が高いため,逮捕の可能性も比例して高くなりやすいです。
また,共犯者間での口裏合わせを防ぐため,逮捕に引き続く勾留の段階では「接見禁止」という処分がなされるケースも多く見られます。接見禁止の場合,弁護士以外との面会ができず,共犯者との面会を通じた証拠隠滅が防止されます。

③否認事件である

否認事件は,認め事件に比べて証拠隠滅の恐れが大きく,逮捕の可能性が高くなる傾向にあります。
特に,客観的証拠を踏まえれば犯罪事実の存在が明らかである等,否認の内容が不合理であると判断される場合には,より逮捕の可能性は上昇しやすいでしょう。

横領事件の刑事処分

横領事件は,窃盗類似の事件である占有離脱物横領罪を除き,罰金の処罰規定がありません。
つまり,懲役刑より軽微な罰金刑が規定されておらず,罰金刑にとどまる余地がないため,起訴されるときにはすべて懲役刑の対象となります。

もっとも,懲役刑の対象になった場合の全てが実刑判決(直ちに刑務所に服役することを命じる判決)となるわけではありません。執行猶予となれば,刑務所に入る必要はなく,円滑に社会生活に復帰することが可能です。

横領事件の場合,実刑判決となるか執行猶予付きの判決となるかは,損害額の大きさをベースに判断されるのが通常です。損害額の大きな事件では,規模により概ね3~5年程度の実刑判決の対象となることも考えられるでしょう。
一方,事件の規模が大きい場合でも,その損害が後から金銭賠償等により補填されている場合には,非常に重要な事情として斟酌されます。損害が大きなケースであっても,その全部又は大部分が賠償されている場合には,損害が補填されたことを踏まえて執行猶予判決となることも数多く見られるところです。

横領事件の刑事処分においては,損害額とその補填の二つが重要な判断要素になりやすいことを把握しておくとよいでしょう。

ポイント
逮捕の可能性は事件の規模や悪質さによる
刑事処分の基準は損害額の大きさと補填の程度

横領事件の弁護活動

①認め事件の場合

認めの横領事件については,少しでも早く金銭賠償(示談)の試みを行うのが極めて重要になるでしょう。
もっとも,例えば会社での業務上横領事件において,従業員本人が会社と直接金銭賠償の協議を行うのは,現実的には困難なことが非常に多いです。立場に大きな違いがある上,直ちに全額の賠償ができない限り,詳細な交渉にならざるを得ないことから,示談交渉は弁護士への委任が適切でしょう。
弁護士に委任すれば,有力な交渉方法・内容について案内を受けられるとともに,会社との間で理性的な,前向きな交渉を行うことが可能になります。

②否認事件の場合

否認事件では,犯罪事実の有無が極めて重要なポイントになります。犯罪事実の立証ができなければ不起訴となり,犯罪事実の立証が可能と判断されれば起訴される可能性が高まります。
この点横領事件における否認のケースとしては,本当に犯人であるかという点や,何らかの犯人であったとしてもその特定の事件を犯した犯人だと立証できているか,という点が問題になりやすいです。特に,幅のある期間の中で何らかの横領行為がなされたはずである,という疑いの場合には,その個別の横領行為が立証できているのか問題になることが少なくありません。

横領事件で示談を試みる場合の注意点

横領事件で生じやすい示談交渉時の問題として,被害金額の認識に相違が生じやすい,ということが挙げられます。
横領事件の生じる状況下では,被害者が自身の財産を詳細に把握していない場合が多く,どれだけの被害があったかを裏付ける証拠に乏しいことが少なくありません。その場合,被害者としては,本来あったはずの財産額と現実に残っている財産額の差額を被害額とみなすことが見込まれますが,その差額の全てが加害者側の横領行為によって生じたとは限りません。実際,別の原因(財産管理の不十分さなど)で使途不明金などが生じている場合も多く見られます。
そのため,心当たりのない金額も含めて被害者側から請求されることは少なくないでしょう。

もっとも,示談交渉の局面においては,被害金額の認識に相違が生じやすいことを事前に想定した上で,実際に相違があった場合にはできる限り被害者側の認識に寄り添った形での解決を目指すのが現実的と思われます。被害者の立場からすれば,損害額を争っている加害者との間で示談しようとは考えにくいためですね。
このときは,「実際の被害金額は異なるが,示談の限りであればご主張の金額を支払う」というスタンスである旨を表明することで,被害者側にとっても,「示談の方がより大きな損害の回復が見込める」という示談のメリットが生まれます。示談交渉を円滑に進めるためには非常に大切な発想になりやすいでしょう。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

横領事件は,被害者側への対応が極めて重要になりやすい事件類型です。
特に,被害者側との間でどのような金銭面の事後対応を尽くしたのか,という点は,処分の重さに直接影響することが非常に多いと言うことができます。
もっとも,その対応をご自身で行うのは,立場上も容易ではないため,対応に精通した弁護士への委任が有力でしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

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