
このページでは,淫行事件の逮捕に関して,刑事弁護士が徹底解説します。逮捕の可能性はどの程度あるか,逮捕を避ける方法はあるか,逮捕された場合に釈放を目指す方法はあるかなど,対応を検討する際の参考にしてみてください。

目次
淫行事件で逮捕される可能性
淫行事件は,類型的には決して逮捕の可能性が高いわけではありません。淫行事件で捜査を受けたとしても,逮捕されずいわゆる在宅事件として処理されるケースは数多く見られるところです。
もっとも,個別の内容や状況によっては,逮捕の可能性が高くなる場合も否定できません。具体的に,淫行事件で逮捕の可能性が高くなる要因としては,以下のような点が挙げられるでしょう。
淫行事件で逮捕の可能性が高くなる要因
1.相手との関係・立場の違い
2.相手の人数・余罪
3.相手が同意した経緯
【1.相手との関係・立場の違い】
相手との関係が,教師と生徒,指導者と教え子,といったものである場合,立場上,特に相手を性生活の乱れから引き離す役割があると理解されます。そうすると,このような関係で淫行事件が起きた場合,特に青少年を守るべき立場であることを踏まえ,逮捕を含めた重大な取り扱いの対象となる可能性が高まります。
また,当事者間に上下や指導の関係がある場合には,青少年への不当な圧力による罪証隠滅の可能性も懸念されやすいため,相手を守る目的で逮捕が選択される可能性も高まりやすい傾向にあります。
【2.相手の人数・余罪】
余罪の数や人数が際立って多い場合,それに応じて刑事責任も重く評価されやすい傾向にあります。刑事責任の重さは,逮捕をする必要性の大きさに影響を及ぼすため,相手の人数や性的行為の数が特に多い場合は,逮捕の可能性が高くなるでしょう。
特に,短期間で複数の青少年を相手とした淫行事件が生じている場合,周辺地域の性風俗の乱れが強く懸念されるため,逮捕の必要性が高いと評価されるケースが多くなりやすいところです。
【3.相手が同意した経緯】
淫行事件では,相手となる青少年が性的な行為に同意していますが,その同意が相手の自発的なものなのか,判断を誘導されたものなのか,という点は,逮捕の可能性に影響を及ぼすことが考えられます。
相手が積極的に性行為を希望した場合には,逮捕の必要性が高いとは評価されづらいところですが,虚偽の話をして相手の同意を不当に引き出したような場合には,事件の悪質さを踏まえて逮捕が選択される可能性が高くなるでしょう。
逮捕の種類・方法
法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。
①現行犯逮捕
現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。
典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。
ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所のそれぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。
なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。
準現行犯逮捕が可能な場合
1.犯人として追いかけられている
2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている
3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある
4.身元を確認されて逃走しようとした
ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能
②通常逮捕(後日逮捕)
通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。
裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。
通常逮捕の要件
1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。
2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。
通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。
ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要
③緊急逮捕
緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。
緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。
緊急逮捕の要件
1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う
緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。
緊急逮捕と現行犯逮捕の違い
現行犯逮捕 | 緊急逮捕 | |
逮捕状 | 不要 | 逮捕後に請求が必要 |
一般人の逮捕 | 可能 | 不可能 |
逮捕後の流れ
逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。
逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。
ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される
逮捕による不利益
逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。
①社会生活を継続できない
逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります。
また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。
②仕事への影響
逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。
また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。
③家族への影響
逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。
このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。
④報道の恐れ
刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。
万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。
⑤前科が付く可能性
逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。
淫行事件で逮捕を避ける方法
①捜査の開始を防ぐ
逮捕は,捜査を行う際の手続の一つです。そのため,事件の捜査が開始されなければ,そもそも逮捕するかどうかという選択が生じることはなく,逮捕されることもありません。
そうすると,捜査の開始を防ぐことは,逮捕を避けるための非常に有力な手段ということができます。
具体的には,相手方と当事者間での解決を目指すことが一案でしょう。淫行事件の捜査は,相手(多くの場合はその家族)が捜査を求める形で始まることが一般的であるため,当事者間で解決し,相手や相手の家族が捜査を求める可能性がなくなれば,捜査が開始されることは現実的になくなると言えます。
当事者間で解決の余地がある場合には,早期に円満な解決を目指すことが有益でしょう。
②逃亡が懸念されることを防ぐ
逮捕の目的の一つは,被疑者の逃亡を防ぐ点にあります。そのため,逃亡が懸念されない状況であれば,逮捕をする必要は大きく低下し,逮捕の回避につながりやすくなります。
逃亡が懸念されないことを目指す具体的な手段としては,捜査機関との連絡や警察等への出頭を適切に行うことが重要となるでしょう。捜査機関としては,連絡が無視されてしまう,出頭を求めても断られ続けてしまうとなると,逃亡の可能性を懸念する必要が生じてしまいます。逆に,連絡をすれば速やかに対応が得られ,出頭を求めればできる限り日程調整に努めてくれる,という場合では,逃亡を懸念する必要はほとんどないと考えることになるでしょう。
③罪証隠滅が懸念されることを防ぐ
逮捕は,罪証隠滅を防ぐために行われることがほとんどです。逮捕しないでいると,捜査機関が発見できずにいた物的証拠が処分されたり,口裏合わせによって必要な供述(人的証拠)が得られなくなったりしてしまう可能性があるため,これらを防ぐために逮捕する,というわけです。
淫行事件の場合,最も重要な証拠は相手の未成年者(青少年)であることが大多数です。相手本人から必要な話を聞き出し,物的証拠と照らし合わせながら犯罪捜査を進めることが一般的な流れになります。
そのため,相手に接触して罪証隠滅を図ろうとするかどうか,という点は,逮捕の可能性に大きな影響を及ぼすことになります。相手に接触しないと理解してもらうことができれば,逮捕の可能性は大きく低下すると言えるでしょう。
淫行事件の逮捕は弁護士に依頼すべきか
淫行事件の逮捕に関する対応は,弁護士への依頼を強くお勧めします。弁護士に依頼することで,逮捕を回避するための試みや,万一逮捕された場合の対応に際して有益な効果が期待できるでしょう。
具体的には,以下のような利点が挙げられます。
①逮捕の可能性が分かる
淫行事件の場合,罪名や事件類型だけで逮捕の可能性を推測することは非常に難しいところがあります。そのため,当事者の方自身が逮捕の可能性を把握することには困難が伴うと言わざるを得ません。
この点,専門性ある弁護士に依頼すれば,個別の内容を踏まえて逮捕の可能性がどの程度あるか,検討してもらうことが可能になります。もちろん,確実な見通しを立てることは難しいところですが,一般的な見通しやあり得る可能性を把握できるだけでも,その後の進行は格段に円滑なものとなるでしょう。
②適切な方法で示談ができる
淫行事件は,当事者間の示談で解決することが,逮捕回避の有力な手段と言えます。もっとも,捜査が開始された段階では,当事者間で直接連絡を取って解決を図ることは望ましくありません。相手に直接の連絡を取ろうとすることは,証拠隠滅の動きと理解され,逮捕を招く結果になる可能性すら否定できないところです。
この点,弁護士に依頼をし,弁護士を窓口にする形で示談を試みれば,証拠隠滅の動きと誤解されることもなく,適切な方法で示談交渉を進めることが可能です。通常,示談に際しては相手の親権者とのやり取りになりますが,弁護士を間に挟むことで,親権者と示談交渉を行う心理的な負担も回避することができるでしょう。
③逮捕後の早期釈放を目指せる
淫行事件では,捜査に際して逮捕される可能性もありますが,万一逮捕されたとしても,それで全てが決まったわけではありません。むしろ,逮捕は捜査の初期段階であり,その後の手続には複数の可能性が残されている状況です。
淫行事件の場合,逮捕後に身体拘束が続けられることなく,早期に釈放されるケースも決して少なくはありません。早期釈放となれば,逮捕の生活への悪影響は最小限にとどめることが可能になるでしょう。
この点,弁護士に依頼することで,逮捕された場合の早期釈放の試みを可能な限り通してもらうことができます。検察や裁判所に掛け合ったり,身体拘束に対する不服の申立て手続を講じたりと,専門家である弁護士でなければ難しい対応となるため,早期釈放を目指す際には弁護士への依頼が適切と言えます。
淫行事件の逮捕に関する注意点
①相手と言い分に相違がある可能性
淫行事件では,当事者間で言い分が異なるケースも少なくありません。
淫行事件の多くは,相手となる未成年者(=青少年)が,親権者に隠れて淫行に及んでいる場合が多いため,親権者に発覚した後も事実の全てを話したがらないことが相当数見られます。そうすると,親権者は出来事の一部を断片的に把握することしかできず,捜査機関も断片的な事情のみを踏まえて捜査せざるを得ないため,疑われる内容が実際の事実関係とは異なる,ということになりやすいのです。
言い分に相違がある場合,その内容によっては逮捕リスクの増大につながる恐れもあります。少なくとも,捜査機関がすべての事情を把握してくれているとは限らない,という点をあらかじめ踏まえておくのが賢明でしょう。
②相手が業務上の関係者である場合
学校の教員など,業務の中で未成年者と接する立場の場合,業務で知り合った相手との間で発生した淫行事件は,逮捕の可能性が高まる傾向にあります。
また,公立学校の教員など公務員である場合には,逮捕後の報道リスクも高いことが見込まれるため,事前に注意することが必要です。
加えて,業務関係者との淫行事件は,職務に違背する行為とも理解されるため,懲戒処分の対象となるリスクが生じやすいという問題もあります。この点,懲戒処分の程度は,刑事処分の結果にも影響されることが多いため,まずは刑事処分の軽減を目指す動きが有力になりやすいでしょう。
③同居家族に発覚する可能性
淫行事件で逮捕されず,いわゆる在宅事件として取り扱われる場合でも,同居の家族に事件が発覚する可能性には注意が必要です。
在宅事件での警察の運用として,同居家族に「身元引受人」となることを依頼する場合が多く見られます。これは,逮捕をしない代わりに,同居家族が被疑者の身元を引受け,呼び出された際には出頭させる,という約束をする内容の手続です。
そのため,逮捕されない事件では,この身元引受人に関する手続の中で,事件が同居家族に発覚する可能性があり得ると言えます。
なお,同居家族への発覚を防ぎたい場合には,弁護士に依頼し,弁護士に身元引受人となってもらう方法も考えられます。弁護士への相談や依頼を積極的に検討してみるのが有益でしょう。
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藤垣法律事務所代表弁護士。岐阜県高山市出身。東京大学卒業,東京大学法科大学院修了。2014年12月弁護士登録(67期)。全国展開する弁護士法人の支部長として刑事事件と交通事故分野を中心に多数の事件を取り扱った後,2024年7月に藤垣法律事務所を開業。弁護活動のスピードをこだわり多様なリーガルサービスを提供。