商標法違反となる行為は?どんな場合に捜査されるのか?実刑になるのか?商標法違反を知りたい方へ弁護士が徹底解説

●商標法違反とは何か?

●商標法違反が刑事事件になるのはどのような場合か?

●商標法違反ではどのような捜査が行われるのか?

●商標法違反は逮捕されるか?

●商標法違反は起訴されるか?

●商標法違反は実刑判決になるか?

といった悩みはありませんか?

このページでは,商標法違反の事件でお困りの方に向けて,商標法違反とされる事件類型刑事事件化する場合の取り扱い・刑罰などについて解説します。

商標法違反とは

①商標法違反の意味

商標法違反は、他人の商標権を侵害した場合に成立する犯罪です。

商標というのは、事業者が、自身の取り扱う商品やサービスを他社のものと区別するために用いる目印となるものです。簡単に言うと、企業ロゴのことを指すのがほとんどでしょう。
商標は、その企業の商品が持つブランドイメージの象徴であり、商品を見た人は、商品中の商標を基準に商品への信頼を持つでしょう。ブランド品のバッグや財布などはその代表例です。

商標は、特許庁に申請して商標登録をすることで、排他的に(他人に用いられることなく)使用することができます。商標登録によって、自分たちの築き上げたブランドイメージにタダ乗りされないよう予防しているわけですね。

商標法違反というのは、そのように他人がブランドイメージを作った企業ロゴを、勝手に自分のものとして利用する行為を指します。なお、厳密には、ロゴなどの文字列のみでなく、図形や模様、記号、色彩やパッケージの形状なども商標登録することが可能です。

②商標法違反の具体的行為

商標法違反となる具体的な行為には、以下のようなものが挙げられます。

偽造品の作成・販売企業ロゴを模倣したニセ物を作成・販売する行為
類似商標の使用他の商標に似せて作成した商標を使用する行為
同一商標の無断使用商標権者の許諾を得ることなく、その商標を使用する行為

近年では、ネット上で広く物品の販売ができるようになった影響もあり、商標を無断使用した商品や類似商標を使用した商品をネット上で販売する事件が増加傾向にあります。
また、海外で類似商標を使用した安価な商品を購入し、それを国内で転売する行為が問題になるケースも少なくありません。

ポイント
商標法違反は,他人の商標(ロゴなど)を無断利用する行為

商標法違反の罰則

商標法違反の基本的な罰則は、「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はその併科」とされています。
罰金額の上限が非常に高額であること、罰金刑と懲役刑の併科が可能であることが大きな特徴です。

また、商標権行為の準備行為に対しては、「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はその併科」の罰則が科せられます。

加えて、商標法違反が法人の業務として行われた場合には、行為をした個人に科される刑罰のほか、法人にも3億円以下の罰金が科せられる可能性もあります。
なお、個人と法人の両方を処罰することのできる定めを、両罰規定といいます。

商標法違反の刑罰は、罰金刑の高い上限額や両罰規定などによって、大きな金銭的負担を内容とするものになっています。

商標法違反が刑事事件化するケース

商標法違反が刑事事件となる場合には、以下のようなケースがあります。

①商品の購入者が警察に通報する
購入した商品が商標を模倣した偽造品であった場合、その購入者が警察に通報する方法で捜査が始まるケースです。
このケースでは、販売者が正規品として販売していることが大多数であるため、正規品であるか模倣品であるか、正規品でなかった場合にその認識が販売者にあったかなどが問題になりやすいです。

②侵害行為を知った商標権者が警察に捜査を求める
侵害行為が生じている事実を知った商標権者が、自らの被害を警察に申告した場合です。
権利者地震の被害深刻であるため、犯罪事実が明らかに存在しない場合でない限りは被疑者に対する十分な捜査が行われやすい傾向にあります。、

③サイバーパトロール
警察によるサイバーパトロール中に、商標法違反の事実を発見したケースです。
いわゆるネットフリマ等で偽造品や類似商標が確認された場合、これをきっかけに捜査が開始され、刑事事件化する場合があります。

④内部告発
主に法人として商標法違反の行為がなされている場合に、その内部事情を把握する人が警察等の捜査機関に告発するケースです。

ポイント
商標法違反の刑罰は両罰規定の存在が特徴
捜査の主なきっかけは購入者の通報,商標権者の通報,サイバーパトロール,内部告発

商標法違反の捜査

商標法違反における捜査の方法としては、捜索が先に行われる場合が多く見られます。電話連絡や呼び出しなどされることなく、自宅や事業所などに立ち入り、保管されている商品などを強制的に差し押さえる捜査手法です。

商標法違反の事件は、偽造品や類似商標の用いられた商品などが被疑者の管理下にある場合、捜索によってその存在を証拠かすることが極めて強力な犯罪の証拠となります。また、捜査の当初段階で把握できる違反行為には限りがあり、その全体像を把握することは容易でないため、実際の商品や取引履歴・内容を網羅的に確認することで、証拠隠滅の防止や余罪の発見を可能にする意味もあります。
このような捜索・差し押さえは、事前に被疑者へ通知していたのでは証拠隠滅の機会を与えることになりかねないため、被疑者側への通知を行うことなく、証拠隠滅の猶予を与えない方法で強制的に行うのが一般的です。

商標法違反と逮捕

商標法違反の事件では、逮捕されるケース、されないケースいずれも想定されます。
必ずしも逮捕されるわけではありませんが、内容や捜査状況によって逮捕される可能性も否定できません。

商標法違反の事件で逮捕されやすい場合としては、以下のようなケースが挙げられます。

①共犯者が多数想定される場合
商標法違反の事件は、複数名が協力して行う場合も少なくありません。そのため、共犯者が存在する場合は一定数ありますが、その範囲が広く、人数も多数想定される場合は、逮捕の可能性が高くなります。
多数の共犯者が想定される事件では、隠滅されやすい証拠も多く、口裏合わせもなされやすいため、共犯者間における証拠隠滅行為を防ぐため、被疑者を逮捕して物理的に引き離すことが必要と判断されやすいのです。

②余罪が多数想定される場合
商標法違反の事件は、商品の販売など営利行為の形を取ることが非常に多いですが、営利行為を一回だけ行って終了、ということはあまりありません。一般的には、複数回繰り返された営利行為の一部が捜査の対象となり、捜査の過程で他の行為も明らかになっていくことが多く見られます。
そのため、捜査機関も余罪の存在を前提に捜査するところですが、捜査の初期段階で余罪が多数想定される事件の場合、逮捕をしなければ隠滅されやすい証拠が非常に多いという理解になるため、余罪に関する証拠隠滅を防ぐ目的で逮捕に踏み切られるケースが生じます。

③違反行為で得られた収益の規模が非常に大きい場合
商標法違反事件の刑事処分は、事件の規模に比例して重くなるのが一般的です。
そのため、違反行為で得られた収益の規模が大きな事件は、それだけ見込まれる刑罰も重くなります。
重い刑罰の見込まれる事件は、被疑者の逃亡する動機が生じやすいため、逃亡を防ぐ目的も兼ねて逮捕されるケースが多くなりやすいでしょう。

商標法違反は起訴されるか

商標法違反の事件は、犯罪事実に間違いがなければ起訴されることが多く見込まれます。

この点、商標権者と示談が成立し、商標権者の宥恕(許し)が得られれば、不起訴となる可能性も非常に高くなります。
もっとも、商標法違反の対象となりやすい有名ブランドなどは、違反行為に関する示談を一律して拒否しているケースが大多数です。そのため、被害者の立場にある商標権者との示談は、現実的には想定しづらいでしょう。

一方、商標法違反の事件で不起訴になりやすい場合として挙げられるのは、事件の規模が小さく、かつ購入者との間で示談が成立している場合です。
購入者は、法的には商標法違反の事件の被害者とは言えない立場ですが、購入者の通報で発覚した事件の場合、実質的な被害者と考えられます。そのため、購入者との示談が成立し、購入者の宥恕が得られれば、刑事処分を相当程度軽減させる事情になるところです。
そもそもの事件規模が大きい場合は、購入者と示談をしても不起訴にはなりづらいですが、事件の規模が小さければ、購入者との示談を合わせて考慮し、不起訴処分となる場合も一定数見られるところです。

ポイント
捜査は捜索から入るケースも多い
逮捕するかどうかは事件規模による
犯罪事実が明らかであれば起訴するのが通常

商標法違反の刑事処分

商標法違反は、規模の限定的な個人の事件であれば、罰金刑の対象となることが多く見られます。他から購入した偽造品や類似商標の商品を販売した、という一般的な商標法違反事件であれば、30~50万円ほどの罰金刑が一つの目安になるでしょう。

もっとも、余罪が多い場合、共犯者が多く計画性の高い場合、犯罪による収益の規模が大きな場合など、より刑罰が重くなるケースも少なくありません。特に、法人を設立し、事業として行っているような場合だと、代表者や実行した者個人への処罰に加え、法人にも多額の罰金が科せられることにより、トータルの金銭制裁が非常に大きな金額となることも考えられます。

商標法違反で弁護士に依頼する場合

①認め事件の場合

認め事件では、商品の最終購入者と示談を行って刑罰の軽減を図るために弁護士への依頼が必須となります。
示談の試みは、警察や検察といった捜査機関に対して申し入れる方法で開始しますが、捜査機関は当事者同士での直接のやり取りを許容してくれないため、弁護士に依頼し、弁護士を窓口にする方法で申し入れを行うことが必要です。
申し入れを受けた捜査機関では、被害者の意向を確認の上、被害者が弁護士との示談交渉を了承すれば、連絡先の交換と示談交渉の開始が可能になります。

購入者との示談成立により不起訴処分となるケースもあり得るため、認め事件では速やかに弁護士へ依頼し、示談を目指すことをお勧めいたします。

②否認事件の場合

否認事件では、犯罪事実の立証ができるかどうか、という点が極めて重要な問題になります。犯罪が立証できると検察が判断した場合には起訴され、立証できないと判断された場合には不起訴処分となります。
この点、商標法違反の否認事件で争点となりやすいのは、故意の有無でしょう。仕入れた商品が商標権を侵害するものと知らないまま、他に売却したような場合が典型例です。
この場合、故意の有無は、当事者の供述のみでなく、客観的な事実関係を基準に判断されることになります。例えば、あまりに仕入れ値が安い場合は、商標権のあるブランド品としては不自然であり、故意が認められやすくなる、といったものです。
このような判断は、高度に法律的な問題となるため、否認事件で不起訴処分を獲得したい場合は、早期に弁護士へ依頼し、弁護士による主張立証を試みることをお勧めいたします。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

商標法違反の事件は,その内容や捜査に至った経緯などによって,有効な対応策が変わってくることのある事件類型です。
そのため,商標法違反に精通した弁護士への相談や依頼ができなかった場合,有益な対処をする機会を逃してしまう可能性も高いと言えます。
商標法違反の事件でお困りの場合は,弁護士へのご相談をお勧めします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

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