
このページでは,児童買春事件の自首に関して,自首をすべきかどうか,自首のメリット,自首を試みる際の具体的な方法などを弁護士が解説します。自首を検討する際の参考にしてみてください。

目次
児童買春事件で自首をするべき場合
①自分が被疑者と特定される場合
自首は,やがて自分が被疑者と特定されることが見込まれる状況で,特定前に行うことによって最も大きな効果を発揮します。裏を返せば,自首をしないまま自分が被疑者と特定されるに至ってしまうと,自首をするタイミングを失ってしまい,大きな不利益につながる恐れがあるでしょう。
児童買春事件の場合,児童との間で連絡を取った方法や内容を手掛かりにして,被疑者を特定するケースが多く見られます。連絡に用いたアプリのアカウント情報や,電話をした場合の電話番号,連絡をする中で児童に伝えた個人情報など,被疑者特定のきっかけとなるものは比較的多く残りやすい事件類型と言えます。
そのため,児童買春事件では,捜査が開始されると,被疑者が特定される可能性は比較的高い傾向にあると考えられるでしょう。
ポイント
やがて自分が被疑者と特定される状況で,特定前に自首を行うのが有益
児童買春事件は,比較的被疑者の特定がなされやすい
②児童との連絡が突然途絶えた場合
児童と継続的に連絡を取っていたものの,突然連絡が取れなくなった,という場合には,児童側に捜査のきっかけが生じた可能性が考えられます。児童との連絡内容をもとに捜査が進められた場合,自身が特定され,捜査の対象となることが考えられるため,自首を検討するのが有力なタイミングと言えるでしょう。
もっとも,児童との連絡が途絶えた場合でも,その原因が捜査の開始とは限らない点には注意が必要です。単に児童の感情面や判断の問題であったり,児童が携帯電話等を紛失したためであったりと,全く別の原因である可能性も否定できないため,可能な限り慎重に状況の確認を行いたいところです。
ポイント
捜査が開始された場合,児童との連絡が取れなくなることがある
③日常生活への支障を防ぎたい場合
児童買春事件で捜査を受けることとなった場合,日常生活への支障が避け難く生じることも少なくはありません。特に,逮捕を伴う捜査となれば,それまで通りの生活を続けることは現実的に難しく,仕事や家庭,学業などに大きな影響が生じやすいところです。
この点,早期に自首を行うことで,捜査機関に十分な配慮をしてもらえれば,児童買春事件の捜査が日常生活に与える影響を最小限にとどめることも可能です。逮捕されず,周囲にも発覚しない形で捜査を進めてもらうことで,日常生活への支障を防ぐことは決して困難ではないでしょう。
刑事事件の生活への影響を防ぐ手段として,自首は非常に有力と言えます。
ポイント
自首によって,逮捕や周囲への発覚を防げる場合も少なくない
自首とは
自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。
また,自首が成立するためには,犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前でなければなりません。これは,犯罪事実自体が発覚していない場合のほか,犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定できていない場合も含まれます。つまり,犯罪事実か犯人のどちらかが発覚していなければ,自首が成立するということになります。
ポイント 自首の意味
自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告し,自分への処分を求めること
犯罪事実又は犯人が特定できていない段階であることが必要
自首のメリット
①刑罰の減軽事由に当たる
自首は,刑法で定められているものですが,その定めは「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる。」という内容です。つまり,自首が成立した場合の直接の効果は「刑を減軽できる」ということになります。
刑罰が減軽される場合,基本的には言い渡される刑罰の上限が2分の1になります。そのため,自首によって刑罰が減軽されると,自首がなかった場合に比べて最大でも半分の刑罰までしか科せられません。
なお,「刑を減軽することができる」という定めは,任意的減軽と呼ばれます。これは,減軽することも減軽しないこともできる,というもので,自首したから必ず減軽の対象になるわけではありません。この点の最終的な判断は裁判所に委ねられますが,自首が刑罰の重みに大きく影響することは間違いありません。
ポイント
自首は刑の任意的減軽事由
②逮捕が回避できる可能性が高まる
被疑者が自首をした事件では,その被疑者を逮捕する可能性が非常に低くなることが一般的です。それは,逮捕の必要性が大きく低下するためです。
逮捕の要件には,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があるとされています。
逮捕の要件
1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。
2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。
この点,自首をする人物は,自分の犯罪事実を自発的に捜査機関へ告げ,その事件に関する刑事処分を受けるきっかけを自ら作っています。そのため,自分から捜査や処分を求めている人が逃亡や証拠隠滅をすることは考えにくいと言わざるを得ません。
そうすると,自首がなされた事件は,類型的に逃亡や罪証隠滅の恐れ(逮捕の必要性)が低いため,逮捕を回避できる可能性が高くなるのです。
逮捕の回避は,自首を試みる場合の大きな目的の一つと言えます。自分から捜査機関に犯罪を打ち明ける対価として,逮捕を避けてほしいと申し出る試みである,ということもできるでしょう。
ただし,必ず逮捕が防げるというわけではありません。自首をしたとしても逮捕せざるを得ないような重大事件であれば,自首は刑罰の軽減を目指して行うべきことになるでしょう。
ポイント
自首したケースは逮捕の必要性が低いと判断されやすい
③示談の可能性が高まる
被害者のいる事件の場合,自首をした被疑者自身が加害者であることが明らかです。そのため,被疑者ががさらに処分の軽減を図ろうとする場合,示談の試みが非常に大切となります。なぜなら,被疑者の刑事処分は,被害者の意向を可能な限り反映したものになるためです。
示談によって被害者の許しが得られた場合,許したという被害者の意向を反映して刑事処分を軽減することがほとんどでしょう。事件によっては,被害者が加害者の刑罰を希望しない,という意向を表明すれば,事実上不起訴が見込まれると言えるケースも少なくありません。
それだけ,示談の成否は刑事処分を決定的に左右し得るものです。
この点,被害者としては,加害者が自首をしたのか,警察に特定されて捕まったのかによって,示談を受け入れる気持ちが生じるかどうかに大きな違いが生じます。自首した場合の方が,被害者が示談を受け入れる気持ちになりやすいことは明らかです。
そのため,自首という行動は,その後の示談が成立する可能性を高めるという大きなメリットももたらすものと言えます。
ポイント
自首した場合の方が,被害者に示談を受け入れられる可能性が高くなる
④不起訴の可能性が高まる
自首した場合,刑の任意的減軽事由となりますが,これは刑罰を受けることを前提としたお話です。受ける刑罰が半減する可能性がある,というわけですね。
この点,自首が処分を軽減させるのは,決して刑罰が科せられる場合のみではありません。そもそも刑罰を科すかどうか,つまり起訴するか不起訴にするか,という局面でも,自首は処分を軽減させる事情として考慮されます。それは,自首をすることで刑事責任を軽くすべき,という考え方がこの局面にも当てはまるためです。
事件によっては,自首の有無で起訴不起訴が分かれるケースもあり得ます。自首以外に不起訴の判断を促せる事情がなかったとしても,自首を考慮して不起訴になる場合があり得るのは,自首の大きなメリットでしょう。
ポイント
自首を理由に不起訴処分が得られる場合もある
自首の方法と流れ
自首を円滑に,効果的に行うためには,適切な手順を踏んで自首することが望ましいところです。適切な自首ができれば,自首のメリットがより早期に,明確に得られるでしょう。
①自首の方法1.警察への連絡
自首は,警察署に直接出頭して行うこともできますが,事前に警察署に電話連絡をすることがより適切でしょう。事前連絡なく出頭した場合,警察側に自首を受け入れる体制や準備がなく,かえって手続が煩雑になってしまう可能性があります。
連絡先=自首をする先の警察署としては,事件の発生場所を管轄する警察とすることが最も円滑になりやすいです。ただ,自分の生活圏と事件の発生場所が遠く離れている場合は,自分の住居地の最寄りの警察署でもよいでしょう。
自首先の警察署
1.事件の発生場所を管轄する警察署
2.自分の住居地を管轄する警察署
また,連絡先は,自首をする事件分野を取り扱う担当課,担当係に行うことが望ましいです。事件を取り遣う部署は事件類型ごとに異なりますが,一般的には以下のような区別が可能です。
事件を取り扱う部署の例
暴行・傷害
→刑事課 強行犯係
詐欺・横領
→刑事課 知能犯係
窃盗
→刑事課 盗犯係
痴漢・盗撮
→生活安全課
児童買春・児童ポルノ
→生活安全課(少年係)
警察に連絡をした際は,事件を取り扱う係に電話を回してもらい,担当部署の電話応対者に自首を希望する旨とその内容を伝えるとスムーズになりやすいです。
なお,事件の概要や自首を希望するに至った経緯などを伝える可能性が高いため,整理して伝えられるよう,事前にメモを作成するなどして伝えたいことをまとめるのが望ましいでしょう。
②自首の方法2.警察への出頭
予定した日時に警察へ出頭します。
出頭した際にまずどこへ行き,どのようにして担当者に話を通してもらうかは,事前連絡の時点で確認しておくことが望ましいでしょう。
出頭後は,警察所で話を聞かれることが想定されます。どの程度の時間,どのような手続を行うことになるのかは事前の想定が困難であるため,当日の予定は終日空けておくことが適切です。
警察の受付から担当者につないでもらうと,担当課の取調室などへ案内されることが一般的です。
③自首後の流れ1.取り調べの実施
自首後は,まず事件の内容や流れについて取調べを受けることになります。自首をより円滑に進めるため,事前の準備に沿って事件の内容をできるだけ詳細に話すようにしましょう。
取調べの内容としては,以下のような事項が想定されます。
自首後の取調べ内容
1.事件の日時・場所
2.事件の具体的な内容
3.事件が発生した理由
4.自首を試みた経緯・理由
5.身上経歴
自首は,自分の犯罪行為を申告して処分を求めるものであるため,対象となる犯罪の内容については,何かを包み隠していると疑われないよう真摯な供述に努めることが有益です。また,反省・後悔の意思や,被害者に対する謝罪の意思が十分に伝わるような対応が尽くせれば,より望ましい内容になるということができるでしょう。
ポイント
自首を受けた警察で取調べが行われる
真摯な供述を心掛け,反省や謝罪の意思が伝わることを目指す
④自首後の流れ2.自首の受理
警察では,取調べで自首をした人から一通りの話を聞いた後,「自首調書」を作成します。
内容や形式は一般的な供述調書と大きく異なりませんが,自首を受理したことを明らかにするため自首調書を作成するものとされています。
自首調書には,事件の概要,本人の身上経歴,自首をした理由や経緯などが記載されます。
ポイント
自首を受け付けた警察では「自首調書」が作成される
⑤自首後の流れ3.逮捕の判断
自首を受けた警察では,取調べの内容等を踏まえ,その被疑者を逮捕するかどうか判断することになります。自首した事件では,被疑者を逮捕する必要は大きく低下すると理解されるのが通常ですが,それでも逮捕の可能性が否定できるわけではありません。
逮捕をするかどうかは,逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れを主な基準に判断されますが,自首をしているケースでは自首後に逃亡することは想定されづらいと言えます。そのため,罪証隠滅の恐れがどの程度あるか,という基準が重視されやすいでしょう。
そして,自首を通じて罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうためには,以下のような対応方法が考えられます。
逮捕を防ぐための自首の方法
1.時系列に沿った詳細な供述に努める
→隠し事なく供述していると評価してもらえれば,その上で証拠隠滅する恐れがあるとは判断されづらい
2.証拠の持参
→事件の内容に応じて想定される物的証拠を積極的に持参することで,罪証隠滅の余地がないと判断してもらいやすい
自首のやり方によって逮捕されるかどうかに差が生じる可能性もあるため,自首に際しては罪証隠滅の恐れがないと理解してもらうことをできる限り目指すようにしましょう。
ポイント
逮捕の有無は,罪証隠滅の恐れの有無によって判断されやすい
児童買春事件の自首は弁護士に依頼すべきか
児童買春事件で自首を検討する場合は,弁護士への依頼が適切です。弁護士の専門的な判断に基づいて進めることにより,より有益な結果となることが期待できるでしょう。
弁護士に依頼する場合の具体的なメリットとしては,以下の点が挙げられます。
①適切な方法で自首ができる
自首を行うことに決めたとしても,具体的にどのように進めるのか,という点は判断の難しい問題です。事前連絡は行うべきか,行うのであればだれに対して何を言うのか,自首をする先はどこかなど,実際に行うとなると疑問は数多く出てくるでしょう。
この点,弁護士に依頼することで,弁護士がケースに沿った適切な自首の方法を案内してくれます。また,自首に必要な対応の多くを弁護士が行ってくれるため,対応の負担が大きく軽減することにもつながるでしょう。
②出頭時の対応方法が分かる
自首を行う場合,警察署等への出頭は避けられません。そのため,出頭した際にどのような話をするべきか,どのような方針で振る舞うべきか,といった点は,自首を行う前にしっかりと整理しておくことが必要となります。
この点,弁護士に依頼をした場合には,出頭時には何をどこまで話すか,出頭した際のお話はどのように着地することを目指すか,といった事項について,弁護士から適切な案内を受けることが可能です。出頭時にすべきことが適切に整理されていれば,出頭の心理的負担も大きく緩和できるでしょう。
③直ちに弁護活動を開始できる
自首は,あくまで捜査が始まるきっかけに過ぎません。自首後には,事件の捜査が始まることになります。
そのため,自首を行うのであれば,その後に弁護士の弁護活動を依頼することが適切です。せっかく自首を行って処分の軽減を目指している以上,その後に示談や早期釈放のための弁護活動をしてもらわないというのは,非常にもったいないと考えるべきでしょう。
この点,自首の段階で弁護士に依頼をすれば,自首後にも引き続き弁護活動をしてもらうことができるため,必要な弁護活動を直ちに開始してもらうことが可能となります。弁護活動には,時間との勝負が避けられないものもあるため,弁護活動が速やかに開始されることのメリットは非常に大きいと言えます。
児童買春事件で自首をする場合の注意点
①法的に自首が成立しない場合
自首が成立するためには,犯罪事実又は犯人が捜査機関に発覚していない段階であることが必要です。警察が犯罪事実を把握して捜査をしているのみでは,自首ができない状況とは言えませんが,捜査が進んで犯人が発覚してしまうと,その後に自首を試みても法的には自首が成立しません。
児童買春事件の場合,捜査が尽くされれば児童の相手となった犯人の特定は可能であることが少なくありません。そのため,自首の試みは,捜査が尽くされる前に行う必要があり,極力早期に検討することが適切でしょう。
②捜査を誘発する可能性
自首は,捜査機関に自らの犯罪事実を述べる行為であるため,自首によって初めて捜査機関が事件を把握する,という可能性も否定できません。児童買春事件では,児童側から捜査機関に事件が発覚したと考えて自首に踏み切ることが一定数見られますが,実際には児童と捜査機関が一切接触していない可能性もあるため,自首したばかりに捜査を誘発する結果となるリスクには注意が必要です。
自首をする段階で事件の捜査が行われているか,という点を正確に把握する方法は残念ながらありません。そのため,自首をする場合は,捜査を誘発してしまう可能性は覚悟した上で行わざるを得ないところです。
なお,既に捜査されているかどうかをある程度推測することは,専門性のある弁護士であればできる可能性もあります。不安がある場合には,事前に弁護士への相談を行われることをお勧めします。
③捜索差押えが行われる可能性
児童買春事件の場合,児童ポルノに関する事件(児童の身体の撮影など)が同時に起きている可能性が懸念されやすいです。そのため,児童買春事件の捜査の一環として,被疑者の携帯電話やパソコンなど,撮影内容が保存されている可能性のある証拠物を確認するケースは多く見られるところです。
また,携帯電話やパソコンは,児童買春事件に関する児童との連絡ツールである場合も多いため,連絡履歴を確認する目的でも,中身の確認は行われやすいでしょう。
児童買春事件で自首をした場合でも,同様に携帯電話やパソコンの確認を求められるケースは少なくありません。そして,捜査機関の判断によっては,捜索差押えという強制捜査によって,それらの証拠物を獲得しようとする可能性もあり得ます。
自首後,警察官などが自宅の捜索差押えを行うことになる可能性は,事前に想定しておく方がよいでしょう。
④自首しても不起訴にならない可能性
自首は,刑事処分を大きく軽減させる事情となることが一般的です。リスクや心理的負担を抱えてでも,反省の意思を示すために自首をしていることは,不起訴の可能性を高める重要な判断材料になることは間違いありません。
もっとも,自首をすれば不起訴になる,という関係があるわけではありません。自首をし,自首が原因となって捜査が開始された結果,その事件で起訴される,という結果になっても,何らおかしくはないのです。
自首をする場合には,結果的に起訴されてしまう可能性があることも十分に理解しておきましょう。
刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。


藤垣法律事務所代表弁護士。岐阜県高山市出身。東京大学卒業,東京大学法科大学院修了。2014年12月弁護士登録(67期)。全国展開する弁護士法人の支部長として刑事事件と交通事故分野を中心に多数の事件を取り扱った後,2024年7月に藤垣法律事務所を開業。弁護活動のスピードをこだわり多様なリーガルサービスを提供。