
このページでは,児童買春事件の逮捕に関して,刑事弁護士が徹底解説します。逮捕の可能性はどの程度あるか,逮捕を避ける方法はあるか,逮捕された場合に釈放を目指す方法はあるかなど,対応を検討する際の参考にしてみてください。

目次
児童買春事件で逮捕される可能性
児童買春事件は,捜査に際して逮捕される可能性が十分に考えられる事件類型です。逮捕をされるケース,されないケースはいずれもありますが,逮捕の可能性が高くなりやすい要因や,逮捕されやすい場合の特徴としては,以下のような点が挙げられます。
逮捕の可能性が高まる要因
1.児童への悪影響を防ぐため
2.今後の事件発生を防ぐため
【1.児童への悪影響を防ぐため】
児童買春事件の場合,同一の児童と複数回に渡って行為が行われるケースも少なくありません。そのため,児童が多数の児童買春事件に関与した結果,児童の性風俗の乱れが深刻化する可能性が懸念されやすく,これを防ぐために逮捕がなされる場合が考えられます。
また,児童自身が児童買春事件の重要な証拠であるため,児童に圧力をかけるなどして口止めを図ろうとする可能性が懸念される場合もあります。児童が証拠隠滅行為による被害を受けることのないよう,逮捕によって当事者間の接触を防ぐことが考えられます。
【2.今後の事件発生を防ぐため】
児童買春事件では,複数の児童を相手に多数回の行為が行われる場合も少なくありません。そのため,今後,他の児童を相手に児童買春事件が起きることを防ぐ目的で逮捕がなされる可能性が考えられます。
そのほか,逮捕されやすいケースの例としては,以下のような場合が挙げられます。
逮捕されやすいケース
1.児童の年齢が低い場合
→年齢が低いほど逮捕リスクが高い
2.多数の余罪が見込まれる場合
→余罪の数が際立っていると,逮捕リスクが高い
3.被疑者が罪証隠滅を図った場合
→児童と口裏合わせを試みたり,物証を処分したりしている場合,逮捕リスクが高い
逮捕の種類・方法
法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。
①現行犯逮捕
現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。
典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。
ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所のそれぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。
なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。
準現行犯逮捕が可能な場合
1.犯人として追いかけられている
2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている
3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある
4.身元を確認されて逃走しようとした
ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能
②通常逮捕(後日逮捕)
通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。
裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。
通常逮捕の要件
1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。
2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。
通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。
ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要
③緊急逮捕
緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。
緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。
緊急逮捕の要件
1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う
緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。
緊急逮捕と現行犯逮捕の違い
現行犯逮捕 | 緊急逮捕 | |
逮捕状 | 不要 | 逮捕後に請求が必要 |
一般人の逮捕 | 可能 | 不可能 |
逮捕後の流れ
逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。
逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。
ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される
逮捕による不利益
逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。
①社会生活を継続できない
逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります。
また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。
②仕事への影響
逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。
また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。
③家族への影響
逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。
このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。
④報道の恐れ
刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。
万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。
⑤前科が付く可能性
逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。
児童買春事件で逮捕を避ける方法
①当事者間での解決
児童買春事件は,当事者間で既に解決している場合,その後に捜査が開始されることは現実的に考えづらいです。そして,捜査が行われない限り,捜査上の手続の一つである逮捕も行われないため,当事者間での解決は逮捕を防ぐための有力な手段と言えます。
当事者間で速やかに解決する余地がある場合には,積極的に解決を目指すことが有益でしょう。
②自首
被疑者が積極的に自首を行った場合,逮捕の必要性は低いと評価されることが通常です。自首は,自ら捜査機関に犯罪事実を明らかにする行為であって,自分から犯罪を告げてきた被疑者が逃亡や証拠隠滅を図るとは考え難いためです。
自首を行うことができるのは,児童買春事件について捜査を受ける前の段階に限られますが,自首の余地がある場合には逮捕回避の有力な手段として検討することが望ましいでしょう。
③適切な捜査対応
既に捜査機関から呼び出されるなどし,捜査が継続されている場合には,その捜査への対応を適切に行うことで,逮捕を避けられる可能性が高まります。
児童買春事件の場合,逮捕せずに捜査が進められている状況下では,被疑者の捜査対応に問題がない限り逮捕しないまま捜査を遂げてもよいと考えられていることが通常です。呼び出しには確実に応じ,取調べにも可能な限りの回答をするなど,円滑な捜査への協力姿勢を明らかにすることで,逮捕のリスクは低下しやすい状況と言えるでしょう。
児童買春事件の逮捕は弁護士に依頼すべきか
児童買春事件の逮捕に関する検討や対応は,弁護士に依頼し,弁護士の専門的な見解を仰ぎながら進めることが望ましいです。弁護士と協同することで,具体的には以下のような利点が考えられます。
①逮捕リスクの大きさを判断してもらえる
児童買春事件の場合,将来における捜査や逮捕の可能性が児童側の事情によって大きく左右されるため,逮捕リスクを客観的に判断することが非常に困難な傾向にあります。
もっとも,事情や状況によっては,専門家である弁護士が精査することで現段階の逮捕リスクの大きさをある程度判断できる場合もあり得るところです。
逮捕リスクの大きさが分かれば,逮捕を防ぐためにどれだけ積極的な動きを取るべきかも判断しやすくなるため,適切な対応につながりやすいでしょう。
②逮捕回避のために適切な動きが分かる
逮捕回避の方法は,当事者間での解決(示談)や自首など複数ありますが,具体的なケースでどのような手段を取るべきかは,弁護士の専門的な判断に委ねることが望ましいところです。
また,どのような手段を講じれば,逮捕の回避はどの程度の可能性で実現できるか,というバランスも検討してもらうことができるため,事件の内容や状況に合った適切な動き方を選択することができるでしょう。
加えて,実際に逮捕回避の動きをする際には,対応の多くを弁護士に任せることができるため,自身の負担を軽減しながら適切な動きを取ることができます。
③示談が実施できる
逮捕回避のために有力な示談の試みは,弁護士に依頼しなければ行えないことが通常です。既に捜査が行われている場合には,弁護士が捜査機関に連絡をし,捜査機関から児童側に意向を確認してもらうことになります。その後,児童側から弁護士限りでの連絡先交換に了承が得られれば,示談交渉が開始できる,というのが一般的な流れです。

示談を通じた逮捕回避を目指す場合には,弁護士への依頼が不可欠と言えるでしょう。
児童買春事件の逮捕に関する注意点
①児童への接触方法
児童買春事件では,捜査が行われているか不明な段階で示談を試みる場合,児童に直接接触を図る必要があり得ます。児童の連絡先以外にめぼしい接触方法がなければ,児童へ連絡を取ることで示談交渉に着手せざるを得ない場合もあるでしょう。
この場合,決して当事者自身から示談を持ち掛けることがないように注意しましょう。当事者自身が行うのでなく,弁護士などの代理人を通じて連絡するのが適切です。
当事者が自ら示談交渉を試みる行為は,児童に圧力をかけて証拠隠滅を図ろうとしているのではないか,との誤解を招く恐れがあり,かえって逮捕の可能性が高くなる原因になりかねません。
②逮捕後の拘束期間
児童買春事件は,逮捕された場合の拘束期間に様々な可能性のある事件類型です。
早ければ,逮捕から2~3日の間に,勾留されることなく釈放される可能性もあります。早期釈放されれば,その後は在宅事件として取り扱われるため,社会生活に復帰することができます。
一方,事件によっては,最長20日間の勾留が行われた上,その後に余罪で再度逮捕勾留され,更に20日以上の身柄拘束が繰り返されることもあり得ます。余罪の数によっては,その期間が数か月に渡る可能性も否定できません。
個別の事件でどの程度の拘束期間が想定されるかは,専門性ある弁護士の見解を仰ぐことが望ましいでしょう。
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藤垣法律事務所代表弁護士。岐阜県高山市出身。東京大学卒業,東京大学法科大学院修了。2014年12月弁護士登録(67期)。全国展開する弁護士法人の支部長として刑事事件と交通事故分野を中心に多数の事件を取り扱った後,2024年7月に藤垣法律事務所を開業。弁護活動のスピードをこだわり多様なリーガルサービスを提供。