薬物の規制にはどんな種類がある?大麻の使用は違法?起訴されないためには?薬物事件を知りたい人への完全ガイド

●どんな薬物が規制の対象になっているのか?

●大麻は犯罪にならないと聞いたけど本当か?

●薬物事件は逮捕されるのか?

●薬物事件は起訴されるのか?

●薬物事件の刑罰はどのようなものか?

●薬物事件の再犯の場合,実刑は避けられないか?

●薬物事件は弁護士に依頼すべきか?

といった悩みはありませんか?

このページでは,薬物事件についてお困りの方に向けて,薬物事件の取り締まり内容争点になりやすい事項刑罰の軽減を目指す弁護活動などを解説します。

薬物規制の類型

薬物に対する規制は、様々な薬物について様々な法律でなされています。
その主な類型は以下の通りです。

①覚せい剤取締法
②大麻取締法
③麻薬及び向精神薬取締法
④あへん法
⑤麻薬特例法
⑥毒物及び劇物取締法
⑦医薬品医療機器等法

①覚せい剤取締法

規制の対象となる薬物は覚せい剤です。
覚せい剤取締法では、主に覚せい剤の使用・所持・譲渡・製造・輸入・輸出を禁止しています。
覚せい剤は、規制される薬物の中でも依存性や幻覚作用の強い薬物で、その危険性が大きいことから、違反行為に対する刑罰は厳罰化されていることに特徴があります。

②大麻取締法

大麻(主に大麻草の樹液に含まれる成分)を規制対象とする法律です。
大麻の栽培・製造・所持・譲渡・輸入・輸出を禁止しています。

なお、大麻については、使用行為が処罰の対象とされていませんでしたが、2023年12月6日に成立した法改正により、使用行為も処罰対象とされることとなりました(執筆時は未施行)。

③麻薬及び向精神薬取締法

ヘロイン、コカイン、モルヒネなど、麻薬及び向精神薬として指定された薬物を規制対象とする法律です。
主に麻薬及び向精神薬の製造・所持・譲渡・輸入・輸出を禁止しています。

なお、使用が新たに処罰対象とされる大麻は、法的には麻薬に位置づけられるという方法で使用が禁止されることとなります。

④あへん法

あへんとは、ケシの実から採取される果汁を乾燥させ凝固させた物質です。
あへん法は、このあへんについて栽培・製造・所持・譲渡・輸入・輸出を禁止しています。

⑤麻薬特例法

正式名称は、「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」といいます。

①覚せい剤、②大麻、③麻薬及び向精神薬、④あへんのそれぞれについて、
組織的犯罪や国際的犯罪などを特に厳罰とするため設けられた特例法です。

⑥毒物及び劇物取締法

人の生命や健康に著しい被害を与える恐れのある毒物や劇物について、その製造、販売、譲渡、使用、保管等に厚生労働大臣の許可を受けなければならないと定める法律です。
また、毒劇物の容器にはその旨表示しなければならず、毒劇物の保管を誤って漏洩させる行為も刑罰の対象とされています。

毒物や劇物の例
毒物: 青酸カリウム、シアン化ナトリウム、ヒ素、ストリキニーネ、ニコチンなど
劇物: 塩酸、硫酸、硝酸、苛性ソーダ、亜鉛メチルなど

⑦医薬品医療機器等法違反

正式名称は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。

医薬品、医薬部外品、化粧品等、安全性や有効性が失われてはならない「医薬品等」について、その無許可販売・営業や、商品の誇大広告などを禁止する法律です。
脱法ドラッグと呼ばれる医薬品の不正な所持や譲渡を禁じる法律でもあります。

⑧まとめ

①覚せい剤取締法対象薬物:覚せい剤
②大麻取締法対象薬物:大麻
③麻薬及び向精神薬取締法対象薬物:麻薬(コカイン・ヘロインなど)・向精神薬
④あへん法対象薬物:あへん
⑤麻薬特例法①~④の組織的犯罪や国際的犯罪を厳罰化
⑥毒物及び劇物取締法毒物や劇物に関する製造・販売・保管などのルール
⑦医薬品医療機器等法医薬品等の無許可販売・誇大広告などを禁止

大麻に対する規制

①従来の規制内容

従来、大麻については、その使用が禁止されていませんでした。
これは、覚せい剤や麻薬及び向精神薬といった他の薬物とは異なる大麻の特徴であったということができます。

②大麻の使用が罪でなかった経緯

大麻取締法に使用の罪がなかった経緯は、必ずしも明らかにされてはいませんが、以下のような理由が指摘されています。

・法律制定当時、大麻草が国内で乱用されている状況はなかった
・大麻草の栽培を、農産物の一つとして許可制にすれば不正取引は防げると思われていた
・大麻草の栽培農家が、作業中に大麻の成分を吸引したケースが犯罪にならないよう配慮した

③大麻使用罪の新設

2023年12月6日の法改正により、大麻を麻薬に含めることで、大麻の使用を犯罪とすることが決まりました。大麻を他の麻薬と同様に扱うことになるため、簡単に言えば、大麻の特別扱いがなくなるということです。

これは、大麻由来成分を用いた薬物の使用が横行していることを踏まえ、大麻由来成分の不正な使用を麻薬の不正な使用と位置付けることにしたものと言われています。

薬物事件の刑罰

薬物事件の刑罰は、対象となる薬物の危険性の大きさや違反行為の内容によって異なります。
代表的なものとして、薬物ごとの所持に対する刑罰は以下の通りです。

①覚せい剤    10年以下の懲役
②ヘロイン(麻薬)10年以下の懲役
③コカイン(麻薬)7年以下の懲役
④あへん     7年以下の懲役
⑤大麻      5年以下の懲役
⑥向精神薬    3年以下の懲役

覚せい剤やヘロインなど、効果や依存性の強い薬物であるほど、違反行為の罰則は重く定められています。
また、営利目的である場合には、刑罰はさらに重くなります。

薬物事件と逮捕

薬物事件の捜査は、基本的に逮捕を伴う方法で行われます。
逮捕される方が通常である、と理解しても間違いかもしれません。

薬物事件の場合、違反行為が何であっても、一人だけの力でその違反行為ができるというケースは非常に少ないものです。所持であれば、販売者(いわゆる売人)から購入していることが大半ですし、譲渡の事件であれば、その性質上譲り渡した人と譲り受けた人が存在します。
そのため、薬物事件の捜査は複数名の関与を想定して行いますが、薬物に関するやり取りが秘密裏に行われやすいこと、重大な刑罰の対象となりやすい事件類型であることなどを踏まえ、証拠隠滅を防ぐ目的で逮捕されることが多くなるのです。

薬物事件の起訴

①基本的な運用

薬物事件は、犯罪事実の存在が明らかである場合には、起訴され公判(公開の裁判)の対象となることが一般的です。
他の軽微な事件類型の場合には、犯罪事実の存在が明らかであっても、検察官に大目に見てもらうことができれば、不起訴(起訴猶予)になる余地もあり得ますが、薬物事件の場合、起訴猶予になることは非常に困難であり、ほとんど例が見られないものと理解するのが適切でしょう。

②不起訴になる場合

薬物事件で不起訴になるケースは、犯罪事実の存在が立証できるか不明確な場合がほとんどです。不起訴の理由としては、「嫌疑なし」又は「嫌疑不十分」ということになります。
嫌疑不十分として不起訴になる場合の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。

量が極めて少ない

袋の中に残りカスのようなものが少しだけ入っていた場合など、所持量が極めて少ない場合には、それが薬物の所持と評価することができるのかが不明確であるため、嫌疑不十分となることがあり得ます。
また、極めて少量の所持は、自分の意思で所持していたのか不意に混入しただけなのかの区別も難しく、その点でも薬物所持の立証が困難になりやすいです。

持ち主がだれか分からない

共同利用していた個室などの中で薬物が発見された場合、誰かが薬物を所持していることが明らかでも、具体的に誰が持ち主か分からないことがあります。このケースでは、誰の物であるか分からない以上、誰のものであるとも立証できないことになり、嫌疑不十分となり得るでしょう。

なお、複数の人が協力して薬物を所持していた場合には、共同所持として協力者全員の犯罪が立証されることがあります。誰の物か分からず不起訴になるのは、協力や意思疎通なく誰かが勝手に所持していたケースに限られることになります。

意図せず荷物の中に薬物が混入した可能性を否定できない

荷物の中に薬物が混入していたものの、それが意図的に携帯していたのか、意図せず荷物の中に混入していたのか分からない場合は、嫌疑不十分になり得ます。例えば、直前に薬物所持者を含む大人数がいる場所で時間を過ごしていた場合、その中で荷物内に薬物が入ってしまっただけであるかもしれず、もしそうであれば当然ながら犯罪にはならないわけです。

もっとも、荷物の中から薬物が見つかった場合のすべてについて、勝手に入っていただけだという主張がまかり通るわけではありません。勝手に入っていた可能性も確かにある、と言えるだけの事情は必要になるでしょう。

尿検査に用いられた液体が本人の尿か分からない

薬物使用は、尿検査の結果を客観的証拠とすることが一般的です。そのため、検査結果のもとになった尿は間違いなく被疑者の出したものであることが必要です。
逆に、尿の採取過程で他の物質が混入した可能性があるなど、尿検査に用いられた液体が本当に本人の尿か分からないと、薬物使用の根拠としては不十分であり、嫌疑不十分となることが考えられます。

ポイント
薬物ごとの刑罰は,対象となる薬物の依存性などにより異なる
薬物事件は逮捕をするケースが多数
処分の基準は,犯罪事実が立証できれば起訴,できなければ不起訴

薬物事件で科せられる処分

薬物事件の刑事処分は、具体的な違反行為によって様々ですが、単純な所持や自己使用といったものであれば、初犯だと執行猶予の対象となることが多いです。
執行猶予とは、懲役刑など、刑務所に収監する刑の執行を一定期間猶予し、その期間内を無事に過ごせば、刑の執行がなくなるというものです。つまり、次はないが今回は刑務所に入れないこととする、という意味合いの処分ということになります。

もっとも、薬物事件の中でも、営利目的で行われたものについては重大な刑罰の対象となりやすく、初犯でも実刑判決となることが多く見られます。実刑判決となった場合、直ちに刑務所に収監されることとなります。

薬物事件の再犯は執行猶予になるか

①薬物事件の再犯における執行猶予の困難さ

薬物事件は、薬物の依存性もあり、類型的に再犯が生じやすい犯罪類型です。
そして、薬物事件の初犯は執行猶予になりやすいことから、再犯は執行猶予前科のある状態での事件ということになります。

この点、執行猶予期間中の再犯は、原則として執行猶予の対象にはなりません。再度の執行猶予という制度もありますが、その対象となるのは稀と言えるでしょう。再度の執行猶予となるのは、徹底した入院治療を前提としたケースの一部など、極めて限定した場合に限られます。

また、執行猶予期間の経過後でも、経過後それほど期間が経っていなければ、同じく実刑判決の対象となります。執行猶予期間の経過後、概ね10年以内の場合、実刑判決が強く懸念される傾向にあるでしょう。

②刑の一部執行猶予制度

そのような薬物の再犯における特徴的な制度に、「刑の一部執行猶予」というものがあります。

刑の一部執行猶予制度とは、その文字通り、刑の全部でなく一部を執行猶予の対象にする、というものです。
実刑判決の一類型ではありますが、刑務所における更生と社会内における更生を併用することで、より適切な再犯防止を目指すための制度と位置付けられています。
具体的な刑の宣告としては、「懲役1年6月、うち6月について3年の執行猶予」といった内容になります。執行猶予のない期間は服役し、執行猶予のついた期間は服役せず社会内での更生を試みる形を取ります。

薬物事件では、この一部執行猶予が広く採用される傾向にあります。
実刑判決の対象として刑務所での服役を強いたとしても、それが薬物依存の解決には直接つながらず、再発防止にとって必ずしも適切ではないと考えられるためです。
そうであれば、一部執行猶予とし、一部を社会内での更生とすることで、薬物依存からの脱却も含めたより適切な方法での再犯防止を実現しようということです。

薬物事件の場合、他の事件類型よりも一部執行猶予の対象となるための要件が緩く、刑の一部執行猶予制度を採用しやすい配慮がなされています。
例えば、薬物事件以外だと、「禁錮以上の刑に処せられたことが」ある人には一部執行猶予とすることができませんが、薬物事件にはその制限はありません。
一方で、薬物事件については、一部執行猶予期間中に保護観察が必須とされており、生活状況を厳格に管理されることとなります。

ポイント
単純所持や自己使用は初犯の場合だと執行猶予が見込まれやすい
再犯は実刑判決が一般的
実刑判決の場合には一部執行猶予が広く用いられている

薬物事件で弁護士に依頼すべき場合

①認め事件の場合

認め事件では、犯罪事実を争うために弁護士に依頼する必要はありませんが、取り扱いや処分の軽減を目指す場合には弁護士に依頼するのが適切です。具体的には、以下のような場合が挙げられます。

・逮捕回避を目指す場合
→捜査機関に犯罪事実が発覚していないが今後発覚が見込まれる、という場合には、自首などの方法で将来の逮捕回避を目指すことが有力です。その際は、弁護士に依頼の上で具体的な方法や方針を検討してもらい、弁護士と共同して実行するのが適切でしょう。

・早期釈放を目指す場合
→逮捕や勾留が防げない場合には、できる限り早期の釈放を目指すことが有力です。
弁護士への依頼により、捜査を早期に終結してもらって勾留期間を短縮したり、起訴後に速やかな保釈の手続を行ったりという手段を通じて、早期釈放を目指すことが可能となります。

・刑罰の軽減を図る場合
→刑事処分の軽減を目指す場合、刑事処分の検討は高度に法的な内容になるため、弁護士に依頼の上、弁護士を通じて対応してもらうことが適切です。また、刑罰の軽減を図るために自分ができることが何か、という点も、あわせて協議することが可能です。

・再度の執行猶予や一部執行猶予を目指す場合
→再度の執行猶予や一部執行猶予といった、原則とは異なる刑事処分を求める場合には、弁護士に依頼の上、弁護士から法的主張・立証を行うことが適切です。
弁護士に依頼した場合、執行猶予が獲得できる見込みも踏まえて、どのような動きを取るべきかを検討してもらうことも可能です。

・再発防止を目指す場合
→再発の生じやすい事件類型であることから、再発を防ぐことも非常に重要となります。
薬物への依存がうかがわれる場合には治療等の医学的な解決を試みるなど、弁護士から適切な再発防止策の案内を受けることはとても有力でしょう。

②否認事件の場合

否認事件では、犯罪事実の存在が立証できるかどうか、ということが極めて大きな問題になります。
薬物事件については、「薬物事件の起訴」の項目で解説した通り、犯罪事実の立証が困難ではないかという問題の生じる類型が一定数あります。それらを踏まえ、どのような方針で否認を貫いていくかは、弁護士による法的判断が適切でしょう。
また、弁護士への委任により、否認の方針が適切かどうかという案内を受けることも可能になります。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

薬物事件は,身柄拘束を伴う捜査が行われやすい類型です。また,他の関係者が想定される事件では,弁護士以外との面会すらできない場合も珍しくありません。
一方で,法的には刑事処罰の対象とできるか難しいケースも多く,望ましい結果を獲得するためには,薬物事件に精通した弁護士の協力を得るのが非常に有力です。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

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