暴行罪に当たる行為は?傷害は暴行と何が違う?示談の方法や流れは?弁護士が教える暴行傷害事件の全て

暴行に当たるのはどのような行為か?

●暴行と傷害の違いは何か?

●暴行傷害で刑事事件化しないで済むか?

●暴行傷害事件は逮捕されるか?

●暴行傷害は起訴されるか?

●暴行傷害の示談はどうすればできるか?

●示談金や示談の内容はどう決めればいいか?

といった悩みはありませんか?

このページでは,暴行傷害事件でお困りの方に向けて,暴行罪・傷害罪に関する法律の要点や,暴行傷害事件の解決・弁護士への依頼などについて説明します。

暴行とは 傷害とは

①暴行

暴行とは,「人の身体に対する有形力の行使」と定義されています。
この有形力の行使は,人の身体に接触することを要しません。また,相手が怪我をする可能性のない行為でも構いません。
そのため,殴る・蹴るといった行為は典型例ですが,裁判例では以下のような行為も暴行と認められています。
・塩を振りかける行為
・数歩手前を狙って投石する行為
・猟銃で威嚇射撃を行う行為
・刃物を持って被害者へ突進する行為
・大声で暴言を吐き,詰め寄る行為

ただし,相手が怪我をする必要はなくても,相手の五官に直接間接に作用して不快ないし苦痛を与える性質のものであることは必要とされています。
具体的な境界線は必ずしも明確にはできませんが,過去の裁判例では,自動車同士の追跡行為が,追跡された車両の乗員に対する暴行に当たるとされたものもあります。

②傷害

傷害罪は,暴行の結果,人の身体を傷害した場合に成立する犯罪です。
ここでいう傷害とは,「他人の生理的機能に障害を与えること」とされています。
殴る・蹴るといった暴行でケガを負わせることは典型例ですが,傷害の結果がケガである必要はありません。
もっとも,単に痛みを感じるだけでなく,日常生活に支障をきたす程度の障害を与える必要があり,客観的に認められる身体の損傷が必要です。
また,作為のみでなく不作為(すべきことをしなかった場合)も傷害に当たることがあります。

過去の裁判例では,以下のような行為について,傷害に該当すると判断したものがあります。
(精神的損害)
・大音量のラジオや目覚まし時計のアラーム音で,被害者を睡眠障害や耳鳴りに陥らせた行為
・ストーカー行為により,被害者に強い不安や恐怖を与え,その日常生活に支障を生じさせたこと

(病気への感染)
・性病を隠して性行為を行い,被害者を性病に感染させた行為
(不作為)
・被害者が転倒して負傷した事件で,加害者が被害者の転倒を予見できたにもかかわらず,適切な措置を取らなかった行為

ポイント
相手に接触しなくても,ケガの可能性がなくても暴行罪には当たり得る。不快や苦痛を与える行為であることは必要。
傷害罪の傷害結果は必ずしもケガでなくてよい。客観的な身体の損傷は必要。

暴行傷害の刑罰

①暴行罪
暴行罪の刑罰は,「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。
拘留は1日以上30日未満の収監,科料は1000円以上1万円未満の金銭納付を言います。

そのため,暴行罪の刑罰は,2年以下の身体拘束か30万円以下の金銭制裁ということができるでしょう。

②傷害罪
傷害罪の刑罰は,「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。

暴行傷害が刑事事件化しない場合

①当事者間で事前に解決した場合

刑事事件の大多数は,被害者が警察に捜査を求めることで捜査が始まり,刑事事件化することになります。これは,暴行罪や傷害罪でも同様です。
そのため,被害者が警察に捜査を求めるより前に,当事者間で解決できた場合には,刑事事件化することはありません。
暴行・傷害事件が発生し,まだ警察が関与していないという場合は,示談などの方法で当事者間で解決することを目指すのが非常に有益でしょう。

②微罪処分の場合

また,もし警察が関与することになったとしても,微罪処分の対象となった場合には,捜査が速やかに終了し,前科がつくこともありません。
微罪処分とすることのできる犯罪は,類型的に軽微な場合がある一部のものに限られていますが,暴行罪や傷害罪は微罪処分とすることのできる犯罪に該当します。

微罪処分になるかどうかは,以下の要素を総合的に判断して決められます。

犯罪の軽重計画性や悪質性,被害の程度などを考慮します。
犯情反省の態度や謝罪の有無,示談の成立状況などを考慮します。
被害者の処罰感情被害者が厳罰を求めているかどうかなどを考慮します。
社会的影響事件の態様や反響などを考慮します。
加害者の資質年齢や前科,性格などを考慮します。

微罪処分になるような軽度の事件の具体例としては,口論の末に軽くビンタをする程度の暴行事件や,もみ合いの末に被害者が擦り傷を負った程度の傷害事件などが挙げられます。
また,当事者間で示談が成立していることは,微罪処分の判断をする場合にも非常に有益な事情となります。

暴行傷害事件と逮捕

暴行傷害の事件は,必ずしも逮捕が見込まれるというわけではありません。もっとも,ケースによって逮捕されやすいものもあり,注意が必要なこともあります。
逮捕するかどうかは,逃亡の恐れと罪証隠滅の恐れを基準に判断されるため,暴行傷害事件のうち,逃亡や罪証隠滅の恐れが大きい類型では,逮捕の可能性が高くなる傾向にあります。具体的には以下のような場合が挙げられます。

①現行犯の場合
現行犯で警察官が現場に駆け付けるような事件は,その場でのトラブルが非常に激しくなっている場合が多いです。そのため,当事者間のトラブルがより深刻になることを防いだり,被害者に対する働きかけや圧力がかかることを防いだりする目的で,現行犯逮捕される可能性が高くなりやすいところです。

②住所不定者・反社会勢力関係者の事件
これらの者は,そうでない者と比較して逃亡や証拠隠滅の可能性が高い傾向にあると理解されやすいため,逮捕に至る可能性が高いです。

③傷害結果が重大な事件
傷害結果が重大な傷害事件は,結果の大きさに比例して刑事罰も重くなりやすいため,逃亡や証拠隠滅の動機が生じやすいと理解されます。そのため,傷害結果が軽微な場合よりも逮捕されやすいです。

④反復継続して行われている事件
当事者間に深い交友関係があるなど,同種のトラブルが反復継続する間柄にある場合,今後の被害や当事者間の接触を防ぐために逮捕をされる可能性が高くなりやすいです。

⑤不合理な否認事件の場合
内容不合理と思われる否認事件の場合,否認の内容に沿った罪証隠滅をされる可能性が高い傾向にあるため,罪証隠滅を防ぐ目的で逮捕される可能性が高くなります。

ポイント
事前に当事者間で解決している場合や微罪処分の対象となる場合は捜査されない
逮捕されやすいのは逃亡や証拠隠滅の恐れが大きいと判断される事情がある場合

暴行傷害事件で不起訴になる場合

①認め事件

暴行傷害の認め事件で不起訴になるかどうかは,当事者間で示談できるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。
そのくらいに,起訴不起訴の判断に対して示談の成否が大きな影響を及ぼす傾向にあります。

暴行傷害は被害者の存在する事件ですが,被害者のいる事件での起訴不起訴の判断は,被害者の処罰感情(相手の処罰を求めるかどうか)を強く尊重してなされることが一般的です。
示談が成立していれば不起訴になりやすく,示談が成立していなければ起訴されやすい,と言えるでしょう。

認め事件で不起訴を目指す場合には,被害者との間における示談を目指すことを強くお勧めします。

②否認事件

否認事件の場合,犯罪事実の立証ができないと判断された場合に不起訴となります。逆に,犯罪事実の立証が可能であると判断された場合に起訴されることが一般的です。

そのため,個別事件の争点を踏まえ,犯罪事実の立証が困難であるとの主張を行っていくのが非常に有力な対応になるでしょう。
暴行傷害の事件で生じやすい争点としては,以下のものが挙げられます。

自分の行為ではない(犯人でない)

→多数者のもみ合いの中で発生した事件など,誰と誰との間の行為であるか不明確な場合には,自分の行為でないものについて犯罪の疑いをかけられる場合があり得ます。その場合には,自分の行為でないとの主張,法的には犯人性を否認する対応が必要となります。

故意がない

→自身の行為で相手にケガを負わせてしまったものの,わざと行ったわけではないという場合が該当します。
暴行罪や傷害罪は故意犯であるため,犯罪の故意がなければ成立しません。そのため,意図せず暴行や傷害の結果が生じてしまった場合,故意を否認する対応が適切です。
なお,故意がない場合でも,過失によって相手にケガを負わせてしまった場合,過失傷害罪や重過失傷害罪が成立する可能性はあり得ます。

正当防衛である

→自らの意思で,相手に暴行したり傷害を負わせたりした場合でも,相手の違法な行為から自分を防衛するために行ったケースでは犯罪が成立しないことがあります。正当防衛と呼ばれるものです。
あくまで自分の身を守るために行ったのであれば,正当防衛に当たるとの主張が適切になるでしょう。

暴行傷害事件と示談

暴行傷害の事件では,事後の対応として示談を行うことが非常に有力です。
そこで,示談がなされた場合の効果や,具体的な示談の方法を整理しましょう。

①示談の効果

・刑事事件化しない
→捜査機関が捜査を開始する事態になる前に示談が成立すれば,捜査が開始されることなく終了するため,刑事事件化しないことが見込まれます。

・早期釈放されやすい
→身柄拘束された事件の場合,示談が成立すれば,身柄拘束を継続する必要がないと判断され,早期釈放されやすくなります。

・不起訴処分になりやすい
→示談が成立し被害者からの許し(宥恕)が得られれば,その事情を考慮した刑事処分となるため,不起訴処分になる可能性が非常に高くなります。

②示談の方法

当事者間で連絡を取り合う手段がない場合

捜査機関(警察や検察)に対して,被害者との示談を希望したい旨申し入れることが必要になります。
もっとも,当事者間での直接の連絡を認めてはもらえないため,捜査機関へ示談を申し入れる場合には,弁護士に依頼をして,弁護士限りでの連絡をさせていただきたい旨申し入れることが適切です。
捜査機関から被害者に連絡を取り,示談の申し入れがあったことを伝えてもらった上で,被害者から弁護士と連絡を取り合うことの了承が得られれば,示談交渉の開始ができます。

当事者間で連絡を取り合う手段がある場合

第三者が間を取り持ってくれる,被害者が当事者同士の連絡を了承してくれるなど,当事者間で連絡を取り合う手段がある場合は,捜査機関に申し入れることなく,直接被害者との示談交渉を行う方法もあり得るでしょう。
捜査機関に申し入れを行うのは,示談交渉のテーブルに乗ってくれるかどうかを確認するために最も適切な手段だからというのみなので,被害者が示談交渉のテーブルに乗ってくれることが分かっていれば,そのステップを挟む必要は必ずしもありません。

もっとも,既に刑事事件化している場合には,基本的に捜査機関への申し入れから入るのが適切でしょう。
刑事事件化している場合,被害者が警察に捜査を求めている,ということであるため,警察を挟まず直接被害者とコンタクトを取る事が不適切になりやすいからです。
刑事事件化している状況では,連絡を取り合う手段がない場合と同様に,弁護士に依頼の上で弁護士を通じて捜査機関に連絡を入れてもらうようにしましょう。

③示談金や示談条件の一般的内容・相場

示談金の相場は,事件の内容や傷害結果の程度によって様々ですが,以下のような水準は一つの目安でしょうか。

・素手素足による暴行事件:10万円程度
・素手素足の暴行で打撲が生じた傷害事件:20~30万円程度

上記はあくまで一例ですが,目安とすることの多い水準とは指摘できるでしょう。
実際の示談金額は,個別の事情や内容を踏まえ,当事者間で協議することになります。

また,示談金以外の示談条件としては,今後の接触を防ぐための条件を設けることが多く見られます
例えば,現場になったお店や駅などの利用を制限する,連絡先を消去する,偶然見かけても声掛けをしない,といったものです。
被害者側の今後の安心を確保する目的で,このような条件を設けることは非常に有力でしょう。

暴行・傷害事件に強い弁護士をお探しの方へ

暴行傷害事件は,当事者間で早期に解決できれば迅速な終結が見込める場合も少なくありません。
もっとも,事件の性質上,当事者間の言い分が大きく対立するケースが多く,第三者を交えない解決は容易でないことも多数見られます。
刑事手続への対応も含め,暴行傷害事件の解決には弁護士へのご相談,ご依頼の検討をお勧めいたします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

お問い合わせ

法律相談のご希望はお気軽にお問い合わせください
※お電話はタップで発信できます。メールは問い合わせフォームにアクセスできます。