
このページでは,風俗トラブルの逮捕に関して,刑事弁護士が徹底解説します。逮捕の可能性はどの程度あるか,逮捕を避ける方法はあるか,逮捕された場合に釈放を目指す方法はあるかなど,対応を検討する際の参考にしてみてください。

目次
風俗トラブルで逮捕される可能性
風俗トラブルの場合,逮捕される可能性は決して高くはありません。適切な対応ができれば,逮捕されずに済むことが多いと言っても過言ではないでしょう。
具体的な理由としては,以下のような点が挙げられます。
風俗トラブルで逮捕されない理由
1.性的サービスが前提となっている
2.店舗が間に入ることが多い
3.客観的証拠に乏しい
【1.性的サービスが前提となっている】
性犯罪は比較的逮捕されやすい傾向にあると言えますが,性犯罪で逮捕がなされやすいのは,同意していない性的行為を強いられる被害者のダメージが非常に重大である,という点に大きな理由があります。
大きなダメージを受けた被害者を保護する必要があるとともに,そのような行為に及んだ被疑者を放置しているわけにはいかない,という判断で逮捕に踏み切るのです。
一方,風俗店は,キャストが客に対して性的なサービスを行うためのお店です。そのため,キャストと客との間では,一定の性的行為を行うことが当然に合意されているということになります。被害者であるキャスト側にとって性的行為自体がNGではない,という点は非常に大きな特徴と言えます。
このような事情から,同じ性犯罪であっても,風俗トラブルの場合にはキャスト側のダメージの内容・程度や,客の行為の危険性は限定的であると評価されやすい傾向にあります。そのため,逮捕が必要との判断も少なくなりやすいのです。
もっとも,客による違反行為の程度があまりに著しい場合には,キャスト側のダメージも大きく,客を放置しているわけにいかなくなるため,逮捕の可能性は高くなり得るでしょう。
【2.店舗が間に入ることが多い】
風俗トラブルの場合,トラブルの事実を把握した段階で店舗の責任者が間に入ることが通常です。多くの場合,店舗の担当者がキャストの代わりとなって,その後の当事者間のやり取りを進めることになるでしょう。
また,客がキャストの個人情報を把握していることはほとんどなく,客としては,店舗の人物を介する方法でしかキャストと話し合うことはできません。
そのため,風俗トラブルの事件では,当事者間が接触する可能性が非常に低い傾向にあり,逮捕の必要性がそれほど高くないと判断される背景にもなっています。
【3.客観的証拠に乏しい】
逮捕は,刑事事件の捜査に際して法律上認められた手続ですが,捜査機関としてもむやみに逮捕するわけにはいきません。それは,逮捕された側の不利益が極めて大きいためです。後で誤認逮捕だと問題になれば,国家賠償などの形で法的責任を追及されかねません。
そのため,実際に逮捕する事件は,犯罪を裏付ける相応の根拠があることが必要とされやすいところです。
この点,風俗トラブルの場合,犯罪の裏付けとなる客観的証拠に乏しいことが非常に多い傾向にあります。そうすると,犯罪捜査に際して逮捕に踏み切る判断も難しくなりやすいため,逮捕されないケースが多くなります。
逮捕の種類・方法
法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。
①現行犯逮捕
現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。
典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。
ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所のそれぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。
なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。
準現行犯逮捕が可能な場合
1.犯人として追いかけられている
2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている
3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある
4.身元を確認されて逃走しようとした
ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能
②通常逮捕(後日逮捕)
通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。
裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。
通常逮捕の要件
1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。
2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。
通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。
ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要
③緊急逮捕
緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。
緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。
緊急逮捕の要件
1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う
緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。
緊急逮捕と現行犯逮捕の違い
現行犯逮捕 | 緊急逮捕 | |
逮捕状 | 不要 | 逮捕後に請求が必要 |
一般人の逮捕 | 可能 | 不可能 |
逮捕後の流れ
逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。
逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。
ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される
逮捕による不利益
逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。
①社会生活を継続できない
逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります。
また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。
②仕事への影響
逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。
また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。
③家族への影響
逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。
このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。
④報道の恐れ
刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。
万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。
⑤前科が付く可能性
逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。
風俗トラブルで逮捕を避ける方法
①キャスト側との解決
逮捕を回避する最も端的な方法は,当事者間での解決です。当事者間でトラブルが解決すれば,捜査機関が犯罪捜査を行う必要はなくなり,捜査の手段として逮捕する必要もなくなります。
そのため,まずは相手方当事者であるキャスト側との解決ができるのであれば,早期円満な解決を目指すことが有力な方法になるでしょう。
②現場に警察を呼ぶ
逮捕は,逃亡や証拠隠滅を防ぐ目的で行われるものであり,逃亡や証拠隠滅が見込まれない場合には,逮捕しないという選択が有力になります。
この点,自分から警察を呼び,事情聴取等の捜査を求めた場合,その人物がその後に逃亡したり証拠隠滅を試みたりする可能性は非常に低い,と評価することが通常です。そのため,自ら警察を呼ぶ行為は,自分を逮捕する必要がない,ということを知ってもらう方法として有力とも言えるでしょう。
もっとも,自分から警察を呼ぶ行為は,自分から捜査のきっかけを作る行為でもあることには注意することが望ましいでしょう。特に,相手方が警察を巻き込むつもりではなかった場合,自分が警察を呼ばなければ当事者間で早期解決していたにもかかわらず,警察を呼んだばかりに早期解決ができなくなってしまう可能性も否定できません。
警察を巻き込む動きを取る場合は,キャストや店舗側の意向を十分に把握した上で行うことをお勧めします。
③捜査協力を尽くす
既に警察等の捜査が行われている場合には,捜査協力に努めることで逮捕の回避を目指す方法が有力です。
一般的に,捜査協力の姿勢を見せる被疑者と捜査を拒否する被疑者を比較すれば,捜査協力をする被疑者の方が逮捕の必要性は低いと評価されます。なぜなら,捜査協力と証拠隠滅は両立しづらく,証拠隠滅の恐れが低いと考えられるためです。
捜査に協力する態度は,警察官の対応が穏やかになるなど,捜査手続の負担軽減にもつながる可能性があるため,心がけて損のないものということができるでしょう。
風俗トラブルの逮捕は弁護士に依頼すべきか
風俗トラブルで逮捕を防ぐ場合には,早期に弁護士へ依頼し,適切な弁護活動を行ってもらうことをお勧めします。
まず何より,風俗トラブルの解決に必要な示談のため,示談交渉の専門家である弁護士の存在は非常に重要となります。早期に適切な内容で示談が成立すれば,逮捕の回避はほぼ確実に実現できるでしょう。
風俗トラブルの場合,示談交渉の相手方となる店舗の担当者は,キャストを守るという意味もあって非常に高圧的,好戦的な態度を見せてくることが珍しくありません。そのような相手に,当事者自身が冷静で合理的な対応を尽くすのは至難の業と言わざるを得ません。
この点,風俗トラブルの解決に精通した弁護士へ依頼することで,円滑な示談による逮捕回避が容易になるでしょう。
また,弁護士に対応を委ねることによって,周囲への発覚を防ぎながら逮捕回避を図ることができる,という点も大きなポイントです。
風俗トラブルの場合,逮捕を回避したいのはもちろんですが,逮捕回避とともにトラブルが周囲に発覚しないということが非常に重要です。逮捕が防げたとしても,風俗店で本番トラブルを起こした,と周囲に知られては,対応は失敗と言わざるを得ないでしょう。
この点,弁護士に依頼をすれば,基本的に弁護士が窓口に立ってくれるため,トラブルの事実が周囲に発覚する可能性が極めて低くなります。
風俗トラブルの逮捕に関する注意点
①その場で金銭を支払う行動について
風俗トラブルでは,その場で直ちに示談金の話になり,その足で金銭を引き出して支払う,という流れとなる事例も相当数見られます。店舗側としては,最も取りはぐれるリスクの低い動きとして,その場で金銭を支払うよう求めることも少なくありません。
もっとも,その場で金銭を支払う方法での解決はお勧めできません。なぜなら,金銭を支払ったから直ちに解決する,直ちに逮捕されなくなる,という関係にはないためです。
当事者間で紛争解決を確認する際には,後で蒸し返しされることがないよう,その内容を書面化することが一般的です。特に,風俗トラブルで互いに相手を信頼することは容易でないため,風俗トラブルの解決には書面化が不可欠でしょう。
しかしながら,その場で金銭を支払って解決しようとすると,十分な書面化ができず,紛争の蒸し返しを防ぐことができません。最悪の場合,支払った事実すら争われる可能性を残すことになります。
なお,店舗によっては,金銭を受け取った際に作成する書面の書式を要している場合もあります。もっとも,その内容が法的に十分なものであることはほとんどありません。少なくとも,客側に配慮した内容の書式であると期待できるケースはまずないでしょう。
風俗トラブルでは,金銭を支払っての解決が有力ではありますが,金銭を支払う以上は,蒸し返しを防ぐための形式をしっかり取るようにしましょう。
ポイント
その場で金銭を支払っても直ちに解決するわけではない
後の蒸し返しを防ぐために適切な書面化をするべき
②店舗への個人情報の流出
風俗トラブルが発生した場合,店舗側の運用として,健康保険証などの個人情報の提供を求め,その写しを取得するということが多く行われます。店舗側には自分の個人情報が伝わっていることが珍しくありません。風俗トラブルの逮捕を防ぐ観点では,この点に十分な配慮をすることが望ましいでしょう。
例えば,キャストや店舗に対してあまりに不適切な対応をすれば,警察への被害申告を誘発する結果になり,最悪の場合には逮捕のきっかけとなる可能性も否定できません。
店舗に伝わっている個人情報は,場合によっては捜査や逮捕のために用いられる可能性もあり得るため,十分に注意しましょう。
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藤垣法律事務所代表弁護士。岐阜県高山市出身。東京大学卒業,東京大学法科大学院修了。2014年12月弁護士登録(67期)。全国展開する弁護士法人の支部長として刑事事件と交通事故分野を中心に多数の事件を取り扱った後,2024年7月に藤垣法律事務所を開業。弁護活動のスピードをこだわり多様なリーガルサービスを提供。