【盗撮事件の逮捕】逮捕を避ける方法は?何もしないと逮捕される?

このページでは,盗撮事件の逮捕に関して,刑事弁護士が徹底解説します。逮捕の可能性はどの程度あるか,逮捕を避ける方法はあるか,逮捕された場合に釈放を目指す方法はあるかなど,対応を検討する際の参考にしてみてください。

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盗撮事件で逮捕される可能性

盗撮事件は,逮捕されることの珍しくない事件類型です。具体的な理由としては,以下のような点が挙げられます。

盗撮事件で逮捕の可能性がある主な理由

1.被害者保護のため

2.証拠隠滅を防ぐため

3.被害の拡大を防ぐため

1.被害者保護のため

盗撮事件は,特定の被害者を対象に,その衣服の下などの撮影を試みる事件です。そのため,加害者は少なからず加害者に性的関心を持っている,と理解されることになります。
そうすると,盗撮事件が現行犯で発覚した現場で逮捕しないと,被害者に対するより過激な性犯罪が行われかねないと評価されることがあります。また,加害者の身柄を確保しておかないと,被害者に対する報復行為が心配される場合もあり得ます。

盗撮事件は現行犯で問題になりやすいことから,現に被害に遭っている被害者を保護する必要が高いと考えられやすい傾向にあります。

2.証拠隠滅を防ぐため

盗撮事件が現行犯で発覚した場合,加害者の手元には盗撮に用いた撮影機器が残っている可能性が高く見込まれます。そのため,撮影機器やその中の記録を確保するため,逮捕を行って証拠隠滅を防ぐ必要が高いと考えられる傾向にあります。

盗撮事件では,証拠が多くは残りづらく,撮影道具や撮影内容が唯一の客観的証拠となる場合も少なくないため,現場での証拠隠滅を防ぐ必要が大きいと考えられています。

3.被害の拡大を防ぐため

盗撮事件は,1回だけ発生しているということがあまりなく,いわゆる余罪の存在が見込まれる事件類型です。そのため,発覚した事件の前にも盗撮行為が起きており,発覚後にも類似の盗撮行為が起きかねない,と評価されやすい傾向にあります。

そこで,捜査中に更なる盗撮被害が起きることを予防するため,逮捕をして物理的にその可能性を防ぎながら捜査するケースが見られます。

逮捕の種類・方法

法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。

①現行犯逮捕

現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。

典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。

ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所それぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。

なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。

準現行犯逮捕が可能な場合

1.犯人として追いかけられている

2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている

3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある

4.身元を確認されて逃走しようとした

ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能

②通常逮捕(後日逮捕)

通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。

裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。

通常逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。

ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要

③緊急逮捕

緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。

緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。

緊急逮捕の要件

1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う

緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。

緊急逮捕と現行犯逮捕の違い

現行犯逮捕緊急逮捕
逮捕状不要逮捕後に請求が必要
一般人の逮捕可能不可能

逮捕後の流れ

逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

逮捕から起訴までの流れ

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。

逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。

ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される

逮捕による不利益

逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。

①社会生活を継続できない

逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります

また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。

②仕事への影響

逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。

また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。

③家族への影響

逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。

このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。

④報道の恐れ

刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。

万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。

⑤前科が付く可能性

逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。

盗撮事件で逮捕を避ける方法

①現行犯逮捕を避ける方法

盗撮事件の逮捕は,現行犯逮捕によって行われることが非常に多いところです。そのため,盗撮事件で逮捕を避けるためには,まず現場での現行犯逮捕を防ぐことが肝要です。
ひとたび適法な現行犯逮捕が成立してしまえば,その後に身柄を拘束し続けることが正当化できてしまい,ズルズルと釈放から遠ざかってしまいます。一方,最初の段階で適法な現行犯逮捕ができなければ,その後の逮捕は通常逮捕とならざるを得ませんが,逮捕状が必要である点や一般私人にはできない点など,現行犯逮捕にはない複数のハードルが生じるため,逮捕の可能性が大きく下がりやすいと言えるでしょう。

この点,現行犯逮捕を防ぐためには,現場にとどまり続けないことが最重要と言えます。現行犯逮捕をするためには,犯行と逮捕の場所に開きがあってはならないため,現場から離れたところで適法な現行犯逮捕を行うことは困難です。
ただし,その場を離れるときには,可能な限り穏やかな方法であることが必要です。暴力を伴うなど,他人に危害を加えながらその場を離れる行為は,別の犯罪に該当する可能性があるため,元も子もなくなってしまいます。

現行犯逮捕を避けるためには,穏やかにその場を去る,という動きを試みるようにしましょう。

ポイント
現行犯逮捕を避けるためには,現場にとどまり続けないこと
もっとも,穏やかな方法で現場を去ることが必要

②呼び出しを受けた場合の方法

現行犯逮捕されなかった盗撮事件の場合,後日に警察などから呼び出しを受ける可能性があります。このときには,後日の通常逮捕を避けることが必要になります。

この点,警察などの捜査機関としては,必ずしも逮捕しなければ捜査できないわけではないため,逮捕の必要が大きい場合に逮捕を選択する,という方針であることが一般的です。そのため,逮捕を避けるためには,警察などに「逮捕の必要が大きい」と評価されないことが重要となります。

具体的には,捜査には全面的に協力する態度を示すことが適切です。呼び出された日時には確実に出頭する,犯罪の証拠と思われるもの(撮影機器やデータなど)は自発的に提出するなど,逮捕しなくても犯罪捜査が円滑に進むと理解してもらえるような対応を尽くすようにしましょう。

ポイント
通常逮捕を避けるためには,逮捕の必要が大きくないと評価してもらうべき
捜査には全面的に協力する態度を示す

③事件発覚前の場合

盗撮事件が捜査機関に発覚する前(又は発覚しているかどうかが不明)の段階では,後に事件が発覚したときの逮捕(通常逮捕)を回避することが重要です。

この点では,自分から捜査機関に対して自首を試みる手段が一案です。自首した人物がその後に逃亡や証拠隠滅をする可能性は低い,との理解が通常でであるため,捜査機関から求められて初めて出頭するのではなく,その前に自分から自首ができれば,逮捕の可能性は非常に低くなるということができます。

盗撮事件の場合,事前に自首がなされたケースで逮捕することはほとんどないと考えてよいでしょう。

ポイント
事件発覚前に自首した場合,逮捕の可能性はほとんどなくなる

盗撮事件の逮捕は弁護士に依頼すべきか

盗撮事件では,逮捕前後いずれの局面でも弁護士への依頼が有益になりやすいということができるでしょう。

逮捕を防ぎたい場合には,捜査機関への出頭や自首など,状況に応じた適切な手段で逮捕の回避を目指すことが適切ですが,個別具体的な判断を弁護士抜きで行うことは難しいところです。また,実際に逮捕を防ぐための行動を起こすときも,弁護士に依頼することでより円滑に,適切に進めることができるでしょう。

また,逮捕後においては,早期釈放を目指すことが重要な動きになります。盗撮事件の場合,逮捕されてもその後速やかに釈放される場合が決して珍しくはありません。
ただ,実際に釈放されるかどうかは,逮捕後に適切な対応ができるかによる面が大きいため,弁護士と協同して対応を行うことが望ましいでしょう。

逮捕は,強制的に人の身体を拘束する手続であるため,そのルールや要件が厳格に定められています。そのため,逮捕を回避するためには,逮捕に関する法律の定めを把握した上での対応が適切となります。また,全ての逮捕が法律の定めに沿って行われているわけではなく,厳密には違法の可能性がある逮捕もなされ得るため,違法な逮捕行為を許さない対応も必要です。
盗撮事件の逮捕をめぐる対処については,弁護士への依頼をお勧めします。

盗撮事件の逮捕に関する注意点

①現行犯逮捕の回避が困難な場合

盗撮事件の逮捕は現行犯逮捕が大多数ですが,現行犯逮捕は犯罪が起きた後すぐに行われるという点に大きな特徴があります。そのため,逮捕の回避を試みようとしても,既に現行犯逮捕が成立していれば,逮捕の回避ができない場合もあり得ることに注意が必要です。

もっとも,現行犯逮捕されたとしても,それで終わりではありません。速やかな釈放の可能性はまだ残っている可能性が高く,速やかに釈放されれば悪影響は最小限にとどめることができます。

現行犯逮捕の回避が現実的に困難な場合は,早期釈放を目指すことに注力するのが重要です。

②自首のリスク

自首は,逮捕を防ぐために有力な行動の一つですが,自ら捜査機関に犯罪事実を申告する行動であるため,結果が裏目に出るリスクもあります。それは,自首をしなければ捜査機関に発覚する可能性がなかった場合です。

この場合,自首をしたばかりに自分から捜査や刑事処分を招く結果になる可能性があり得ます。自首をしなければ捜査を受けることも刑事処分を受けることもなかった,という場合,自首が適切だったと言えるかは難しいところです。

自首には,自ら捜査を招くという逆効果を生むリスクがあることをあらかじめ注意しておくのが適切です。具体的に自首を検討するときには,弁護士へのご相談をお勧めします。

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