ひき逃げと当て逃げの違いは?刑罰は?逮捕や前科を避けるための対応方法・弁護活動などを刑事弁護士が解説

●ひき逃げ・当て逃げとはそれぞれ何か?

●ひき逃げ・当て逃げの刑罰はどのくらいか?

●ひき逃げ・当て逃げは逮捕されるか?

●ひき逃げ・当て逃げは起訴されるか?

●ひき逃げ・当て逃げで起訴されると実刑になるか?

●ひき逃げ・当て逃げは弁護士に依頼すべきか?

といった悩みはありませんか?

このページでは,ひき逃げ・当て逃げの事件でお困りの方に向けて,ひき逃げや当て逃げに関する法律の内容刑事手続,弁護活動などを解説します。

ひき逃げ・当て逃げの意味

①交通事故加害者が負う2つの義務

ひき逃げ・当て逃げは,いずれも自動車運転中に交通事故加害者となった者が,自らの義務を果たさなかったことを言います。
そこで,ひき逃げや当て逃げを理解するためには,交通事故に際して発生する自動車運転者の義務を把握することが必要です。

救護義務
自動車運転中に事故が発生し,被害者がケガを負ったと思われるとき,自動車運転者は,直ちに車を停めて被害者を救護し,道路の危険を防止するなどの措置を取らなければなりません。
この義務を救護義務といいます。

報告義務
交通事故が発生した場合,事故車両の運転者は,現場の警察官や最寄りの警察署に交通事故の事実を報告しなければなりません。
具体的には,事故発生の日時,場所,死傷者の数や程度,損壊した物や程度等の報告が必要です。
自動車運転者が負うこの義務を報告義務といいます。

②ひき逃げとは

ひき逃げは,法律で定められた語句ではありませんが,人身事故発生時,自動車運転者が救護義務に違反したことを指すのが一般的です。
つまり,被害者をひいておきながら,その場から逃げることを指して,俗にひき逃げと呼ばれています。

③当て逃げとは

当て逃げも,ひき逃げと同じく法律で定められた語句ではありませんが,こちらは,物損事故において警察への報告義務を怠った場合を指すのが一般的です。
他の車両や物に当てておきながら,その場から逃げた場合に,当て逃げと呼ばれるものに該当することとなります。
例えば,無人の車両や塀などに衝突した事故では,ケガした人がいないため救護義務は発生しませんが,報告義務は変わらず発生するため,その場から離れてもひき逃げになることはないものの当て逃げにはなってしまうでしょう。

ポイント
ひき逃げ:人身事故における救護義務違反
当て逃げ:物損事故における報告義務違反

ひき逃げ・当て逃げの刑罰

①ひき逃げの場合

救護義務違反の刑罰は,「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」とされています。
また,負傷者の負ったケガの原因が運転者の運転行為にある場合,刑罰は加重され,「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」とされます。

また,運転者が自分の運転行為によって被害者をケガさせた場合,過失運転致傷罪が同時に成立するのが一般的です。
この場合,2つの犯罪について刑罰を受ける可能性がありますが,刑罰の重さは上限の1.5倍に加重されます。そのため,実際の刑罰は最長で15年の懲役ということになります。

②当て逃げの場合

報告義務違反の刑罰は,「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金」とされています。

報告義務の違反自体は,救護義務違反に比べて軽微な刑罰の対象ではあります。

ひき逃げ・当て逃げで逮捕される可能性

ひき逃げや当て逃げは,事故発生時にその場を逃げて(離れて)しまっている事件であるため,類型的に逃亡の恐れが高いと判断されることが多くなります。
そのため,逮捕される可能性が比較的高い事件類型と指摘することができるでしょう。
特に,ひき逃げ(=救護義務違反)の場合,人の生命・身体を危険にさらした責任の重さもあり,より逮捕されやすい傾向にあります。

ひき逃げや当て逃げの事件が発生し,逮捕が懸念される場合は,自ら警察に出頭(自首)するという選択肢も有力です。
自ら出頭をすることで,逃亡や証拠隠滅の意思がないことを捜査機関に表明すれば,逮捕の必要がないとの判断が期待できる場合もあり得ます。
また,もし逮捕を防ぐことはできなかったとしても,最終的な刑事処分の軽減には大きくつながりやすいでしょう。

なお,自ら警察に出頭をしても,自首が成立するかどうかはケースによるところです。
自首とは,犯罪事実が捜査機関に発覚する前に,自ら捜査機関に対して罪を申告することを言います。そのため,自分が出頭するより前に警察が事故の存在を把握している場合,法的には自首に該当しません。

もっとも,自首が成立するかしないか,という点は,個別具体的な処分や取り扱いに直接影響するわけではないでしょう。ここで重要な点は,自ら捜査機関に出頭して自分の犯罪事実を述べている,という点であり,それがたまたま警察に発覚した後だから逃亡の恐れが大きくなる,というわけではないからです。

ポイント
逮捕の可能性は高い傾向(その場を逃げる事件であるため)
逮捕が懸念される場合には,自ら出頭することで逮捕回避を目指すのも有力

ひき逃げ・当て逃げと起訴・不起訴

ひき逃げや当て逃げの事件は,その犯罪事実が明らかであれば,起訴される方が一般的でしょう。
特に人身事故を伴うひき逃げ事件は,重大な事件であるため,起訴を想定する必要が生じやすいです。

そこで,不起訴を目指すためには積極的な試みが必要になりやすいですが,不起訴と判断され得るための活動や判断材料としては,以下のものが挙げられます。

①示談による被害者の宥恕

ひき逃げ・当て逃げともに,違反行為そのものに被害者はいませんが,その原因となった交通事故には被害者が存在します。
そのため,被害者との間で解決を試み,被害者の宥恕(刑罰を求めないという意思)をいただくことができれば,不起訴処分の可能性は高くなるでしょう。
もっとも,ここでの示談は,被害者が刑事処罰を求めるかどうか,という問題であって,保険会社が対応してくれる金銭面の問題ではありません。被害者の宥恕が獲得したい場合には,保険会社の対応とは別に自分から被害者にアプローチをかける必要があります。

②事件の規模が小さい

ひき逃げや当て逃げの原因となった交通事故が非常に小規模であれば,それに応じてひき逃げや当て逃げの刑事処分も小さなものになるのが一般的な取り扱いです。
そのため,加害車両の速度が低かった,被害者の受傷や被害物の損傷が小さかった,被害者側の過失がなければより結果は小さかったはずであるといった場合には,不起訴処分の可能性が高くなり得ます。

ひき逃げ・当て逃げで起訴された場合の刑罰

①ひき逃げ(救護義務違反)の場合

救護義務違反は重大な犯罪類型に当たるため,原因となった交通事故の大きさによっては初犯でも実刑判決の対象となる可能性があります。
結果の大きさ以外には,運転行為の危険性,逃走後に証拠隠滅行為に及んだかどうか,事後的に被害者側へ謝罪や賠償を尽くしたか,といった点が,刑罰の重さを判断する材料になりやすいです。

②当て逃げ(報告義務違反)の場合

物損事故に伴う報告義務違反は,救護義務違反ほどの重大な取り扱いの対象とはなりづらいでしょう。罰金刑となり,略式手続で終了することもあります。略式手続で終了すれば,公判(公開の法廷での裁判)を受ける必要はなくなります。
もっとも,被害の規模があまりに大きかったり,他の重大な交通違反が伴っていたりすると,公判請求され,公開の裁判を受けなければならない場合も考えられます。

ポイント
起訴されやすい事件類型。確実ではないが示談すれば不起訴の確率は上昇
ひき逃げは初犯でも実刑判決となり得る事件。当て逃げは罰金となる例も多数

ひき逃げ・当て逃げの弁護活動

ひき逃げ・当て逃げの事件においては,以下のような弁護活動が考えられます。

①逮捕や勾留の回避

ひき逃げ事件や当て逃げ事件では,漫然と対応していると逮捕勾留されるものの,適切な対応を取ることでこれを回避できる場合が考えられます。
先に解説した自首(出頭)をはじめ,逃亡や証拠隠滅の恐れが低いことを明らかにする活動をすることで,逮捕や勾留の回避を目指すのは有力でしょう。
具体的な方法・内容は,個別のケースにおうじて弁護士へご相談されることをお勧めします。

②早期釈放

逮捕勾留されたケースで,できるだけ速やかな釈放を目指す場合にも,弁護士への依頼が有力です。
弁護士から不服の申立てをしたり,担当検察官と協議を試みたりすることで,より速やかな釈放が実現できる場合も考えられます。
また,直ちに釈放が難しい場合にも,個別事件に応じた釈放時期の見込みや,釈放に必要な手段などを把握することも可能です。

③示談交渉

認め事件の場合,処分の軽減のためには被害者との示談交渉が非常に重要です。
被害者が許しており,刑事処罰を希望しない場合には,処分は劇的に軽減することが多いでしょう。
もっとも,ひき逃げや当て逃げの事件では,被害者側の感情的な問題もあり,なかなか簡単にはお話合いができないことも少なくありません。
ひき逃げ・当て逃げの事件で被害者側との示談交渉を目指したい場合には,弁護士への依頼をお勧めいたします。

④不起訴の獲得

ひき逃げ・当て逃げの事件では,弁護士による法律的な主張で不起訴処分を獲得できる場合があります。その代表例が,事故発生の認識がない(又は,認識があったとは断言できない)場合です。

救護義務や報告義務は,自動車運転者が交通事故の発生を認識していないと発生しません。事故の発生に気づいていなければ,救護や報告は行いようがないためです。
この点,事故の程度が非常に小さい場合には,運転者が接触に気づくことのできない場合があります。このケースでは,当然ながら救護や報告はしないため,後日になって救護義務違反や報告義務違反の疑いをかけられることになります。
これに対して,弁護士から,本件では救護義務や報告義務が発生していなかったことを法律的に主張し,検察官を納得させることで,不起訴処分を獲得できる場合も多数あります。

身に覚えのない事故でひき逃げや当て逃げを疑われている場合には,弁護士に依頼して法律的な主張を行ってもらうことを検討しましょう。

ひき逃げ・当て逃げの刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

ひき逃げ・当て逃げ事件は,その場を離れてしまっているため,単純な交通事故よりも身柄拘束(逮捕・勾留)の必要が大きいと判断される可能性があります。
もっとも,事故の規模が限定的である場合など,ケースによっては必ずしも逮捕や勾留が必要というわけではなく,適切な対応によって最悪の事態を回避できる類型でもあります。
事件に応じた適切な対応は,刑事弁護に精通した弁護士への相談・依頼が適切です。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

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