このページでは,特殊詐欺事件の示談についてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。
示談の方法,内容に加え,当事務所で弁護活動を行う場合の費用も紹介していますので,示談を弁護士に依頼するときの参考にしてみてください。
【このページで分かること】
特殊詐欺事件における示談の重要性
特殊詐欺事件で示談するタイミング
特殊詐欺事件で示談をする方法
特殊詐欺事件の示談金相場
特殊詐欺事件の示談内容・条項
特殊詐欺事件の示談で注意すべきこと
特殊詐欺事件の示談に必要な費用
目次
特殊詐欺事件における示談の重要性
特殊詐欺事件とは,親族や公共機関の職員を名乗るなどして被害者を信じ込ませ,現金やキャッシュカードといった金銭的価値のあるものを詐取するものを言います。いわゆる「オレオレ詐欺」が代表例ですが,その手口は非常に種類が増えており,総称して「特殊詐欺」と呼ばれます。
特殊詐欺事件は,詐欺事件の一種であり,被害者の財産に損害与える事件です。そのため,示談によって被害者の損害を回復させることは刑事処分との関係で非常に重要となります。
特殊詐欺事件は悪質性が高いため,初犯でも実刑判決を受けて刑務所に入ることも珍しくはありません。特に,被害者の損害が大きいと,これを踏まえて長期間の実刑判決を受ける恐れもあります。
執行猶予判決であれば社会生活が継続できますが,実刑判決では刑務所に収容されてしまい,生活は一変せざるを得ません。
この点,示談によって被害者の損害を回復させることができれば,刑事処分の結果に直接大きな影響を及ぼすことが通常です。刑事処分は,ほかならぬ被害者の損害を踏まえて決定するものであるため,加害者自身がその損害を軽くしているのであれば,これも踏まえて処分を軽くするよう配慮するのが一般的な取り扱いとされています。
特殊詐欺事件は,示談を行わずに漫然と処分を受けると,実刑判決の可能性も高く非常に不利益が大きくなってしまう事件類型です。そのため,少しでも処分を軽減し,実刑判決を避けるために,示談は非常に重要な行動と言えるでしょう。
ポイント
特殊詐欺事件は重大犯罪であるため,実刑判決の可能性も高い
示談によって実刑判決を避ける試みが重要
特殊詐欺事件で示談するタイミング
一般的に,刑事事件で示談を試みるタイミングは早ければ早いほど望ましいと考えられます。早く示談ができれば,それだけ示談による処分軽減の効果が早く生じることになり,場合によっては早期釈放にも至る可能性があるためです。
特殊詐欺事件でも,自分の関与した事件が1件だけであれば,速やかに示談を試み,少しでも早期の合意を目指すことが望ましいでしょう。
しかし,特殊詐欺事件は余罪のあることが非常に多いところ,余罪のあるケースで示談を速やかに行うのは,大きなリスクが付きまといます。それは,余罪を含めた全額の賠償が経済的に困難な場合です。
特殊詐欺事件の場合,1件ごとの損害額が大きくなりやすいという特徴があります。1件あたり100万円単位の損害額となることも全く珍しくありません。そうすると,余罪も含めて示談の必要な件数が多くなると,必要な示談金額が飛躍的に大きくなってしまう可能性があるのです。
この場合,1件目の示談を全力投球をして早期に終了させると,2件目以降の示談を試みる余力がなくなってしまい,全体として不利益が大きくなってしまうことになりかねません。
一方で,組織詐欺事件で余罪があったとしても,どの事件が捜査や処分の対象になるのかは事前にはわかりません。示談が可能なのは捜査を受けている事件(=被害者が判明している事件)ですが,被害者の判明した事件が何件あって被害総額がいくらかは,処分が終わらないと分からないのです。
そのため,自分が心当たりのある事件で示談を早期に行ったとしても,その事件は捜査の対象ではなく,実際にはほかの事件のために示談金を支払うべきであった,という可能性があり得ます。特殊詐欺事件は,類型的に早期示談のリスクが大きくなりやすい傾向にあると言えます。
そのため,特殊詐欺事件の示談は,検察による起訴がされ尽くした後に行うことが非常に多く見られます。
事前に全件の示談ができる場合を除き,示談で起訴を防ぐことは困難であるため,起訴される件数と損害額を見定めた後に,起訴された事件に対して可能な限りの示談を試みる,ということです。
起訴が防げない以上,実刑判決の回避に全力を尽くす動き方ということもできるでしょう。
ポイント 示談のタイミング
余罪がなければできる限り早期に試みる
全件の支払ができない場合,起訴がすべて終わった後に試みる
特殊詐欺事件で示談をする方法
特殊詐欺事件における示談は,捜査機関に対して示談を申し入れる方法により行うことが適切です。いきなり被害者側と直接の連絡を取るのではなく,捜査機関の担当者から被害者側に問い合わせてもらい,示談の意向を確認してもらう,という流れを取ることが一般的です。
事件類型的に,加害者が被害者の個人情報を把握している場合が少ないこともあり,被害者の連絡先を獲得するための試みとしても必要な動きになります。
もっとも,捜査機関は,加害者自身に被害者側の連絡先を伝えることは通常しません。そのため,加害者自身が示談を申し入れてきても,被害者との間を取り持つことはしないのが一般的です。
示談の申し入れを行いたい場合は,自分で直接行うのではなく,弁護士に依頼し,弁護士を窓口にして進めることが適切となります。被害者との連絡先の交換も,弁護士限りという形を取ることを約束すれば,捜査機関に間を取り持ってもらうことが可能です。
示談交渉の流れ
1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する
特殊詐欺事件の示談金相場
①支払うべき金額
複数人で行われる特殊詐欺事件では,加害者全員が被害者に対して被害額の全額を返済する義務を負います。被害者の損害額が100万円であれば,被害者は加害者全員に100万円を請求する権利を持ち,そのうち誰かから100万円を受領することができれば,他の加害者に対する請求権を失うことになります。
加害者の一部が全額を賠償した場合,後は加害者間の負担割合の問題になるのが通常です。
そのため,特殊詐欺事件の示談金としては,被害者の被った被害の全額が基準になるでしょう。
②加害者の得た利益との関係
特殊詐欺事件の場合,詐欺組織の中心的な立場でない限り,アルバイトのような役割にとどまり,回収した金銭の一部を報酬として受領しているに過ぎないことがほとんどです。そうすると,被害額は非常に大きくても,加害者が詐欺事件で得た利益はごく一部にとどまることが多数に上ることとなります。
そのため,加害者自身がごく一部の利益しか得られていない場合,被害者にはいくらの示談金を支払うべきか,という問題が生じ得ます。
この点,加害者自身の得た利益が一部にとどまるのであっても,被害者に対しては被害全額の支払を行うことが適切です。
例えば,特殊詐欺事件で150万円の被害が生じ,加害者はその1割である15万円の分け前を受け取ったとすると,加害者が詐欺事件で得た利益は15万円にとどまりますが,被害者に対しては150万円全額を支払うべきということになります。15万円を超える部分は自己負担になりますが,支払う義務がある以上はやむを得ないところです。
特殊詐欺事件では,自分の得た経済的利益よりも非常に大きい金額を支払う必要が生じやすい点に注意が必要です。
③全額の支払ができない場合
複数の特殊詐欺事件に関与している場合,1件ごとの被害額が大きくなりやすい関係で,被害の全額を支払うことができない場合も少なくありません。その場合には,全件が起訴された後,その被害金額の割合に応じて案分し,各被害者に公平な支払いを行うことが適切でしょう。
例えば,4件の特殊詐欺事件に関与し,被害金額がそれぞれ100万円,200万円,300万円,400万円となる場合,総額で1000万円の支払が必要です。しかし,加害者が100万円しか持っていないケースでは全額の支払ができないため,100万円を1:2:3:4に案分し,それぞれ10万円,20万円,30万円,40万円の支払とする,という手段が有力になります。
もちろん,全額の賠償に至っていないため,支払ったことの効果は限定的にならざるを得ません。しかし,一部の被害者のみに偏った支払を行うのはその有効性に法的問題が生じかねないため,支払える限りの金銭を公平に支払うのが最も合理的でしょう。
ポイント
支払うべき金額は被害全額
自分の得た分け前が一部であっても被害全額の支払義務を負う
全額の支払ができない場合は,被害額に応じて案分する
特殊詐欺事件の示談内容・条項
【確認条項】
加害者の被害者に対する支払金額を確認する条項です。
【給付条項】
確認条項に記載した金銭の支払をどのように行うのかを定める条項です。
【清算条項】
示談で定めた条項以外には,当事者間に権利義務の関係がないことを定める条項です。清算条項を取り交わせば,その後に相手から金銭を追加請求される可能性は法的になくなります。
【宥恕条項】
宥恕(ゆうじょ)条項とは,被害者が加害者を許す,という意味の条項です。
示談が刑事処分に有利な影響を及ぼすのは,基本的にこの宥恕条項があるためです。被害者が加害者を許している,という事実が,刑事処分を劇的に軽減させる要素となります。
特殊詐欺事件の示談で注意すべきこと
①清算合意や宥恕の獲得が容易でない場合
特殊詐欺事件の場合,複数の事件に対応しなければならないことが多く,1件ごとの損害額も大きいため,被害の全額を返済しきれないことが少なくありません。そして,被害全額を返済しきれない場合,示談条項として非常に重要な「清算条項」及び「宥恕条項」の取り決めができないケースが増えやすいところです。
被害者の立場としては,被害の一部しか回復できていないのに,それ以上加害者に請求をしないという合意は非常にしづらい上,そのような状態で加害者を許すという判断をすることはなおさら困難と言えます。被害の全額を回復させられない場合には,特に清算条項や宥恕条項の獲得が難しくなりやすいと踏まえておきましょう。
また,もし被害全額の支払ができたとしても,宥恕条項が獲得できるとは限りません。被害全額の支払は加害者の義務であり,いわば当然すべきことをした,というのみですから,その支払の対価として宥恕条項を取り交わす必要はないのです。「全額支払うのは当たり前のことなのに,どうして支払を受けるために加害者を許さなければならないのか」という反論を受ける可能性が大いにあり得ます。
この点,清算や宥恕の獲得が容易でない場合であったとしても,被害を可能な限り回復させるのが有益である,ということには変わりないと考えて差し支えありません。もちろん,清算条項があれば金銭問題は解決しますし,宥恕条項があれば刑事処分は大きく軽減しますが,それらがなければ効果がない,ということでは決してありません。
被害者の経済的な損害を少しでも多く回復させることは,特殊詐欺事件の刑事責任を軽減させる効果を確かに持つ行動だと理解し,できるだけの支払に努めましょう。
ポイント
一部しか支払えない場合,清算条項の取り交わしは難しくなりやすい
全部支払えても,宥恕条項が獲得できるとは限らない
もっとも,できる限り支払うべきであることは同様
②全財産を費やしても実刑判決になる場合
特殊詐欺事件は非常に重大な事件類型のため,初犯でも実刑判決を受け,刑務所に収容されることを強いられる場合は珍しくありません。そして,それは全財産を費やして被害弁償を行ったケースでも生じ得ます。
実刑判決になる可能性が高いケースとしては,以下のような事情のある場合が挙げられます。
実刑判決の可能性が高くなる事情
1.特殊詐欺における役割
→組織の中心的な立場にあるほど実刑判決の可能性が高くなる
2.関与した事件の数
→多いほど実刑判決の可能性が高くなる
3.被害金額
→総額が大きいほど実刑判決の可能性が高くなる
4.被害弁償の程度
→弁償できた割合が小さいほど実刑判決の可能性が高くなる
5.前科前歴
→近い時期に同種事件の前科前歴があると実刑判決の可能性が高くなる
特殊詐欺事件の示談に必要な費用
藤垣法律事務所で特殊詐欺事件の弁護活動を行う場合,必要な費用のモデルケースとしては以下の内容が挙げられます。
(身柄事件の場合)
①活動開始時
着手金 | 33万円 |
着手金(身柄対応) | 22万円 |
実費相当額 | 1万円 |
合計 | 56万円 |
身柄事件の場合,56万円のお預かりにて活動の開始が可能です。
②弁護活動の成果発生時
不起訴処分 | 33万円 |
示談成立 | 22万円(※) |
出張日当・実費 | 実額 |
活動の成果が生じた場合に限り,55万円(実費日当を除く)の費用が発生します。
③示談金
特殊詐欺事件の場合,被害金額に応じた示談金が想定されます。
④合計額
上記①~③の合計額が必要な費用負担となります。
目安となる費用総額(身柄事件にて100万円で示談成立+不起訴の場合)
弁護士費用:56万円+55万円=111万円(※)
示談金:100万円
計:211万円
※身柄事件では,接見を要する場合の出張日当が別途発生し得ます。
刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。
お問い合わせ
法律相談のご希望はお気軽にお問い合わせください
※お電話はタップで発信できます。メールは問い合わせフォームにアクセスできます。