このページでは,傷害事件の示談についてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。
示談の方法,内容に加え,当事務所で弁護活動を行う場合の費用も紹介していますので,示談を弁護士に依頼するときの参考にしてみてください。
【このページで分かること】
傷害事件で示談は必要か
傷害事件における示談のメリット
傷害事件で示談をする方法
傷害事件の示談金相場
傷害事件の示談内容・条項
傷害事件の示談で注意すべきこと
傷害事件の示談に必要な費用
目次
傷害事件で示談は必要か
傷害事件では,円滑な解決のために示談が必要であると理解するのが適切です。
傷害事件とは,他人に暴行を加えた結果,傷害結果を負わせる事件を言います。殴ってケガをした,という場合はもちろん,大音量で睡眠障害に陥らせる場合なども含むもので,広く「他人の生理的機能に障害を与えること」があれば傷害罪に該当します。
そうすると,傷害事件の場合,必ず相手になる被害者が存在し,被害者には何らかの具体的なダメージが生じているということになります。そして,傷害事件に対する処分は,被害者に対するダメージがどの程度のものか,加害者がダメージをどのくらい補填したのか,していないのか,といった点が考慮されるものとなります。
この点,加害者が被害者のダメージを補填する最も有効な手段が,示談です。示談金の支払で経済的に被害者の損害を埋め合わせるとともに,その内容を被害者も納得(合意)しているとなれば,被害者のダメージは大部分が補填されたという理解になることが一般的でしょう。
そのため,傷害事件の処分は,示談が直接の影響を大きく及ぼす性質のものであり,傷害事件では示談が必要と理解するべきところです。
ポイント
傷害事件は被害者に具体的な損害が生じている
加害者が損害を補填したかどうかが処分に大きく影響する
損害を補填する最も有効な手段が示談
傷害事件における示談のメリット
①逮捕を防ぐことができる
傷害事件は,逮捕されることが比較的多い事件類型です。傷害事件は,当事者間に強い感情的な対立があるか,加害者が一方的に被害者への強い感情を抱いているか,という経緯で起きることが通常ですが,そのような状況を放置すると,トラブルが再発したり深刻化したりする恐れが大きいと考えられます。
そのため,当事者を物理的に引き離し,二次被害を防ぎながら捜査をする,という方針が取られやすいのです。
逮捕された場合,最大72時間の身柄拘束の後,勾留が決定されればさらに10日間,勾留延長となれば加えて最大10日間という,長期間の身柄拘束も懸念されます。20日を超える身柄拘束となれば,日常生活への影響は避けられません。
この点,示談が成立した傷害事件で逮捕を行うことは通常考えにくいということができます。示談が成立している以上,当事者を物理的に引き離さなくてもトラブルが再発したり深刻化したりする可能性がないためです。
傷害事件が逮捕の恐れもある事件類型であることを踏まえ,早期の示談を試みることが有益でしょう。
②刑事裁判を防ぐことができる
傷害事件の場合,犯罪の立証ができないケースを除いて,基本的に起訴することが通常です。被害者に暴行し,傷害結果を負わせた以上,その責任を刑罰という形で取らせる運用が一般的とされます。
起訴されてしまうと,刑事裁判を受け,無罪にならない限り裁判所から刑罰を受けることになります。こうなれば,前科(=刑罰を受けた経歴)が付くことは避けられません。前科に伴う数々の不利益が,その後の生活に悪影響を及ぼす可能性も高くなってしまいます。
この点,傷害事件で示談が成立した場合,刑事裁判には至らない方が多数です。傷害事件は,特定の被害者に対する事件であるため,その被害者が刑事裁判を希望しない以上,刑事裁判を行う必要がない,との判断になりやすいのです。
刑事裁判を受けるのは,その手続に応じる負担自体も決して軽くはないため,刑事裁判を防げることのメリットは非常に大きいと言えるでしょう。
③金銭問題が解決できる
傷害事件が起きた当事者間では,刑罰の問題と同時に金銭問題も発生します。被害者に具体的な傷害結果が生じている以上,治療費もかかりますし,精神的苦痛に対する慰謝料も想定されるところです。
そして,この金銭問題は,加害者が刑罰を受けたとしても解決するものではありません。刑罰の問題(刑事事件)と金銭問題(民事事件)は独立した別々のものであるため,刑罰を受けた上で,さらに金銭を請求されるという可能性も十分に存在します。
この点,傷害事件の示談は,傷害事件によって被害者が受けた損害についての金銭的解決もあわせて行う内容になります。示談を取り交わした後には,互いに金銭を請求しない(請求する権利がない),という合意をするため,示談後に被害者から金銭請求を受ける可能性がなくなるのです。
傷害事件では,金銭問題が必ずついてくるため,示談によって金銭問題も同時に解決できることは大きなメリットでしょう。
ポイント 示談のメリット
傷害事件は逮捕の恐れが小さくない
→示談をすれば逮捕を防げる
傷害事件は基本的に起訴される
→示談すれば起訴を回避でき,刑事裁判を防げる
傷害事件では金銭問題が同時に生じる
→示談によって金銭問題を含めた解決ができる
傷害事件で示談をする方法
傷害事件で示談を試みる場合,まずは弁護士に依頼することが必要です。示談は,自分で直接行うのではなく,代理人となる弁護士を窓口にして行うことになります。
一応,両当事者が了承すれば,当事者間で直接示談交渉を行うことも不可能ではありません。しかし,傷害事件では被害者側が加害者と直接示談交渉したいと希望するとは考え難く,当事者が直接交渉を行うのはトラブルの原因になりかねないので,当事者間の直接交渉は基本的には不適切と考えるのが合理的でしょう。
弁護士が依頼を受けた場合,警察や検察の捜査担当者に問い合わせ,示談を希望したい旨を被害者に伝えてもらうよう依頼します。捜査担当者が被害者の意思を確認し,被害者が了承すれば,連絡先を交換するなどして直接のやり取りに移行することが可能となります。
示談交渉の流れ
1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する
なお,捜査機関が間を取り持つのは,加害者が弁護士に依頼し,弁護士から動きを取った場合のみです。捜査機関は,トラブル回避のため当事者同士を引き合わせることは拒否するので,その意味でも弁護士に依頼することが必要になります。
傷害事件の示談金相場
傷害事件の示談金は,暴行の具体的な内容や被害者に生じた傷害結果などによって大きく左右されます。
そのため,具体的な金額水準は個別のケースによりますが,最も代表的である「素手素足の暴行により加療2週間程度の打撲を負わせた」というような例では,20~30万円程度が有力な目安になりやすいでしょう。
ただし,これはあくまで暴行の内容や傷害結果を限定した場合の目安にとどまります。特に,重大な傷害結果が生じてしまった場合は,百万円単位の示談金が発生することも考えられるため,個別事件における金額の目安は弁護士に相談することお勧めします。
一般に,示談金額を左右する事情としては,以下のような点が挙げられます。
示談金額を左右する事情
1.暴行の内容
→凶器を用いている場合,身体生命の危険が大きな暴行の場合には,高額になりやすい
2.傷害結果
→傷害が重い場合や,後遺障害が残る場合には,高額になりやすい
3.被害者の業務への影響
→被害者の収入額に直接の影響が生じている場合,その分高額になりやすい
傷害事件の示談内容・条項
①一般的な示談条項
【確認条項】
加害者の被害者に対する支払金額を確認する条項です。
【給付条項】
確認条項に記載した金銭の支払をどのように行うのかを定める条項です。
【清算条項】
示談で定めた条項以外には,当事者間に権利義務の関係がないことを定める条項です。清算条項を取り交わせば,その後に相手から金銭を追加請求される可能性は法的になくなります。
金銭問題を同時に解決できるのは,示談の中に清算条項を設けるためです。
【宥恕条項】
宥恕(ゆうじょ)条項とは,被害者が加害者を許す,という意味の条項です。
示談が刑事処分に有利な影響を及ぼすのは,基本的にこの宥恕条項があるためです。被害者が加害者を許している,という事実が,刑事処分を劇的に軽減させる要素となります。
加害者にとっては,示談=宥恕の獲得と理解してもよいかもしれません。
②傷害事件で特に定めやすい条項
【接触禁止】
加害者が被害者に対して接触を図ることを禁止する条項です。
家族間や仲直りした間柄などの例外的なケースを除き,傷害事件の当事者間は示談後に一切接触しないことが適切です。そのため,傷害事件の示談では,互いのために双方が相手に接触しないことを合意する場合が多く見られます。
相手が接触禁止を求めた場合,接触禁止に応じるデメリットは基本的にないため,この点は示談に盛り込むことが適切でしょう。
【現場への接近禁止】
事件の現場になった場所の近辺に接触することを禁止する条項です。偶然にでも加害者と会うことがないよう,被害者から求められることがあります。
具体的な接近禁止の対象としては,以下のような例が挙げられます。
接近禁止の例
1.事件の発生した店舗や施設
2.事件の発生した電車
3.路上で事件が起きた場合の現場周辺
もっとも,これらの接近禁止は,あまり広範囲に定めてしまうと加害者側の負担が過度に大きくなる可能性もあり得ます。具体的に接近禁止を合意する場合には,無理が生じないよう条件を慎重に検討するのが適切です。
傷害事件の示談で注意すべきこと
①感情的な請求を受ける場合
特にケンカのような態様で起きた傷害事件では,被害者側が強烈な悪感情を持っていることが珍しくありません。そして,その感情は示談条件の要求という形でぶつけられることも多く見られます。
非常に大きな金額の示談金を求められる,といったことが代表例ですが,事件の内容を客観的に踏まえた金額を大きく超えた請求がなされ,「これに応じないのであれば示談しない」という強いスタンスで応じられる場合がある,というのが傷害事件の特徴の一つでしょう。
この場合,基本的には金銭面で譲歩するかしないか,という選択肢にならざるを得ません。受けている請求が過大である場合,過大な請求であることを踏まえながら受け入れるか,過大な請求だから断るか,という二択になりやすいでしょう。
過大な請求であると断る場合,結果的に示談は成立しないことも考えられます。これは,示談が当事者間の契約である以上,やむを得ないと言わざるを得ないところです。
②捜査担当者から示談を勧められる場合
傷害事件では,捜査機関(特に担当検察官)から示談を勧められる場合もあり得ます。捜査機関としては,当事者間で解決できるのであればその方が望ましいと考えることが多いため,刑罰だけで終了させるのではなく示談の道がないか,という検討を行うことが少なくありません。
そして,担当検察官から示談を積極的に勧められた場合は,可能な限り示談の試みを行うことをお勧めします。なぜなら,示談を勧める検察官の真意は,「示談が成立すれば速やかに不起訴処分にできる」というものであることが非常に多いためです。不起訴処分となれば,刑罰を受けることなく手続が終了するため,そのメリットは非常に大きなものとなります。
また,担当検察官が示談を勧める場合,事前に被害者側の意向を確認していることも少なくありません。そのため,勧めに応じて示談を試みたものの,結局被害者に拒否されて終わった,ということはあまりないでしょう。
ポイント
傷害事件の被害者からは,感情的に過大な請求がされることもある
担当検察官から示談を勧められた場合には,できる限り示談を試みる
傷害事件の示談に必要な費用
藤垣法律事務所で傷害事件の弁護活動を行う場合,必要な費用のモデルケースとしては以下の内容が挙げられます。
①活動開始時
着手金 | 33万円 |
実費相当額 | 1万円 |
合計 | 34万円 |
一般的な在宅事件では,34万円のお預かりにて活動の開始が可能です。
②弁護活動の成果発生時
不起訴処分 | 33万円 |
示談成立 | 22万円(※) |
出張日当・実費 | 実額 |
活動の成果が生じた場合に限り,55万円(実費日当を除く)の費用が発生します。
③示談金
傷害事件の場合,素手素足での暴行で加療2週間程度の打撲を負わせたケースであれば,20~30万円の示談金が目安として想定されます。
④合計額
上記①~③の合計額が必要な費用負担となります。
目安となる費用総額(30万円で示談成立+不起訴の場合)
弁護士費用:34万円+55万円=89万円
示談金:30万円
計:119万円
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