このページでは,暴行事件の示談についてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。
示談の方法,内容に加え,当事務所で弁護活動を行う場合の費用も紹介していますので,示談を弁護士に依頼するときの参考にしてみてください。
【このページで分かること】
暴行事件における示談のメリット
暴行事件で示談は必要か
暴行事件で示談をする方法
暴行事件の示談金相場
暴行事件の示談内容・条項
暴行事件の示談で注意すべきこと
暴行事件の示談に必要な費用
目次
暴行事件における示談のメリット
暴行事件で示談をすることには,以下のように多数のメリットがあります。
①前科の回避
暴行事件では,犯罪事実の存在が明らかであれば,被害者が特に許している場合を除いて起訴されることが一般的です。起訴された場合には,刑罰を受けることになるため,前科(刑罰を受けた経歴)が付いてしまいます。
この点,起訴を防いで前科が付かないようにするための最も有力な手段が,示談です。示談が成立する場合,被害者が加害者を許すという意思を表明することになるため,被害者が許した事実を踏まえて不起訴になる可能性が非常に高くなります。
被害者が許すのは,基本的に示談が成立した場合のみです。暴行事件で捜査が行われるのは,被害者が捜査や処罰を求めているからであるため,何もしなければ被害者は許さないままとなってしまいます。
示談は,被害者の許しを通じて前科を防ぐ唯一の手段として,大きなメリットのある行動と言えるでしょう。
ポイント
示談のない暴行事件は起訴されるのが一般的
示談をすれば,不起訴の可能性が非常に高くなる
②逮捕の回避
暴行事件は,被害者の身体に危害の生じる恐れが高い類型であるため,被害者を危険から守るために加害者を逮捕することが多いものでもあります。当事者間の感情的なトラブルであることも多いことから,事件の大小にかかわらず加害者を逮捕して物理的に引き離す,という取り扱いになることも少なくありません。
そして,逮捕をされると,同居家族や仕事の関係者に具体的な影響が生じかねない上,刑事施設に収容されることで重大な精神的苦痛を強いられることになります。逮捕のデメリットは極めて大きなものです。
この点,示談の成立した暴行事件は,その後に逮捕されることがほとんどないということができるでしょう。示談が成立している以上,その後に逮捕をして被害者を加害者から守る必要がないためです。
逮捕を防ぎ,円滑に事件を解決するための手段として,示談のメリットは非常に大きいと考えてよいでしょう。
ポイント
暴行事件は逮捕される場合が多い
示談が成立すれば,逮捕の必要はほとんどなくなる
③早期釈放
暴行事件で既に逮捕や勾留という身柄拘束をされている場合,早期釈放の手段として示談は非常に有力です。
逮捕をされた場合,まず最長72時間拘束された後,10日間の勾留,さらには最長10日間の勾留延長と,20日を超える期間の身柄拘束を強いられる可能性も否定できません。勾留延長までがすべて行われてしまう場合,加害者の生活はそれまでとは一変しているでしょう。
一方,少しでも早期に釈放されれば,それだけ生活への悪影響も小さく済むことが多いはずです。
この点,逮捕の後に示談が成立した場合,勾留をするか,さらには勾留延長をするか,という局面において,釈放の判断を促す非常に大きな材料になります。逮捕後に勾留されず釈放された場合は,最長72時間の身柄拘束で済むことになるため,生活への影響も最小限に抑えられるでしょう。
④被害者との解決
暴行事件は,犯罪であるという側面のみでなく,当事者間の法律問題(民事事件)の側面も持つトラブルです。具体的には,被害者が加害者に対して,精神的苦痛への慰謝料などを金銭で支払うよう請求することが可能とされます。
そして,この金銭請求の権利は,加害者が刑罰を受けても影響されません。そのため,加害者としては,刑罰を受けた上でさらに被害者から金銭を請求される可能性もあり得ます。
この点,示談が成立した場合,被害者との法律問題も同時に解決することとなります。そのため,示談成立後に被害者から金銭を請求される可能性はなくなり,当事者間でのトラブル解決にもつながるでしょう。
ポイント
被害者から金銭を請求される可能性がある
示談が成立すれば,被害者からの金銭請求もなくなる
暴行事件で示談は必要か
暴行事件の場合,疑われている内容に間違いがなければ,処分軽減のためには示談が必要と考えるべきです。
事件の内容が間違いない場合(認め事件の場合),処分の重さは被害者の意向を反映する形で決められます。被害者が処罰を望めば処罰が科されやすく,逆に被害者が処罰しないことを望めば処罰が科されづらくなるのです。
そのため,被害者に処罰を望まない意思を表明してもらうために,その唯一の手段である示談を行う必要がある,ということになります。
一方,疑われている内容が事実でない,という場合(否認事件の場合)には,示談を行うかどうかに慎重な判断が望ましいでしょう。
示談の基本的な内容は,被害者への謝罪と賠償です。これを受けた被害者が加害者を許すことで,示談が刑事処分の軽減につながるというわけです。
そのため,被害者への謝罪と賠償を行うべきでない場合,謝罪と賠償を内容とする示談を行うのは不合理です。最悪の場合,疑いが事実でない,という主張の信用性に悪影響を及ぼす可能性もあります。疑いが事実でないのに被害者への謝罪と賠償をするのは矛盾するからですね。
ただし,否認事件であっても,解決を急ぐ目的で示談を行うことはあり得ます。その場合は,示談の内容に配慮する必要があるため,必ず専門家の意見を仰ぐようにしましょう。
ポイント
認め事件では示談が必要
否認事件では示談するか慎重な判断をすべき
暴行事件で示談をする方法
暴行事件における示談は,捜査機関(警察や検察)から被害者に連絡を入れてもらう方法で試みることが一般的です。捜査機関担当者が被害者に示談への意向を確認し,示談交渉を了承する場合には連絡先の交換に至る,という流れが通常です。
しかし,捜査機関がこのような取り扱いをするのは,加害者が弁護士を通じて示談を試みる場合に限られます。弁護士を間に挟まない限り,示談交渉を開始することはできません。
暴行事件の場合,当事者間に大きな感情的対立の生じていることが多いため,捜査機関は当事者を直接引き合わせることはできないと考えます。そのため,弁護士を窓口にすることを条件に,示談交渉を認めるという運用をしているのです。
弁護士が示談交渉を試みる場合の主な流れは,以下の通りです。
示談交渉の流れ
1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する
暴行事件の示談金相場
暴行事件の示談金は,概ね10~30万円ほどが目安になりやすいでしょう。
暴行事件は,被害者がケガをしていないことが前提であるため,被害者がケガをしている傷害事件などと比べて,示談金は低額になる傾向があります。
個別の示談金は当事者間の協議で決定しますが,示談金額に影響する事情としては以下のような点が挙げられます。
示談金に影響する事情
1.暴行の経緯
→被害者に落ち度がなければ増額要因に,被害者にも落ち度があれば減額要因になる
2.暴行の内容
→危険性の高い行為であれば増額要因に,けがをする可能性のない行為であれば減額要因になる
3.ケガのなかった理由
→被害者が回避した結果であれば増額要因に,加害者の行為が原因であれば減額要因になる
暴行事件の示談内容・条項
①一般的な示談条項
【確認条項】
加害者の被害者に対する支払金額を確認する条項です。
【給付条項】
確認条項に記載した金銭の支払をどのように行うのかを定める条項です。
【清算条項】
示談で定めた条項以外には,当事者間に権利義務の関係がないことを定める条項です。清算条項を取り交わせば,その後に相手から金銭を追加請求される可能性は法的になくなります。
【宥恕条項】
宥恕(ゆうじょ)条項とは,被害者が加害者を許す,という意味の条項です。
示談が刑事処分に有利な影響を及ぼすのは,基本的にこの宥恕条項があるためです。被害者が加害者を許している,という事実が,刑事処分を劇的に軽減させる要素となります。
②暴行事件で特に定めやすい条項
【接触禁止】
加害者が被害者に対して接触を図ることを禁止する条項です。
暴行事件の当事者になった間柄の場合,その後に被害者が加害者と接触を希望することはほとんどありません。そのため,被害者からは,加害者が接触することのないよう約束してほしいと求められることが多く見られます。
接触禁止に応じるデメリットは基本的にないため,この点は示談に盛り込むことが適切でしょう。
【現場への接近禁止】
事件の現場になった場所の近辺に接触することを禁止する条項です。偶然にでも加害者と会うことがないよう,被害者から求められることがあります。
具体的な接近禁止の対象としては,以下のような例が挙げられます。
接近禁止の例
1.事件の発生した店舗や施設
2.事件の発生した電車
3.路上で事件が起きた場合の現場周辺
もっとも,これらの接近禁止は,あまり広範囲に定めてしまうと加害者側の負担が過度に大きくなる可能性もあり得ます。具体的に接近禁止を合意する場合には,無理が生じないよう条件を慎重に検討するのが適切です。
暴行事件の示談で注意すべきこと
①言い分の食い違いが起きやすい
特にケンカのように感情的な対立が原因となった暴行事件の場合,互いに冷静さを欠く中での出来事であるため,内容の記憶も冷静にはできていないことが多くなりがちです。
そうすると,当事者間で事件の内容に関する記憶が大きく食い違っており,相手は実際よりも自分の落ち度を大きいものと主張してくる,という場合も珍しくありません。
言い分が食い違う場合,示談金額を含めた条件をどのように定めるかは個別のケースによりますが,少なくとも言い分が食い違う可能性をあらかじめ想定しておくことは大切です。
実際に言い分が食い違った場合も,十分にあり得ることだと理解できていれば,冷静に柔軟な対応をすることも容易になります。
②将来に傷害結果が出たときの補償
暴行事件の場合,被害者の身体には支障が生じていないことが前提ですが,被害者からは「将来身体に支障があった場合には金銭で補償してほしい」と求められる場合があり得ます。
現実的には,時間が経ってから初めて身体に支障が生じることは考えにくいため,例外的なケースを除いては現実に問題になることはないでしょう。ただ,「今」示談ですべてを解決するとなると,被害者側に漠然とした不安が生じてしまうことも納得はできるところです。
そのため,基本的には「将来,暴行行為による傷害結果が明らかになった場合には別途協議する」といった形で,身体の支障が分かったときに改めて話し合う余地を残すことが合理的な解決方法になるでしょう。
ポイント
事実関係の言い分が食い違う可能性を事前に想定しておく
傷害結果が将来判明した場合に配慮した示談もあり得る
暴行事件の示談に必要な費用
藤垣法律事務所で暴行事件の弁護活動を行う場合,必要な費用のモデルケースとしては以下の内容が挙げられます。
①活動開始時
着手金 | 33万円 |
実費相当額 | 1万円 |
合計 | 34万円 |
一般的な在宅事件では,34万円のお預かりにて活動の開始が可能です。
②弁護活動の成果発生時
不起訴処分 | 33万円 |
示談成立 | 22万円(※) |
出張日当・実費 | 実額 |
活動の成果が生じた場合に限り,55万円(実費日当を除く)の費用が発生します。
③示談金
暴行事件の場合,10~30万円の示談金が目安として想定されます。
④合計額
上記①~③の合計額が必要な費用負担となります。
目安となる費用総額(10万円で示談成立+不起訴の場合)
弁護士費用:34万円+55万円=89万円
示談金:10万円
計:99万円
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