このページでは,ストーカー規制法違反事件の示談についてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。
示談の方法,内容に加え,当事務所で弁護活動を行う場合の費用も紹介していますので,示談を弁護士に依頼するときの参考にしてみてください。
【このページで分かること】
ストーカー規制法違反事件で示談は必要か
ストーカー規制法違反事件における示談のメリット
ストーカー規制法違反事件で示談をする方法
ストーカー規制法違反事件の示談金相場
ストーカー規制法違反事件の示談内容・条項
ストーカー規制法違反事件の示談で注意すべきこと
ストーカー規制法違反事件の示談に必要な費用
目次
ストーカー規制法違反事件で示談は必要か
ストーカー規制法違反事件の場合,解決のために示談は必要不可欠と理解するのが適切です。
そもそも,ストーカー規制法違反となる行為は何かといえば,「つきまとい」や「GPSによる位置情報の取得」を同一人物に対して反復して行うことです。恋愛感情が満たされなかったことへの怨恨の感情を満たす目的でこれらの行為をするのは,被害者の精神的苦痛が非常に大きいのみでなく,被害者への更なる危害も懸念されるため,ストーカー規制法で特に禁じられ,刑罰の対象となっているのです。
そのため,ストーカー規制法違反とされる行為は,特定の被害者に向けた行為であって,その責任の重さは,被害者に与える損害の大きさに応じて定められることが一般的です。被害者が大きな苦痛を受けているほど,ストーカー規制法違反の責任も重くなります。
この点,ストーカー規制法違反で示談をすることは,被害者に生じた損害の大部分が回復されたことを意味します。そして,示談によって被害者の損害が回復されている場合,これに応じて犯罪の責任の重さも大きく減少するのが通常です。
被害者の損害を事後的に回復する手段は示談以外になく,示談で被害者の損害を回復することの効果は極めて大きいため,ストーカー規制法違反事件を解決するためには示談が必要と考えるべきでしょう。
ポイント
ストーカー規制法違反の責任の重さは,被害者の苦痛の大きさに影響される
示談により被害者の苦痛が回復されるため,責任の軽減につながる
ストーカー規制法違反事件における示談のメリット
①逮捕を防げる
ストーカー規制法違反の事件が捜査される場合は,ストーカー行為が執拗に繰り返されている,と理解された場合であることが一般的です。
ストーカー規制法違反の事実を警察が把握した場合,まずは,警告や禁止命令という方法で加害者にそれ以上のストーカー行為をしないよう求めることが通常です。その後にトラブルが起きなければ,捜査を受けることなく終了することが見込まれます。
一方,警告や禁止命令にもかかわらずストーカー行為が継続された場合には,犯罪捜査に踏み切らなければならない,という判断になります。警告や禁止命令ではやめてくれなかった以上,より強い手段に出なければならないためです。
そうすると,ストーカー規制法違反の捜査は,開始された段階では既にストーカー行為を強制的に食い止める必要が大きい状況にある,という場合が非常に多い傾向にあります。そのため,確実にストーカー行為を防ぐ方法として,逮捕勾留といった身柄拘束が行われやすいです。
この点,ストーカー規制法違反の事件で示談が成立した場合,その後に逮捕されることは考えにくくなるでしょう。なぜなら,被害者と示談が成立している以上,被害者に対する危害が生じる可能性はなくなったと理解できるためです。被害者に対する危害が生じないのであれば,危害を防ぐために逮捕する必要もなくなるわけです。
ストーカー規制法違反では逮捕されやすい傾向があることを踏まえると,示談によって逮捕を防げるメリットは非常に大きなものと言えるでしょう。
ポイント
警告や禁止命令を無視してのストーカー行為は逮捕の可能性が高い
示談が成立することで,逮捕されることは考えにくくなる
②前科を防げる
ストーカー規制法違反の場合,被害者が特に加害者を許しているケースを除き,起訴されて何らかの刑罰を受けることが通常です。刑罰の内容としては,一般的には罰金刑などが多く見られますが,悪質なケースでは罰金にとどまらず,公開の裁判を受けて執行猶予又は実刑というより重い刑罰の対象になる可能性も否定できないところです。
この点,ストーカー規制法違反の刑事処分は,被害者の意向に極めて大きく左右されます。被害者が加害者への刑罰を希望しなければ,刑罰が科される可能性は非常に低くなるでしょう。
そして,被害者が加害者への刑罰を希望しない,ということになる唯一の手段が,示談です。示談が成立する場合,被害者は加害者の刑罰を望まないという意向を示すことになるため,刑罰が科される可能性は極めて低くなります。
ポイント
ストーカー規制法違反事件は,被害者が許している場合を除き起訴されやすい
示談が成立すれば,被害者が許していることを明らかにできる
③当事者間の紛争が解決できる
ストーカー規制法違反事件に至る当事者間では,長期間に渡る複数のトラブルが起きていることが通常です。類型的に,見知らぬ人同士の間で起きることがほとんどない事件のため,当事者間でトラブルがあり,それによって感情的な対立の生じたことが,ストーカー行為につながっている,という場合が大半です。
そのため,ストーカー規制法違反事件の当事者間では,ストーカー行為以外にも解決すべき紛争がいくつも存在することが多く見られます。
この点,示談を行うときには,これらの当事者間の紛争を一挙に解決する形を取ることが通常です。両当事者にとって,ストーカー行為だけを解決しても当事者間の紛争全体の解決にはならないので,ストーカー行為のみを切り取って示談し,それ以外の紛争を棚上げにするということはあまりありません。
そうすると,ストーカー規制法違反事件で示談をすることによって,当事者間の紛争は一通り解決することになります。示談後に紛争の火種が残らないのは,大きなメリットと言えるでしょう。
ポイント
当事者間には,長期間に渡る複数のトラブルがある
示談によって,すべてのトラブルを一挙に解決できる
ストーカー規制法違反事件で示談をする方法
ストーカー規制法違反事件の場合,当事者間に交友関係があったというケースが多いため,被害者の連絡先や住居などを把握していることが珍しくありません。そのため,示談を試みたいと考えた場合,被害者に直接連絡をすることも不可能ではないでしょう。
しかしながら,被害者への直接の連絡は厳禁です。示談目的であっても,決して行わないようにするべきと考えましょう。
それは,ストーカー規制法違反事件として捜査されている以上,被害者が加害者側からの直接の連絡を受け入れる可能性がないためです。最悪の場合,更なるストーカー行為と判断され,より責任が重くなる恐れも否定できません。
ストーカー規制法違反事件で示談を試みる場合には,弁護士に依頼し,弁護士から捜査機関(警察や検察)の担当者に連絡してもらうのが適切です。連絡を受けた捜査担当者が,被害者に示談の意向を確認し,被害者が了承すれば,弁護士との間で示談交渉を開始することが可能になります。
示談交渉の流れ
1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する
ストーカー規制法違反事件の示談金相場
ストーカー規制法違反事件の示談金は,ケースによりますが30~150万円ほどとされる場合が多く見受けられます。事件類型的に,示談金の幅が非常に大きくなりやすいという特徴があるところです。
示談金額に影響を与える事情や問題点としては,以下のような点が挙げられます。
①当事者間の関係全体の清算となること
ストーカー規制法違反の事件は,それまでに交友関係やトラブルがあった間柄で生じることが通常です。そのため,示談をしようとすれば,これまでの交友関係全体を清算するための話し合いとならざるを得ないことが多いでしょう。
そのため,当事者間の従前の関係が複雑であればあるほど,被害者からは高額の示談金を求められることが増えやすい傾向にあります。「あんなこともされた,こんなこともされた」という具合に,過去のトラブルについても責任を取る内容の示談を求められることは珍しくありません。
ストーカー規制法違反の事件で示談を試みる場合は,ストーカー行為とされたもののみでなく,それまでの一切のトラブルが交渉の対象になりやすい点を想定しておくことが適切です。
示談金額に幅が生じやすいのは,当事者間の関係がケースによって様々であるためです。
②刑罰との関係
ストーカー規制法違反の事件では,想定される刑罰を上回る示談金が発生する場合もある点に特徴があります。
ストーカー規制法に定められている刑罰は,以下の3種類です。
①ストーカー行為をした場合
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
②禁止命令に反してストーカー行為をした場合
2年以下の懲役又は200万円以下の罰金
③禁止命令に違反した場合
6月以下の懲役又は50万円以下の罰金
ストーカー行為があったか,禁止命令の違反があったかによって刑罰の程度が異なりますが,禁止命令違反(③)では罰金が50万円以下,ストーカー行為(①)では罰金が100万円以下と定められているため,100万円を超える示談金になった場合,法律が定める罰金額の上限を超える金銭を支払う必要が生じやすいことになります。
これは,ストーカー規制法違反の責任の重さと比較して支払金額が高すぎる可能性がある,との理解もできるでしょう。
もっとも,これは当事者間の関係をすべて清算するために起きることであり,単にストーカー規制法違反に対する示談金,というだけの意味合いではありません。そのため,金額が法律上の罰金額上限を超えたとしても,直ちに不当という考え方はしなくてもよいでしょう。
法的にも,他のトラブルが別途犯罪に当たる場合,複数の犯罪で処分される可能性があるため,ストーカー規制法違反の罰金額上限を超える刑罰になることも十分に考えられます。その意味でも,示談金額とストーカー規制法の刑罰との関係はそれほど意識する問題ではないと考える方が適切です。
ポイント
当事者間の関係や経緯によって,示談金額は変わりやすい
罰金額の上限を超える示談金になるケースもある
ストーカー規制法違反事件の示談内容・条項
①一般的な示談条項
【確認条項】
加害者の被害者に対する支払金額を確認する条項です。
【給付条項】
確認条項に記載した金銭の支払をどのように行うのかを定める条項です。
【清算条項】
示談で定めた条項以外には,当事者間に権利義務の関係がないことを定める条項です。清算条項を取り交わせば,その後に相手から金銭を追加請求される可能性は法的になくなります。
【宥恕条項】
宥恕(ゆうじょ)条項とは,被害者が加害者を許す,という意味の条項です。
示談が刑事処分に有利な影響を及ぼすのは,基本的にこの宥恕条項があるためです。被害者が加害者を許している,という事実が,刑事処分を劇的に軽減させる要素となります。
②ストーカー規制法違反事件で特に定める条項
【接触禁止】
ストーカー規制法違反は,被害者が加害者からの接触を防ぎたい,と希望しているからこそ,捜査されているものです。そのため,被害者との解決に当たっては,接触禁止の約束をすることが必須とされやすいでしょう。
【立入禁止】
被害者の自宅や職場など,被害者の生活圏への立入を加害者に禁止する条項です。接触禁止をより確実にするため,設ける場合が大多数と考えてよいでしょう。
ただし,立入禁止の範囲が広くなり過ぎると,加害者側のその後の生活に影響しかねないため,範囲や立入方法などの条件を具体的に調整し,互いに了承の可能な内容とすることが肝要です。
【違約金条項】
被害者からは,加害者による接触禁止の約束を信用できない,との意向が示される場合も少なくありません。ストーカー規制法違反の事件は,警告や禁止命令があったにもかかわらずストーカー行為が続いた,というものであることが多数であるため,「警告や禁止命令に従わなかったのに示談内容に従うのか」という不安が被害者側に生じやすいのです。
そのため,接触禁止の約束をより強固なものとするため,約束違反にペナルティを設ける違約金条項を設けるケースも多数あります。「示談内容に反すれば違約金を支払うことになっても構わない」という意思表明によって,被害者側の納得を獲得することを目的とした条項です。
ストーカー規制法違反事件の示談で注意すべきこと
①相手に何かを要求をする交渉ではない
ストーカー規制法違反の事件では,当事者双方に何らかの言い分がある場合がほとんどです。加害者側にも,被害者への不満があるからこそ,ストーカー行為とされる行動に及んだはずです。
しかし,示談交渉の場はその不満を相手にぶつけたり,相手に何かを求めたりするものではない,という点に注意が必要です。示談の目的は,あくまでストーカー行為を被害者に許してもらうことですから,相手に自分の不満をぶつけるような行動は,示談の目的に反する極めて不合理な行為と言えるでしょう。
ストーカー事件として扱われている以上,相手が今後に渡って交友関係を保ちたいと思っている可能性はないと考える必要があります。そのため,示談に際しては少しでも円滑に,穏やかに当事者同士の関係を終了させることを目指しましょう。
②親告罪ではない
ストーカー規制法違反は,従来,親告罪であったため,示談によって告訴が取り消されれば,確実に不起訴となる事件類型でした。しかし,平成28年(2016年)の法改正によって,親告罪ではなくなったため,現在は告訴がなくても事件の起訴が可能です。つまり,告訴がなくても刑罰を受けて前科が付く可能性があります。
そうすると,示談をしても法的には起訴される可能性がゼロにはならない,ということになります。示談をすることで直ちに事件が終了するわけでないことには注意が必要でしょう。
もっとも,現実的には示談が成立したストーカー規制法違反の事件は,不起訴となることが通常です。被害者が起訴を希望しない以上,その意向を尊重して不起訴処分とされる傾向にあります。
ストーカー規制法違反事件の示談に必要な費用
藤垣法律事務所でストーカー規制法違反事件の弁護活動を行う場合,必要な費用のモデルケースとしては以下の内容が挙げられます。
①活動開始時
着手金 | 33万円 |
実費相当額 | 1万円 |
合計 | 34万円 |
一般的な在宅事件では,34万円のお預かりにて活動の開始が可能です。
②弁護活動の成果発生時
不起訴処分 | 33万円 |
示談成立 | 22万円(※) |
出張日当・実費 | 実額 |
活動の成果が生じた場合に限り,55万円(実費日当を除く)の費用が発生します。
③示談金
ストーカー規制法違反事件の場合,30~150万円の示談金が目安として想定されます。
④合計額
上記①~③の合計額が必要な費用負担となります。
目安となる費用総額(50万円で示談成立+不起訴の場合)
弁護士費用:34万円+55万円=89万円
示談金:50万円
計:139万円
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