このページでは,ひき逃げ事件の示談についてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。
示談の方法,内容に加え,当事務所で弁護活動を行う場合の費用も紹介していますので,示談を弁護士に依頼するときの参考にしてみてください。
【このページで分かること】
ひき逃げ事件で示談は必要か
ひき逃げ事件における示談のメリット
ひき逃げ事件で示談をする方法
ひき逃げ事件の示談金相場
ひき逃げ事件の示談内容・条項
ひき逃げ事件の示談で注意すべきこと
ひき逃げ事件の示談に必要な費用
目次
ひき逃げ事件で示談は必要か
ひき逃げ事件では,示談が決定的に重要な意味を持つものであり,示談は間違いなく必要と考えるのが適切です。
前提として,ひき逃げ事件とは,自動車運転中に人身事故を起こしてしまった人が,その場を離れて逃走してしまうものを言います。
自動車の運転中に人身事故が起きた場合,運転者は,直ちに被害者を救護するという法律上の義務を負うところ,この救護義務に違反することを,俗に「ひき逃げ」と呼びます。
ひき逃げ事件は,被害者の生命や身体を危険にさらすのみならず,自動車運転者にとって極めて重要な義務の違反であるため,重大な刑事処罰の対象となることが珍しくありません。
被害者に生じた受傷結果によっては,初犯でも実刑判決となって刑務所に収容される場合はあり得るところです。
また,受傷結果が軽微な事件でも,不起訴となる場合はあまりなく,罰金や執行猶予といった刑罰の対象となることが多数みられる類型です。
この点,示談が成立し,ほかならぬ被害者が加害者を許しているという場合には,加害者に対する処分は劇的に軽減することが通常です。
示談がなければ実刑判決が懸念されるケースであっても,示談が成立した後に実刑判決が言い渡される可能性は極めて低くなります。前科があるなど,他に実刑判決をしなければならない事情がなければ,示談によって実刑判決を回避できることが通常です。
ひき逃げ事件の場合,処分の軽減を目指すときには,まず被害者との示談を目指すことが有力でしょう。
ひき逃げ事件における示談のメリット
①逮捕が回避できる
ひき逃げ事件は,逮捕の可能性が高い事件類型ということができます。その主な理由は,以下の通りです。
ひき逃げ事件で逮捕の可能性が高い理由
1.現場から逃げた事件である
→逃亡の恐れが大きい事件と理解される
2.悪質な事件類型である
→責任の重さを踏まえて逮捕されやすい
3.重大な処罰が予想される
→逮捕しないと,処罰を逃れるための逃亡や証拠隠滅が懸念される
ひき逃げ事件では,類型的に逮捕の恐れが大きいことを踏まえ,まずは逮捕を回避することを目指すのが望ましいでしょう。
この点,逮捕前に示談が成立しているひき逃げ事件では,その後に逮捕される可能性が非常に低くなります。示談が成立した後になって,加害者が逃亡や証拠隠滅を図るとは考えにくいためです。
示談が成立しているかどうかは,逮捕の有無を左右する極めて重要な事情ということができるでしょう。
ただし,ひき逃げ事件は,加害者にとって被害者の所在が分からないことが通常であるため,事前に示談をすることは容易ではありません。具体的な方針については,弁護士との十分な相談を行うようにしましょう。
②長期の勾留が回避できる
ひき逃げ事件で逮捕勾留される状況となった場合,早期釈放によって長期間の勾留を防ぐことが目標となります。
この点,示談の成立は,早期釈放のために極めて重要な材料となるため,示談には長期間の勾留を回避できるメリットがあると言えるでしょう。
示談が成立した場合,その後に重大な刑事処分が科される可能性が低くなる,との理解が一般的です。そのため,処分の重大性を踏まえて勾留し続けておく必要はなくなります。
また,被害者との間で解決している以上,釈放しても被害者と加害者の間でのトラブルの危険は生じないのが通常です。そのため,被害者保護の目的で勾留し続ける必要もなくなります。
したがって,示談が成立すれば,勾留を続ける必要の大部分が失われることになり,早期釈放を促しやすくなるのです。
身柄拘束されたひき逃げ事件の場合,被害者との示談を目指すのは非常にメリットが大きい行動になるでしょう。
③実刑判決が回避できる
ひき逃げ事件は,事故態様や被害者に生じた被害の結果によっては,初犯でも実刑判決の対象となる可能性があります。実刑判決の場合,刑務所に収容され,社会生活を継続することができなくなってしまうため,実刑判決を回避できるかどうかは極めて重要です。
この点,示談が成立したひき逃げ事件で実刑判決になることは通常ありません。特に,初犯であり被害者と十分な内容の示談ができていれば,実刑判決になる可能性は非常に低いでしょう。
実刑判決の回避にこれほど直接の影響を与えられる行動は,示談以外にはありません。そのため,示談は実刑判決の回避に対して極めて大きなメリットのある行動と理解するのが適切です。
ひき逃げ事件で示談をする方法
ひき逃げ事件で示談を試みる場合,捜査機関(警察や検察)を通じて,加害者側の意思を被害者に伝えてもらうことが必要となります。
ただ,被害者側が加害者との直接のやり取りを了承するとは限らず,当事者間では示談交渉が開始できない場合も少なくありません。そのため,弁護士に依頼し,弁護士に間に入ってもらう形で行うのが適切でしょう。
弁護士に依頼した場合には,弁護士から捜査機関に連絡をし,まず弁護士限りで被害者との連絡を取ることができないか,試みることになります。捜査機関担当者が被害者の意向を確認し,弁護士との連絡が可能となれば,連絡先を交換の上で連絡が開始できる,という流れを辿ることになるでしょう。
示談交渉の流れ
1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する
ひき逃げ事件の示談金相場
ひき逃げ事件の場合,被害者は何らかのケガを負っていることになるため,治療費や慰謝料といった損害が発生しています。そのため,示談に際しては被害者に生じた損害を考慮することが不可欠であり,示談金額にも大きく影響します。
もっとも,被害者に生じた損害については,加入する自動車保険からの支払を行ってもらうのが適切でしょう。その主な理由は以下の通りです。
自動車保険から支払を行ってもらうべき理由
1.金額が大きくなりやすい
2.金額計算に専門的な知識が必要となる
3.当事者間では感情的なトラブルの恐れが大きい
適切な手順で,適切な金額の支払を行うためには,自動車保険の利用が合理的と考えるのがよいでしょう。
そして,損害賠償に自動車保険を用いた場合,当事者間の示談金は,治療費や慰謝料といった損害を除いた金額ということになります。具体的には,「処罰を望まないという意思を表明してもらうことの対価」となるでしょう。
ひき逃げ事件の被害者にとって,加害者の刑事処罰を希望しないメリットは基本的にありません。そのため,加害者側からただ許しを求められたとしても,直ちに応じようと思う被害者はあまりいないでしょう。
そのため,加害者側としては,許しを獲得するための対価を被害者に提供することで,被害者にとって示談が有益なものとなるよう提案することが有力です。対価は基本的に金銭となりますが,このような金銭を支払う場合の相場は,概ね10~50万円ほどという水準が目安になるでしょう。
具体的な示談金額は,事故の内容や被害の程度,加害者の経済力といった事情によって左右されることが考えられます。
示談金額を左右する事情
1.事故の内容
→加害者の落ち度が大きな事故であるほど増額要因になる
2.被害の程度
→被害者の受傷が重いほど増額要因になる
3.加害者の経済力
→経済力に限りがある場合,増額が困難となり得る
ひき逃げ事件の示談内容・条項
【確認条項】
加害者が被害者に支払う金額を確認する条項です。
【給付条項】
加害者が支払う金銭について,支払時期や方法を定める条項です。
【清算条項】
示談に定める支払いのほか,当事者間に債権債務関係がないことを確認する条項です。加害者が保険を利用せずすべて自分で賠償する場合には,設ける必要のある条項です。清算条項がないと,示談後にも被害者が重ねて金銭請求することが法的には可能となってしまいます。
一方,被害者の損害賠償を自動車保険に依頼する場合には,逆に清算条項を設けるべきではありません。清算条項を設けてしまうと,その後に被害者が保険会社から金銭を支払ってもらえなくなる恐れがあるためです。
保険会社は,加害者の代わりに,加害者が支払うべき金銭を支払う立場にあります。逆に言えば,加害者に支払う義務のない金銭は,保険会社も支払いません。そして,清算条項を設けるということは,加害者が支払うべき金銭がもう存在しない,という意味になります。
そのため,清算条項を設けた以上,被害者は保険会社からも金銭を支払ってもらえなくなってしまうのです。
【宥恕条項】
被害者が加害者を許すことを内容とする条項です。宥恕(ゆうじょ)とは,「許し」を意味します。ひき逃げ事件の示談で加害者が目指すのは,この宥恕条項の獲得です。宥恕の伴った示談を行うことによって,刑事処分の軽減という効果が生じ得ることになります。
ひき逃げ事件の示談で注意すべきこと
①示談が処分の軽減に影響する範囲
ひき逃げ事件は,厳密には複数の犯罪に該当する行為です。
ひき逃げ事件で該当する犯罪
1.過失運転致傷(致死)
→自動車事故で他人を死傷させたこと
2.救護義務違反(ひき逃げ)
→被害者の救護を怠ってその場を離れたこと
(※ひき逃げ事件の処分が重くなる主な要因)
3.報告義務違反
→事故の発生を警察に報告する義務に反したこと
(※ただし,刑罰の重みは救護義務違反に大きく劣る)
ひき逃げ事件は,単に過失運転致傷(致死)があったのみでなく,救護義務の違反があるために重大な犯罪行為とみなされる,ということになります。
しかし,示談が直接処分の軽減に影響するのは,「1.過失運転致傷(致死)」の部分と理解されています。最も重大な救護義務違反との関係では,示談の意味は十分にあるものの,かといって示談すれば救護義務違反を起訴しなくてよくなる,というわけではないのです。
これは,救護義務違反が被害者を守るためのものというのみでなく,広く道路交通に関わる人の安全という公共の利益を守るための犯罪類型であるためです。被害者と示談したとしても,公共の利益を害した点について責任を負わせる必要がなくなるわけではない,ということになるのです。
ひき逃げ事件については,示談=不起訴という単純な関係にはならないことに注意が必要でしょう。
②被害者の感情面
ひき逃げ事件は,被害者にとって非常に理不尽な内容であるケースが多く,被害者の加害者に対する感情が強くなることが珍しくありません。これは,加害者が示談を申し入れたときにも大きく影響するポイントとなります。
ひき逃げ事件の場合,被害者目線では,加害者を許すという判断に大きな抵抗のあることが大多数です。いきなり許してほしいという趣旨のお願いをしても,拒否される方が普通でしょう。
そのため,まずは被害者の感情面に配慮の上,謝罪の試みを行う,という方針が適切になりやすいところです。許してもらえるかどうかは,謝罪を受け取ってもらった後の問題である,と考える方が合理的でしょう。
示談を急ぐのではなく,まずは粘り強く謝罪の意思を伝える,ということを大切にするのが,結果的に示談の近道になると言っても過言ではありません。
ポイント
示談=不起訴ではない
まずは謝罪を試みることから始める
ひき逃げ事件の示談に必要な費用
藤垣法律事務所でひき逃げ事件に関して弁護活動を行う場合,必要な費用のモデルケースとしては以下の内容が挙げられます。
①活動開始時
着手金 | 33万円 |
実費相当額 | 1万円 |
合計 | 34万円 |
一般的な在宅事件では,34万円のお預かりにて活動の開始が可能です。
②弁護活動の成果発生時
不起訴処分 | 33万円 |
示談成立 | 22万円(※) |
出張日当・実費 | 実額 |
活動の成果が生じた場合に限り,55万円(実費日当を除く)の費用が発生します。
③示談金
ひき逃げ事件の場合,10~50万円の示談金が目安として想定されます。
④合計額
上記①~③の合計額が必要な費用負担となります。
目安となる費用総額(20万円で示談成立+不起訴の場合)
弁護士費用:34万円+55万円=89万円
示談金:20万円
計:109万円
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