【交通事故加害者の示談を知りたい人のために】保険会社が行う示談と刑事処罰の関係,自分で示談を試みる場合の方法や内容等を解説

このページでは,交通事故事件の示談についてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。
示談の方法,内容に加え,当事務所で弁護活動を行う場合の費用も紹介していますので,示談を弁護士に依頼するときの参考にしてみてください。

【このページで分かること】

交通事故の示談とは
保険会社が行う示談と刑事事件の関係
保険会社にはできない示談とは
交通事故で示談をする方法
交通事故の示談金相場
交通事故の示談内容・条項
交通事故の示談で注意すべきこと
交通事故の示談に必要な費用

交通事故の示談とは

交通事故における示談には,二つの側面があると理解されます。それは,「当事者間の金銭的な関係に関する面」と,「加害者の刑事処罰に関する面」です。

そもそも,「示談」とは一種の「合意」という程度の意味にとどまるため,その内容はケースによって様々です。当事者間の関係をすべて解決する示談もあれば,その一部だけを切り取って合意する内容の示談も考えられます。
そして,交通事故のケースで示談を行う場合の内容は,大きく分けて「当事者間の金銭的な関係に関する面」と「加害者の刑事処罰に関する面」の二つに区別されるのです。

当事者間の金銭的な関係に関する面」とは,被害者に生じた損害を加害者がいくら支払うのか,という問題です。交通事故によって,車両の修理費やケガに対する修理費,慰謝料などが発生するところ,その金銭問題を解決する側面ということになります。
一方,「加害者の刑事処罰に関する面」は,被害者が加害者の刑事処罰を望むか望まないか,という問題です。交通事故は刑事事件でもあるため,加害者が刑罰を受けるかどうかが大きなポイントになりますが,被害者が刑罰を望むかどうかは,加害者への処分結果を決定的に左右することも少なくないため,刑事処罰に対する被害者の意向を明らかにするというものです。

交通事故で示談を試みる場合,これらの二つの側面についてそれぞれ解決を試みることが適切になります。
そして,刑事事件で処分への影響を目指すためには,金銭問題(民事事件)に関する示談のみでなく,刑事処罰(刑事事件)に関する示談も必要です。

交通事故示談の二つの側面

当事者間の金銭関係(民事事件)
加害者の刑事処罰(刑事事件)

刑事処分の軽減を目指すためには,刑事事件の側面について示談が必要

保険会社が行う示談と刑事事件の関係

自動車事故の場合,自動車保険(任意保険)に加入していれば,対人対物賠償責任保険の担当者が被害者と「示談」をしてくれます。
しかし,保険会社が行う示談は,当事者間の金銭関係に関する点のみです。言い換えれば,保険会社は刑事事件に関する示談をすることができないため,保険会社が被害者と行う示談のみでは刑事事件の側面は示談ができていないということになります。

保険会社の役割は,加害者の代わりに被害者への金銭の支払を行い,当事者間の金銭問題を解決することです。そのため,保険会社が加害者本人の代わりをすることができるのは,金銭問題(民事事件)の側面に限られます。
したがって,保険会社が被害者との間で行う示談も,同じく金銭問題(民事事件)の側面のみであり,刑事処罰(刑事事件)の側面はノータッチにならざるを得ないのです。

「示談」という同じ言葉を用いるため,保険会社が「示談」をしてくれれば十分だと考えてしまいがちですが,その「示談」の中身は一つではありません。自分がしてほしいと思っている「示談」と,保険会社がしてくれる「示談」は別のものであり,自分が希望したい「示談」を行うには自分で動く必要があるという点を踏まえておくことが適切です。

ポイント
保険会社が行う示談は民事事件の解決のみ
刑事事件の処分を軽減させるためには別途の示談が必要

保険会社にはできない示談とは

保険会社は,民事事件の側面しか示談ができない立場である,ということですが,加害者が希望したいにもかかわらず保険会社にできない示談とは何かと言えば,それは「加害者に対する刑罰を希望しないという意思表明」です。

被害者のケガを伴う交通事故は,「過失運転致傷」又は「過失運転致死」という犯罪に該当してしまう刑事事件です。そして,この刑事事件の処分として,加害者は刑罰を受ける可能性があり,加害者に刑罰が科されるかどうかは検察庁で判断されます。
この点,検察が加害者に刑罰を科すかどうかの大きな判断基準の一つが,「被害者が刑罰を希望しているか,していないか」という点です。犯罪行為によって損害を被った被害者自身が,加害者の刑罰を希望していなければ,多くの場合は加害者に刑事処罰を科す必要はない,との判断になりやすいでしょう。
そのため,被害者の意思は刑事処罰を決定的に左右する可能性が高く,この点の示談は被害者にとって非常に重要なものとなります。

しかしながら,金銭問題の解決のみを業務とする保険会社には,被害者の刑罰に対する意思について交渉することができず,その点の示談もできません。そのため,被害者から刑罰を希望しない意思表明を獲得したい場合には,保険会社とは別に被害者と示談を行う必要が生じます。

ポイント
交通事故の刑事処分は,被害者が刑罰を希望するかどうかによって左右される
保険会社は,被害者が刑罰を希望しない,という内容の示談ができない

交通事故で示談をする方法

交通事故における示談の方法は,一般的な刑事事件とは異なることが多く見られます。

一般的な刑事事件の場合,当事者間で直接連絡を取り合うことは推奨されません。被害者にとって過大な負担になりやすい上,連絡先の交換が二次被害の原因になりかねないと考えられるためです。そのため,刑事事件で示談を試みる場合には,弁護士が一度捜査機関に連絡を取り,捜査機関から被害者に「示談交渉に応じるか」の意向を確認してもらうことになります。

一方,交通事故の場合,当事者間で直接連絡を取り合うことは特に禁じられません。むしろ,金銭的解決に必要なやり取りをするため,当事者間で連絡先交換をするよう警察などから促される方が通常です。
交通事故自体が,過失(注意不足)によって起きた偶然の出来事であるため,性犯罪や暴力事件などと違って当事者間での直接の連絡に問題は生じにくいと考えられてもいます。
したがって,交通事故で示談を目指す場合,当事者間で連絡の取れる状況であることが非常に多いため,あえて捜査機関を通じて連絡を試みる必要はないことが一般的です。

具体的な方法としては,以下のいずれかが考えられるでしょう。

示談を試みる方法

1.自分から直接被害者に連絡する
2.加入保険の担当者から被害者に連絡してもらう

なお,いずれの場合も,連絡内容が「刑罰を望まない意思表明をしてほしい」というものとなり,自分からは交渉しづらいことでもあるため,弁護士に依頼の上,弁護士から行ってもらうことが適切でしょう。

交通事故の示談金相場

交通事故に関しては,自動車保険を利用する場合,被害者に生じた損害の賠償はすべて保険会社が行ってくれます。そのため,ほかの刑事事件とは異なり,被害者に生じた精神的苦痛などの損害を,示談に際して加害者が支払う,ということは通常ありません。
その意味で,交通事故被害者に刑罰を望まない意思表明をお願いする際,特に金銭的なやり取りをしないことも珍しくはありません。

もっとも,金銭の支払が生じる場合もあり得ます。この場合の支払は,「被害者が加害者の刑事処分の軽減に協力することの対価」という意味合いを持つものであり,被害者の許しを金銭で購入するイメージに近いかもしれません。
そのため,この支払は本来する義務のないものです。加害者側が特に支払うことを希望しない限り,被害者から請求する権利もなく,求められても加害者は断ることが可能です。

このような金銭の支払が生じる場合の金額は,数万円~50万円ほどが一つの目安になりやすいところです。金銭を支払うか,支払う場合にどの程度の金額になるかは,以下のような事情に左右されることが多いでしょう。

示談金の有無や金額に影響する事情

1.加害者の希望の強さ
→加害者が被害者の許しを強く希望するほど,金銭が発生しやすい

2.被害者の損害の大きさ
→被害者のケガが重く,一般的に許すことが想定しづらい場合,金銭が発生しやすい

3.過失の大きさ
→加害者の一方的な過失で生じた事故の場合,金銭が発生しやすい

4.当事者間のトラブルの有無
→事故直後に当事者間で何らかのトラブルがあった場合,被害者の許しを得るために金銭が発生しやすい

ポイント
損害賠償は保険会社が行うため,損害を埋め合わせるための支払はない
金銭を支払う場合,被害者の許しへの対価という意味合いの金銭になる

交通事故の示談内容・条項

①必ず設ける条項

【宥恕条項】

被害者が加害者を許すことを内容とする条項です。宥恕(ゆうじょ)とは,「許し」を意味します。
交通事故で被害者への示談を試みるのは,この宥恕を得るためであるので,示談の締結時には宥恕条項を設ける必要があります。

②金銭を支払う場合に設ける条項

【確認条項】

加害者が被害者に支払う金額を確認する条項です。
なお,加害者が支払う金銭は,「損害の賠償とは別のものである」ということを明らかにすることが必要です。加害者による支払が損害賠償の一部となった場合,保険会社の支払うべきものが加害者によって先払いされたという理解になるため,被害者と保険会社とのその後の関係に影響してしまう恐れがあります。

【給付条項】

加害者が支払う金銭について,支払の時期や方法を定める条項です。

③交通事故では通常設けない条項

【清算条項】

示談で定めた内容以外に,当事者間に法律関係がないことを確認する条項です。
一般的な示談では,示談成立後に被害者からの追加請求が生じないよう,清算条項を定めることが必要ですが,交通事故で被害者の許しを得る場合には清算条項を設けるべきではありません。なぜなら,清算条項を設けてしまうと,その後に被害者が保険会社から金銭を支払ってもらえなくなる恐れがあるためです。

保険会社は,加害者の代わりに,加害者が支払うべき金銭を支払う立場にあります。逆に言えば,加害者に支払う義務のない金銭は,保険会社も支払いません。そして,清算条項を設けるということは,加害者が支払うべき金銭がもう存在しない,という意味になります。
そのため,清算条項を設けた以上,被害者は保険会社からも金銭を支払ってもらえなくなってしまうのです。

交通事故の示談では,民事事件の解決を保険会社が行うことに配慮した示談内容の作成が重要になります。

交通事故の示談で注意すべきこと

①許しが得られなくても謝罪を尽くすことは重要

交通事故における被害者側の受け止めは様々であり,ケースによっては被害者側の許しが全く得られないこともあり得ます。連絡自体も全面的に拒まれ,許しをお願いする機会すら得られない場合も少なくはありません。

もっとも,許しが得られない見込みであるからといって,謝罪の試みもしないというのは不適切です。許しまでは至らなくても,謝罪を粘り強く試みることで被害者側の感情がいくらか穏やかになる可能性は大いにありますし,謝罪を可能な限り試みた,という事実は刑事処分の検討に際しても判断材料の一つになり得ます。

交通事故の場合,被害者の連絡相手が主に保険会社となる関係で,加害者と被害者との直接の連絡はあまり多くありません。その影響もあり,被害者の目線では「加害者がろくに謝罪もしてこない」という不満を抱えるケースは多く見られる傾向にあります。逆に,謝罪の申し出を受けたことに強い不満を示す人は基本的にいません。
そのため,加害者の道徳的な行いとしても,被害者の感情面に対する配慮としても,できるだけ謝罪を尽くすことは大切にしましょう。

②治療終了前に示談交渉を要する可能性

交通事故の場合,事故の発生から数か月という期間の治療を要することが珍しくありません。そして,被害者としては,治療が終わり,保険会社からの支払も終わった後で,初めて許すかどうかの検討ができる,という場合も多く見られます。被害者側の感情としては,やむを得ないところです。

しかしながら,刑事処分は被害者の治療を待つわけではありません。被害者が治療を受けている最中にも,刑事手続は進行し,起訴不起訴の処分時期を迎えることも多数あります。
そうすると,被害者はまだ治療中であるものの,加害者からは刑事処分に向けた示談交渉を行わなければならない,という場合が生じ得るのです。

この場合は,被害者に刑事手続の状況を丁寧に説明の上,可能な限り理解を得られるよう努めることが適切でしょう。法律面の理解が必要になるため,具体的な交渉は弁護士に依頼することをお勧めします

ポイント
示談にかかわらず謝罪はできる限り行う
治療終了前に刑事処分が決まる可能性もある

交通事故の示談に必要な費用

藤垣法律事務所で交通事故の刑事事件に関して弁護活動を行う場合,必要な費用のモデルケースとしては以下の内容が挙げられます。

①活動開始時

着手金33万円
実費相当額1万円
合計34万円

一般的な在宅事件では,34万円のお預かりにて活動の開始が可能です。

②弁護活動の成果発生時

不起訴処分33万円
宥恕の獲得11万円
出張日当・実費実額

活動の成果が生じた場合に限り,44万円(実費日当を除く)の費用が発生します。

③示談金

交通事故の場合,0~50万円の示談金が目安として想定されます。

④合計額

上記①~③の合計額が必要な費用負担となります。

目安となる費用総額(0円で宥恕獲得+不起訴の場合)

弁護士費用:34万円+44万円=78万円
示談金:0円

計:78万円

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