【児童買春事件の示談を知りたい人のために】示談すべき相手や示談金額,示談と不起訴の関係などを徹底網羅

このページでは,児童買春事件の示談についてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。
示談の方法,内容に加え,当事務所で弁護活動を行う場合の費用も紹介していますので,示談を弁護士に依頼するときの参考にしてみてください。

【このページで分かること】

児童買春事件における示談と不起訴の関係
児童買春事件で示談するメリット
児童買春事件で示談をする方法
児童買春事件の示談金相場
児童買春事件の示談内容・条項
児童買春事件の示談で注意すべきこと
児童買春事件の示談に必要な費用

児童買春事件における示談と不起訴の関係

児童買春は,児童(=18歳未満の男女)に対して金銭などの対価を渡す代わりに,性的な行為をしてもらうことを言います。これは,判断能力が成熟していない児童のスキに付け込んで性的な関係に引きずり込むという問題があるため,犯罪として禁じられ,処罰の対象とされています。

この児童買春事件は,児童を相手とするもので,児童が安易に性的な行為に走ってしまうという不利益を負わせるものであるため,児童に被害を及ぼす事件であることは間違いありません。したがって,児童買春事件において示談を行うことは非常に重要な動きとなります。
示談が成立すれば,児童買春事件の処分は大きく軽減されるでしょう。

しかしながら,児童買春の事件は示談をしても不起訴に直結するとは限りません。これは,児童買春事件の「保護法益」が複数あり,示談だけではそのすべてを手当てできないためです。

窃盗や痴漢といった事件は,被害者個人の利益のみが保護法益とされます。この個人の利益は,侵害された本人が許せば埋め合わせられるものであるため,示談ができ,被害者本人が法益の侵害を許すことで,十分な回復が可能です。

しかし,児童買春事件の場合,この個人の利益のみでなく,児童が健全に成長できるため,社会から性的搾取や性的虐待を防ぐという社会全体の利益も保護の対象としています。児童個人が許したとしても,社会全体の利益を害したことへの処罰は必要なままであるため,示談=不起訴とはならないのです。

児童買春事件の保護法益

児童個人の利益(個人的法益)
性的搾取のない社会を守る利益(社会的法益)

児童との示談で責任が軽減するのは「個人的法益」の面のみ

児童買春事件で示談するメリット

児童買春事件で示談をすることには数多くのメリットがあるということができます。具体的には以下の各点が挙げられるでしょう。

①刑事処分の軽減

児童買春事件において示談をしても不起訴とは限らない,ということは,決して示談が刑事処分を軽減する効果を生まないという意味ではありません。示談ができれば,刑事処分は非常に大きく軽減することになります

これは,示談によって児童個人の利益(個人的法益)を害したことへの刑事責任を負わせる必要がほぼなくなるためです。これは,刑事責任の重さを考慮する上で無視することのできないものです。
児童買春に社会的法益を守る側面があると言っても,個別の事件で問題になるのはその児童であることに変わりはないため,示談が評価されて不起訴処分に至るケースは現実に数多く存在します。

裏を返せば,この個人的法益に対する刑事責任を軽減させる手段は,示談以外にありません。示談以上に刑事責任を軽減させられる行動も現実的には存在しないため,示談の持つ意味は極めて大きいと考えるべきでしょう。

②逮捕の防止

示談が成立した児童買春事件は,その後に逮捕される可能性が極めて小さくなります。

児童買春事件の場合,捜査を行う際に逮捕を伴うことは少なくありません。逮捕は,逃亡や証拠隠滅を防ぐ目的で行われますが,児童買春事件では加害者が児童に連絡を取る手段を持っていることが多く,加害者と児童との接触を防ぐために逮捕される場合があります。
また,事件類型的に余罪が多い傾向にあり,児童ポルノ画像,映像を所持している場合も少なくないため,これらの証拠隠滅を防ぐ目的も兼ねて,逮捕の上で捜査することが一定数見られます。

しかしながら,児童買春事件について示談が成立した場合,少なくともその事件で逮捕をする必要はほとんどなくなります。示談が成立している以上,加害者が児童に何らかの損害を与える見込みがないためです。
また,余罪のみを理由とした逮捕は法的に認められないため,余罪の具体的な疑いや証拠がなければ,余罪が逮捕につながることもありません。

そのため,児童買春事件では,逮捕されず在宅捜査されている段階で示談を目指すことが非常に有力と言えるでしょう。

③逮捕後の早期釈放

児童買春事件で逮捕されてしまった場合,示談が成立すれば早期に釈放される可能性が非常に高くなります。
示談が成立する場合,加害者は児童に謝罪や支払などの誠意を尽くしていることが明らかであるので,釈放しても不利益につながる見込みがないためです。

特に,捜査機関に対して犯罪事実を認めている状況だと,あわせて示談が成立することで早期釈放の可能性は飛躍的に高まると言えるでしょう。認め事件で逮捕勾留されてしまった場合には,迅速に示談を目指すことが非常に重要です。

ポイント 示談のメリット
処分軽減
逮捕防止
早期釈放

児童買春事件で示談をする方法

児童買春事件の場合,児童と直接連絡を取る手段があれば,児童に連絡を試みる手段も思い浮かぶかもしれません。しかし,自分で児童と直接連絡を取って示談を目指すことは適切ではありません。
その具体的な理由としては,以下の点が挙げられます。

当事者同士で示談の連絡を試みるべきでない理由

1.児童本人に示談をする能力がない
→親権者に無断で行った示談は取り消される可能性がある

2.児童に対する脅迫や強要を疑われる可能性がある
→親権者に発覚した際,脅迫や強要の疑いを晴らす手段がない

3.逮捕のリスクが高くなる恐れがある
→児童への働きかけによる証拠隠滅を疑われかねない

以上の通り,当事者同士で示談の連絡を試みることは,示談の効力そのものに問題があるのみならず,自ら逮捕の危険を招く結果になる可能性すらある不適切な行為です。

示談を目指す場合は,捜査されている状況かどうかによって,以下のいずれかの方法を取るのが適切です。

適切な示談の試み方

1.捜査されていない場合
→①弁護士から児童側に連絡を取ってもらう
→②警察に出頭(自首)した後,弁護士から捜査機関に連絡を取ってもらう

2.捜査されている状況の場合
→弁護士から捜査機関の担当者に連絡を取ってもらう

いずれの場合も,弁護士を窓口にして連絡を行うことが肝要です。弁護士であれば,脅迫や強要による証拠隠滅行為をすることはないと理解してもらえるため,示談交渉が円滑に進められます。
なお,捜査機関に連絡を入れる場合の示談交渉に至る流れは以下の通りです。

示談交渉の流れ

1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する

児童買春事件の示談金相場

児童買春事件の場合,30万円前後が示談金額の目安にされることが多く見られます。刑事事件の示談は加害者側が譲歩しやすいことを考慮しても,あまりに悪質な手口で児童買春に誘い込んでいる場合を除き,30~50万円ほどでの合意が相場とされやすいでしょう。

個別の示談金額は,事件の内容や双方の意向によって左右されますが,金額を増減させやすい事情としては,以下の点が挙げられます。

示談金額を増減させる事情

1.児童買春に至る経緯
→児童を執拗に誘うなど,意思決定に強い影響を与えている場合には増額されやすい

2.性行為の内容
→児童が希望しない行為をさせた場合には増額されやすい

3.頻度・回数
→頻度が高く,回数が多いほど増額されやすい

4.児童への悪影響
→生活の乱れや精神疾患につながっている場合は増額されやすい

児童買春事件の示談内容・条項

①一般的な示談条項

【確認条項】

加害者の被害者に対する支払金額を確認する条項です。

【給付条項】

確認条項に記載した金銭の支払をどのように行うのかを定める条項です。

【清算条項】

示談で定めた条項以外には,当事者間に権利義務の関係がないことを定める条項です。当事者間には,加害者が児童へ損害賠償を支払う義務が生じる可能性もありますが,清算条項を設けることによってその点が紛争化することも予防できます。

【宥恕条項】

宥恕(ゆうじょ)条項とは,被害者が加害者を許す,という意味の条項です。
示談が刑事処分に有利な影響を及ぼすのは,基本的にこの宥恕条項があるためです。被害者が加害者を許している,という事実が,刑事処分を劇的に軽減させる要素となります。

②児童買春事件で特に定めやすい条項

【連絡先や連絡方法の消去】

今後当事者間で連絡を取ることがないよう,連絡先や連絡に用いていたSNSアカウントなどを消去することがあります。SNSアカウントに関しては,再作成も不可能ではないため,アカウントの再作成をしないという約束を取り交わすケースもあり得ます。

【接触禁止】

当事者間で連絡を取らないことをより確かにするため,連絡等の接触を禁止する旨を明記することがあります。
接触しないことをより強く約束する場合には,約束に反した場合に違約金を支払うという約束をすることもあります。

【口外禁止】

児童売春の事実は,加害者はもちろん児童にとっても流出を防ぎたい情報であることが通常です。そのため,口外の禁止を児童側から求められる場合も考えられます。
口外禁止条項を設ける場合は,双方に口外を禁止することが一般的です。

児童買春事件の示談で注意すべきこと

①捜査されていない段階で示談を試みるか

児童買春事件が捜査されていない段階では,自分から積極的にアクションを取らなければ示談交渉の開始自体が困難です。具体的には,以下のような方法が挙げられます。

捜査されていない段階で示談交渉の開始を目指す方法

1.弁護士から児童側に連絡を取ってもらう
2.警察に出頭(自首)した後,弁護士から捜査機関に連絡を取ってもらう

しかしながら,これらの手段は,自分から事件の捜査・処分を招く結果になるリスクがあります。つまり,「動かなければ捜査されなかったのに,動いたばかりに捜査・処分の対象になってしまった」という結果になる可能性があるのです。

円滑に示談ができれば,刑事処罰を受けずに済む可能性は高くなりやすいですが,示談が不成立に終わった場合には問題が大きくなります。処分を防ぐために動いたにもかかわらず,動いたことでかえって処罰を受けてしまうことも否定できないのです。

そのため,捜査されていない状況で児童側との示談を検討する場合には,勢いに任せた判断を避け,刑事事件に強い弁護士への十分な相談を尽くすようにしましょう。

②余罪がある場合にどこまで示談が必要か

児童買春事件は,一人を相手に1件だけ行った,という場合よりも,複数人を相手に複数回行った,という場合の方が多い傾向にあります。つまり,児童買春事件は余罪が多くなりやすい事件類型ということができます。
そして,余罪がある場合には,その余罪について示談をするべきなのか,余罪がいくつかあればどの件を示談すべきなのか,という点が重要な問題になります。

この点,結論的には,「捜査の対象となった件について,そのすべてを示談する」のが最も適切でしょう
余罪の中には,具体的な捜査・処分の対象とされる件とそうでない件があります。その違いは,主に「児童(又は親権者)が警察に捜査を求めているか」によって区別されるのが一般的です。言い換えれば,児童側が捜査を求めたときに,それをきっかけにして捜査が行われる傾向にあります

具体的な捜査の対象となった事件は,すべて起訴される可能性があり,起訴されれば刑罰を受ける(=前科が付く)結果となってしまいます。そして,捜査されている件が複数ある場合,ある事件で示談をしても他の事件の処分には影響を及ぼしません。示談をした児童は,他の事件に関しては他人でしかないためです。

そのため,「捜査の対象となった件について,そのすべてを示談する」べきということになるのです。
逆に,具体的な捜査の対象となっていない件については,示談をすることに不利益こそありませんがメリットもないため,積極的に示談を試みる対象とする実益はないでしょう。児童側で問題になっていない以上,こちらから問題として蒸し返す必要がないとも言えます。

③親権者が強い悪感情を持っていないか

児童買春事件の場合,示談交渉の相手は親権者になるのが通常ですが,親権者の対応は個別のケースによって様々です。代表的には,以下のような場合が多く見られます。

示談相手となる親権者の対応

.児童側にも大きな問題があったと考えている
2.内容次第では円滑な解決を想定している
3.児童を唆して性的行為に至ったことを強く憤っている

親権者の感情としては,「1」が最も穏やかであり,「3」が最も強い悪感情であるということになりますが,具体的なケースがいずれに当たるかは連絡を試みてみなければわかりません。
場合によっては,親権者が児童から問題の断片だけしか聞き取っていない場合もあり,そのために強い憤りを示されることも少なくありません。

児童買春事件は,児童の了承を得て性的行為に及ぶものであるため,「お互い様」という面があると考えることも不可能ではありません。しかし,示談を試みる場合には,「お互い様」発想を親権者も持っているとは限らないということを十分に想定しておくことをお勧めします。

児童買春事件の示談に必要な費用

藤垣法律事務所で児童買春事件の弁護活動を行う場合,必要な費用のモデルケースとしては以下の内容が挙げられます。

①活動開始時

着手金33万円
実費相当額1万円
合計34万円

一般的な在宅事件では,34万円のお預かりにて活動の開始が可能です。

②弁護活動の成果発生時

不起訴処分33万円
示談成立22万円(※)
出張日当・実費実額
※金銭賠償で5.5万円,清算条項締結で5.5万円,宥恕の獲得で11万円

活動の成果が生じた場合に限り,55万円(実費日当を除く)の費用が発生します。

③示談金

児童買春事件の場合,30万円ほどの示談金が目安として想定されます。

④合計額

上記①~③の合計額が必要な費用負担となります。

目安となる費用総額(30万円で示談成立+不起訴の場合)

弁護士費用:34万円+55万円=89万円
示談金:30万円

計:119万円

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