侵入窃盗事件は実刑になる?弁護士はどんな弁護活動ができる?状況別の対処法

●侵入窃盗とはどういう事件なのか?

●侵入窃盗は逮捕されてしまうのか?

●侵入窃盗で早期釈放は可能か?

●侵入窃盗の刑事手続はどのくらいの期間がかかるのか?

●侵入窃盗は実刑になるか?

●侵入窃盗ではどんな弁護活動が可能か?

といった悩みはありませんか?

このページでは,侵入窃盗事件の取り扱い侵入窃盗事件で取るべき対応や弁護活動の内容などについて解説します。

侵入窃盗事件とは

窃盗事件には,侵入窃盗,非侵入窃盗,乗り物盗という3つの分類があります。
そのうち,住居などへの侵入を伴う窃盗事件が,侵入窃盗に該当するものです。

①侵入窃盗事件の罪名

住宅への侵入窃盗事件では,侵入行為について住居侵入罪が,窃盗行為について窃盗罪が,それぞれ成立することが一般的です。

窃盗罪(刑法235条)10年以下の懲役又は50万円以下の罰金
住居侵入罪(刑法130条)3年以下の懲役又は10万円以下の罰金

二つの犯罪が成立する場合,合計でどの程度の刑罰になるのかが問題になりますが,侵入窃盗事件では住居侵入罪と窃盗罪が手段と目的の関係にあるため,より重い方の刑(窃盗罪の刑罰)で処罰されます。
なお,複数の罪が目的と手段の関係にあることを牽連犯(けんれんはん)と言います。

②侵入窃盗事件の類型

侵入窃盗事件としては,以下のような類型が挙げられます。

住居への侵入(住宅対象侵入窃盗)

①空き巣居住者がいないところに侵入し,窃盗する
②居空き(いあき)居住者がいるところに侵入し,窃盗する
③忍び込み居住者の就寝中に侵入し,窃盗する
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住居以外への侵入

①出店荒らし営業時間外の店舗に侵入し,窃盗する
②事務所荒らしビルなどのオフィスに侵入し,窃盗する

侵入窃盗事件と逮捕

侵入窃盗事件は,窃盗罪が成立する事件の中でも,逮捕される可能性が非常に高い類型です。
その代表的な理由としては,以下の事情が挙げられます。

①侵害される法益(被害者の利益)が大きい
②今後の被害から被害者を守る必要性が高い
③計画的である(突発的な事件ではない)
④余罪の存在が見込まれやすい
⑤刑罰が重くなりやすいため,逃亡が懸念される

侵入窃盗が捜査される場合は,被害者側が警察などに相談しているケースが大多数です。
被害者の相談を受けた警察は,被害者の保護を最優先に対応せざるを得ないため,被害者に万一のことがないよう,被疑者を特定した際には逮捕することが必要になりやすいでしょう。

なお,逮捕の方法には,大きく分けて現行犯逮捕と通常逮捕(後日逮捕)があります。
侵入窃盗事件の場合,現行犯逮捕ができれば現行犯で逮捕する可能性が高く,現行犯逮捕ができなくても後日逮捕する可能性が高いでしょう。
現行犯でない場合,捜査をした警察には,①後日逮捕をするか②逮捕をしないで電話などで呼び出すか,という選択肢がありますが,侵入窃盗事件では,逮捕をしないで呼び出す選択をするケースは少数です。

侵入窃盗事件の身柄拘束期間

逮捕された場合,続けて勾留されるかどうかによって身柄拘束の期間が変わります。
起訴(又は不起訴)までの具体的な流れは,以下の通りです。

①逮捕居住48時間以内
②送致24時間以内
③勾留請求当日又は翌日,窃盗する
④勾留決定10日間
⑤勾留延長決定最大10日間
⑥起訴または不起訴
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侵入窃盗事件は,勾留請求及び勾留決定の対象となる可能性が非常に高い類型です。
検察官は,逃亡や証拠隠滅,被害者への接触などを避けるために勾留請求を行うことが一般的であり,勾留請求を受けた裁判所も,検察官の請求が合理的であることを踏まえて勾留決定することになりやすいでしょう。
そのため,侵入窃盗事件の場合,逮捕の後速やかに釈放されることを目指すのは,現実的に難しいかもしれません。

また,侵入窃盗事件の身柄拘束期間についてもう一つ考慮すべきなのが,再逮捕の可能性です。
侵入窃盗事件は,余罪が明らかになった場合,その余罪についても捜査・処罰の対象とすることが見込まれますが,この余罪について再逮捕がなされると,上記①~⑥の流れがもう一度繰り返されることになります。
したがって,逮捕から勾留,起訴まで22~23日間の身体拘束が,捜査される事件の数だけ繰り返される可能性があるのです。
必ずしも,捜査する事件の全てについて逮捕勾留を繰り返すわけではないので,単純に事件の数だけ逮捕勾留が生じるわけではありませんが,余罪が多いほど身柄拘束期間は長くなるのが一般的です。

侵入窃盗事件と起訴

刑事事件では,捜査を遂げた検察によって,起訴するか不起訴とするかの判断がなされます。
起訴された場合,刑事裁判を受けて刑罰の対象となり,前科がつきますが,不起訴の場合には刑罰も前科もありません。

侵入窃盗事件の場合,基本的には起訴される可能性が非常に高いと言えるでしょう。
余罪がある場合には,余罪も含めて複数件が起訴されることも珍しくありません。
少なくとも,反省をしている,初犯である,といった事情のみで不起訴になることは考えにくいです。

侵入窃盗事件で不起訴になる場合があるとすれば,代表例は被害者との示談が成立した場合です。
侵入窃盗事件は被害者のいる事件であるため,被害者の処罰感情(加害者の処罰を求めるかどうか)が処分に直接影響します。
そのため,侵入窃盗の事実が明らかであったとしても,被害者が処罰を希望せず,被害者を許している(宥恕している)場合には,不起訴となる可能性が十分に考えられるでしょう。

もっとも,示談を通じて不起訴となることを目指す場合は,以下の点に注意が必要です。

①起訴不起訴は,事件ごと・被害者ごとの判断になる
余罪を含めて複数の被害者がいる場合,被害者のうち一人と示談ができても,不起訴になり得るのはその被害者の事件のみです。
全ての事件が不起訴にならなければ,刑罰を受けて前科が残る結果は同様になってしまいます。

②事件類型的に速やかな示談は難しい場合も多い
事件の程度が重大であるため,被害者が早期に,積極的に示談の検討をしてくれるかは非常に不明確です。示談は被害者の了承が前提となるため,被害者側の検討に時間がかかる場合にはやむを得ない場合も考えられます。

侵入窃盗事件の刑罰

侵入窃盗事件は,その重大性を踏まえて,裁判所からも相当な程度の処罰を言い渡される可能性があります。
初犯であっても,内容により実刑判決の対象となる場合は否定できません。

この点,実刑判決を防ぐためには,被害者との示談が非常に有力となります。
ほとんどの場合では,被害者と示談ができている事件であれば,実刑判決の対象とはなりづらいでしょう。
また,この場合の示談は起訴後に行うことが見込まれますが,起訴後は起訴前に比べて示談が成立しやすい傾向にあります。主な要因としては以下の点が挙げられます。

①既に起訴されており,不起訴になる可能性がない
不起訴になることは許せない,という被害者であっても,起訴された後,不起訴になる可能性が消滅した状況であれば示談に応じるとの判断になる場合があります。
特に,実刑判決になることが明らかでない場合や,実刑判決になることまでは希望していない被害者の場合には,このようなケースがあり得るでしょう。

②加害者が事件を真摯に認めていることが被害者に分かる
公判が開かれ,裁判所で加害者が事件を認める話をした場合には,その事実が被害者側にも伝わることが多いです。そのため,加害者が反省をしているか半信半疑であった被害者の場合,加害者が公判で真摯な態度を見せたことをきっかけに示談交渉のテーブルに乗っていただけることがあります。

③交渉期間を長く確保できる
起訴前の捜査段階では,示談交渉の期間は長くても20日間程度であり,現実的には20日間を確保できるケースもあまりありません。侵入窃盗事件の被害者にとって,示談を受けてよいか判断するには時間不足であることも多く見受けられます。
この点,公判は月単位の期間を要する手続のため,交渉期間も長く確保することができ,示談の締結に至りやすくなります。

侵入窃盗事件に関する弁護活動

侵入窃盗事件における弁護活動としては,以下の内容が挙げられます。

①接見を通じた対応方針の決定

逮捕勾留される場合,ご本人とのコミュニケーションには大きな制限がありますが,捜査はコミュニケーションを待つことなく進むため,捜査への対応方針は速やかに決めなければなりません。
弁護士は,いつでも接見ができますので,接見を行って事件の内容等を確認し,状況や内容に応じた適切な対応方針を検討・判断することができます。

②釈放を求める活動

起訴後の保釈に代表されるように,釈放を求めることのできる局面があるため,可能な限り釈放を求める弁護活動を行うことが可能です。
また,個別のケースにおいてどのような釈放の可能性があるか,専門的な立場からご案内することができます。

③示談の試み

認め事件の場合は,示談の成否が結果を決めると言っても過言ではありません。
弁護士が被害者との示談交渉を実施し,示談の成立を目指す弁護活動を行うことが可能です。

④刑罰の軽減を目指す試み

示談以外にも,刑罰の軽減を目指す方法がないか検討の上,ご案内することが可能です。
一例としては,金銭的な損害が生じていれば被害弁償を行う事件の原因に何らかの精神疾患が影響していれば通院等による解消を目指す,といったものが挙げられます。

⑤周囲の方との協力・環境調整

刑事処分の判断には,再発可能性の程度が考慮されます。
そのため,再発防止がどの程度見込めるか,という点は重要な判断材料になるでしょう。
この点,ご家族など周囲の方の協力を含め,今後の生活の見通しや再発が生じない根拠を明らかにしていくことで,処分の軽減を図る弁護活動が可能です。

侵入窃盗事件に強い弁護士をお探しの方へ

住居侵入を伴う窃盗事件は,窃盗事件の中でも悪質性の高いものと理解されやすく,取り扱いや刑罰も重くなる傾向にあります。内容や程度によっては,初犯でも実刑判決の対象となることが考えられる類型です。
そのため,適切な方法で処分の軽減を目指すことが非常に重要となりますが,具体的にどのタイミングでどのような行動を取るかは,侵入窃盗事件の弁護に精通した弁護士との協議が必要です。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
少しでも早い対応が大事になりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

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