【犯罪被害の金銭賠償獲得事例】10日以内に300万円の賠償獲得 多量の飲酒をさせられ,ホテルに同行後性交に至った被害者未成年の事件

このページでは,実際に犯罪被害者が加害者からの金銭賠償獲得に成功した解決事例を紹介します。
(プライバシー保護のため,結論に影響しない範囲で一部実際の内容と異なる場合があります)

【このページで分かること】
・実際に犯罪被害者が加害者から賠償を受領した事件の内容
・犯罪被害者への金銭賠償に至るための問題点と対応
・弁護士による金銭賠償獲得のポイント

今回は,クラブで大量の飲酒を求められ,その後に性行為を強要された未成年女性の事件を紹介します。

事案の概要

被害者は当時未成年の女性。加害者は芸能活動を行っている成人男性。
被害者は,芸能人である加害者のことを知っていたが,友人から加害者が近所のクラブでイベントを予定していることを知らされ,友人に誘われてイベントに参加しに行った。

現地のクラブでは,加害者らのトークイベント等が行われ,被害者はイベントを見た後,同クラブ内で飲食を楽しんでいた。
その後,友人の一人がクラブ関係者と知り合いであったこともあり,加害者らが飲食をしているVIP席で同席できるとの話を持ち掛けられ,友人とともにVIP席へ向かうことにした。

VIP席では,加害者や芸能関係者と同席の上,飲食や会話をしていたが,加害者は,酒に弱いと口実をつけて,自身が注文した酒を未成年者である被害者に飲ませた。被害者は,加害者の求めに応じてシャンパンなどを飲み,卓全体でボトル2~3本ほどを消費した。
また,被害者は,加害者の翌朝の予定が早いため,起こして欲しいと加害者から依頼されたため,やむを得ず連絡先を交換するとともに,加害者のために目覚まし時計のアラームをセットすることにした。

その後,加害者は被害者に介抱を依頼するため宿泊先への同行を求めてきた。被害者はこれに応じて,ホテルの客室まで加害者を介抱しながら同行し,約束通り目覚まし時計のアラームを設定した後,部屋を去ろうとした。しかしながら,加害者は被害者の退室を阻止した上で,性行為に及んだ。
被害者は,泥酔に近い状態であったため,行為の詳細は記憶できなかったが,避妊具を使用していなかったことと,膣内射精を提案されたことは断片的に記憶していた。結果的に膣内射精はしていないようであった。

事件から約1年間,被害者は家族や交際相手に打ち明けられずにいた。弁護士への依頼直前に,加害者から再度一緒に飲みたいという趣旨の連絡があった。

問題点

①成立する犯罪

被害者を泥酔状態にさせた上で,被害者が拒絶できない状態を利用して性行為に及んだことが見込まれるため,当時の強姦罪または準強姦罪(現在の不同意性交等罪)に該当することが考えられます。

②金銭賠償を獲得する際の問題点

【加害者は合意の上での性交だと考えている可能性】

加害者は,イベント地のクラブで意気投合した女性と合意の上で性行為に至った,と考えている可能性が高い状況でした。
被害者が弁護士への問い合わせをしてから依頼をするまでの間に,たまたま加害者から被害者に連絡がありましたが,その内容は再度一緒に飲みたいと飲食に誘うものでした。加害者の連絡は,いわゆるセックスフレンドに会おうとしているように思われる内容でしたが,友好な関係を保っていると確信していなければ送るはずのないものでしょう。
良好な間柄であるはずの相手から,代理人弁護士を通じて金銭賠償を請求された場合,加害者からの反発,反論は容易に想像されるため,あらかじめ想定する必要がありました。

【事件から1年以上が経過している点】

被害者が弁護士に相談をした段階で,すでに事件から1年以上が経過していたため,事件の内容を裏付ける客観的な証拠を獲得する手段は全くない状態でした。幸い,イベントが行われた事実や,被害者と加害者が一緒に飲食していた事実は,当時の撮影画像から分かるという程度でした。

そのため,そもそもホテルへ同行した事実があるか,ホテルの客室内で性行為がなされた事実はあるか,という点が問題になると,立証に窮することが想像されました。

【被害者が未成年である点】

被害者は未成年でしたが,被害者が法律行為をするためには原則として親権者の同意が必要となります。そのため,本来的には親権者の方に事情を打ち明け,加害者への金銭請求をご了承いただくことが適切です。
しかしながら,被害者は本件が周囲の人に発覚するのを希望していませんでした。事件当時から交際を継続している異性もおり,その存在は親権者も把握しているため,本件の内容が伝わることで関係に亀裂が生じることを懸念していました。

問題点の解決方法

①【加害者は合意の上での性交だと考えている可能性】

被害者は,自分の意思で加害者と性交をした事実は決してないと断言しており,その意思を尊重した方針を取ることが適切と判断しました。具体的には,加害者がどんな反論をしようと,こちらは被害者であるというスタンスを改める意思が全くないと一貫して述べ続けることにしました。

合意があったかなかったかという点は,当事者間で言い分の異なる争点ですが,被害者が加害者に金銭請求する際,争点について加害者と意見を交わす必要はありません。相手を説き伏せることも,相手の言い分が適切か判断することも,金銭請求や金額交渉には必要のないことです。
「言い分が違っても構わない。言い分を理由に応じないのであればこちらは公の場で争うのみである」という態度を明確にすることで,加害者に争うリスクを理解させる方針を選択しました。

もちろん,争点について譲歩する姿勢を見せない方針は,相手が納得しない場合に示談不成立となるリスクを背負うものではあります。しかしながら,本件では,相手が芸能活動を行う人物であることを踏まえ,争うリスクは相手の方が高い状況であると理解し,上記の方針としました。

ポイント
加害者は合意があったと考えている場合,金銭請求に応じてこないことはあり得る
合意の有無が争点化するリスクを加害者に理解させることで,争点化を防ぐ方針を取った
加害者が芸能活動をしている点は,争うリスクを感じやすい要素であった

②【事件から1年以上が経過している点】

合意の有無よりも,争点化した場合により問題が大きくなるのは,そもそも性行為があったのか,という点でした。事件から1年以上が経過している状況では,性行為があったことを裏付ける客観的な証拠を提示することは不可能と言わざるを得ません。そのため,性行為があったかどうかを争点とすることは防ぐ必要がありました

そこで,弁護士の方では,加害者から被害者への連絡に乗じる形で迅速に加害者へ連絡を取り,その言質を得る方針を取ることにしました。加害者からの連絡に弁護士を名乗って返答し,速やかな電話連絡の機会を求めました。そして,電話連絡の際には,あえて合意の有無が唯一の争点であることを前提にすることで,性行為があったかどうかを争点とする余地を与えないやり取りを目指しました。

その結果,加害者は,合意があったと主張する目的で,性行為の存在を前提とした発言を繰り返したため,通話内容を録音することで,性行為の事実を争わない加害者の発言を記録化することに成功しました。

ポイント
性行為の有無自体が争点になると立証に窮する
加害者の言質を取ることが有効な解決策
合意の有無だけを争点とすることで,性行為の有無を争わない発言を引き出した

③【被害者が未成年である点】

被害者が未成年であることは,弁護士にとっては依頼者が未成年者であることを意味します。未成年者との契約は,後から反故にされてしまうリスクがあるため,弁護士目線では慎重な判断を要する問題です。

この点,弁護士の方では,まず徹底した聴き取りや打ち合わせを通じて依頼者との間で互いに信頼できる関係の構築を目指しました。弁護士側はもちろん,依頼者側も弁護士を信頼できると考えることによって,契約リスクは最小限にとどまると判断しました。
また,弁護士の採用する方針をできる限り詳細に説明することで,被害者が希望する結果を獲得するためには弁護士の助力が不可欠であると考えてもらうことを目指しました。

ポイント
弁護士と被害者の契約は,相互の十分な信頼関係の上で取り交わす

結果

加害者との間で,加害者から被害者へ300万円の金銭賠償を支払う内容にて示談が成立。無事同額を受領するに至りました。
活動開始から金銭の受領まで数日というスピード解決でした。

弁護士によるコメント

本件は,加害者の立場が芸能活動を行っているという点で特徴的であり,一方で事件発生から長期間が経過しているという難点もありました。また,依頼者が未成年者であったため,その点への法的な配慮も必要になり得るケースでした。

加害者が芸能活動をしている事実は,多くの場合,事件が公になるデメリットの大きさを推測させます。本件のような立場の加害者は,示談成立の意欲を強く持つケースが多いでしょう。それだけに,被害者代理人としては強気な金銭請求を検討したいところです。

一方,本件の場合,加害者は明らかに被害者側も同意していたものと誤解している状況でした。合意していない可能性があれば,1年越しに被害者を飲みに誘うことは考えにくいためです。また,飲みに誘っていることを踏まえると,被害者が未成年者であることも把握していないことが容易に想像されました(被害者は,未成年者であることを隠してクラブに入店しているようでした)。

以上を踏まえると,被害者の立場として強気の金銭請求が有力であるのと同時に,加害者にも争う要素があり得るため,バランスを保ちながらの交渉が重要な事件でした。また,スピーディーな進行により加害者側に熟慮の機会を与えず,合理的な水準での示談を実現することによって,被害者には早期に十分な賠償がなされるに至りました。

ポイント
加害者の芸能活動は強気に金銭請求をしたい要素
事件発生から期間が経過しているため,証拠に乏しい点は不利な要素
加害者は被害者の同意があったものと明らかに誤解していた
素早く合理的な金額水準で合意することにより,双方のバランスを保った解決に至った

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さいたま市大宮区の藤垣法律事務所は,刑事事件の経験豊富な弁護士が,専門的な知識・経験を踏まえて,犯罪被害にお悩みの方への最善のサポートを提案することができます。
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