●従業員が逮捕されたが,何をしてあげられるか?
●従業員の事件について,内容や状況を把握することはできるか?
●従業員のために自分が弁護士を選ぶことはできるか?
●従業員の刑事処分を軽くするためにできることはあるか?
●従業員を雇用し続けると意思表明するのは従業員に有利になるか?
●従業員に前科がついた場合,会社にとって不利益はあるか?
といった悩みはありませんか?
このページでは,自社の従業員が刑事事件の当事者となった場合の対応でお困りの方に向けて,従業員のためにできることや弁護士への依頼に関する注意点などを解説します。
目次
従業員が逮捕された場合に状況を把握する方法
①弁護士接見の重要性
従業員が逮捕された場合,被疑者である従業員の関係者に対して捜査機関から十分な情報が提供されることは期待できません。そのため,状況を把握するためには従業員本人から聴取する必要が生じます。
もっとも,特に逮捕直後には面会することも困難であり,警察が特に許可しない限り直接聴取することはできません。
そのため,弁護士に依頼し,弁護士に接見をしてもらう方法で,本人から事情を聴取するのが適切な手段となります。弁護士であれば曜日や時間帯を問わず接見を行い,従業員の方から話をお聞きすることが可能です。あわせて,弁護士が専門的な見地から今後の対応などについて助言をし,適切な対応を促すこともできるでしょう。
②従業員家族との連携
従業員の家族には,警察から連絡が入り,何らかの内容が告げられている場合も多いです。そのため,状況や内容を把握するための手段としては,従業員家族との連携も非常に重要でしょう。
その後の動きに際しても,ご家族と一緒に進めることによって,より円滑な対応ができる局面の増えることが見込まれます。
③報道を通じた確認は適切か
従業員の事件が報道された場合,その報道内容を通じて事件の内容を把握することも考えられます。
しかしながら,報道を通じた事件の把握には注意すべき点があります。
まず,報道される事件の内容が事実関係を網羅したものではない,ということです。
報道は,紙面や文字数の制限,その時点で得られる情報の限りなどがあり,どうしても事件の一部分を強調したものにならざるを得ません。そのため,報道のみで情報の把握を試みようとすると,事件の理解に不十分なところが生じやすいでしょう。
また,被疑者の認否に関する報道内容が正確でない可能性がある,という点も挙げられます。
報道においては,被疑者の認否が簡潔に報じられますが,その内容は被疑者の実際の認否を正しく反映したものでないことが少なくありません。実際に,報道で「容疑を否認している」と報じられていた事件の接見を行った際,実際は被疑者が全面的に認めていたという場合もあるため,直接本人の言い分を聴取しないかぎりは鵜呑みにしない方が適切でしょう。
従業員のために弁護士への依頼ができるか
①弁護人の選任ができるか
従業員のためを考える場合,従業員の弁護を行う弁護人を会社関係者の判断で選任したい,と考えるケースはあると思います。
しかし,法律上,会社関係者に従業員の弁護人を選任する権利はありません。弁護人選任権者は,被疑者・被告人,その法定代理人,補佐人,配偶者,直系の親族及び兄弟姉妹と定められているためです。弁護人を選任できるのは,基本的に本人とその家族に限られるという理解でも差し支えないでしょう。
②従業員のために弁護士へ依頼ができるか
もっとも,会社関係者が従業員のために弁護士をつけるのは,従業員にとっても有益なことが多いでしょう。特に,刑事事件の弁護活動には期間制限が付きまとうため,刑事事件で弁護人を選任するのは少しでも早いに越したことがありません。
そこで,先に会社関係者が従業員のために弁護士へ依頼(弁護士と契約)してしまう,という方法は非常に有力です。あくまで会社の人と弁護士が契約する,というのみなので,法律で制限されるものではありません。依頼後,弁護士が従業員の方と接見し,その意思を確認することができれば,本人から弁護士を弁護人として選任してもらうことができ,弁護活動に着手することができるでしょう。
【流れまとめ】
①弁護士との契約 | 従業員のための契約だが,契約者はあくまで会社関係者と弁護士 |
②従業員に接見 | 弁護士が従業員と接見し,弁護人選任の意思を確認 |
③従業員による選任 | 弁護人選任権のある従業員が,弁護士を弁護人に選任 |
④弁護士の活動開始 | 弁護人に選任されれば,弁護活動に着手することができる |
従業員の刑事処分を軽くする方法
①会社関係者の働きで従業員の処分が軽減する場合
従業員の刑事処分を判断する際には,その従業員が今後どれだけ安定した生活を送る見込みであるか,周囲に理解者のある環境があるか,という点が考慮の対象になります。なぜなら,それらの事情は従業員の再犯可能性に重大な影響を及ぼすからです。
刑事処分後,不安定な生活を強いられる人の場合,犯罪に及ぶ際の心理的な障壁が低くなりやすく,犯罪の歯止めに欠けるとの理解がなされる傾向にあります。また,周囲に理解のある監督者がいない場合,やはり犯罪を食い止めることが難しく,再犯可能性が高いと判断されやすくなります。
そのため,会社関係者が今後も従業員との関係を継続する予定であることや,従業員の更生のために協力する意向であることなどが明らかになれば,従業員の刑事処分は軽減する可能性があります。
刑事処分後も従業員への協力を続ける予定である場合には,その旨を適切な相手に適切な方法で表明するのが望ましいでしょう。
②具体的な対応方法
【捜査段階】
→捜査の終了時に,検察によって起訴又は不起訴の判断が行われることとなります。そのため,判断を行う検察官に対し,不起訴処分を促す事情の一つとして会社関係者の協力体制を示すのが適切です。
【公判段階(起訴後)】
→公判では,検察官と弁護人がそれぞれ提出する証拠を踏まえて,裁判官が判決の内容を検討します。そのため,公判期日において,その裁判手続の中で提出する証拠として裁判所に示すのが適切です。
【提出物】
→基本的には内容を書面化することが適切です。具体例は以下の通りです。
・陳述書や上申書(会社関係者の話を書面化したもの)
・電話聴取書や報告書(弁護士が聞いた内容を書面化したもの)
・会社関係者の署名
従業員が刑罰を受けた場合の会社への影響
刑事責任は専ら個人責任であるため,従業員が刑罰を受けても会社に法律的な影響が生じることは基本的にありません。企業イメージの悪化や業務の混乱・停滞といった影響は懸念されますが,会社が法律的に不利益を被ることはないと理解してよいでしょう。
もっとも,従業員が資格を利用した仕事をしている場合,その資格に影響が生じることで業務への影響が生じることは考えられます。特に建築関係で影響の生じるケースが散見されますが,土地建物関係を例とすると,以下のようなものが挙げられます。
①建築士 | 禁錮以上の刑 又は 建築に関する罪の罰金刑で免許取消 |
②宅地建物取引業者 | 禁錮以上の刑で免許取消 |
③宅地建物取引士 | 禁錮以上の刑で登録削除 |
④建設業 | 禁錮以上の刑で許可取消 |
⑤土地家屋調査士 | 禁錮以上の刑で登録取消 |
⑥不動産鑑定士 | 禁錮以上の刑で登録削除 |
従業員がこれらの資格制限の対象となった場合,従業員の業務に制限が生じる結果,会社業務への影響が避けられず生じることがあり得ます。
従業員の刑事事件で弁護士を依頼すべきか
①ご家族との連携ができる場合
ご家族と連絡が取れ,その意向が確認できる場合には,会社関係者の方と従業員家族との間で方針や希望が合致しているか十分に協議することをお勧めします。それぞれが別に弁護士への依頼を検討しており,二つの依頼が競合してしまうと,かえって弁護活動の遅滞が生じ,従業員の不利益になってしまうためです。
また,弁護士探しや弁護士への依頼,依頼後の連絡窓口をするのは誰か,という点も十分に調整の上,情報共有ができる段取りをご家族との間で取っておくのが適切です。関係する人数が増えるほど情報共有が不足しがちですが,関係者すべてが弁護士と直接連絡を取るのも現実的でないため,弁護士とのやり取りや関係者間での情報共有の方法は明確にするのが有益でしょう。
②ご家族との連携ができない場合
ご家族と連絡が取れる間柄にないなど,連携が困難な場合には,まず弁護士と従業員本人の接見を実施し,ご本人の意向を確認するのが適切でしょう。多くの場合,従業員本人が拒否の意向を示すことは考えにくいですが,念のためご本人の意向を確認の上,確認ができ次第弁護活動に着手する,という流れが円滑です。
また,もし会社関係者の方と従業員本人の面会が可能な状況であれば,留置施設での面会を実施し,弁護士に依頼したいとの気持ちをお伝えの上,事前に従業員の了承を得ておくことも有力です。
刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ
従業員が刑事事件の当事者となった場合,事業への影響が生じるだけでなく,従業員との関係によっては力になってあげられないかと悩みが生じる方もおられるかと思います。
従業員本人やその家族と一枚岩になることができれば,勤務先の方のお力添えは非常に心強いものであり,本人の刑事処分にとっても大変有益でしょう。
具体的な対応方法については,刑事事件に精通した弁護士への相談・依頼を検討してみてください。
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。
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